行雲流水

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ぼくは12歳

2013年12月10日 | 禅の心
『ぼくは12歳』は、作家の高史明さんの息子の岡真史さんの詩集です。岡真史さんは、1975年に12歳の若さで自ら命を断ちました。夏目漱石の『こころ』などを読んで物思いにふけるような繊細な心をもった少年でした。

にんげん
あらけずりのほうが
そんをする

すべすべ
してた方がよい

でもそれじゃ
この世の中
ぜんぜん
よくならない

この世の中に
自由なんて
あるだろうか

ひとつもありはしない

てめえだけで
かんがえろ
それが
じゆうなんだよ

かえしてよ
大人たち
なにをだって
きまってるだろ
自分を
かえして
おねがいだよ

きれいごとでは
すまされない
こともある
まるくおさまらない
ことがある

そういう時
もうだめだと思ったら
自分じしんに
まけることもある

心のしゅうぜんに
いちばんいいのは
自分じしんを
ちょうこくすることだ
あらけずりに
あらけずりに・・・・・・・・

 自殺の動機など、詳しいことは私にはわかりませんが、日本の社会の繁栄の陰で少年の心にひずみが出てきていたのかもしれないと私は考えます。
もっともっとがんばって、他人に負けるなという当時の風潮の中で心が疲れていったのかもしれません。「てめえだけで考える。それが自由なんだよ」釈尊も「自灯明」という言葉で同じことを言われました。自分で考えることができない。自分で自分自身の人生を生きていくことができない。そんな世の中に嫌気がさしたのかもしれません。
自分で自分の人生を生きていくために、自分自身を荒削りに彫刻することに一筋の光を見いだしたのも束の間、すべすべした心はなかなか荒削りにならないのでした。親の敷いたレール、社会の敷いたレールの上をただ進んで行くしかなかったのでした。自分で自分の人生を生きていくことは幸せなことなのですが、現代社会ではそれがとても難しいのです。社会に抵抗していく勇ましさをもつことができれば、自ら命を断たなくてもよかったのでしょうけども、それができないのです。

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