「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

豊玉姫のことなど霞たなびけり 渡辺登美子 「滝」5月号<渓流集>

2013-05-21 05:28:36 | 日記
 豊玉姫は「古事記」の上巻、山幸彦と海幸彦神話に登場す
る女神。海神の娘で、海幸彦と結婚して子供をもうけ、夫に
富と地上の王として君臨する資格を授ける。聖母神であると
同時に、福を招き、出世を約束する女神であるそうだ。そん
なことを霞のたなびきに思い出している。万物の姿がほのぼ
のと薄れてのどかな春の景色だが、作者在住の石巻市は震災
で大きな被害を受け、以前の景色とは違っている。けれど霞
の中に見ているのは震災前の景色なのかもしれない。豊玉姫
に祈る復興でもあるのでしょう。つい先日、また震度5強の
余震があった。本当の意味で春を春として喜べる日常が戻っ
てくるのはいつになるのでしょうね。(H)