わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸104(坂高麗左衛門2)

2012-04-28 22:58:33 | 現代陶芸と工芸家達
2) 第十二代 坂 高麗左衛門(本名・達雄): 1949年(昭和20) ~ 2004年(平成16) 享年54。

 ① 経歴

  ) 1949年 東京新宿で、ハンドバック等の袋物を作る職人の家に生まれます。

    生家は、陶芸とは無関係であったそうです。

   1976年 東京芸術大学、絵画科日本画専攻卒業後、78年 同大学院、絵画科研究室を修了します。

   1981年 十一代坂高麗左衛門が1月13日に没。

   1982年 十一代坂高麗左衛門の息女、坂素子と結婚し養子となります。

    1983年 京都工業試験場、窯業科陶磁器研修生を修了します。

    1984年 山口県萩市にて作陶を始めます。

    1987年 日本伝統工芸展で初入選を果たします。

    1988年 十二代坂 高麗左衛門を襲名します。

   2004年7月26日 転落事故による脳挫傷のため死去。享年54。

 ② 十二代坂高麗左衛門の陶芸

   坂家の窯場の裏山(唐人山)には、良質の粘土が豊富にあり、白土、赤土、耐火度の高い道具土、

   更には白絵土と種類も多く、初代よりこの土を使用しています。

  ) 蹴り轆轤による成形。電動轆轤では、つまらない作品に成ってしまう為、蹴り轆轤を使って

     いるとの事です。尚、芯が少しずれている蹴り轆轤では、微妙な歪みも出て面白味のある

     作品になるそうです。

  ) 手捻りによる成形。抹茶茶碗も手捻りで成形しています。

    a) 土は白土に1~3割の赤土と1割の砂を混ぜて合わせ、鉄分のある土にしています。

    b) 作り方は、両手で挟み、叩いて円盤状にした土を、手轆轤の上に据えて、縁を起こして

      形を作ります。「萩の土はくっ付き難いので、紐造りには向いていません。」

      手轆轤を少しづつ回転させながら、縁を寄せ合わせて、摘み上げて高くします。

      口縁を切揃え、指で摘みながら外側に反らし端反にします。

      「口の形は、口の下の厚みを整えると、自然に決ってきます」と述べています。

    c) 削り作業。高台脇や内側を削り整形しますので、やや厚くしておきます。

      松の木の箆(へら)で胴から腰にかけて軽く土を削ぎます。底の角は丹念に面取りします。

      場合によっては、深く削ぎ落としたり、櫛目を入れる事もあります。

      高台の種類は、輪高台、切高台、割高台、十字高台、桜高台、三割(みつわり)高台など

      色々ありますが、内側(見込み)の形によって決るそうです。

  ) 轆轤と手捻りを組み合わせた作品。従来の轆轤のみによる成形から、手捻りの部品を

     取り付け、独特で複雑な形の花入を造っています。

  ) 焼成は登窯(四間)で行っています。時間は一昼夜以上かかるそうです。

     坂窯では、窯詰は天秤積で行っているそうです。即ち「プロペラ」とか「三枚羽」と呼ばれる

     円盤の上に作品を載せます。口の広い作品は、重ね焼きをしています。(茶碗等では三段重ね)

  ) 彼の作品の特徴として、大皿などに金彩や銀彩を取り入れている事です。

     これは、従来の萩焼きには見られない現象です。彼が若い頃京都で絵画や陶芸(京焼)を

     学んだ影響と思われています。

3) 十三代高麗左衛門

   十二代が不慮の事故死により、伝統の名跡を名乗る当主は、約7年間不在でした。

   しかし、2011年4月に十一代の四女純子さん(59)(十二代の義妹)が十三代高麗左衛門を

   襲名することになります。

  ① 経歴

   十三代は、武蔵野美術大学、造形学部日本画専攻を卒業後、十二代の絵付けアシスタントを続けて

    いました。十二代の死去後、坂高麗左衛門窯代表となり、襲名を視野に本格的に萩焼の道に入り、

    絵付けの鉢や野だて用「替え茶碗」「湯飲み茶碗」「ぐい呑み」などを制作しながら、

    修業を重ねています。長男の悠太さん(23)も2011年 京都市窯業試験場で研修しています。

    2012年には、将来の後継者(十四代)として、親子で窯の火を守る事になると思われます。

次回(坂倉新兵衛)に続きます。
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