わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

新釉の話32 自分で釉を作る1 釉の三要素1

2013-09-05 14:33:49 | 新釉(薬)の話

市販の釉でなく、自分で調合したオリジナルな釉を使う事は、焼き物を行っている人にとっては、

理想的な事です。しかし、初心者にとって、どの様に調合したら良いかは中々難しい事です。

又、理論通りに調合しても、現実には望む様な釉が出来ない場合の方が多いです。

それは、釉だけを考えても、解決しない事が多いからです。窯の大きさや窯の構造、燃料の種類、

焼成温度、焼成時間、焼成の雰囲気など、多方面の事柄が関係して来る為です。

但し、ここでは、釉以外の要素をなるべく少なく考慮し、話を進めたいと思っています。

釉を調合するに当たり、以下の様な調合方法があります。

1) 三角座標による釉の調合。

2) アルミナ(Al2O3)ーシリカ(SiO2)状態図による釉の調合。

3) ゼーゲル式より、導き出した釉の調合。

4) その他の方法による調合。

   雑誌や陶芸の本、釉の参考資料などに記載されている釉の調合例(レシピ)を参考にした、

   独自の調合。

この様な事を中心に述べる予定ですが、その前に、釉に対する基本的事項に付いて述べます。

1) 釉の三要素について。

   釉はガラス質である事は度々述べてきました。それ故、釉の三要素とは、① ガラス本体を作る

   物質、② 熔ける温度を下げる物質、③ ガラスを安定化させる物質を言います。 

   具体的には以下の様になります。尚、やや専門的な化学の話が含まれますが、必要に

   応じて読み飛ばして下さい。

  ① ガラス本体を作る物質。それは、二酸化珪素(珪酸、SiO2)です。

     地球上で一番多い物質が珪酸(シリカ)で、土や岩石の主成分です。

     珪石には90%以上(理想的には99%以上が望ましい)の珪酸が含まれ、主な供給源に

     成ります。

    ) 珪石の融点は1685℃で、結晶が壊れてガラス化すると言われています。

       常温での珪石は網目構造を持ち、融点も高く安定した状態に成っています。

    ) 二酸化珪素(珪酸、SiO2)には次の様な性質があります。

      a) 釉の熔ける温度を上げる。但し、媒熔剤(後で述べます)を加える事で、温度を下げる

         事が出来ます。

      b) 熱膨張係数が小さく(伸び縮みが少ない)、添加する事で、貫入を減らします。

      c) 機械的、化学的(酸、アルカリなど)な強度を増します。

     ) 珪酸を含む物質に、「長石」や「タルク」がありますが、単独では使用せず、必ず珪石と

        一緒に使います。

   ② 熔ける温度を下げる物質、それは、アルカリ元素(RO2)とアルカリ土類元素(RO)です。

     尚、熔かすとは、二酸化珪素の網目構造の紐を断ち切る事によって、結晶を壊す事です。

    ) アルカリ元素(RO2)とは、原子の周期律表の「ⅠーA族」に属す、リチウム(Li)、

       ナトリウム(Na)、カリウム(K)の三種類です。実際にはその酸化物として存在します。

       即ち、酸化リチウム(LiO2)、酸化ナトリウム(NaO2)、酸化カリウム(KO2)で、酸化鉛

       (なまり)に次いで、最も強い媒熔剤です。

     ) アルカリ土類元素(RO)とは、周期律表の「ⅡーA族]と「ⅡーB族」に属する元素です。

        即ち、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、

        亜鉛(Zn)の五種類で、実際にはその酸化物、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOを使い

        ます。

      ) その他の元素として、酸化鉛(PbO)、や酸化硼素(B2O3)がありますが、鉛は

         有毒な為、現時あではほとんど使う事はありません。

      ) 個々の元素の働きや性質を述べます。

以下次回に続きます。     

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新釉の話31 混ぜて作る釉... | トップ | 新釉の話33 自分で釉を作... »

コメントを投稿

新釉(薬)の話」カテゴリの最新記事