スピリチャルTIMES 「とにかく生きてみる!」

スピリチャルTIMESの編集長北村洋一が、この不確定な社会に生きている人々の喜怒哀楽をレポートする。

深夜バイトの金環日食どたばた狂想曲はハートウオーム。  5/108

2012年05月21日 | 自分的エッセー

今日も深夜バイトだった。毎日毎日おんなじことを繰り返す日々である。
それでも、季節が変ったり、祝日などのカレンダーの旗日などで、微妙な時の動きを感じる時がある。箱の中にいる私たちは年がら年中同じ事を繰り返しているのに、ありがたいことにその微妙な変化が、私のささやかなモチベーションになっている。

本日は、日本全国で日食フィバーが起こったはずだ。また日食の時間帯が深夜バイトの終わり際ということで、ほんのちょっとだけ冷蔵庫の端で話題になっていた。
6時50分ころから、配達の運転手さんも荷物を取りに来て、やれやれの雰囲気も流れ、6時に上がる主婦のパートさんも帰っていき職場は、ベテランレギラー陣で後片付けに入ろうとしていた。
数人のパートさんが「もうすぐ始まるで・・・・」と言う。
駐車場から上ってきた運転手さんも、「ちょっとづつ太陽が欠けてきてるで・・・」と一報を入れてくれる。
職場には窓があるのだが、深夜からの夜間飛行の為、朝の景色を感じると急に眠たくなったり、疲れがドットでてくるので、深夜バイトドラキュラ達ちのために、スクリーンで陽が入って来づらくしてある。
「誰か・・・日食ようのめがね持ってきた?・・」とたずねる。
ある人は、「買ったけど忘れてきたわ・・」と間抜けな返事。
「ローソンに行ったらまだ売ってるかも・・」とか
「直接見たら目がつぶれるは・・」とか・・ 気合はまったく入っていない様子である。
それでもスクリーンを開けてると窓のやや上にはなにやら、もぞもぞしている太陽が雲と一緒にみえる。「誰もネガネもってへんのか・・」と再度聞くが、誰もそんな準備などしていない。
しかし・・・そこからが狂騒の始まりである。朝のテンションの高は一般の方とは雲泥の差がある、市場野郎達だ。
まずは黒いゴミのビニールを切って窓にはった。
太陽に目は向けれるけど、輪郭というかデティールがはっきりしない。
それでも何人かのパートさんはその場で金環を探している。
次に、めがねに黒マジックを塗った秘密兵器が持ち込まれた。
塗りが薄く太陽が目に痛いということになった。
それでもなじみのパートさん達は回し掛けをして世紀の天体ショーを見ようと必死になった。
いよいよ作業中断になった。
日食を見るというより、そこらへんにある物でボケることに注目が移った。
玉ねぎの薄皮で挑む者や、ペットボトルにコヒーをいれてそれを底から見る者も現れて、一時は物ボケ合戦になった。
そこに救世子が現れた。配送のおじさんである。おもむろにやってきて、静かに日食用のメガネを出した。
「すごいやん・・・●●さん」と美辞賛辞のあめあられに包まれる。普段目立たない人だけにその時の人気はスマップばりである。おばさん?パートレディーの黄色い声と共に、そのメガネはたちまち
パートさん達の手に渡り、西の空に輝く太陽の天体ショーを見ることに拉致された。
そこに・・・この職場のキャプテンであり、冷蔵庫の主の大御所が登場した。
私がここまで深夜バイトを続けているのも、このご婦人を尊敬しているからである。
口はそこそこ辛口であるが、本当によく働くのである。かってこれほどは見たことがないのである。
そのキャプテンが、それを取りあげて太陽を見た。
「ほに・・:・¥:;@」
「環になった・・」と感激をもらしたいなや、「3階の子らにも見せたらなあかん・・」といってそれをもって階段を駆け上がっていった。
そして3階のメンバーと共に戻ってくるなり・・その場で仕切り始めた。
「はい・・●原さん、次美●ちゃん、瑠●さんはまだやろ・・はよ見や・・」
「小●さん見たか?はよ・・・おいで、北やん(私のこと)まだやろ・・見てみ・・」
「ちょっと北やんにも見せたって・・」と強引な仕切りが続く。
そして、「まだ・・見てない人・・」と言って声を張る。
そのへんからこそこそと話し声と共に笑い声が聞こえる。
肝心のそメガネの持ち主さんがまだ一回も金環をみていないのである。
そして屈託ないホホ・・という笑い声と共にメガネが持ち主に返された。
そして・・女性陣が内合わせもなくその運転手さんを褒める褒める・・一幕があった。
金環日食と共に来たモテキは・・・日食の終わりと共に去って行ったのは言うまでもない。

私は今日そこに現場のリーダーの姿をみた。
まずは・・皆に見せてあげたい、一人だけ、何人だけが見たのではなく皆が公平にその機会を与えようとする姿勢に感動をした。特に女性のそれもかなり人生のベテランの女性の多い職場では、この接し方で大きなトラブルになるかもしれないからだろう。
そして・・大きな声で「見たか?見たか?はよ・・おいで・」と声かける姿は、暖かい人やな・と改めて思った。かってこんなおばちゃんは何処の町内にもいたんだろう。でもカッコ悪いや、めんどくさいやなどで、そんな心意気のおばちゃんがいなくなって久しい。
私はメガネから見える金環日食よりも、「あんたも見とき・・見ときや・・」と声を張って、メガネを采配している姿に、心が暖かくなった。ハートウオーム現象だ。
あこまでは出来へんな・・今の俺には・・・と一人呟きながら、ありがとうと言ってめがね返した。
「おせっかい・・・!」と言われたり思われたりすることなんか、まったく眼中にない。
ただ・・・皆に見せてあげたいと言う気持ちがビシビシ伝わる。
この判り易いのがいいのだ。


ほんの数秒の日食メガネで、金環を見ただけであるが、完全に私の脳内カメラのシャッターは切られていた。あれから12時間たっても残像が残っている。
偉大なる太陽と、改めて思わずにはいられない。


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1 コメント

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感動した。 (ドク・ターチャン)
2012-05-26 09:10:26
一皮むけましたね。
金環日食とともに。
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