ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

日経エレクトロニクス Tech-On! の記事から

2009年03月01日 | ITS
前回のエントリーにねこ氏から以下の情報をいただいた。
日経エレクトロニクスの記事「ITSにお金を払えますか?」

このブログが言い続けていることをA4一枚にまとめたような内容となっている。
極めて的確な記事だと思う。
ITSに関しては表面をなぜたような賛同記事が多い中、筆者の清水直茂氏には敬服する。

大きくいえば論点は2つ。
まずは官に船頭が多すぎる点。
国土交通省道路局(旧建設省)の「スマートウェイ」,同省自動車交通局(旧運輸省)の「ASV」,警察庁の「DSSS」,経済産業省の「ユビキタスITS」がそれぞれ異なる通信方式で覇権争いをしているように見える。

次に、消費者は安全には金を払わない、ということ。
まあ、これは一般論として確かにその通りなのだが、エアバッグやABSといった実効のある安全装置に対しては消費者はそのコストアップを受け入れてきた。結局は(少なくとも今の)ITSが提供する安全に対価を払うほどの価値がない、ということだと思う。

参宮橋実験に話を戻す。

スマートウェイは今回の大規模実験を「参宮橋実験における成果」の延長線としている。
しかし、どうしても理解できないことがある。
参宮橋実験が成功であったというのなら、なぜそれを首都高速の危険カーブで実用化していかないのか?実験が成功と評価されてもう3年がたつが、その他の危険カーブすべてに設置する、という話は聞かない。

実験はビーコン式のVICSで行われたが、これをDSRCに発展させたいということか?

なぜ?

ビーコン対応のナビゲーションは総走行車両の10%にしか装着されていないから?
でも成果があったんでしょ?
「10%でも、それらのクルマが通行速度のペースメーカーのような働きをして効果を生んだ」というのが正式見解のはずだが。

つまりはこういうことだろう。

1.VICSは警察庁系のインフラで、参宮橋ではこれを使うしか選択肢がなかった。でも国交省はETCに採用したDSRCを使いたい。
VICSを活用した形での拡大はそれを阻害する。

2.参宮橋で本当に効果があったのが路車間通信ではなく、路面補修や路側表示の改善であったことを関係者は本音では承知している。

いつも言うことだが、ゴールは事故を減らすことなんじゃないか。

最後に、清水氏の記事はこう締めくくる。
「ITSに関わる多くのエンジニアはこうした課題を百も承知。うんざりしながらも,歯を食いしばって開発を進めているのは,そこに将来の夢があるからだと思います。」
これもまさにその通りだろう。
交通事故死者を減らしたい、という夢を追いかけている技術者がたくさんいるのだ。
それを支援するのが国の仕事のはずなのだが、それがどうもかみ合わない。