スピリチャルTIMES 「とにかく生きてみる!」

スピリチャルTIMESの編集長北村洋一が、この不確定な社会に生きている人々の喜怒哀楽をレポートする。

とにかく生きてみるvsモノレールvs下から睨む

2010年11月29日 | 日記

とにかく生きてみる。深夜バイトも1ヶ月と10日がたち、体も慣れてきた。しかし、夜の出勤は、ことのほかまだ苦痛である。昼間なんとか生きるために本業?の広告企画の仕事をしている。打ち合わせや、営業に出かけると、夕方過ぎて帰宅なので、睡眠時間が少なくなる。基本は19時に寝て、22時に起きるのだが、なかなか起きれない。23時に家を出ると遅刻になる可能性があるので、その場合いは、モノレールを使わなければならない。大阪モノレールは高いし、高い。??
4駅目で、片道320円する。大手私鉄なら、京都まで行ける金額なのだ。往復で640円で、モノレールの駅に自転車を止める費用が150円かかる。合計790円の交通費を、その目覚めで、左右する。だから幾ら寝込んでいても、そのところだけを思い、790円を無駄に出来ないと、根性を入れて起き上がるのだ。自転車での通勤道の上をモノレールが走っている。それを見るたびに、790円を儲けたと一人ほくそえんでいる。それが、雨の場合がつらい。カッパはちゃんと用意してあるのだが、カッパを着て、雨に打たれ、モノレール下を自転車で走っていると、790円を惜しんだことに度々後悔することがあった。50歳にもなって、雨に濡れながら、せっせと自転車をこいでいる、私は、「どうや・・」と自問自答を繰り返す。まだまだ甘い根性であるから、雨の仕打ちに簡単にめげる自分がいるのだ。私はめがねを掛けているから、水滴が、レンズにつきこれまた走りにくい状況になる。「雨の時は、モノレールに乗ろう・・」と決めたが、中途半端な雨の時が、決断がしにくい・・
そぼ降る雨は、自転車に乗ると決めた。それは、まさにモノレールに対する私の挑戦なのである。
モノレールは、今日のこの雨なら乗車しよるやろ・・と期待しているところを、「このくらいの雨で、やすやすと乗れるほど・・この俺は賢くないねん・・」と呟く。320円を賭けた意地と意地とのぶつかり合い。人生こんな風になったのは、私のいたらなさである。それは認める。たくさんの人に迷惑を賭けたことも間違いない。しかし私の頭の上を走るモノレールには迷惑は賭けていない。ただ320円が高いと思うだけである。しかも頭の上を走るから、なんか見下されているようでいらいらする。
でも、情けない・・・。この歳でもモノレールに乗るのも困るか?と防御本能と、常識的な観念に心が、陥る。お金は有るけど、健康の為に乗らないモノレールと、お金の問題で乗らないモノレールは、下から仰ぐ景色が絶対に違うのだ。間違いなく私はモノレールを睨んでいる。それはこれまでの私の生きてきた様を、私の潜在意識が睨んでいるのだ。ただ320円の交通費であるが、その何千倍もの信用を失った今、何の取り繕いも言い訳も出来ないと思う。ただ頭の上を走っていく、モノレールを睨み、それを見失しなわないように懸命にペダルを漕ぐだけである。


風俗嬢が求めたスピリチャルとは?vs ルポ小説「ヒーリングタッチ」vol 10

2010年11月25日 | 日記

 「利用する」

すくなくとも秋月さんは、気が晴れていた。自分の運のなさや、今の境遇を何らかの「霊性」ではないということが理解できた。理解できたとは世間がみんな理解できるような実証が、あるべきものでない。ただ自分の魂に、「腑に落ちた」だけである。風俗嬢であっても、普通の女性であってもそこはおなじである。自分の運の悪さや、自分の周りで起きる悪い出来事が、いかにもその霊性であるかのごとく考えてしまう。しかし、森平先先とのカウンセリングでは、今自分の周りで起きていることは、それは当然の結果であり、それを悔いてもしかたがないことであり、その原因を、先祖や、守護霊、親、友達が悪かったと言っても、それは自分から逃げているだけのことであり、自分は、出来ない、まともな生活が出来ない、風俗という異常な世界に足を踏みいれた時点で、常に自分に対してマイナスの観念を植え付けていて、それを悩んでいるだけであり、もっと自分を褒めてやることがだいじであり、世間がどのように秋月さんのことを思っていようが、自分の観念が、いつも自分を責め、詰り、悔いていなければいいのだ。ただ風俗という仕事がら、世間ではその仕事に対する、正当な評価をもらえることはないという事実を、飲み込むことが出来ていないだけであり、何故この私が、こんな辛いことをして、生きていかなければならないのかを、思わないことが大切であると言われた。そのことを、帰りの車の中で話してくれた。私は風俗をやめる気はないの?」と尋ねる。私は簡単にやめたほうがいいと言うけれど、今の生活を維持するほかの仕事がみつからなないのが事実であり、「お金が欲しいなら、風俗の仕事を続けたらいいけど、それで毎日毎日自分を責めて生きていくなら、将来的にはどこかできっぱりと、辞めるべきである」とさらに言う。それは無責任な言葉かもしれないが、それしか答えられないのだ。多分現実を見つめて生きている人が言うなら、
風俗という異常な世界に飛び込んだ時点で、そこの問題は自分の中に決着しておかなければならない重要事項なのであるが、そのことを棚に上げ、世間のOLより沢山の収入を得ていることだけを肯定して、世間に対して自分の素顔が、みせれないことを悲劇ぽく言うなと・・・意見するだろう。
どの道、この仕事も長く続けれるものではないことは、秋月さんも知っている。何を切っ掛けにして、決断するのかは、私がとやかく言う訳にもいかない。自分の問題である以上、自分で解決していくことしか道はないのである。ただ何故、森平先生は、来月も来るように秋月さんに言ったのかが、気になった。「来月行く理由は何かあるの・・」と尋ねる。「私もよく判らないのですが・・ただなにか別に引っかかるものがあるのかも・・」と心配そうに呟く。その理由は秋月さんが、タカだか一時間だけの話しで、そうやすやすと、人を信じるひとでないからである。秋月さんは、この森平先先に対して、「胡散臭いところがある」という意味の発言をしていた。秋月さんは小さな頃から創価学会に入信していた両親に、厳しく育てられた。また子ども部として、導き会やご奉仕に何回も出かけていった。物心ついたころには、宗教と切っても切れない生活を両親に強制されていた。その挙句、父の自殺、母の再婚と、家族はばらばらの状態になり、宗教が決して幸せになる為のものでないこと、そして、その説法も金儲けの手段であると思っている。そのところが、森平先先と議論になったらしい。「信じるものこそ救われる」は信じない。「この私が他になにが出来るのですか・・」。18歳からずーと一人で生きてきたことは、ある部分では人を頼らない、人を簡単に信じないことであった。それをいきなり、お客であったある男に(私)連れられてきただけのことなのに、「はい、よく理解できました。自分を信じ、自分の観念に負けないように生きます」と簡単に言えないと、森平先先に伝えたと・・数日後に聞いた。私はレイキの教室ことを説明するつもりで、三重から帰って2週間後に食事に誘い、その話しを聞いた。「ましてレイキ」などというこれまた胡散くさいものを、説明されたってまったっく理解できない」と言った。自分の運命が、しょうむない宗教ぽいものに振り回されるのは、もうごめんだ・・と繰り返し言う。そこで自分の目で確かめる為に、次回三重にカウンセリングに行った時に、体験でレイキのアチューメントをしてもらうことを約束していたのだ。秋月さんはパニック症を持っているらしく、月1回は診療内科に通っているのだ。診療内科も内科で、「眠れますか? 食べれますか? 気持ちはどうですか・?」とまったく普通の問診をして薬を貰うだけで、それが,朝から女性で一杯らしく、「薬を貰うために来ている」と、秋月さんは、きぱりと言う。その薬は強い薬なので、副作用が心配で、「レイキ」で、少なくとも自己ヒーリングが出来れば、いいくらかいにしか思ってないけど、本物か、どうか「レイキ」を自分で覗いて見たくなったらしい。レイキは漢字で「霊気」と書く。この文字から想像する日本人の印象は、間違いなく危ない事に見える。ここにこのヒーリング方法の限界が見えていたのかもしれない。秋月さんは、幽霊の「霊」と「気」、これじゃ友達にも言えないよ・・と言う。それは子どものころから学会の子、学会の子と言われて育てられたことに対する、恐怖感と、コンプレックスに依るものだろう。私は、この成り行きを暫くは、見ていなければならないと思っていた。秋月さんには風俗嬢としてのヒーラーのキャラクターこそを望んでいたし、もしそうでなければ、元風俗嬢のレイキヒーラーという看板を持ち、世間に打って出ることが面白いのではと・・まったく薄情な気持ちで、考えている私がいるのだ。そんな秋月さんの2回目の森平詣でを、今は見ていくしかないと思った。また今度は一人で行ってくれるように告げた。
今私は、間違いにまだ気が着いていない。レイキレベル1の受講を終了しているが必死に勉強しているわけでもない。 レイキは、良きことも悪きことも、何処で気付かしてくれる。私の四十数年間の人間性につて気付かしてくれる。あるときは、死にも至らす病気を患うことで、他人との関係、人生の機微を気付くことが出来る。貴方の魂は、現世の私の行いを、どんな形で気付かせようとしているのか。それはそうとう酷く、地獄に叩きおとさなければ、気づくことは無理なのかもしれない。
私は、まだ気付いていない。これは他人の為にやってることではないことを・・人のことはお構いなしの、この自己中を気付いていない。

 


とにかく生きてみるvs午前3時のおやつvsイタリアン労働者

2010年11月22日 | 日記

とにかく生きてみる。深夜の野菜ピッキングのバイトを始め、1ヶ月がったった。相変わらず、作業の終わった午前8時には、かなりのダメージを体に受けている。本当に12時~スタートした作業は、午前8時までの間、ずーと動きぱなしである。そこに午前3時に5分間だけの休憩がある。
この休憩は、トイレや、水分補給に当られるのだ。かくテーブルには3名から4名の作業員が、向い合わせで作業をしている。各自のこなす仕事量を持ちながら、この各班での独立したコミュニケーションがある。野菜の切れ端のゴミの処理や、伝票の判らないところを教えてもらったり、当日欠品している、イタリアンレストランに使われるリーフ類などの入荷状況を教えてもらったりする。まだ新米の私は、聞くことばかりで助かっている。
そして午前3時に・・今まで聞いたなかで最も癒される・・声で、
「休憩しようかーーー」と職場のリーダさんが、声をかける。私はトイレと、タバコの為に部屋を出る。本当に5分だから、急いでことをしなければならない。そして、休憩を終え作業机に帰ってくると、私の机の上には、あるときはクロワッサン1ケとクッキー2パック。またハムチーズロール一口サイズと、おかき1パックなど、おやつが置いてあるのだ。「いつもすいません」と言って、そのおやつをすぐに食べないで、鞄に直す。そのおやつは、帰り道、自転車に乗りながら、コンビンでカンコーヒーを買って一緒に食べるのである。「これが旨いのだ!!」。
職場の中では、今、男性は、私を入れて二人になった。本当に女性の職場である。先日も、レタスの箱の中から、虫が出てきた・・・「キャー」と小さく、それなりのお歳で、びっくりされる。すかさず私が、手でつかみ「どうしましょ・・・」と尋ねる。可愛そうだから「外に放して・・」とおっしゃる。「はい・・その通りにさせていただきます・・」と。ナイロンの袋に入て、「帰りしなに、その辺に放してやります・・」とニッコリ笑います。私もそれなりのお歳の少年行動をしています。そこにおやつが・・・
なんか嬉しくなります・・・
そこで貰うばかりではと思い・・私もおやつを用意しました。が、が、いいよ・・と断られました。
初めて勇気をだして、「食べて下さいと」言ったのに? 50歳の深夜バイトをする男のおやつが、なんか汚く見えるのか、汚い手で触っているのが不満なのか・・ そもそも、ちょっとしたおやつは、女性からのプチプレゼントでなければならないとして、我々のDNAに刷り込まれているのか、わかりませんが、私のその動作はどう見ても可愛くはないのでしょう。でもそんな問題でもなさそうだ。私が買ったおやつの趣味が悪かったのだろう。私は、雪印の6Pチーズを、ワンピースずつ渡したのだ。いや。イタリアン労働者は、休憩にチーズを食べるのが、昔みた映画で、かっこよかったのになーと思いながら、出したチーズを箱に戻し、元の6Pになり、パズルは再び埋まりました。
誰か、こんな時に気のきく、おやつを知っていたら教えてくだい。


風俗嬢が求めたスピリチャルとは?vs ルポ小説「ヒーリング タッチ」vol9

2010年11月21日 | 日記

「霊性」

 

私は、大興寺の境内のなかにある休憩所にあがらしてもらい、畳の上に大の字に寝転び、今の状況を考えた。今の会社の仕事は、頭打ちである。新しい商売の立ち上げを早急に進めなければ、明日はない。そこで私は、「スピリチャル」と言うキーワードを探っている。でもそれの根底にあるのは、悩んでいる現代人の救済ではない、それは幾ら立派なことを言っても金儲けのネタにしようとしているのだ。それも私し自身が汗も努力もしないで、他人のネタにのっかって上辺を掬おうとしているのだ。が、今この大興寺の休憩所で寝ころがり、風俗嬢の秋月さんという女性を三重県の二見のお寺に連れてきて、鑑定を受けさせている。これからどうするか・・・と考えた。
「元風俗嬢のスピリチャルヒーラー」としてサロンとヒーリングスクールの開校を目指す。自分自身も悩み抜き、生きる為にする前立腺マッサージの異常な仕事の中で、本来の自分を見つけた「レイキ」で、何かを気ずき、ありのままの現状を受け入れ、前向きに生きることが出来るようになった秋月さんを、スピリチャル界でのスターにしたいと思っている。そこには秋月さんの気持ちも全く気にしていない詐欺師の私がいる。今私が正常な心境ならこんな他人を無視した考えなど出るはずがないが、やはり気が狂っていたのだろう、他人を利用することしか思考が廻らない私は、もっともずるい人間の弱い部分を使って、金儲けをたくらんでいるのだ。そこには愛も、魂もないのである。
それよりも鑑定の結果が気になるのだ。森平先生との付き合いも最近のことである。私自身も本気でレイキを勉強していることもない。ただ本当に調子もんのように「いい先先がいるから・・紹介しようか」と話す。私はそこで小遣い稼ぎをしているわけでない。それより大阪スクールの開校を視野にいれてパブ活動をしているのだ。特にお客様のストレスをモロに受けるサービス業に働く人を中心に声を掛けている。それは、森平先先から特別に許可を頂いて動いているわけでもない。私の勝手な思い込みと入れ込みで、強引にそのようにしているだけである。森平先先もレイキの普及を考えている折だったのもあり、次々と提案し、行動する私を黙ってみていたのだった。
その動きは、会社の社員向けにレイキを勉強させようとした。いい気をながし観念に惑わされずに、自分自身を知ることで、仕事ににもプラスいなると思い込んだ。そのために10名分のレイキスクールレベル1の費用も振り込み、大阪での活動のフランチャイズ権をお願いするつもりであった。
それにしても他人の悩みで商売を考えていることに周囲はどのように思っていたのだろ。
周囲ではない、本当の自分自身の魂は、おいおい・・・とその頃、何かの暗示を題していたのかもしれない。
大興寺の澄んだ空気の中で、習ったばっかりの自己ヒーリングをしながら、秋月さんが出でくるのを待った。1時間ほどして秋月さんと、森平先先が本堂から出てきた。歩きながら二三言葉を交わしながら、明るい顔をして出てきた。秋月さんは、いつものフレンドリーな感じでもあり、少々興奮しているような雰囲気で言葉が上ずっていた。先先と距離が離れたところで、「どうでした?」と質問をする。秋月さんは、すぐに答えずにうんうんとうなずきながら、歩きだしトイレに向かった。
私は、秋月さんが、この鑑定で自分の仕事のことを正直に言ったのか、そして秋月さん自身に起こった、父の自殺や、母親の複雑な再婚や、今の現状が霊性に関することなのかを知りたかった。
秋月さんも勘の良い女性だ。「風俗の仕事のことは言ったよ・・・」「最初に話したほうがいいので・・」と話してくれた。それからは詳しくは聞かなかった。「今起こっている私の自身のこと、周りのことも先祖や、霊性に関することでない・・」と先先はおっしゃっていたとも、付け加えた。まずは自分をもっと褒めることであり、駄目な自分、出来ない自分の観念に従わされているから、自信のない自分が姿をみせるのであり、また自分自身も、したいことをしていないのだと、その努力もしていないのだと・・と言われたと。「それは自分でもわかっていたのではないの・・」と私が言う。「でもまずは、他人や先祖、、自分に憑依している霊的なものの所為にするのが普通の人間だから、その部分をはっきり「ない」と言われてスッキリした、とメチャクチャ嬉しそうでもないが、安心した様子は、その顔色や、「おなかが減ったね・・・」と言うことで理解できた。「近くに貝専門のお店があったから・・遅い昼飯をしようと・・」秋月さんを誘った。「ビール飲みたい・・」と精気がもどった。
「もしよかったら来月もおいで・・と」言われたらしく、カレンダーをめくりながらその日をピックアップして先先のところに歩いて行った。秋月さんにとってまずは風俗の仕事をしていることが、人間関係の最初の関門になる。私のようにお客であったり、森平先先のようにカウンセリングであったりしたら、そこの部分はまったく隠さなくていいのだ。それは、他人と会うことが重くならないようになり、自然と自分自身が出せることが出来る。自分に今の仕事を含めた生き様を否定しがらも、生きることは、決して健康的ではないはずだ。そのストレスは相当のものであり、その発散の仕方も尋常でない。秋月さんは、彼氏にもその仕事は内緒にしている、多分殆どの場合のその仕事の方なら、そのようになっているはずである。可愛いそうでもない・・辛いがそれが現実であり、その現実に自分がどう向き合うかが、問われるのである。秋月さんの魂は、何を秋月さんに気付いて欲しいと・・しているのか。それを少し考えてみる切っ掛けができたのではないだろうか。ただ来月も「来たほうがいいと・・」とおっしゃった森平先先には、何かまだ整理させてやらなければならないものが見えたのではと?私は思った。
大興寺を後にする時、次の予約の家族がやってきた。祖母と両親と10歳くらいの男の子だった。男の子が歩きながら発する獣のような叫びに、その家族はなれたように、男の子の体を、前後をしっかり押さえながら黙って本堂に入って行くところだった。森平先先の顔が、引きしまり、あの地蔵さんのような雰囲気はもうなかった。


風俗嬢が求めたスピリチャルとは?vs ルポ小説「ヒーリング タッチ」vol.8

2010年11月19日 | 日記

「必然・・」

 

9月の下旬に三重県の二見ケ浦にある大興寺に、秋月さんを乗せて車で向かった。
12時の約束であったので、大阪を余裕を見て9時30分に出発した。
この車に乗ってる女性は、風俗の仕事をしている。私は、そこに意識をしないように車を運転した。
スリムジーンズにブーツインで、淡い色のカーディガンにアクセントとして派手目でないショールを上手いこと撒いていた。話す内容もそれほど弾まないまま、高速道路を走った。案外早くつくので,久居市から23号線におりて伊勢街道を走った。道端には紅い彼岸花が、少しどくどくしく咲いているのが目につく。「あれは、曼珠沙華と言うのですね・・」とポツリと言った。「帰りにもしよかったら、その辺のススキとかを採って帰りたいの・・・」と言った。「狭い部屋だが、秋の雰囲気を飾るのにいいかも・・」と軽く笑う。「今日の鑑定の先生には秋月さんのこと何も話してないから・・」と私が、話のあらすじを確認する。「ここ最近よく金縛りにあっているの・・」と霊的な話をし始める。「夜中に、耳鳴りが起きはじめ、体の上から誰かに乗られている雰囲気がするの・・」「恐くて目を開けれないので・・そのままジーット我慢してるの・・」そしたらと収まるのと言った。「また壁にかかっている絵画の後に、なんか人に気配もするから、そこにはお線香と塩を置いていることも話してくれた。今の仕事は、お金にはなる・・が、やっぱり疲れるのだそうだ。全てのお客様は、その「気持ちいい瞬間を、秋月さんに委ねる。秋月さんはそれを受け止めてあげるのが仕事であるから、今までのお客さんが放ったストレスを全てその体が受け止めているのは、かなりのダメージが精神的に蓄積されているのであろうか?それは、美容室や、エステサロン、サービス業にも言えることなのだ。お客さんの「気持ちいい・・・」はそれをサービスするスタッフに対して、髪を切ってもらう、体を揉んでもらう、お酒の相手をしてもらい日頃のストレスを放出することで、「自分の詰まった気」を発散するのだ。だから気持ちいいのではと思う。そうなると風俗嬢もいわゆる同じサービス業であるのだが、決して一般的には、正々堂々とその職業を名乗ることが出来ないのが、そこで働く女性の心を孤独にさせるのだ。秋月さんはには女性の友達がいないのですか?と尋ねる。「いないに等しい・・・わね」と一言。「本当の自分のことを話せないのに、そこに信頼出来ると友達をつくるほうが難しい・・」と。「だからね・・男の友達のほうが多い・・」「でもそれも友達ではない・・かも」「今の仕事を隠しているから、嘘で固めた付き合いになっているのは当然かも・・」「でも本来、男と女はそんなもんだから・・」と外を向きながら話した。
秋月さんは、自分の今を卑下している。風俗に勤めることで、異常な世界に入ったことを受け入れてはいるのだが、回りの世界は青く見えるのである。その原因は自分の中にあることをみとめつつも、先祖や、過去のあやまちの精算、前世の生き様等によることに原因があるのではと思って、今回の、真言宗の僧侶であり、「レイキマスター」である、森平清善に鑑定をしてもらうのだった。
わたしも、多分であるが秋月さんのお父さんの自殺や、お母さんとのゆがんだ関係に、その世界感を充てはめることが正解ではとそのころは思っていた。
まず、このスピリチャルでは、常套手段である、「こうしてこの場所で、出会うことが何らかの必然です。そしてこの必然の為に今まで、多くの苦労をして、悩み、心配を重ねたのだろう」と私は言った。
相手の心底からの悩みを、意図も簡単に引き受けて、他人のネタを紹介する私は、奇跡を運ぶ、代理店のような心もちのよさを感じていた。ましてや「森平先生なら・・きっと答えがでるのではないか?」などと無責任な言葉を発していた。
30分前に二見ヶ浦の大興寺についた。国道から少し民家の間をぬけると、寂れたお寺がある。
ひんやりと、張り詰めた空気が感じられることが、紹介する私には責任をまっとうできる嬉しさがあった。「このお寺です・・・」「何か精神的に癒されますよ・・」と盛り上げることを忘れない。
車を降りて、すぐに社社務所が見える。ガードマンの詰め小屋のような小ささだ。その中で、ニコニコした、これぞ仏の笑顔を思わせる人が座っていた。森平先先は、作務衣を着ていた。
「こんにちわ・・」「今回は無理を言ってすいません・・」と私が挨拶をする。「この方が、佐古さんです。」とあらかじめ聞いていた、秋月さんの本名を紹介した。私は秋月さんがどんあ仕事をしているか、どんな経歴かは話していない。「佐古です。宜しくお願いします。」と普通の挨拶をしていたのを
少し可笑しく思えた。「この鑑定で佐古さんは、自分が秋月という名で、風俗の仕事を言うのか・・」が私には最もきがかりであった。それはいやらしい近所の噂婆と何も変わらない態度であった。
「そこを隠したら・・この話がぶれるのだ・・」「でも森平先先なら、何か見抜くかもしれないぞ・・」と好奇心の塊は、無責任を演出している。名前と生年月日を記入して、本堂に二人で入って行った。
「なかなか予約のとれない先先の鑑定を、このように早く実現できることが、何かの導きであろう・・」と思い、この日の三人の出会いが将来の大きな日になることを、ただこれは必然だったのだと言う言葉にして、一人悦にはいるのだった。この本堂から出て来た時、秋月さんは変わっているのだと確信を持って待つことにした。