わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 245 釉薬同士に相性はあるのか2?

2016-06-30 21:29:06 | 素朴な疑問
3) 相性が問題になるのはどうゆう場面か?

 釉は単体で施釉する事を前提にして調合されています。その為、異なる釉同士を重ね合わせると、

 思わぬ結果を招く事もあります。又、基本的には、釉同士を混ぜ合わせて施釉する事はしません。

 ① 厚掛けによる相性の良し悪し。 以上までが前回の話です。

 ② 焼成温度の差のある釉の相性の良し悪し。

  基本的には同じ温度で焼成する釉(ある温度範囲内の釉)を使います。しかし実際には、焼成

  温度にかなりの差がある釉を使う事もあります。

  例えば、1180℃の釉と1230℃の釉を重ね掛けし、1230℃で焼成する場合などです。

  この場合には、1180℃の釉は熔け過ぎる感があり、成分によっては流れ落ちる可能性もあります

  但し、どちらを先に掛けるかによって効果が変わります。即ち、1180℃の釉を下(先)に塗ると

  早く熔ける為、上(後)に塗った釉は素地との密着度が弱くなりますので、釉全体が下に引き

  ずられる事もあります。逆の場合には、下の釉の焼成温度が高い為、表面のみが流れる状態に

  なります。

 ③ 流れ易い釉を重ね掛けする場合、流れ易い釉と流れ難い釉との相性。

  ⅰ) 流れ易い釉同士を重ね掛けすると、両方の釉が混じり合いながら、下に流れ落ち易くなり

   ます。一般には筋状又は波状に流れる場合が多い様ですが、混ざり合った模様は予想不可能な

   模様に成る事もあります。この組み合わせでは、棚板まで釉が流れる恐れがありますので、

   底周辺の施釉は出来るだけ避けるか、底との隙間を多く取っておく必要があります。他の方法

   として、片方又は両方の釉を若干薄く掛ける事です。厚く掛けると流れる量も増えます。

   更に、混じりあった釉の色も単体の場合とは異なります。特に白っぽい釉と他の色の付いた釉

   を重ねる場合、濃い釉の色が本来の色より薄くなり勝ちです。例えば、器の下部に白マット釉

   を上部に黒マット釉を掛けた場合、上部が黒で下部が白になり、両方が掛かった(二重掛け)

   部分はグレーに発色します。又、黄色釉に青磁釉を掛けると、二重にかかった部分が若草色に

   発色する事もあります。

  ⅱ) 流れ易い釉と流れ難い釉の組み合わせでは、流れ難い釉を下に塗り、流れ易い釉を上に

   塗ると安全ですが、逆にすると全体に流れ落ちます。

   流れ難い釉の代表的な物の一つに志野釉があります。この釉は他の釉に対し相性はすこぶる

   悪い様です。下記⑦で述べる様な、色々なトラブルの原因に成りますのでなるべく単体で使う

   事をお勧めします。

  ⅲ) 流動性のある釉には、焼成温度を若干下げるか、寝らし時間を短くして、流れ落ちるのを

   防止すると良いでしょう。

 ④ 色釉の上に透明釉を掛けた場合。

  色釉の一部をマスキングし、その部分に下絵付けを施す事は良く行われています。下絵付けの

  部分には、透明系の釉を掛ける必要がありますので、色釉の一部は二重掛けになります。

  二重掛けした部分と、単色の色釉の部分では焼成で色の変化は余り見られません。場合によって

  は色釉の全体に透明釉を施す方が、施釉の行為が簡単かも知れません。

 ⑤ 光沢のある釉と光沢の無い釉との相性。

  どちらを下に掛けても、二重に掛かった部分には光沢が発生し易いです。即ち、光沢の釉の方が

  優勢になる事が多い様です。

 ⑥ 結晶釉と結晶釉でない釉の二重掛け。

  二重に掛かった部分では、結晶が起きない可能性が大きいです。

 ⑦ 重ね掛けで起こり易い事柄。

  釉の剥がれ、釉の流れ、釉の色の変化等に付いて述べて来ましたが、その他に、釉に「あばた」

  や「気泡」の発生、釉の「煮え」が発生する場合もあります。

  主な発生原因は、釉が均一に熔けず一部の熔け過ぎ(煮え)、熔ける温度に差がある(あばた)

  二重掛けのタイミングの悪さ(気泡)などがあります。

4) 二重掛けの方法と、タイミングに付いて。

以下次回に続きます。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 素朴な疑問 244 釉薬同士に... | トップ | 素朴な疑問 246 釉薬同士に... »

コメントを投稿

素朴な疑問」カテゴリの最新記事