細長い帯を一度ねじって両端を貼り合わせたときに、表裏
の区別ができない連続面となる輪の形状。これがメビウスの
帯。この句のメビウスの帯を、無限の繰り返しの喩と捉えれ
ば、中七の「ころがる」ものは、季節の巡りや地球そのもの
となるだろう。言葉は根源的に既に比喩であることを避けら
れないものだが、もっとも比喩性の薄い言葉は自然科学の言
語である。データの数字や固有名詞、メビウスの帯も然り。
メビウスの帯の幾何学的性質を喩として用いることには相当
無理がある。ではこの句の帯をころがってゆくものは一体何
だろう。春の遠雷の音だろうか、それとも自分だろうか。何
であろうとそれはきっと、これから次元を飛び越えるはずだ。
地球空間は三次元、それに時間軸を加えたものが四次元。地
球レベルでは三次元座標で十分理解できる。だが宇宙レベル
では四次元の座標が必要になる。地上の三次元世界にいて、
四次元という多次元座標をどう表現すべきか。その手がかり
を与えてくれるのがメビウスの帯。二次元の世界に住んでい
ても、メビウスの帯に乗ってころがればその平面の裏側に行
ける。表裏の関係は、平面を超えた概念であるとするならば、
メビウスの帯は二次元から三次元への橋となる。メビウスの
帯は、宇宙の構造を解明するひとつの手段として提案された
多次元への移動装置なのだ。主体的に帯に乗ってころがるも
のは、次元を超えようとするもの、つまり「光」以外にはあ
り得ない。(石母田星人)
の区別ができない連続面となる輪の形状。これがメビウスの
帯。この句のメビウスの帯を、無限の繰り返しの喩と捉えれ
ば、中七の「ころがる」ものは、季節の巡りや地球そのもの
となるだろう。言葉は根源的に既に比喩であることを避けら
れないものだが、もっとも比喩性の薄い言葉は自然科学の言
語である。データの数字や固有名詞、メビウスの帯も然り。
メビウスの帯の幾何学的性質を喩として用いることには相当
無理がある。ではこの句の帯をころがってゆくものは一体何
だろう。春の遠雷の音だろうか、それとも自分だろうか。何
であろうとそれはきっと、これから次元を飛び越えるはずだ。
地球空間は三次元、それに時間軸を加えたものが四次元。地
球レベルでは三次元座標で十分理解できる。だが宇宙レベル
では四次元の座標が必要になる。地上の三次元世界にいて、
四次元という多次元座標をどう表現すべきか。その手がかり
を与えてくれるのがメビウスの帯。二次元の世界に住んでい
ても、メビウスの帯に乗ってころがればその平面の裏側に行
ける。表裏の関係は、平面を超えた概念であるとするならば、
メビウスの帯は二次元から三次元への橋となる。メビウスの
帯は、宇宙の構造を解明するひとつの手段として提案された
多次元への移動装置なのだ。主体的に帯に乗ってころがるも
のは、次元を超えようとするもの、つまり「光」以外にはあ
り得ない。(石母田星人)