しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

「平家物語」祇王妓女  (京都市祇王寺 )

2024年05月11日 | 旅と文学

白拍子(しらびょうし)は室町時代に消えた職種だが、
静御前や祇王、祇女、仏御前によって時代を彩ったことが知られている。

この有名な4人は、権力者に愛されたが、正妻でなく愛妾だったこと。
しかも、わずか1~2年で棄てられたこと。
そして年端もいかない年齢で人生を終えたように表舞台から消えて仏門に入ったこと。

”春の夜の夢の如し”の「平家物語」を、一つに小さくまとめたような女性たちだ。

 

 

旅の場所・京都府京都市右京区嵯峨鳥居本「祇王寺」  
旅の日・2014年11月21日 
書名・平家物語
原作者・不明
現代訳・「平家物語」 長野常一  現代教養文庫 1969年発行

 

 

・・・

「平家物語」 長野常一  現代教養文庫 1969年発行

祇王妓女

「なむあみだぶつ、なむあみだぶつ......」
この世に希望を失った三人の女は、ひたすら死んでからゆくという来世の幸福を祈るのだった。 
その時、さきほどしめたはずの竹のあみ戸を、ほとほととたたく音が聞こえた。
初めは風のいたずらかと思っていた三人の尼も、それがたしかに人のおとずれであることに気づいた。
「はて今ごろ、だれかしら。」
この一年間だれひとりたずねて来たことのないこの小屋へ、こんな寂しい秋の夜にたずねて来るのはだれであろう。
もしかすると平家の追手ではあるまいか。
それとも女三人だけの弱みにつけ込んで、強盗がねらいに来たのだろうか。
そう思うと、三人は足がガタガタとふるえだし、だれひとり門をあけに立ち上がる者がない。
「しかし、平家の追手や強盗ならば、あんな弱々しい竹のあみ戸一つ、押し破ってもはいるでしょう。」
妓王はこう言うと、自分が立って門の方へ出て行こうとする。

「どなたさまでございますか。」 媼が恐る恐る声をかける。
「私です。仏でございます。」
という声はまさしく仏御前幽霊でも天狗でもなく、仏御前の声にまぎれもない。

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自衛隊が学校のグラウンド拡... | トップ | 「宇治拾遺物語」中納言師時... »

コメントを投稿

旅と文学」カテゴリの最新記事