「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

暮れてゆく空や帰雁のどれか鳴く 相馬カツオ 「滝」5月号<渓流集>

2013-05-20 04:39:21 | 日記
掲句の「帰雁のどれか鳴く」に、即旅なれた群れの長老が
「私に続け」と鳴いたと思った。と、云うのは、以前目にし
た、スウェーデンの女流作家ラーゲルレーフの童話「ニルス
のふしぎな旅」では、雁の大将アッカーが、ロシアの動物文
学作家カラージンの「鶴は南へとぶ」では、長老が、いずれ
も「さあ!私に続け」といって先頭を切ることになっている
からである。しかし、修紅短期大学の教授だった山本弘氏が
入念に、この雁の群れの先頭に立つ個体を調査された結果で
は、全く偶然に、機械的に、先頭が決まるので、長老や新入
りの役割と決まってもいないと柴田敏隆著、「カラスの早起き、
スズメの寝坊」に書いている。したがって「帰雁のどれか鳴
く」もこの鳥会社の物理的機械的な仕組みを知っての句作と
思われる。それにしても帰雁のこれからの長旅を思うと、切
なく無事を祈るのみである。ところで、鴛鴦は仲の良い夫婦
の意にも用いられる程、常に一緒に居ると思われているが、
実は意外と気が多いらしく、その点、雁はどちらかが息絶え
ると、相手の傍らをいつまでも離れない情の厚い鳥ときく。(遠藤玲子)