私版「秋桜」と言う歌みたいな話し。
薄紅の秋桜が何気無いひだまりに揺れている
この頃既に認知がひどくなった母が、車椅子に乗りボーッとしている。
施設のテーブルでアルバムを開いては、何度も繰り返す、愛犬チビの事!
こんな小春日和のおだやかな日は貴方の優しさがしみてくる〜〜
こんな小春日和の穏やかな日はもう少し貴方の子供でいさせてください!
母のアルバムに貼ってあった一枚の写真に僕は目が止まった。
それには語るには多すぎる小さな物語が散りばめられているのです。
孫が拾ってきた犬を大事にしてくれた事。
「チビ」と仔犬の時につけたのはいいが、暫くして大きくなって、チビと言う名前が笑けてきた事。
「チビが死んだよ」って連絡をしてきて、5000円で市の係の人が取りにきてくれた事〜〜などなど
そして誰かにシャッターを切って貰ったと言うより、偶然カメラを持った誰かに写真を撮って貰ったのだろう?この写真。
雪が降った後の早朝の公園です。
「チビ」が正面にむかって立つ姿に、素朴で清貧で何処にもある普通を感じてしまうのです〜〜
母の前で真正面に立つ犬に、流行も贅沢も知らない田舎侍の可憐さが込み上げ切迫してくるのです。
そしてただじっと見つめるしか出来ない私がいるのです。
いい写真なのでこれを来たる時の、あの写真にしようかと?フッと思いましたが、世間及びその筋では、この選択はありなんでしょうか?など思慮してしまいます。
真正面が凛々しく見えるポーズって身体に響くくらいの伝達力があります。
横向きピースサインなどでは伝えきれない深みがあるのでしょう。
60歳を過ぎてなんとかここに映る答のわからないメッセージの宛先が「この私」である事だけは解るようになりました。
こんな小春日和の穏やかな日に
ありがとうの言葉を噛みしめながら
生きてみます私なりにー〜〜
本日欠航となり、自宅待機からの休みとなる。
何の予定も無いし、食料のストックも無い。
買いに行く気がしないのは、「台風」が僕の中のサバイバルスピリットを引っ張り出して来たからでしょう。
空いた時間は、それも通り過ぎるのを待つだけの時間は、僕の空想力を普段以上に高めますー
台所を見れば昨日の食器が洗われずに残っていて、
明かりも、音もつけない状況で食器を洗っているうちに、水道の水が茶碗にあたる、チョロチョロ音だけが聞こえるのですが、これが孤独な一人男の中に入ってきたのです〜〜
これを阿久悠ならどう表現するのか?喜多條忠ならどう作詞するのかなど考えながら、あの洋キタナが出現しました。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
「静かにするな!」
詞洋 キタナ
雨が強くなるのか?風が激しくなるのか?
これからを測ってみても変わらない
僕は作業着で灯りもつけず音もない午後を過ごす
台所に残る使いぱなしの食器を洗うけど
水道の音が侘しく茶碗にあたる
「洗い物は静かにするな!」
「孤独を楽しむならこれはいい演出だ!」って
ストーンズの歌には無いけれど
僕は満足していないから、毎日をためしているんだ
鼻歌でもいいんだよ
「洗い物は静かにするな!」
「洗い物はロックを流して!」
今年の2月に約束をしたのです。
「親父が遺した形見の18面体のサイコロを転がしに行きたい」と、寺田君に言ったのでした。
「季節が良くなったら行こう〜〜」という事になり、本日、京都競馬場グランドスワンに来ました。
親父が亡くなって暫くして、整理の為に親父のカバンをゴソゴソしていたら、間違いなく競馬用の18面体のサイコロが5つ出てきました!
親父は無口で人付き合いもそれ程得意では無く、外食もせず酒も飲まない、未だに伊勢弁も出てくる普通の人でした。
そんな親父を反面教師として(これはこの歳になって確信した)この僕のオモロイ事好きが熟して行ったのです〜〜
最近思う事がありました。
僕には手短な週一でも携われる趣味が無いのに気がついたのです。
休みの日はダラダラと過ごす事しか脳みそが働かない男になっています。
その点、無口で簡素に生きていた親父は、土曜日、日曜日には、朝から競馬場に行って、「勝ったとも負けた」とも言わずに決まった時間に帰ってきて、お土産も無い事がまるで平和の証であると悟っている、お袋の普通の夕飯を食べるのでした。
それでも、毎週土日土日に自分の好きな趣味に没頭できた親父に、今此処で敬意と賛辞の言葉を贈りたいと思います!「貴方は渋い、渋渋やーー!」と。
「オモロかったやろ〜、一人で臨む馬券の予想〜〜」
「誰に気を使う訳でも、見栄を張るわけでも無い、自分の思いを馬券に託す〜〜」
そんな姿を、やっとこの歳になってわかるのです〜〜
そしてサイコロ!
迷っていたのでしょうか?
一押しがどうしても必要だったからでしょうか?
帰りの電車賃でも賭けたのでしょうか?
色々な思いを巡らしてこのサイコロを淀競馬場の
どっかで転がしていたのでしょう〜〜
そんな想像をすると、何故か親父の前で正座して、「負けました!この僕は、まだまだオモロイ趣味を持てていません!」と謝りたい気持になります!
生前の親父が、どんな姿をしてこのサイコロを転がしていたのかはわかりませんが、眉毛を寄せて険しく振っていたのではないと思います。
できれば、「サイコロちゃんおねがい🤲シーます」とお茶めだったらナイスと思うのです。
親父からしたら、「競馬は一人でするもんだーー」と渋い普通の男の台詞が続くのかもしれないが、今の僕にはオモロイ友達がいるのでギャグやツッコミを入れながら競馬を楽しんで見ますわ!と逆らってみます。
最終レース〜〜サイコロが転がり過ぎて斜め前方に落ちていったのです。
締め切り直前にそれを拾って、その時の出目「15」を単勝100円で買ったのがありえへけどありえる的中でした。
940円の配当がつきました。寺田君が、「先に60円入れたら、払い戻しで1000円札が出てくるよ!」と教えてくれました。うん確かに札が出てくる事は快感だった。彼のこの小さなアドバイスが人生を楽しくさせるのです〜〜 彼も唯一無二のクリエイターでしょうね。
さて!
帰り道、親父が「又来いよ〜〜」と言ってるのが聴こえました。
僕は、「一人ではこんよーー!オモロイ友達と又来るわ〜〜」と言い返しましたけど、親父は嬉しそうな顔でニコッとしました。
京阪電車の夕焼けの窓にはそう映りました。