わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
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窯焚き一生5(窯焚きの問題点3)

2011-07-03 21:13:22 | 窯詰め、素焼、本焼の話し
窯焚き一生の話を続けます。

5) 窯の雰囲気を所定の状態にする

 ① 雰囲気には、酸化焔、中性焔、還元焔があります。素焼きの場合は、必ず酸化焔で焼成します。

   (さもないと、素焼き素地に炭素分が入り込み、煤(すす)が付いた感じに成ります。

    但し本焼きすれば、炭素分は、燃えて無くなってしまいますので、気にする必要はありませんが、

    絵付けの際には、色がしっかり出ません。)

 ② 本焼きでは、酸化焼成~還元(又は、酸化)焼成~酸化焼成と成ります。

   還元を掛ける温度範囲は、人により、窯の状態によって、差がありますが、950℃~1200℃

   程度が多いです。早めに還元を掛けると、煤やタール分が釉や、素地に入り込み、焼き上がりが、

   綺麗では有りません。煤が残らない状態を、「煤切れ」と呼びます。

   1200℃以上に成ると、釉は熔けて表面を覆い、還元にしても、炭素分は中に入れませんので、

   還元の意味を成しませんので、酸化焼成し、窯の中の炭素分を、完全に燃焼させてしまいます。

  ) 粘土物質や釉の原料に成る長石等が、ガラス化する温度は、980℃近辺からと、言われて

    います。基本的には、還元に入る時期は、釉が熔けてからにしますが、やや早めの方が、

    良い結果が出る様です。

 ③ 還元焼成(焔)とは

   窯に十分空気を送り込まず、酸素が不足している状態にします。

   酸素不足になると、窯内に一酸化炭素や炭化水素のガスが発生します。

   これらのガスは、酸素と結合し易く、窯内の酸素と結合し、炭酸ガス(二酸化炭素)と成りますが、

   窯内に酸素が無い場合には、釉中の酸化金属化合物から、酸素を奪います。

  ) 釉中の金属化合物は、元素の金属まで戻ってしまいます。

    即ち、酸化第二鉄(弁柄、赤錆など)は、酸化第一鉄に成り、酸化第二銅(黒色酸化銅)は、

    酸化第一銅(赤色酸化銅)に成ります。

  ) 無釉の場合(備前焼などの、焼き締め)

    酸化焼成では、素地中の鉄は、酸化第二鉄と成り、赤褐色に焼き上がります。

    還元焼成では、素地中の酸化第二鉄は、青色の酸化第一鉄や三二酸化鉄(黒色)に成りますので、

    青黒く焼き上がります。(青備前)

  ) 強還元焼成にするには、二重匣鉢(さや)を使う方法が有ります。

     穴の開いた内側の、匣鉢に作品を入れ、外側の匣鉢との間に、炭を入れ全体を密閉します。

     勿論、匣鉢を二重にせず、直接作品と炭を入れる方法も有りますが、灰が作品にくっ付く事も

     有りますので、注意が必要です。

  ) 一つの作品の一部分のみに、還元を掛ける方法

     鉄は銅よりも、酸素結合が強いです。即ち、釉中に酸化第一鉄と、酸化第二銅が混在すると、

     酸化第一鉄は第二銅より酸素を奪い、第二鉄(茶褐色)に、第二銅は赤い第一銅に成ります。

    即ち、赤い辰砂を作品に出したい時は、、素地の一部に酸化し易い物(第一鉄や、三二鉄など)を

    塗り、その上に第二銅を重ね塗りすると、重ね塗りした所だけに、赤い模様を出す事が出来ます。


◎ 以上は、理論的な事ですが、小生の今一番の関心事は、一つの窯で、どうしたら酸化と還元の両方が

 焼成できないかと言う事です。

 一般には、酸化焼成と還元焼成は別々に、窯を焚きます。酸化用、還元用と別々にするには、窯が

 大き過ぎて、直ぐにには一杯にならず、窯を焚く間隔が伸びてしまいます。そこで、両方一度に焼成

 出来る方法を模索している次第です。この件については、後日述べる予定です。

以下次回に続きます。

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