天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

ネット板所感10(子供向でも司馬遼太郎著『二十一世紀に生きる君たちへ』大人の鑑賞に耐える名著有り)

2010-02-02 21:58:07 | 日記
今日の日記は、ネット掲示板に投稿された書き込みに対して、私が衷心より反論と所感を述べます。以下に、その投稿を掲載します。
・客A『お前らみんな大局観がないな。一流大学を出て一流企業に勤務してるおやじと人前でXXX晒して金を稼いでいた○○○とでは、おやじの方が正しいに決まっているだろ。それが世間というものだ!それに○○○は宇宙工学を勉強しているって言ってたが、実際のところは子供向けの「宇宙の不思議」を読んでいただけだったしな(笑)』
・客B『子供向けから読んでたなんて、ますます聡明さが。新しいことを学ぶ時には、司馬りょうたろうも、そうしてたらしいよ。』
投稿客Aは、子供向け書籍を何も知らずその価値をまったく否定しています。でも、その書籍の中には、大人の読者の鑑賞にも耐える名著が多々存在しています。また、投稿客Bが語った司馬遼太郎氏の子供向けの読書癖は、とても信じられない珍説です。逆に、そのようなことをせず司馬遼太郎氏は、子供向けエッセイ『二十一世紀に生きる君たちへ』(小学校教科書:『小学国語』(6年生下)大阪書籍刊)を1989年に執筆しています。私は、この名著『二十一世紀に生きる君たちへ』を一部抜粋し、客A・Bにその間違った見解を直してもらうため長文になりますが、以下に捧げます。
『私は歴史小説を書いてきた。もともと歴史が好きなのである。両親を愛するようにして、歴史を愛している。「歴史とは何でしょう」と聞かれるとき、「それは、大きな世界です。かつて存在した何億という人生がそこにつめこまれている世界なのです。」と答えることにしている。私には、幸いこの世にたくさんのすばらしい友人がいる。歴史の中にもいる。そこには、この世では求めがたいほどにすばらしい人たちがいて、私の日常を、はげましたり、なぐさめたりしてくれているのである。だから、私は少なくとも2千年以上の時間の中を、生きているようなものだと思っている。この楽しさは、もし君たちさえそう望むなら、おすそ分けしてあげたいほどである。・・・君たちは、いつの時代でもそうであったように、自己を確立せねばならない。「自分に厳しく、相手にはやさしく」という自己を。そして、すなおでかしこい自己を。21世紀においては、特にそのことが重要である。21世紀にあっては、科学と技術がもっと発達するだろう。科学・技術がこう水のように人間をのみこんでしまってはならない。川の水を正しく流すように、君たちのしっかりした自己が科学と技術を支配し、よい方向に持っていってほしいのである。右において、私は「自己」ということをしきりに言った。自己といっても、自己中心におちいってはならない。人間は、助け合って生きているのである。私は、人という文字を見るとき、しばしば感動する。斜めの画がたがいに支え合って、構成されているのである。そのことでも分かるように、人間は、社会をつくって生きている。社会とは、支え合う仕組みということである。・・・「いたわり」「他人の痛みを感じること」「やさしさ」みな似たような言葉である。この三つの言葉は、もともと一つの根から出ているのである。根といっても、本能ではない。だから、私たちは訓練をしてそれを身につけねばならないのである。その訓練とは、簡単なことである。例えば、友達がころぶ。ああ痛かったろうな、と感じる気持ちを、その都度自分中でつくりあげていきさえすればいい。この根っこの感情が、自己の中でしっかり根づいていけば、他民族へのいたわりという気持ちもわき出てくる。君たちさえ、そういう自己をつくっていけば、二十一世紀は人類が仲よしで暮らせる時代になるのにちがいない。鎌倉時代の武士たちは、「たのもしさ」ということを、たいせつにしてきた。人間は、いつの時代でもたのもしい人格を持たねばならない。人間というのは、男女とも、たのもしくない人格にみりょくを感じないのである。・・・以上のことは、いつの時代になっても、人間が生きていくうえで、欠かすことができない心がまえというものである。君たち。君たちはつねに晴れあがった空のように、たかだかとした心を持たねばならない。同時に、ずっしりとたくましい足どりで、大地をふみしめつつ歩かねばならない。私は、君たちの心の中の最も美しいものを見続けながら、以上のことを書いた。書き終わって、君たちの未来が、真夏の太陽のようにかがやいているように感じた。』
この名著は、子供たちだけでなく、21世紀に生きるすべての大人の私たちに対する、司馬さんからの衷心よりの遺言でもあります。
コメント
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