akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

『風の歌が聴きたい』

2008-07-23 | バリアフリー映画、福祉
最近手話を始めたという友人に勧められ、TBSの水曜スペシャル『風の歌が聴きたい』を見ました。聴覚障害のある夫婦とその一人息子に密着したドキュメンタリー。とてもよかったです。
耳が聴こえないというハンディを超え、結婚し聴こえる子どもを授かった夫婦。息子怜音くんは2歳半にして、両親と他の人のコミュニケーションの仕方は違うのだと悟り、自然と手話通訳をするようになりました。みんなの愛情を一身に受け素直に成長してきたはずの息子。幸せだったはずの家族。

過去に放送した1992年から97年の映像記録から11年が経ち、再び一家に向けられたカメラ。怜音くんは14歳。中学生で反抗期。都心のマンションに引っ越し、生活も一変、夫婦も仕事が忙しく食事もばらばら、息子を甘やかしっぱなしで欲しいものは買い与え、家庭での手話での会話はまったくといっていいほどなくなっていました。

3人の家族は、以前夫婦が大きな人生の喜びを味わった宮古島のトライアスロンレースを再び体験し(観戦ではありますが)、人々との交流や3人で過ごす時間の中で絆を取り戻します。親に反発ばかりし、すべてが「めんどくさい」だった息子も大きく変わりました。

聴こえない世界と聴こえる世界。違うわけではなく、同じ場所に存在し、一緒に感動を味わうことができるのだ。ただコミュニケーションの方法が必要なだけ。
怜音くんは、再び、聴覚障害者の家族や仲間を大事に思い、自分の持つ「手話という会話ができる能力」を生かしていこう、と思うようになります。
最後には「僕の誇りは、聴こえない両親です」というメールが番組スタッフに届きました。

夫婦、親子も、ずっといい関係が続くとは限りません。子どもも伴侶も違う人間でそれぞれの世界を持っており、自分の思うとおりにならないのは当たり前。子育てや家庭の悩みは誰でも抱えているものです。でも、本当に相手のことを思う愛情が根っこにあり、「どうありたいのか」それを伝え行動を起こせば、理解しあえ、支え合えるいい関係は築いていける。またそこに到るには、自分たちだけではない、他者との関わりが大事だ。そんなメッセージが込められていて、聴覚障害ということを抜きにしても、琴線にふれた視聴者が多かったのではと思います。

彼ら一家にとっては、おそらくこのドキュメンタリー取材が、化学変化の媒体となりました。ドキュメンタリーは、ただそこにあるもの起きていることを記録するだけではありません。善くも悪くも、取材というかたちで関わることによって、取材される側に大きな影響を及ぼすものであることを改めて感じさせる番組でした。
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