「土」以外の「石」や「金属」も「土」同様に焼成し、用を無視した「オブジェ的作品」を製作している人に、
千葉県在住の西村陽平氏がいます。
一般に陶芸家と呼ぶより、美術家、造形家と呼ぶ方が、最適かも知れません。
1) 西村 陽平(にしむら ようへい): 1947年(昭和22年) ~
① 経歴
1973年 東京教育大学教育学部芸術学科の彫塑専攻を卒業します。
1974年 千葉県立千葉盲学校 教諭 (1998年まで)
1975年 「第三回日本陶芸展」に初入選を果たし、翌年には同展で「外務大臣賞」を受賞します。
1980年 初の個展を「ギャラリー西方」など東京、大阪で開催しています。
1986年 「86八木一夫賞現代陶芸展」で優秀賞を受賞します。
1989年 ユーロパリア89日本『現代日本陶芸展』に出品します。(モンス市立美術館)。
1993年 「現代の陶芸1950-1990」(愛知県立美術館)に出品します
2003年 「大地の芸術クレイワーク新世紀」(国立国際美術館)に出品します。
② 西村氏の陶芸
) 見えないものを引き出すのが美術家の役目。
彼の作品の原動力になっているのは、千葉県立盲学校で教鞭をとった事が大きな影響を与えて
いると思われます。即ち、光を失った子、光に弱い子達こそ物の本質を見ているのでは
ないか、物が見える美術家は表面的に見える部分だけでなく、その内側に内蔵する見えない
ものを引き出すべき役目があると考えます。そして日常見慣れた物も大きく変容する事を
我々に示しています。
) 金属と土の作品: 初期の作品は、「伝道の書」「独逸浪漫主義」の連作です。
鉛や鉄板を粘土板に載せて、500℃、700℃、1200℃など、温度を変化さて焼成し、その変容を
示した作品です。鉛は低い温度でも熔け、やがて「ちじれ」を起こし、終には真白な灰と化します。
鉄板は高温に成るに従い、錆びが発生し、鉛と一体となって、陶土の上に展開されます。
これを透明なアクリル箱に収め展示する作品です。
・ 「伝道の書Ⅱー白熱の中の崩壊」(高 33.5 X 横 33 X 奥行 33cm)(1975年)
・ 「独逸浪漫主義修道士 FRANZISKUS SHIRASHIに捧ぐ」:東京都美術館
(高 14 X 横 38 X 奥行 45 cm)(1975年)
・ 「ペンチA・B」(高 7.5 X 横 27.2 X 奥行 22.4 cm)(1980年)
・ 「MIRRORS AND SHSRDOW-DATSUN BLUEBIRD」(1980年)
ミニチュアの自動車の内部に土を詰めて焼成した作品です。
) 紙と土、木と土の作品
a) 信楽の土を泥状にし、刷毛で紙(雑誌)の一頁一頁に塗って焼き上げた作品や、新聞紙に
泥を塗って焼成した作品です。新聞紙や雑誌の頁は、「ちじれ」ながらも、原型を留めています。
作品としては「The Japanese Library」と題する作品があります。
b) 樹木を新聞紙に包んで焼くと、新聞紙に塗られた泥は原型のまま残り、樹木は炭化します。
・ 「燃えない木」(高 19.5 X 横 31.7 X 奥行 20 cm)(1983年)
) 石と土の作品=「変換シリーズ」
道端で拾った石ころを、コーヒーカップの中に入れて焼成すると、土はぶくぶくと膨張し、カップを
壊しながら、チョコレート色になり大きく変容します。
たとえ堅固な石であっても、その源は地球内部から噴出した、溶岩である事を暗示させて
います。それは、我々が日常目にする多くの物質を素材とし、それを「焼く」ことで変容させて
我々の常識を覆させている作品です。
・ 「変換装置・石の変容」(高 70 X 横 77 X 奥行 88 cm)(1982年):東京都美術館
以下次回に続きます。
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