「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

雛段に置かれてありぬ孔雀石 谷口加代 「滝」5月号<渓流集>

2015-05-08 04:06:13 | 日記
 原石の模様が孔雀の羽に見えるという石。緑色で日本画の
岩絵の具としても使われる。視力を助け、眼病を防ぐなどの
癒しの効果もあるとされ、パワーストーンとも呼ばれている。
実際に手に取ってみると、小さいものでも心が落ち着く気が
する。その石が置かれてあるのは雛段の赤い毛氈の上。この
句の眼目は赤と緑の色彩にある。赤と緑、青と黄などは反対
色。反対色の関係にあると、相手の色を引き立たせる力を持
つ。野菜サラダに赤いトマト、マグロの赤にパセリなど、料
理ではおいしく見せるため反対色が自然に使われる。赤と緑
が印象深く使われている絵画も数多い。マチスの「赤い部屋」、
オディロン・ルドンの「アラブの楽人」、梅原龍三郎の「薔
薇裸婦図」など。女雛や男雛の表情よりも、毛氈に置かれた
孔雀石の存在が記憶に残ったのだ。大きいパワーストーンな
らば、癒しの効果を高めるための月光浴なども経験済みだろ
う。月光をまとうたびに鮮やかに変身する緑。真っ赤な雛壇
を震わせている緑。反対色の効果を意識することでインパク
トのある俳句空間が出来上がった。(石母田星人)