スピリチャルTIMESの編集長北村洋一が、この不確定な社会に生きている人々の喜怒哀楽をレポートする。
本当に暑い盆だった。甲子園の第三試合の様な暑さの南港現場でのフェリー乗船作業は、お盆期間中は貨物トラックが無いぶん、故郷に帰る人や戻ってくる人でごった返していたけど、今日でようやく平常に戻った。
日に焼けた顔も、知らん人がみたら、「夏休み、よー遊んだはったと?」と間違いなく思うだろう。
けど、近所のプールはしかり、銭湯の水風呂でさえも浸かっていないのだ。
まぁ過ぎゆく夏を惜しみながらも、今日も朝からの南港勤務早めの上がりで、医者まわりとなる。
心筋梗塞で4回ステンドを通している僕は、ずーとクスリを飲まないといけないのだ。
すでに今月の9日には無くなっていたクスリを貰いに、かかりつけの循環器系の街医者に行く。
先生もクスリが無くなっている事も既に承知ですから、丁寧に「助けて貰った命ですから、絶対にクスリだけはちゃんと飲んで下さいねー!」と「貴方の為ですよー」と言う言葉に、ありがたくて胸がキュンとなる。「心臓医の先生の言葉に胸がキュンとなる!」これは至極の施術と?思ってしまう。
僕自身いい加減なもんで、クスリと付き合うライフサイクルが未だしっくりこないのです〜〜
クスリでなんとか生活できている僕は、事あるごとにクスリを裏切ってしまいます。
朝から夜までの勤務には、わざわざクスリを持って出かける事もせず、2〜3日くらいはクスリを飲まない日もあるのですが!
それでも、優しい先生に「本当、死んでてもおかしくない位やったよー」と済生会から送られて来たデータを見ながら言われるのには、僕も冗談やギャグや勢いや運だけではすまない事が此処にあるのだと実感します!
そして梅雨時期から治療を続けていた、僕の歯が漸くハマりました。空気が漏れてた言葉尻が聞こえ易くなったのです〜〜
保険でいけるギリギリで治療してくれた歯医者の先生が、「美味いもんも食えるし、男前になった!」と言ってくれました。「けっこうこの歯ぬけで笑い拾っていたんですわ!」と言うと、「もう治したられへんで!」と暖かい突っ込みをいただきました。
さて〜ーーー
壊れたり、弱ったりした所を治して、又血管が詰まらん様にと毎日クスリを飲む僕は、いったい何がしたいのでしょう?とややテンション低めに駅前を歩くのです〜
色々なジャンルをずらしてみたって、僕には何がしたいのか?などは見つからないのです〜〜
まぁ今日だけ限定であったら「医者になろうか?」などと思い、すかさず「来世で頑張ってと!」もう一人の僕が囁くのです〜
循環器や歯医者の先生から贈られた「貴方はもっと楽しく可笑しく生きなければいけない!」と言う祝福は僕のハートに的中し、腹が猛烈に減りました!
台風でバイトのフェリー欠航の帰り、知り合いのラーメン店でのホールお手伝いに続きデパートの地下へ寄ってしまった。しまったと言うのは施設で暮らす母親にお土産でもと思い、ところ天を買いにいった。
まぁ時間もある事なんで、久々のデパ地下はどうや?と言う 、お盆の高揚に推されて足が地下に向かったのでした。
惣菜コーナーも肉ハムコーナーも、寿司コーナーも、サラダコーナーも美味そうで買って帰りたいもんばっかしやないか? 普段の帰宅は午後11時頃となるので、深夜スーパーかコンビニで食い物を調達している僕は、当に夢の国に舞い込んだようになった!
僕でないもう一人の僕が綺麗に美味そうにディスプレーされてる商品に引きずり込まれていくのがわかる。
「このローストビーフ買いや!」
「このマグロ漬け、白飯の上に乗せたら美味いで」
「色が綺麗なエビのサラダいっとこか?」などなど目まぐるしく脳天を刺激してくるのだ!
それを応援するように「盆やーー盆やーー」と僕の前世まで出てきて、買え買えと背中を押してくるのだ。
「でも一人やからなぁ〜〜」とツーアウトを喰らったリアルな僕が抑えに入る。
「気持ちはわかる!でも、帰って食べるぶんだけにしとけ!」と啓示を受信するのだ。
多分、バーボンソーダーを3杯くらい飲んでたら、今頃僕の家の冷蔵庫はエライ事になっていただろうと思うとぞーとする。
それでも僕はデパ地下の床に居着いてしまっている。
「帰れへん!」
「ここから帰られへん!」
この後、誰かと待ち合わせでもしておけばよかったと考えるも、ここからの脱出のキッカケが掴めないのだ。
完全に迷宮デパ地下で僕は固まり自分を失ってしまった。
そもそも何故此処に足を踏み入れたのか?の初期設定の仕直をする事に!
「そう、オカンの土産のところてんを買いに来たはず!」と記憶を手繰り寄せた。
「ところてんあります?」と和菓子屋さんの店員さんに話しかけた。
「ところてん?」
「そうところてん!」
「押し出された細長い奴!」
そうか!ここはところてんの様に押し出されみたらいいのだと閃く!そうすれば帰れるかもしれない。誰か僕をこのデパ地下から押し出してくれ!と思いながら、なかなか見つからなかったところてんを和菓子屋さんが、どっかから持って来てくれたのだ。
ところてんを手に持った僕は、押し出される様にエアーところてん方式で、魔宮デパ地下から抜け出した。
「ビーサンの唄」
現場仕事の帰りは靴を脱げ
ビーサンを履くのよサマーシーズン
洒落たサンダルに目もくれず、研究されたソールを無視して
クロックスもビルケンシュトックも一目置いているのがわかるのさ
ラウンジも、ステーキハウスも、寿司屋もビーサンで行きまする
ラブホも面接も税務署もビーサンで闊歩しちゃいまする
潰された指も生き帰り、元気元気の土踏まず
世界を歩こうビーサンで
開放しようよビーサンで
短い季節 おまえを離したくない
パタパタ言わしたれ ビーサンで
夢を見せたれビーサンで
暑い季節 おまえを離したくない