市販の釉でなく、自分で調合したオリジナルな釉を使う事は、焼き物を行っている人にとっては、
理想的な事です。しかし、初心者にとって、どの様に調合したら良いかは中々難しい事です。
又、理論通りに調合しても、現実には望む様な釉が出来ない場合の方が多いです。
それは、釉だけを考えても、解決しない事が多いからです。窯の大きさや窯の構造、燃料の種類、
焼成温度、焼成時間、焼成の雰囲気など、多方面の事柄が関係して来る為です。
但し、ここでは、釉以外の要素をなるべく少なく考慮し、話を進めたいと思っています。
釉を調合するに当たり、以下の様な調合方法があります。
1) 三角座標による釉の調合。
2) アルミナ(Al2O3)ーシリカ(SiO2)状態図による釉の調合。
3) ゼーゲル式より、導き出した釉の調合。
4) その他の方法による調合。
雑誌や陶芸の本、釉の参考資料などに記載されている釉の調合例(レシピ)を参考にした、
独自の調合。
この様な事を中心に述べる予定ですが、その前に、釉に対する基本的事項に付いて述べます。
1) 釉の三要素について。
釉はガラス質である事は度々述べてきました。それ故、釉の三要素とは、① ガラス本体を作る
物質、② 熔ける温度を下げる物質、③ ガラスを安定化させる物質を言います。
具体的には以下の様になります。尚、やや専門的な化学の話が含まれますが、必要に
応じて読み飛ばして下さい。
① ガラス本体を作る物質。それは、二酸化珪素(珪酸、SiO2)です。
地球上で一番多い物質が珪酸(シリカ)で、土や岩石の主成分です。
珪石には90%以上(理想的には99%以上が望ましい)の珪酸が含まれ、主な供給源に
成ります。
) 珪石の融点は1685℃で、結晶が壊れてガラス化すると言われています。
常温での珪石は網目構造を持ち、融点も高く安定した状態に成っています。
) 二酸化珪素(珪酸、SiO2)には次の様な性質があります。
a) 釉の熔ける温度を上げる。但し、媒熔剤(後で述べます)を加える事で、温度を下げる
事が出来ます。
b) 熱膨張係数が小さく(伸び縮みが少ない)、添加する事で、貫入を減らします。
c) 機械的、化学的(酸、アルカリなど)な強度を増します。
) 珪酸を含む物質に、「長石」や「タルク」がありますが、単独では使用せず、必ず珪石と
一緒に使います。
② 熔ける温度を下げる物質、それは、アルカリ元素(RO2)とアルカリ土類元素(RO)です。
尚、熔かすとは、二酸化珪素の網目構造の紐を断ち切る事によって、結晶を壊す事です。
) アルカリ元素(RO2)とは、原子の周期律表の「ⅠーA族」に属す、リチウム(Li)、
ナトリウム(Na)、カリウム(K)の三種類です。実際にはその酸化物として存在します。
即ち、酸化リチウム(LiO2)、酸化ナトリウム(NaO2)、酸化カリウム(KO2)で、酸化鉛
(なまり)に次いで、最も強い媒熔剤です。
) アルカリ土類元素(RO)とは、周期律表の「ⅡーA族]と「ⅡーB族」に属する元素です。
即ち、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、
亜鉛(Zn)の五種類で、実際にはその酸化物、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOを使い
ます。
) その他の元素として、酸化鉛(PbO)、や酸化硼素(B2O3)がありますが、鉛は
有毒な為、現時あではほとんど使う事はありません。
) 個々の元素の働きや性質を述べます。
以下次回に続きます。
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