心地いい風を受けながら自転車で走る深夜バイトも、やめようかという考えも、とにかく今・・に集中して何も考えないで働いている。男手の少ないセクションであるから、色々と頼まれることも多いが、「はい・・喜んで・・」と明るく返事してみることで苦痛もやわらげられているような気がする。
一週間の休みは、水曜の10時に開放されてから、木曜の深夜12時からの勤務までである。
いぜんから約束していたので、今日は、三人いる子供のうちで、長女と双子の一人と飯を食った。
前から連れていこうと思っていた、大阪ダウンタウンの天六の市場周辺に、B級グルメワイルドツアーを敢行した。私はこの町の猥雑感が好きである。鶴橋のようなコリアンタウンという明確なコンセプトもなく、しいて言えば、市場に近いこともあり、とにかく安いのである。焼肉、串、魚を案外美味いことイタリアンやスパニッシュ風に食べさせるバルみたいな屋台みたいな感じが、天満だぜ・・を表現している。楽しかった写真はフェースブックに乗せてある。
11時半くらいに子供達と別れた。
そこから月に一回のリゾートへ行くことにした。
同居している両親が二人とも痴呆が進んでいるが、絶対に誰かがいなくてはという状態ではないだけまだ救いである。そして四六時中顔をあわせていると、なんやかんやで、言わなならんことも、文句の注意もかなりきつい言い方になっている私がいている。
年老いた両親も、昔は出来たことも今ではすっかり出来なくなっている。特に火の回りに注意なんかは、際たるものである。実の親子であるが故に、かなりきつい言葉で注意を促すのだが、痴呆とはそれで簡単に直るものでなく、ただ年寄った両親から自信を失わせ、不安を与えるだけになっているのも、ようよう判るのだが・・・ついきつく言ってしまう。
だから食事時とか、休みの日は私が家に帰らないようにして、緩和状態をつくろうとしているのだ。
そのリゾートには、歩いてついた。
フロントで予約なしに入れるのもセレブたるゆえんである。
ロッカーで着替えて、くつろいだスタイルで、アポロが月に向かったようにカプセルに搭乗する。
本日のカプセルは上段である。これが多少乗り込むのに手間がかかるし、一度搭乗したらめったなことでは出られないというか、出る気がしないくらい出るのにはコツがいる。
アポロのカプセルの中は、大人一人がなんとか横になり寝れるくらいのスペースであり、空調も効いていて案外快適である。テレビやラジオも装備してあり、テレビなどはアダルトチャンネルが無料で見れる。さすがに前日から寝ていないので、アポロカプセルに入るやいなや現世との交信をたち、照明も落とし、だだ宇宙へのしばしの旅たちに心を踊らせるのだ。
3分あれば・・完全に大気圏を超え闇黒の宇宙空間でミロクの世界をただよう。
かって私はこのミロクの世界を味わいすぎたのか、完全に意識不明モードでこのカプセルから出られなくなり2泊分を払ったこともある。
ここは・・ウダツノ上がらない男の駆け込み寺であると、成功を収めた人は思うであろう。
ふかふかベットと冷たい水、窓から差し込む日差し・・・そんなものはここにはない。
カプセルに入り深い眠りが、尿意でさめた時・・・宇宙服の帯を田舎の童のように結びトイレに向かう。
ここが一番の危険な箇所である。特殊な訓練を受けたレンジーくらいしか上段にあるカプセルから、体の痛みをとも会わない離室は、無理なぐらい危険である。慎重に慎重を重ね降りていく。
そして・・・トイレを済ませ、そのまま浴室ゾーンに行き、まだ目覚めをしない頭を熱い湯船が覚醒させる。ここが白浜、有馬、別府・・・何処でもない。大阪中崎町なのだ。
このリゾートには連れもって来る人は少ない。皆ロンリーチャップリンなのであるから、会話らしい会話が聞こえてこない。静かに時間は過ぎる。そしてその顔には疲れや諦め、妬みなどがかすかに薄らいでいく様が伺える。もっとましなところで一泊したかった?と聞いてみたらなんて答えるだろうか?アポロカプセルに自分を放り込むその度胸はいったい何処から湧いてくるのか?など質問してみたい気がする。そして誰もが覚醒した頭で新聞に目を通す。黙々と阪神の記事を読むもの、朝からエロ雑誌に目を落とし、男の本能を呼び覚ますものも数人いる。そこでは、つかみ取れない何かを・・諦めたのか、まだもう一度チャレンジを挑むのかをじっと瞑想しているような光景がある。
それは・・・一度出たアポロカプセルに誰ももう戻ろうとしないことに繋がっているのかもしれない。
このリゾートは、最低でも3000円がかかる。これをまだ通えるだけ世の中にしがみ付けているのだと思う。500円の朝食は、値段の割りにちゃちいのでほとんどがパスする。無料のコーヒを頂き、
英気を充足した気分になりそれぞれ帰っていく。
アポロカプセルの中で私はミロクと会う。吸い込まれるように暗闇に同一化する。
何も考えることもなしに、ただ7時間ほど、宇宙空間をリゾートする。
そこらか見えた地球は、凹むほどつらい場所ではないように思えた。
ありがとう・・・娘よ、息子よディープワイルドB級グルメに付き合ってくれて・・
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