「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

吉里吉里忌ガジュマルに風騒ぐなり 菅原鬨也 「滝」5月号<飛沫抄>

2013-05-16 19:45:55 | 日記
季語は井上ひさしの忌日(2010年4月9日)で、今年、三回忌
にあたる。上から読んでも下から読んでも「きりきりき」と、
小説の「吉里吉里人」から、言葉遊びの好きだった作者が喜
ぶであろう名称として決まったようだ。ガジュマルが配され、
作者の胸の中でザワザワと風に鳴っている。井上ひさしは、
沖縄戦の激戦地となった伊江島で、ガジュマルの木の上に逃
げた2人の日本兵が、戦争が終わったことを知らずに2年間
過ごした、という実話をもとに戯曲を書こうとしていたそう
だ。肺がんに冒されたベッドの上で、死の間際まで「木の上
の軍隊」を書くことに執念を燃やしたという。私は見逃して
しまったが<NHKスペシャル「ラストメッセージ・井上ひ
さし“最期の作品”」>という番組があり、「その遺志が、
この春、井上ひさしに特別な思いを持つ人びとの手によって
実現することになった。」との紹介文があった。どんなにか
書きたかったことか、そして、どんなに読みたかった事か。
ガジュマルの樹が雄弁に故人を惜しんであまりある句ですね。
(H)