わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問24 1100度で溶けるマット釉の調合

2016-06-05 16:17:45 | 質問、問い合わせ、相談事
上杉様より以下のご質問をお受けしました。

マット釉についての質問です。

1100度で溶けるマット釉薬はどのように調合したらいいのでしょうか? 教えてください。

 ◎ 明窓窯より

基本的には1100℃で熔ける基礎釉(透明釉)を作り、マット化させる為に別の材料を添加します。

もしも、上杉様が1100℃で熔ける基礎釉を、すでにお持ちの場合には、上記と同じになります。

基礎釉は、ご自分で調合する方法と、市販又はお持ちの1100℃で熔ける釉を、使う方法があります。

当然後者の方が、容易で簡単に調合できます。

1) 市販の釉を使う場合。(又は1100℃で熔ける基礎釉をお持ちの場合)

 陶器用の一般の釉は、1180~1250℃程度で使用する事が多いのですが、メーカーによっては

 1000~1150℃で使用できる石灰系透明釉が市販されています。これを使うと便利です。

 ① マット釉には、添加材によって以下の釉などがあります。(概ね、白い釉になります。)

  ) カオリンマット釉

   基礎釉:カオリン = 100:15 (単位はgです。以下同じ。外割り)

    カオリンが増えると、よりマット性が増しますが、粘土質に近づきますので、固い感じの

    釉となります。カオリンの種類によって風合いも変化します。

    カオリンを熔かす為に、合成土灰を入れる場合もあります。

  ) 白マット釉

   基礎釉:マグネサイト = 100:15

    マグネサイトを増やし過ぎると熔け切らずに、結晶を起こし白い斑点と成って現れます。

    マット性を増す為に、天草陶石を添加する場合もあります。

  )チタンマット釉

   基礎釉:酸化チタン = 100:10

    酸化チタンは強力な結晶剤です。白濁してパール状に輝く独特の結晶ですが、表面は艶消し

   (マット)状になります。

   以下の釉を作るには、基礎釉に対しどの程度添加するかは、ご自分で試して下さい。

  ) ジルコンマット釉 

    珪酸ジルコンは強力な乳濁材です。僅かな量で十分です。光沢を無くす為、他の材料を添加

    する必要がある場合が多いです。

  ) スズ(錫)マット釉

  ) タルクマット釉

  ) その他。鳳凰マット釉など   

 ② 白以外のマット釉を作りたい場合には、更に鉄や銅、コバルトなどの金属を数%添加します。

  ) 黒マット釉

   基礎釉:マグネサイト:ベンガラ = 100:20:10 

  ) 緑マット釉

   基礎釉:マグネサイト:酸化銅  = 100:20:7

  ) 青系マット釉には、1%以下の酸化コバルトを添加します。

2) ご自分で基礎釉を作る場合。

 ゼーゲル式から導き出します。かなり難しい計算になりますので、十分覚悟して取り組んで下さい。

 ① 1100℃はゼーゲルコーン(錐)番号で1aに相当します。

   (注:ゼーゲルコーンは、窯中の温度を測定する用具です。一度しか使えません。)

  これは、コーンが軟化した状態を表しますので、釉として使用する為には、更に100℃程度下の

  番号で調合する必要があります。即ち1000℃と成りますで、錐番号では05aに相当する釉と

  しなければ成りません。

 ② 05aの化学組成は以下の様に成ります。

    MgO:CaO:Na2O:K2O:B2O:Al2O3:SiO2

  = 0.257 :0.428 : 0.229 : 0.086 : 0.457 : 0.571 : 3.467(モル=分子量)

   重量換算すると次の様になります。

  = 10.36 : 24.00 : 14.19 : 8.10 : 70.05 : 58.22 : 208.33 (g)

   注: MgO(マグネシウム): 1モルは40.31 (g)

      CaO(カルシウム) : 1モルは56.08 (g)

      Na2O(ナトリウム) :  1モルは61.98 (g)

      K2O(カリウム)   : 1モルは94.20 (g)

      B2O(バリウム=ホウ酸): 1モルは153.3 (g)

      Al2O3(アルミナ)   : 1モルは101.96 (g)

      SiO2(シリカ、珪酸) : 1モルは60.09 (g)

  ③ 釉を作る主な材料。

   ) 福島長石:基礎釉の中心的な素材です。「シリカ成分」を多く含み、主にガラス質を

    形成します。「シリカ成分」を多く含む素材には、天草陶石や、合成藁灰などがあります。

   ) カオリン及びその仲間達(蛙目粘土など):「アルミナ成分」を多く含み、釉に粘りを

    与え、素地との相性を良くします。

   ) 各種灰類及び炭酸バリウム、マグネサイト等: 釉を熔かす「アルカリ成分」を多く

    含む素材です。尚、酸化亜鉛(華)も同じ働きをします。

   以上の素材を使い1100℃の基礎釉を作ります。

尚、福島長石やカオリン、各種灰の成分は単体で構成されている訳では無く混合物ですので、構成

 成分が判っていなければ、計算できません。その為の資料が必要になります。

 この件をここで述べると長くて、膨大に成りますので、上杉様でお探し下さい。必ず見つかるはず

 です。

最後に、以上述べてきた事柄を元に釉を作る場合、実験(試し焼き)を繰り返す必要があります。

以上、、マット釉を完成させて下さい。
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