
これまでの国内外での多様な人たちとの交流が、この関心なくして敬意なし、敬意なくして信頼なし、信頼なくして協働なしといった、ごく当たり前の基本動作を地道に実行する大切さを教えてくれました。激務ではありましたが、ギャラハーの統合時、JTIのCFOを兼務することで、本当に多くのことを学びました。「苦労は買ってでもせよ」とは、よく言ったものだとつくづく思います。
----正直、苦しかったことがたびたびありました。そのようなとき、いつも心の中でつぶやいていた言葉がありました。それは、彫刻家の平櫛田中氏のあの有名な言葉でした。
「今やらねばいつできる。わしがやらねば誰がやる」
この言葉が、私に強い気概を与え、背中を押し続けてくれたことは、ギャラハー買収にとって幸いつであったと言えます。
【308ページ】
「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」という言葉があるように、経験談をまとめてどれほど読者の皆さんのお役に立てるのか迷いました。というのも、買収は十人十色だからです。
[ken]筆者は理工系の出身ですが、「関心なくして敬意なし、敬意なくして信頼なし、信頼なくして協働なし」など、漢文の書き下し文のような表現を用い、私たちのような高齢者にも伝わるような工夫をしています。そして、何の努力もしないで「一緒に協働しよう、できる」との甘い考え方を、さりげなく退けています。心憎いのは、本書の最終場面にきて、平櫛田中氏の「今やらねばいつできる。わしがやらねば誰がやる」という言葉を引用し、全体のトーンをビシッと引き締めています。