スピリチャルTIMES 「とにかく生きてみる!」

スピリチャルTIMESの編集長北村洋一が、この不確定な社会に生きている人々の喜怒哀楽をレポートする。

夏の日のえげつない日々「闇金業者」 最終章

2011年08月29日 | 自小説 ノンンフィクション小説

私の手形がとんで、1週間がたった。あの闇金業者からの連絡はない。ないと言っても、携帯は変えたし、会社には出ていないから、懸かってくる可能性があるとすれば、子供達が暮らす、自宅以外にない。システム金融で、手形、小切手で融資を受ける時、裏書や別の保証をしていないのだが、私自身の自宅の住所と電話番号は、聞かれる。それは正直に答えてもかまわないという姉さんの指示で、偽りなしに答えていた。まず闇金業者が、脅しや圧力を持って自宅に来るだけで、かれらは逮捕さされる可能性がある・・。また決して、初めから取り込むつもりなど、なかったから、正直に自宅の住所や電話番号を教えた・・という言い訳が、公の判断が必要な場合、有効になるらしい。あくまでも、この物語(事件)は、会社の資金繰りにつまり、多くのシステム金融からお金を引っ張った、けど返済できずに会社を棄てて逃げたという図式である。

それでも落ち着かない日々を送っているのには間違いない。
私の会社と事務所はそのまま、別の人が引き継ぐらしいと姉さんから聞いた。
その彼らの正体は、蛇の道は蛇ということで、「キタムラ氏および、キタムラ氏の会社に債権がり、その債権の変わりに、事業譲渡したという形で、なにか別のことをするらしいが、今後私にふりかかることが、ないんであれば、何でもしてくださいという気持ちであった。
目の前に、それらしき男があらわれ、腕の一本でも折られた、直ぐにでも弁護士に相談しようと、常に思いながら、過ごし始めた。

また別の友人は紹介で多重債務者被害者の会「銀杏の会」を紹介してくれた。その友人は、ある共産党系の中小企業のコンサルタンと協会の社員だった。
担当者に電話を入れると●日に、集まりがありますから、予約を入れておきますから来てくださいということだった。私的には、安価の相談料で、債権者と交渉してくれる民間の駆け込み寺的なものと想像していた。


大阪梅田の古いビルの一室に事務所があり、時間前に行くと、受付をして、大まかなあらすじと、債権者と金額を伝えた。ただし債権者については、リースやローンは別にして、闇金業者のみを知っている範囲で伝えた。「隣の会議室で待っていてください・・」といわれ、会議室に入ったら、数人の人が暗い顔をして座っていた。そこにいる人は、皆多重債務に苦しむ人達であることは直ぐに判った。時間になるころには、8組が、会議室に集まっていた。
司法書士の先先や、顧問の方の挨拶があり、そのあと一人一人が、今の現状を皆さんの前で、打ち明けるというか、カミングアウトするようなことを言われた。
まず・・親子で事業に失敗して、多くの借金を闇金からの借り手いてどうにもならないということを涙ながらに話をしている。
次の方達も同じように、多くのところから高利のお金を借りているとのことで・・・
家を手放す、会社を手放す、仕事がなくなるか・・本当に途方にくれているのがひしひしと伝わる。私は、自分のことをまとめながら、なにが困っているのかを・・考えて見た。
まず家は公団の賃貸である。取られようなない。貯金、株などの資産もない。売上を抑えれるほど、仕事は忙しくない・・と言うか、私はこの手形を振り出した会社以外にも、個人で広告の企画をする仕事を、ある会社の外部ブレーンと言う形でしていたのだ。そしてそれが非常に忙しくなっていたのだ。その会社の社長にお願いをして、ギャラや、企画費については、別でもらうようにしていたから、手形が不当たりなったけど、別のキャラを立てて仕事をしていたので、昨日と今の変化は仕事と言う意味では、まったくなかったのだ。
私の順番が廻ってくる前に、私はその銀杏の会の会議室を抜け出した。
私のやっていること、やったことを、ここにいる皆さんに話しするには、あまりにも私達がチャランポランに思えたからだ。ここにいる皆さんの抱えてる問題に比べたら・・・なんて不真面目であろうか・・と考えたからだ。そして・・多分、私の手形や、小切手で不当たりを受けた債権者は、キツイ取立てを今後、してこないだろう・・と言う思いも多々あったのだろう。

今年の夏・・深夜バイトで15万を稼ぐのがやっとである。子供にも満足な教育を施していないし、妻とは離婚をして、ここ何年か全く話していない。また個人的に応援をしていただいた人にも、お返しも出来ていない。
あの事件があって、私は仕事で上手いこといかなくなったり、資金や、短期の借りいれを人にお願いする時に、いつもあの夏の事件を、言い訳にしていた。
人には、「騙されまして・・・」とか「悪いやつに引っかかりまして・・」とかを言っていた。
しかし・・手形や小切手が不当たりなっていなくても、その前から信用は、なかったのだと思う。
いかにも、その件で信用を落としたような弁を撒くしていたが、本当はその前から信用はなくしていたのだ。そして、あの事件がなくても、私は必ずつまずくはずであったのだ。
それを私は、言い訳のネタにして、「悪るいのは・・みんなあいつらだ・・・あれさえなければ今頃は・・・」と、いともいい人顔で言っていた。

今、どうしても決着をつけておかなければならない。
正しいことをして生きようなんて今更大きな声ではいえない。清濁合わせ呑みもこの年齢なら理解できるし、消化も出来る。しかしこうなったのは全て自分の撒いた種であり、撒いた種に対して言い訳をしてきた自分を責めることである。
あの夏、えげつない闇金から、お金を引っ張った、えげつない人達。
理屈もなしに、生きることに、シノグために泥につかることの出来る彼らには、言い訳なんかはなかった。

「行くも地獄、止まるのも地獄、同じ地獄なら、行く道いくしかない・・」
そんな姉さんも亡くなってもう5年めである。ご冥福を祈りたい。





夏の日のえげつない日々「闇金業者」 PART5

2011年08月27日 | 自小説 ノンンフィクション小説

2時30分。あと30分で私の手形が不当たりになる。もうその運命にさからうことはない。
姉さんは、「キタムラちゃん、最後の所は、今日は無理みたいやね・・・40万ほど取りそこなった。」と言う。もういいのではないか?と思っていたので、返事は「そうですか・・・」と全く元気のなものになってしまった。
もともも、この物語(事件は)は私の懐には、何のお金も入っきていない。全て私の会社の口座を素通りしただけで、そのお金は、まず私の手形をつかって、お金の融通をしようとした人間がいた。多分その中に、姉さんの所にも行ったのだろう。そしてその手形を償還、決済する段になって、お金を着けることが出来なくなり、どうにか、借りきりで、取り込んで逃げる方法を考えたのである。その条件として、私の命や、私に直接的な返済の義務が生じることを、しなくて済む方法を考えたのである。あとどうせ潰す会社なら、取り込める範囲で、取り込む方法を考えて、この一ヶ月間で、役150万円を、闇金業者から引っ張た。
相手の闇金業者も、ある意味、玄人さんなら、こちらもその内容から言うと玄人なのであろう。

3時前になった。
「キタムラちゃん・・・そろそろ行こか?・・・」と言って帰る準備をする。
「先に帰っていいよ・・・まだ騒ぎは起こらんから・・」と言う。
騒ぎがこの先起こるというのか・・・「そんなん聞いてへんやん・・」と一人誰にぶつけることも出来ずに、ややふてくされ気味で正に帰ろうとしていた時、姉さんは、財布から30000円を出して、私に握らせてくれた。「子供さんと何か美味しいものでも食べや・・」と言う。
何かしらないけど「ありがとう・・」と言った。
それから・・「キタムラちゃん・・手形は、代表の裏書、保証をしていないから、会社がつぶれた後は、正式な手続き以外(債権者会議等)は文句いわれへんから、キタムラちゃんには危害は及ぶことは、無いと思うよ・・」と言う。
「そんなもんかいな・・」と思いながら事務所をでた。
純粋に仕事に燃えたあの事務所を興した時のことを思い出しながら、ここまでの凋落ぶりというっか、こうなることが当たり前だったのか、全て自分の甘さから起きたことであった。

玄関先で、姉さんの子分の幹部の若い衆がいた。そこに電話がかっかた。
「そんなん知りまへんがな・・・・」「ワシの紹介言うても、保証も何もしてまへんやろ・・」
「そこまで言うねんやったら・・出るとこ出はったらどうでんのん!!」と撒くしたてている。
私と目があった。「闇金から・・・や」と言って、さらにすごんだ文句で、撒くしたてている。
「携帯つながれん・・・・?」と言ったところで、ウインクをする。
「社長・・・携帯もう出たらあきまへんで・・」と言う。
「前の携帯は、電池を抜いておきました・・」と返事をして・・その場を後にした。

問題は、自宅への嫌がらせや、強引な取立てである。それは当所心配したより、何もなく過ぎって言った。3名くらいは、自宅のチャイムもならした闇金もいたみたいだが、あらかじめ家族には、大まかなことは話しておいたので、家族もそれほどあたふたとすることはなかった。
実は、「弁護士に頼んであるから・・もし脅しのひとつでもあれば、その会社名と連絡先を、辛いけど、教えてもらうように・・」と話しておいた。

二三日たった。姉さんから電話があり・・・
「大丈夫やろ・・・」といかにも、そうなることのように言う。
「実は、会社の手形が不当たりになったと言っても、会社がつぶれたわけでないから・・話しあんねん・・」と電話で話す。
さらに、死に態の私の会社を使ってもう一事件を起こそうとしているようだ。
「懲りない連中・・」。 
家族や、ファミリーを生かす為に、他人と食うか、食われるか・・を法律ぎりぎり、モラル常識を逸脱したところで戦いながら、生きているこの人達の根性に改めて感心した。
私の会社、私をはめたことになっているのに、何故か怒りを覚えないのは何故か?
そんな疑問が私に起こる。銀行、信販など公の金融関係には、もう私の信用はなくなった。
しかし、正直な話し。その前からクレジットの滞納や、ローンの返済が滞っていたのだ。
そのことを、姉さん達は知っていたから、彼らのなかでは、不幸中のよくあることであったのだろう。それともうひとつ、姉さんは、私に一銭のお金も出さすことはなかったし、「あそこだけは、キタムラちゃんが返済して・・」と言うようなこともなかった。
私の手形は不当たりになった。
しかし何の圧力も受けることなく時間が過ぎようとしている。会社を運営イしていた時からの、各種のリースや、ローンなどは、大手金融関係には、泣かすことになり、泣いてもらうことで、生き残り、生きていく方法を、なんとか駆使してくれたような気がする。
このようなことが事件が起こらなくても、いずれ近いうちに私の会社はバンザイしていたのだ。
だから、怖い日々もあるかもしれないが、ある意味で開き直りもできていた。
それから数日、前の携帯電話の留守電を聞いた。

何社かの若い男から・・連絡を欲しいというメッセージと共に、
「●●●金融です。御社での融資債権を放棄します・・・」とのメッセージが入っていた。

 



次回最終章・・・


夏の日のえげつない日々「闇金業者」 PART4

2011年08月25日 | 自小説 ノンンフィクション小説

 いよいよXディーにせまった。明日私の手形が完全に不当たりになる。そして闇金から借りているというか、取り込んだお金の返済が待っている。気持ちは完全に虚ろになっている。
直ぐにでも、誰かに電話したい気持ちで、一杯である。このあいだ同級生で、大手ゼネコンの総務部に勤めている友人に連絡をとり、今の現状を話した。状況聞いて、「後から電話する・・」とのことで、その電話を待っているが、落ち着かない。
「なあーキタムラ、その状況メチャメチャまずいで・・・」
「今の所、破産宣告をするしか・・その身を守れる方法もない・・」と返事をくれた。
「このあいだも弁護士に相談したけど・・・悪いのは、ドッチもドッチやそうで・・ 僕の腕の一本が折られたら、助けてあげるは・・」と弁護士に言われた。その言葉は、痛烈に私の心の中に突き刺さっている。この私の会社と、私の手形を中心とした事件と呼べるのか?、この件は、玄人さん同士の、それもその厳しい玄人世界の、小者な人間が、起こしている、えげつない、品のないお金の、取り込み合戦でしかないのだ。しかし、もう行く道を進まなければならない。
今更、姉さんにも、その後にある組の関係者に対しても、はしごを外すことは出来ないのだ。
それこそ、ここに来て、二手から半目を作ることになる。
私は、「ただ信じる・・・この姉さんと、その後にいるえげつない人々を・・」と言い聞かした。

前日、落ち着かないので、後輩とファミリーレストランで話をすることになった。
誘い出したのは、私である。後輩は、一連の話も知っているし、あることから私の会社にも出入りしていたので、、今回の配役のキャラなども説明しなくてもいい。
十一時おろまで喋り、駐車場に戻ると・・・・・
運転席側のドアーの下に、黒い男物の財布が、綺麗に落ちていた。こお光景は、落としてあったと言ったほうがいいのかもしれない。
財布を拾い、中を開ける。数枚の名刺と、一万円札が3枚、100ドル札が5枚入っていた。
私は、この財布をとり、警察に届けなかった。
「このタイミングで・・神様が、逃走資金に用意していただいたのだ・・」と都合のいい考え方をした。 今振り返ると、これこそが、神様に試されたテストであった気がする。
真面目に生きる・・・ 凛として生きる・・・ 正直に生きることをここで踏み絵をさせられたのであろうか? ものの見事に、私は汚い人間らしくというか、自分本位の行動をとった。
でも。それも今こうなって思えることであり、その瞬間には、「ラッキー・・・・」と感じていて、宇宙の営みのめぐりあわせに、一人悦に浸っていたのかもしれない・・

手形が不当たりになる当日。朝から妙な震えを体に感じていた。
めったにすることのない、仏壇に手を合わせ、徐に、線香の燃え粉を、少しつまんで口の中に入れていた。「にがい・・・」「この苦さを肝に覚えさせておく・・・・・」という考えよりも、「これをしたから・・何とか上手い方向に事が運びますように・・・・」という、本当に都合のいい事ばかりを神様、仏さまに、お頼みしていた。まだこの場におよんで、好転を誰かの力で呼んでいたのだ。

事務所についた。しばらくして姉さんもやってきた。
「キタムラちゃん・・今170万くらいしか・・取り込めてないから・・最後にもう一件、何処かの闇金に、申し込んでみようや・・・」と言い出す。
「えええ・・・今日もやるんですか?」と本日の重要な意味を知っての発言なのかを疑うように答える。
「三時ギリギリまでは、こに事務所には誰もこないし、電話もないから・・・」とあっさり言う。
「はい・・・判りました・・」答えて。今までに借りて既に返済している闇金グループの何箇所かに電話をいれる。
「●●●のキタムラです。」「今日決済さいで、ちょっと足らんねんけど・・都合できるか?」と話す。先方にもどれだけの情報が入っているかは判らない。
「パラダイスとセブンと東京東洋はつながっているから、そこは駄目や・・・」と横から姉さんの指南が入る。「ここはどうや・・・」と別のメモをだす。
そして、もうここに来て貸し手くれる闇金があるのも信じられない思いで、電話を架ける。
本心は、もう貸してくれんでもいい・・・ 「今借りて、数時間後に不当たりになったら、それこそ闇金業者も、確信犯として、とことんまで追い込んで来るやろうな・・」と、本当に沈んだ気持ちでいた。
12時になった。姉さんの旦那で、現役の組長さんが、事務所に訪ねてきた。
「キタムラちゃん・・・ あんた何にも悪ないのやで・・・」「あんたの所為でこうなったんと違うから・・」
「はい・・・よう判ってますけど・・」「これからどうなるんでしょうね・・?」と、助けて欲しい気持ちを、韻に含ませて言った。
その姉さんの旦那の組長さんは・・「わしは、関係ないから・・・あかんここにいたら同じ仲間と間違えられるは・・・」と言って、笑いながら、事務所をでて行った。

つづく


夏の日のえげつない日々「闇金業者」 PART3

2011年08月23日 | 自小説 ノンンフィクション小説

闇金業者とのやり取りは3週間目にはいった。姉さんは、9月の25日を、この会社のXディーにしようと言う。そしていよいよ闇金業者からの取り込みに懸かるというのだ。
9月25日の1週間前に借りれるだけ借りる、その借りたぶんは、返済をしないで、俗に言う「トバス」のだ。その辺の段取りは理解できるが、当の本人、手形、小切手の振り出し人である、私の心持ちは複雑である。
まず手形、小切手が不当たりになった場合いに、私や私の家に、その手の人間が押し寄せてくるのではないかと言う不安がある。既に、私の自宅電話の留守番機能には、「キタムラ借金まみれ、キタムラ借金まみれ・・・・」と言う悪戯が録音されていた。
姉さんと、その知り合いの根性の座った男性が、一度事務所にきて、25日以降の私の身の振り方を考えてくれた。
そもそも今回の件は、姉さんの知り合いの方に手形を融通したことから起きたことであり、また社業の業績もそれほで芳しくない状態であり、ブラッキーな資金繰りをしたのが、発端である。
が、私の会社が取り込んだ金は、まったく0である。ようは周りが私の手形を使って資金繰りをしたが、その穴埋めが出来なったので、私に、その今際の救済の手助けしてくれいるという図式である。この期におよんで、後悔や反省は多々あるが、動き出したものいまさら、止まるわけもなく、よくある話しとして、大阪湾に沈められるのだけは避けたいと思っていた。
そのころ、友人のN君の紹介で、バブルの不良債権の回収機構をつとめた●坊弁護士の弟子である、I先生に話を聞いてもらった。熱い夏、阪神タイガースのどら焼を手土産に、裁判所の近所のI先先の事務所に向かった。
「はやく・・このグループから手を引いてもらい、弁護士を入れて解決に向かう・・・そのほうがいい」という気持ちはあった。今更、姉さんらにどいてもらうことも言えないし、それはそれで完全なアウトローなやり方も、自分の中で根性がないと言うか、びびっていると言うか、前にも、後にも動けない自分が、人負かせで生きているのが情けなかった。

弁護士事務所では、一連の話をしたあと・・・
「あんたらも・・・悪やね・・」と一言。
「これはどっちもどっちや・・」と笑う。
「もし・・あんたが腕の一本でも折られたら、その時に話を聞くは・・・・」とビッシと言われた。
私は目が覚めたというか、世の中の厳しさを改めて感じたというか・・・とにかく自分の心、肝に熱が帯びたというか、ただ、「そのお言葉で十分です。有難うございます・・」と言って、I先先の事務所を後にした。

熱い日差しが照りつけるなか、私は心に決めた。
「行く道、行かなしょうがない・・」
「初めに、姉さんたちを信じた、信じたふりをしたから・・、それやったら最後まで、この問題が型つくまで、共に動かないと仕方ない・・」と決めた。
「腕を折られた時は・・それから考えることにする」とそっちの方に腹を決めた。

そしてXディーの一週間前になった。
これからの闇金業者からの融資は、全て返さないものである。すべからずそう思うと、電話口でも緊張しているのがわかる。
「キタムラちゃん、もう少しで闇金から電話いっぱい懸かってくるから、携帯今のうちもう一つ持っておいたほうがいいよ・・」言われる。
「了解しました。」と答え、AUをほかすつもりで、ドコモに新規契約をした。
「それから・・今やったら・サラ金も借りれるだけ借りてたほうがいいよ・・」と姉さんは、普通に言う。「50万くらい自分で持っていたほうが、生活助かるやろ・・」と言って準大手のサラ金に目星をつけ、行ってきたらいい、と軽く、友達感覚で言う。
「何処までしたたかなんや・・」と思う反面。その生きるという術には、裏も表もあり、綺麗こと、理想だけで生きていけるほど甘くないことも改めて知ることになる。

いつもの昼時間。姉さんと、うどん定食を向かい合って食べながら、かばんの中から一枚のハガキを取り出した。やや赤みがかったそのハガキは、ある組員の破門状であった。
「行くも地獄、止まるも地獄、行く道いくしかないのや・・・・で」と姉さんは一人語とのように呟く。
「キタムラちゃん・・印刷屋、安いとこ知ってる・・」聞く。
「この破門状、1000枚と500枚でどれくらい懸かるやろ・・」と日常の、会話で話す。
この人も、あれや、これやで苦労しているのだ。

「キタムラちゃん・・事務所の廻りに、なんか様子のおかしい男、うろちょろしてへんか?・・」と聞く。「飛ぶ様子を伺って、偵察に来てるんや・・」とのこと。
「だから、事務所の出入りは、明るく、いかにも仕事忙しいという格好で、してね。・・」と教えてくれる。
もうまもなく・・・ 私の手形が不当たりになる。

つづく



夏の日のえげつない日々「闇金業者」 PART2

2011年08月21日 | 自小説 ノンンフィクション小説

一度借りると、そこからが、闇金システム業者の本領発揮ということだ。
翌日から、どこで知ったのか、いろいろな闇金業者から電話が懸かってくる。ある業者の電話暗号は、神奈川だったり、ある業者は、福岡だったりして、日本全国に存在するように思われる。
しかし、転送機能を使っているのではないかという懸念を持つが、書留の住所は私書箱留になっているものもあれば、実際に地方の闇金業者に送るようになっている。

姉さんは「いよいよここからが本番と言う・・・」。一日五六件懸かってくる闇金業者の電話を一覧表にすること。そしてどこの業者にどれだけ借りて、その返済をどの業者からするのかを・・計画的に、こなしていくことである。一度借りた業差は、返済共にその枠をアップさせてくる。
会社の資金繰りの悪さも、既に闇金業者は知っている。それも此方の姉さんを中心とした、特別チームも知っているのだ。
ただ、闇金業者グループも数グループに分かれている。電話番号だけが一人歩きして、借財の情報を全く持っていないグループもある。そんなグループには、また一からの話をして、融資枠を取ることにする。
「うちわ手形で貸すから・・・」という業者。しかし振込みではなく、直接渡すのがうちのルールでしてと言うと、姉さんは、「少々お持ち下さい・・」と言って、「キタムラちゃん・・セブンさん来るで・・・」と言う。既に事務所の主だった備品は、業者に引き取られているのだが、「そこを何とかして・・体裁をつくらなあかん」と言う。早速どっかの若い衆が、簡単な応接セットを持ってきた。
アイスコーヒのセットも用意され、姉さんもちょっと事務員らしくラフな服装から、昔は綺麗な人だったのだと証明するように、落ち着いたスーツを着た。

案外と思える若い男がやってきた。私は一番奥の机で仕事をしている様にふるまっていた。
「社長・・・セブンさんがお越しです・・」といかにも事務員のような口ぶりで対応している。
「はい・・・今行きます・・」などと少々演技しながら、俄かに若い衆が持ってきた応接セットに、闇金の若い男を案内して、私はその前に座った。
「さっそくですが・・・おたくは手形等かなり出回っていますよね・・」と説明し始めた。
「当所100万の融資枠でしたが、それは出来ませんが、70万なら融通できます・・」と言う。
「100万でっか・・」といかにも大阪弁で場慣れた雰囲気話す。
姉さんは、アイスコーヒーをお盆に載せて、応接セットの低いテーブルに置いた。
ミルクとシロップも忘れず、完璧なこの場の接客である。
アイスコーヒーを置いたあと、私の横に立ち、「社長・・・70万あれば十分、手形の決済は出来ます・・」と言う。「●●からの入金も足したら・・25日の分はOKです」と打ち合わせもないアドリブで話す。「そしたら・・70万で結構です。」と私が言う。
その若い闇金の男は、鞄から70万を取り出し、テーブルの上におく。
私は、自分の振り出しの手形が、またもこうして闇金業者に渡るのを、心細く、この後に何が起こるのかが、全く想像できないまま、姉さんが、事務机のチェッカーで小気味良い電子音を出して、70万の金額を手形に打っている。手形と会社の実印と印鑑の朱肉と、ティッシュを持ってきた。「社長これで・・・印鑑をお願いいたします」と出来る経理事務員を演じる。
私は・・今の景気から、闇金業界のことなどを話しながら・・早くかえってくれと思っていた。
借りた70万は、前に借りた闇金の返済に充てる。金利がついている分、日が経つにつれ、借り入れを多くしなければ、到底この方法は廻らない。だから少しづつ闇金業者のリストも増えていっている。違うグループの闇金業者では、既に断りを入れだしたところも現れだした。

姉さんは・・ことの大きさも、自分の度量と反比例して、まったく意に介さず、「キタムラちゃん、お昼出前取ろか・・・」と言って、いつものうどん定食を奢ってくれる。
銀行が閉まる3持までが勝負であり・・3時を過ぎると、闇金業者からの電話がぴったとなくなる。姉さんはその後、店舗型の手形融通の街金融に行くと言う。
大阪南のとあるビルの7階に行く。
表向きは物販のような体裁を装っているが、紛れも無くそれは街金であった。
私は・・35万の買い物をその街金的な物販会社でしたことで、その支払い代金を手形で払うことにする。そしてその商品を28万で引き取るというようなシステムになっていた。
「どの道・・何処かでこの会社を潰さなあかんから・・・それまで持ちこたえるように、闇金のお金を廻していかなな・・・」と姉さんは言う。
最終的には、パンクするという、その時点でどれくらい借りた現金が、手元に残るかが勝負である。
リストには既に30社くらいの闇金業者のリストと、1ヶ月先までの、超グレーな資金繰りが書かれていた。私は近所の郵便局員にも顔を覚えられるほど・・毎日郵便局に通ったのだ。

つづく