ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

これぞまさしく姑根性、なのか?

2010年11月14日 | 家族とわたし
昨夜、Rukkoちゃん一家に会いにミツワに向かっている途中、息子の拓人から電話がかかってきた。
珍しいこともあるもんだ。
「かあさん、今日帰ろっかな~」
「へ?」
「今日の食いもんなに?」
「食いもんって……今わたしはビルとミツワに向かってドライブ中~」
「えっ?!」
「なので、今日の食いもんはミツワのフードコート!おほほっ!」
「おほほって……」
「いきなりなによ?なんか食べとうなったん?」
「え、うん、まあ」

電話の向こうの息子の横に、誰か居る気配。しかも、これは多分女の子。彼の盛り上がり方でわかる。

「ま、そういうことで、わたしは今夜はな~んも作らへんけど、冷蔵庫の中に食べもんはいっぱいあるから適当にしたら?」と言って電話を切った。

Rukkoちゃん一家と楽しく会食して、買い物もして、高速に乗った途端、「ブルーのホンダアコードを見つけたら911って」と旦那がブツブツつぶやくではないか?!
なんのこっちゃと思い質問すると、なにやら電光掲示板にそう書かれてあったらしく、「誘拐か爆弾テロかな……」と、さらに恐ろしいことを言うので、ナンバーもわからないので見ても仕方が無いのに、目は黒っぽい色のホンダの車を追いかけてしまう。
そして家に着くと……ぎょえっ!あれってあれって、のホンダちゃうん?!
家の目の前に停められてある車にソロソロと近寄り、それからおもむろに、けれどもいつもよりも慎重に、ドアのキーを開けようとする旦那。ドキドキ……。
「ただいまぁ~」「あ、おかえりぃ~」「???」
なんのこっちゃない、拓人が友人の女の子の車(ホンダのアコードではなくシビックでした、ハハハ)に乗っけてもらって帰ってきていた。
なにやら美味しそうな匂いがプンプン漂っている。牛丼?
「なんで牛丼やねん?!ビーフシチューやっちゅうねん!」


うちの息子達はどちらも、ガールフレンドをうちに連れてきては、腕をふるって料理を作る。
それはとってもいいことだと思う。そういうふうな男になって欲しいと思い、いろいろと教えたりもした。

けれども気になるというか、なんかひっかかることがふたつ、ある。

まずひとつめは、初対面の日に、自分のことを一切紹介しようとしないこと。
「こんにちわ」とか「お邪魔してます」とかは言う。言わない時もある。けれども、「はじめまして、わたしは◯◯といいます」とは決して言わない。
なので、名前を知るにはまず、息子達がその子の名前を呼ぶのを聞く。
そういうのをいかがなものか?と、以前息子達に聞いたことがあった。
すると、彼らは一様に、「シャイやから」と言う。ふむ……恥ずかしがり屋さんね……。
中には、顔も見せたくないほどの極度の恥ずかしがり屋さんもいた。その子は、数回家にやって来た後に、やっと挨拶してくれた。

そしてふたつめは、これは多分、本当に余計なお世話なのかもしれないが、
うちに来て、彼らの好きな物を作って食べる際、椅子に座ったままビクとも動かず、おしゃべりしながら料理が出来上がるのを待ち、食べ、そして自分が食べた食器すらも片付けない。
全部息子達なのである。
そういう約束になっているのか、その夜はたまたま順番だったのか、とにかくお姫様のように、与えられた食べ物を食べ、そして部屋から出て行く。
そのことについても、やはり尋ねてみたことがあった。
「あのさあ、なんで手伝わへんのかなあ~って思うこと自体が古いんちゃう?」は恭平。
「別にええやん」は拓人。
ふむ……働いてるあんたらがそれでええのなら別にええんやろな。


やっぱりこれって、思いっきりの姑根性なんだろうか?
わたしの中の常識が、もうこの現代には通用しないんだろうか?
それとも、彼らのことがなんだかスッと受け入れられないのは、単にわたしが、思い込みのメルヘンの世界に暮らしているからか?

拓人はクイーンズのアパートに戻る直前に、台所を8割方片付けていった。
今日こそは、来週1週間分ぐらいのおかずを作りだめしておこうと張り切って台所に入り、洗い終わった食器を棚に収めようとしたら、ゲッ!めちゃギトギトやん!
適当洗いをしたらしく、脂汚れが取れないままの食器が山積み……。
ため息を一つついて、洗い直しをし、それからガスコンロの周りのギトギトも拭き取り、あちこちの掃除をした。

料理をしている間も、料理をし終わった後も、台所周りはきれいでないとだめ!
これは父から何度も何度も教えられたこと。実際に父は、調理と片づけが同時に終わるのを何回もして見せてくれた。
なのでわたしの脳みその中には、その教えがしっかり入り込んでいて、だから料理を作る時も、できるだけ周りをすっきりさせてから始めたいと思ってしまう。
でも、そういうことこそ、わたしの勝手なので、それを人に押し付けようとは思っていない。人は人、わたしはわたしなのだから。
なんてえらっそうに語ってはいるが、実は旦那と暮らし始めた頃、このことで何度も何度も言い合いをした。
 
『やり方の違いは、人の数だけある』
『仕事を分け合ってやりたいのなら、その人のやり方も尊重しなければならない』

最初の結婚で、全くそれまでと違う習慣のルツボの中に飛び込んで、散々学んできたはずのことだったけれど、今度こそは自分の好きなように、などという自我が、抑え込んできた分ムクムクと噴き出してきたのだろう。
再びの精神修行……が始まり、今だにわたしは修行中……やれやれ……。

こういう、なんでもなさそうな日常の心の有り様を学ぶことは、学校の勉強よりはるかに難しいもんなんだなあ。


それでもなあ……なんだかモヤモヤな日曜日なのであった。


*おまけ

例のホンダアコードの件ですが、旦那が家に戻ってすぐに地元のニュース局で調べたところ、認知症のお年寄りがその車に乗って家から出てしまった、ということで、その人を探し出すための電光掲示板なのでした。
誘拐でも爆弾でもなく、ホッとしました。そのご家族にとってはホッとするどころのことではないのですが……。
そして、旦那は思いっきり見落としていましたが、その掲示板にはちゃんと、車のナンバーも載っていたようです。
しかも色は青ではなくてシルバー……一台途中で青のホンダを見っけたのですが、通報しなくて良かった……いやはや……。