スピリチャルTIMES 「とにかく生きてみる!」

スピリチャルTIMESの編集長北村洋一が、この不確定な社会に生きている人々の喜怒哀楽をレポートする。

歓喜!花の占い研究会・・・・ 第2話「茶柱立つ」   空創笑説シリーズ

2011年10月08日 | 創作小説

 新入生の入部勧誘にどのクラブも必死になっているこの時期、僕は、バス停から、校舎までの坂道で、長ラン二人組みにつかまり、ついに部室までつれていかれた。
部室は、学生会館の裏あたりに、5階建ての古い校舎をクラブ活動の為にあてがわれたように、他のクラブもたくさんそこを拠点にしていた。その建物の前には、古いベンチや、洗濯物を干すように四隅のポールから数本のロープが張られていて、そこにはジャージ類や、一人暮らしの野郎の汚い洗濯物が干してあった。その場所は、クラブに所属する人にとっては、神聖でもあり、関係ないほかのものから見ると、治外法権のなんでもありのような、立ち入りたくない場所にも見える。

占い研究会はその建物の1階にあった。
部屋の前には、厚い木の板に「文化会 占い研究会」とかかれ、周りのクラブを威圧するように昂然と懸っていた。
僕は、二人の長ランに左右を固められ、まるで刑事に検挙され、捜査本部につれていかれるような雰囲気である。
「失礼します・・・2回大呑です・・・ 新入生を見学につれてきました。・・」といって、その部室のドアーの前にたち、「開けゴマ・・」と自分で言って自分でドアーを開けた。
僕はその長ランの後に続いて部室に入った。なにかインセンスの香りがする部屋には、ゆるい環境音楽が鳴っていた。大きな机が真ん中にどーんとおいてあり、その正面には、大きなポスターに、「興国の荒廃この一見にあり、各自奮闘せよ・・・」と書かれてあり、もう何年か前にかかれたような古さがあった。
机の周りでは、7名くらいの男女が、下を向いて何かしている。
手には、スイカくらいの大きさの水晶の玉を持っている。その水晶の玉を、古いジャージの切れ端や、Tシャツで、一生懸命に磨いているのだ。
そしてその机の奥には、幹部専用の応接セットがあったが、その応接セットも何処で貰ってきたのか解らない、長いソファーと一人様のソファーが揃っていなのが、いかにも学生ぽい印象がした。
水晶の玉を磨いているいるのは、新2回生である。一年間さんざん下働きをしてきた彼らに、ようやくこの春、下の人間が入ってくるのだ。それは嬉しいはずであり、また一年間ずーとやってきた水晶玉磨きが何処となく誇らしげに見せようとするのもそのせいである。

長らんの大呑が、このイスにかけてちょと待っててと言う。
そして、もう一人の長ランが、正面のぼろソファーの幹部席に行って、なにやら幹部らしい人に耳打ちしている。「了解しました・・・」の返事が聞こえる。
そして、もう一人の長らんが戻ってきて、大呑に、「お茶をだすように・・」と言った。
大呑は、水晶玉を磨いてる痩せた女性に命令した。
「ギボ、お客さんにお茶をいれてくれ・・」と。
ギボは、直ぐに水晶玉を果物屋でもらって来たスイカの台の黒いゴムの輪っかの上に固定させ、大呑のそばまできて、「立てますか・・?」と聞いた。
「当然・・」と大呑は言って、にやりとした。
もう一人の長ランの男が説明し始めた。「ここに居るのは、今春2回になる連中で、今は練習用の水晶玉を磨いているいるところや・・」
それぞれ息をハァとして水晶玉の表面に息を吹きかけ、乾いた布で表面を磨いていく。
クリスタルの物もあれば、薄いロゼ色や、水色ぽいものもあった。結構練習でハードに使われたいるのか、表面が欠けている水晶玉もある。
大呑は、後輩に向かって、水晶玉を一個もってくるように言った。
クリスタルの物を持ってきた。大呑は、それを僕に両手で、丁寧に渡し、「ちょとこの水晶に向かった念じてみてみぃ・・」と言った。
まったく訳がわからないままに・・水晶玉を受け取り両手でその球体を撫でた。
その横で大呑は、僕の手の上に手を重ねて・・
「明日天気になーれ!」とゆっくり呟く。
自分も同じようにと言って、来た。僕もゆっくりと「明日天気になーれ」と呟いた。
「ほらほら・・水晶玉の真ん中あたりをみて・・」と言って、辺りを指差す。
「色が変わってきたやろ・・・」と言って。「明日は天気やわ・・」と軽く得意気に言う。
そんなんで判るのかな?と思いながらも、「本当ですね・・」と答えた。
その時、お茶を持った部員が私の目の前に湯のみを置いた。
どうぞと言われ、お茶に口をつける時に、そのお茶の中の茶柱が、綺麗にたっているのが見えた。それを見た、大呑は、「茶柱が立っているね・・」と言う。
何人かの水晶玉を磨いてる新2回生らが、そろって此方を見た。

「ほう・・ラッキーやね。君、茶柱がたっているよ・・いいことあるよ絶対に・・」と喜んでいる。
僕は、真っ直ぐにお茶のなかで立っている茶柱を見つめた。
「茶柱を、願いことしながら一緒に呑むと、願望実現がしますよ・・」とギボとよばれている霊能氏みたいな、お茶を運んできた女子部員が言う。
僕は「はやくここから出れますようにと・・」願い、立ち茶柱入りのお茶を飲んだ。

その時、部室のドアーがバタンと大きな音と共に開いた。
その場の全員が、立ち上がり「・・・コンチハ・・・」と挨拶をした。
細木先輩・・・や・・との声がささやかれた。



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