掲句の「帰雁のどれか鳴く」に、即旅なれた群れの長老が
「私に続け」と鳴いたと思った。と、云うのは、以前目にし
た、スウェーデンの女流作家ラーゲルレーフの童話「ニルス
のふしぎな旅」では、雁の大将アッカーが、ロシアの動物文
学作家カラージンの「鶴は南へとぶ」では、長老が、いずれ
も「さあ!私に続け」といって先頭を切ることになっている
からである。しかし、修紅短期大学の教授だった山本弘氏が
入念に、この雁の群れの先頭に立つ個体を調査された結果で
は、全く偶然に、機械的に、先頭が決まるので、長老や新入
りの役割と決まってもいないと柴田敏隆著、「カラスの早起き、
スズメの寝坊」に書いている。したがって「帰雁のどれか鳴
く」もこの鳥会社の物理的機械的な仕組みを知っての句作と
思われる。それにしても帰雁のこれからの長旅を思うと、切
なく無事を祈るのみである。ところで、鴛鴦は仲の良い夫婦
の意にも用いられる程、常に一緒に居ると思われているが、
実は意外と気が多いらしく、その点、雁はどちらかが息絶え
ると、相手の傍らをいつまでも離れない情の厚い鳥ときく。(遠藤玲子)
「私に続け」と鳴いたと思った。と、云うのは、以前目にし
た、スウェーデンの女流作家ラーゲルレーフの童話「ニルス
のふしぎな旅」では、雁の大将アッカーが、ロシアの動物文
学作家カラージンの「鶴は南へとぶ」では、長老が、いずれ
も「さあ!私に続け」といって先頭を切ることになっている
からである。しかし、修紅短期大学の教授だった山本弘氏が
入念に、この雁の群れの先頭に立つ個体を調査された結果で
は、全く偶然に、機械的に、先頭が決まるので、長老や新入
りの役割と決まってもいないと柴田敏隆著、「カラスの早起き、
スズメの寝坊」に書いている。したがって「帰雁のどれか鳴
く」もこの鳥会社の物理的機械的な仕組みを知っての句作と
思われる。それにしても帰雁のこれからの長旅を思うと、切
なく無事を祈るのみである。ところで、鴛鴦は仲の良い夫婦
の意にも用いられる程、常に一緒に居ると思われているが、
実は意外と気が多いらしく、その点、雁はどちらかが息絶え
ると、相手の傍らをいつまでも離れない情の厚い鳥ときく。(遠藤玲子)