「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

ヴェネツィアの古き水差燕来る 芳賀翅子 「滝」6月号<滝集>

2012-06-25 22:22:41 | 日記
 水差と燕の取り合わせだけなら、特に注目しなかったかもし
れない。ここではヴェネツィアというイタリアの古い都市の地
名が効果を発揮して、連想を喚起してくれる。旅行吟ではなく、
展覧会で見た古き水差しから商業都市として栄えた水の都に飛
躍したところが魅力。(A)

 本日は、赤間白石さんの鑑賞八句を掲載させていただきました。

 明日より7月号の鑑賞に入ります。

沈黙の町の桜の並木かな 佐藤憲一 「滝」6月号<滝集>

2012-06-25 22:21:26 | 日記
 寂しい風景の提示だが「沈黙の町」の措辞は重い。やはり、
福島の原発近くの避難地域の桜並木を連想してしまう。写真や
映像で見た、桜の並木と防護服を纏う白い集団の記憶が蘇る。
二年前までは町中で桜まつりを楽しんだ桜並木が今は避難地区
になり、沈黙を続けている。作者が現地で体験した情景でなく
とも、作者がこの句を作る気持ちを感じ取れた。(A)

天へ雪噴き上げ山岳道拓く 村上幸次 「滝」6月号<滝集>

2012-06-25 22:19:07 | 日記
 除雪車が山岳道を切り開く様子を描写しているが春の到来
の賛歌。北国の長い冬を吹き飛ばす様に、雪を噴き上げ除雪
車が雪の回廊を拓いていく。特に十和田湖に向かう八甲田の
山岳道は一ヵ月もかけ除雪作業を行うという。「天へ」の打
ち出しが大きな景を呼び起こす。(A)


荒浜やひとり残りし桜守 鈴木要一 「滝」6月号<滝集>

2012-06-25 22:17:39 | 日記
 荒浜は全国にある地名かもしれないがこの句では仙台市若
林区荒浜で、この度の津波で大変被害が多きかった荒浜が詠
まれている。沢山あった桜の木の多くは流され、数人いた桜
守もいま一人だけになってしまった。しかし、残された桜守
は桜の復興に立ち上がろうとしている。俳句はくどくど説明
しなくとも、荒浜と桜守の提示だけで作者の思いは通じる。
(A)