「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

多喜二忌の車道転がる帽子かな 平賀良子 「滝」5月号<滝集>

2013-05-26 05:39:23 | 日記
 ダンディとは、からだつきがスマートな上に、衣服の着こ
なしがよく、人との応対の仕方などにそつの無い男性とある。
「からだつき」のことをのぞけば、「滝」の同人会長はぴっ
たり。その会長の紹介で「滝」に入会された方は両手にあま
るのではないだろうか。同人会長面目躍如である。三、四年
前になるが「道の会」の松島一泊吟行会の折、福浦橋の先に
ある牡蠣むき工場あたりで会長のトレードマークでもある黒
いソフト帽が海風にとばされ、ころがる帽子をあわてて追う
姿はダンディも形無しで、とてもおかしかった。ごめんなさ
い。(遠藤玲子)



多喜二忌の車道転がる帽子かな 平賀良子
「滝」5月号<滝集>
 夏帽子は故郷に向かって転がっていく感じがするが、掲
句の帽子は、在るべきところではない所を只々風に翻弄さ
れて転がっているかに思える。帽子にはかぶっていた人の
存在があるはずで、戦時下、非合法活動で逮捕され、特高
警察の拷問に絶命した多喜二に強く繋がってくる。季感が
薄いとされる忌日季語に寒々しさが存分に詠まれた句と思
う。(H)