「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

魚は氷に上る両手の鉄鎖 阿部風々子 「滝」5月号<瀬音集>

2015-05-27 04:08:00 | 日記
 掲句の次に〈蕗の薹北の牢屋の赤煉瓦〉が並ぶ。「博物館網
走監獄」での吟行だろうか。受刑者にとって「網走送り」は
「生きて帰れない」という意味をもっていた。この監獄では、
主に未開地開墾などの過酷な労働をさせられたという。立春
を過ぎ陽射しも明るさを増し、魚が氷の上に躍り出る季節。
極寒の地の受刑者にも優しげに春が訪れる。「両手の鉄鎖」の
措辞に受刑者の深いかなしみが乗る。(石母田星人)