わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸44(宮之原謙)

2012-02-11 17:30:06 | 現代陶芸と工芸家達
昭和の初期に板谷波山を中心に結成された陶芸の団体に、「東陶会」があります。

関東地方の個人で活動する陶芸家達の、親睦を目的に結成されました。

やがて、板谷波山が、帝展第四部美術工芸部の審査委員であった為、東陶会の活動は活発化し、

第一回の作品発表会が、1927年(昭和2)日本橋三越で開催されます。この時の参加人数は25名でした。

以後この展示会は、人数を増やしながら、1962年頃(波山死亡)まで続きます。

1939年(昭和14)に一時解散宣言がなされますが、それ以降も会は活動を続けます。

終戦、後帝展は「日展」として再出発をはかります。その組織の中には、板谷波山を筆頭に、評議委員

会員、審査員などに多くの東陶会の会員が名を連ねていました。

その為、毎年公募展を行う東陶会に入選する事が、「日展」入選への近道であるとさえ言われていました。

この東陶会を代表する作家に、宮之原謙と次回取り上げる、安原喜明がいます。

1) 宮之原謙(みやのはら けん): 1898年(明治31) ~ 1977年(昭和52)

  ① 経歴

   ) 鹿児島県鷹師町市に、宮之原軍吉の次男として生まれます。七歳の頃上京します。

      生家は焼き物とは無関係であった様です。

   ) 1916年 早稲田大学理工学部建築科に入学しますが、病で中退を余儀なくされます。

      1926年 健康回復の為、父の勧めで東陶会の顧問であった、二代目宮川香山に陶芸を学び、

      東陶会の結成に参加します。 尚、香山没後には、板谷波山に師事します。

      東京大崎長者丸の自宅に、自己流の窯を築き本格的な、陶芸の一歩を踏み出します。

      出発は29歳の春でした。その後東京蒲田に工房を建てますが、戦災で消失してしまいます。

   ) 1929年 第10回帝展で「赤鉄結晶竹文壷」で初入選します。第12回「銀河陶製照明」、

      13回「磁器象嵌十文字花」と続けて特選を果たします。

      1938年の第一回文展(帝展を改称)で審査委員を務め、以降歴任します。

   ) 戦後の1946年 茨城県筑波山麓に築窯し、1948年には千葉県松戸市に移築します。

      以降、日展を活躍の場として、作品発表し続けます。

      日展で評議員、参事、理事を歴任し、波山没後は長く東陶会の会長も勤めています。

  ② 宮之原謙の陶芸

   ) 彩磁(さいじ): この技法は、師の板谷波山の創始ですが、波山とは異なる技法を

      採っています。

    a) 顔料や酸化金属を添加した色素地の泥(ノタ)を、何度も薄く塗り重ねて、文様を描く

      技法です。

    b) 波山の方法は、完全に乾燥した生素地に文様を彫込み、素焼き後に彩色し釉を掛けて

      焼成しています。一方宮之原氏は、生素地の上に「ノタ」を塗り重ねて、文様を浮き

      立たせています。

   ) 釉象嵌: 象嵌には素地に文様を彫込み、異なる色土を埋め込む方法と、施釉した一部を

      文様に沿って削り取り、他の釉を埋め込む釉象嵌の技法があります。

    a) 宮之原氏は主に、より困難な釉象嵌を行っています。

      異なる釉の粘度、収縮率、溶融点などの条件が揃わなければ、模様が混ざり合ったりして、

      失敗作と成ります。素焼き後、マット釉や透明釉を掛け、更にその上にマット釉を薄く

      吹き掛けています。

      代表作は「象嵌地黒釉花瓶・空」(1956年 日本芸術院賞受賞作品)

      「黒釉象嵌磁泰山木文花瓶」(鹿児島市立美術館)などがあります。

  ) 古代釉: 結晶釉、赤鉄結晶釉、天目朱釉、窯変化釉など多彩で、主に木灰と「酸化チタン」や

     「ルチール」などを使用している様です。

     代表作品は、「結晶釉牡丹彫文花瓶」(1938年 東京国立博物館)、「天目朱獅子手付花瓶」

     (1966年 鹿児島市立美術館)などが有ります。

  ) 作品の種類は縦長の花瓶や、大皿など広い面積が取れる作品が多いです。

     施された文様は、伝統的な花鳥の他、サボテン:「象嵌サボテン壷」、海女:「彩盛磁海女壷」や

     スポーツに興じる人々:「釉彩象嵌磁スポーツ壷」、パラボナアンテナ:「金彩磁象嵌パラボラ

     大皿・宇宙への交信」など実に多彩で、現代的な感覚に溢(あふ)れています。

次回(安原喜明)に続きます。
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1 コメント

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宮之原謙の記事を拝見 (川那辺博一)
2021-06-17 15:06:18
こんにちは、古い記事を拝見しました。実は宮之原謙さんのちょっと変わったお茶碗を所持していまして箱書きから昭和36年のお正月に松戸市のかまに来て絵付けをされた方なんですが、もしご存知ならご指導願います。URLも添付させて頂きますhttps://www.facebook.com/photo?fbid=3000104223554362&set=gm.1485295105139457よろしく願います。
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