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ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

一年間、ITSはまったく進歩がなかったということか

2006年01月15日 | ITS
前々回(1月12日)、一年前の報道ステーションの内容を今年の放送だと思い、記事をアップしてしまった。
内容に違和感がなかったので迂闊にも勘違いしたのだが、別の見方をすればこの一年間、ITSは何の進歩もなかった、と言うことかもしれない。
ドッグイヤーと言われるITや通信の世界では、これは異常なことだ。

実際、ITS構想はETCを除いて完全に行き詰まってしまっているのだ。
それはこういうことだ。

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国交省は路車間通信を活用した「スマートウェイ」を実現したい。

そのためには、すべての車に通信機が装備されなくてはならない。

ETCはまさにその通信機であるが、ETC以外には使えない。

その他に応用が利く「多機能ETC」を、民間サービスを梃子に普及させたい。

しかし、ビジネスとして成立する民間サービスは出現しそうにない。
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ITSがうまくいかない理由は、消費者にとって「お金を払う価値のある」サービスが見出せないからである。

一方で「魅力あるサービスはいつか、誰かが見つけるだろう」という論調がいまだに多い。

そういった主張をする人たちは、有料情報コンテンツや広告配信、データダウンロードなど、インターネットでのビジネスモデルを引き合いにする。
しかし、車は目的地に到達するための道具であり、かつ、車内では運転をしなければならない(=ひまではない)のだ。
自宅や職場でPCを前にしている状況とはまったく異なるということは明らかである。

こうした考え方がある限り、ITSがその泥沼から這い出すことは不可能だろう。

ITSは安全向上のための公共インフラ整備として割り切るべきだ。

多機能ETCの市場性(2)

2006年01月12日 | ITS
新年の日経記事で紹介された関係で、様々なWEB上のメディアが多機能ETCについて触れているが、否定的な記事や個人意見は検索することができなかった。

しかし、みんな本当にそんな機能が便利だと認めているのだろうか?

2年ほど前、あるカー用品チェーンが実施した多機能ETCに対する意識調査では、ユーザーの利用意向は給油所利用がトップだった。車内で取引決済する機会は給油所が一番多いからだろう。
その他のサイトでは、「給油所で降車せずに決済できるようになる」という表現をみつけたが、それを書いた人間はなにを考えているのだろう。車を持っていない人か?

言うまでもなく、今でもフルサービスの給油所では車から降りる必要はなく、セルフの給油所であればDSRCサービスが導入されても車から降りなくてはならない。

給油所でDSRC決済が消費者にもたらす利便は「サイフからクレジットカードを取り出さなくて良くなる」ことだけである。

そしてその他の機能についても、突き詰めればほとんど市場性がないのだ。

多機能ETCの市場性

2006年01月08日 | ITS
元日付けの日刊自動車に、2006年のITSについての記事があった。
要約すれば、ITSは安全にフォーカスし、その具体策はDSRC利用による交通情報提供である、という。
これには二つの主要なプロジェクトがあるのだろう。
ひとつはDSRCを活用したプローブ(フォローティング)情報によるVICS精度向上、もうひとつはカーブ先渋滞の表示など、つまりは参宮橋実験のようなことである。

安全にフォーカスするのは極めて正しい判断である。
また、DSRCをVICS精度向上に使うというのも納得が出来る施策だと思う。

松下と三菱電機は本年夏、多機能ETCを発売するが、上記の構想は多機能ETCなくしては成立しない。

しかし、問題は「多機能ETC車載器がそのサービス付加価値を梃子に民間の力で市場に浸透していき、国はそれを活用してITSを推進する」という絵を国交省は望んでいる、ということだ。
あわよくば、高速道路を利用しないユーザーまで拡大できれば、ということなのかもしれない。

繰り返すが、多機能ETCの民間サービスには魅力がない。
見込まれるサービス「駐車場、給油所、コンビニ、ドライブスルー、データダウンロード、広告配信、情報提供サービス」のなかで、唯一現実的なものは駐車場サービスだけだ。

しかし、地方都市では市街地中心部以外では有料駐車場を利用する機会なんてほとんどない、という事実を忘れてはいけない。

多機能ETCサービスで「高速道路ETCがいらない」ユーザーまで取り込む、という考え方はまったく絵に描いた餅である。

次世代ETC 今夏始動?

2006年01月06日 | ITS
1月5日付け日経朝刊によれば、次世代ETC(DSRCサービス対応)ETC車載器が今夏にも松下と三菱電機から発売されるそうだ。

この記事自体、結語は「普及に向けた課題は大きい」(紙面版)としている。日経がこういう書き方をする時は通常否定形だと思っていい。

今年の夏時点では、利用可能なサービス(駐車場、給油所など)はほとんどないだろう。
通常のETCと同一価格で、おまけのようにその機能がついてくるならまだしも、使い道のないサービス機能に余分なお金を払う消費者はいないだろう。

前にも書いたが、対応車載器と対応サービス施設はチキンエッグだ。車載器側・施設側のどちらかが腹をくくって出費をし拡充しなければ、全体の普及はありえない。

松下、三菱電機ともに車載器メーカーであるとともにサービス対応機器メーカーでもある。こうした駐車場などへのサービス対応機器販売を目的に、車載器は赤字で販売する、という戦略はなくはない。というか、DSRCサービスというビジネスをやりたいのであれば、それしかチャンスはないだろう。

それをすることを前提に考えても、ハードルは高い。その根拠をここでは3つ示しておく。

・すでに、ETCを欲しい人の過半数は装着を完了してしまっている。その人たちがわざわざETC車載器を買い換えることはありえない。

・ETCの車載器に相当する「スイカ」や「おサイフケータイ」は1000万ユーザー以上に普及しているが、対応店舗の拡大はさほど進んでいるとは思えない。
DSRCサービス利用も同様、言うほどの消費者ニーズではない可能性が高い。

・自動車メーカーは、現行のETC機器がキチンと納まるスペースを今後の新車には設けてくるだろう。DSRC対応機はそこに収まらないと、最大の販売チャンスである新車時ディーラーオプション販売を取り逃がすことになる。

DSRCサービス 駐車場利用の便利さ

2006年01月05日 | ITS
以下のリンクから、JARI(日本自動車研究所)ITSセンター長による、DSRC駐車場サービスが以下に便利か、実地説明を見ることが出来る。

なお、掲載サイトであるWISDOMはトップページ以外へのリンクを禁止しているが、DSRC関連記事が「ゆとりの達人」の下にあるとは誰も想像もつかないだろうから、あえて直リンさせていただく。罪滅ぼしにトップページはこちら
『より良いクルマ社会を目指して!』ITS自動決済で"らくらくドライブスルー

さて、どうであろうか。
まず、駐車場の入場は、DSRCだからといってノンストップではなく、認証をまってから機器のボタンを押して承諾する必要がある。
ワンタッチのパワーウインドウスイッチを押して、カードを受け取るのと比べ、大差ないとしか思えない。
カードの受け取りは左ハンドルの場合厄介だとか、幅寄せが大変とか記載があるが、それはたいした話ではない。
(というか、カードを取る程度の幅寄せが出来ないドライバーに、あまり公道を走行してもらいたくないなぁ。それと、正規インポートの左ハンドル車って少なくなっているんじゃない?)

支払いは確実にDSRCの方が楽だ。
モニターで使った人に便利か?と聞けば、便利だと答えるに決まっている。

しかし、記事では現金支払い時に雨に濡れることが強調されているが、最近は屋内での事前決済方式が多くなってきており、そこでクレジットカードが使えるケースも出てきている。
さらに出口はナンバー認識でそのまま通過できるタイプも増えてきた。
(昨年末利用した羽田空港駐車場がそうであったが、しばらく観察していたがカードで払う人はいなかった。やはり、日本では「キャッシュレス」そのものはあまりセールスポイントにはならないと思う。)

リンク先の記事を読む限り、確かにDSRCによる駐車場決済は便利な仕組みだが、高速道路の料金所自動決済がもたらした便利さとはまったく次元が違う。

少なくとも私はこのサービスにプレミアムの対価を支払う気にはならない。

VICS情報プローブ懇談会から

2006年01月04日 | ITS
自動車ジャーナリスト清水和夫氏のブログから引用させていただく。
氏が昨年9月に催されたVICS情報プローブ懇談会に出席したときの感想である。

ここから引用----------------------------------------------
私が賛同できる意見は次のようなものだった。

1)道路インフラはミニマムにするべき。
すでに自動車メーカーが実施している携帯電話を利用したプローブカーサービスのほうが便利そうだ。

2)クルマがネットワークに繋がる意味は極めて重大。
ITS社会の将来ビジョンを示すべきだ。さらにクルマのネットワーク化では、
単に道路情報だけではなく、もっと他の有効なニーズがありそうだ。
例えばドライバー教育や災害や緊急救命にも利用できる情報、公共交通情報(時刻表など)も提供すべき。
このような新しいニーズを掘り起こすことが重要だ。

3)民間にできることは民間にまかせ、行政にしかできないことを、
政府は押し進める。まさに官民のハイブリット構想だ。

4)ユーザーニーズとユーザーの視点が極めて重要

ITS社会は、きっとすばらしいものになるだろう。
ここまで--------------------------------------------------

私が賛同できるのは4)の「ユーザーニーズとユーザーの視点が極めて重要」という部分だけだ。

民間に出来ることは民間に任せる。それはもっともな意見だ。
しかし、民間に任せるためにはビジネスモデルが構築できなくてはならない。
そして、「何かあるはず」といわれてもう3年以上経つが、いまだに収益を上げるビジネスは出現していない。

氏自身、思いつくのは「ドライバー教育や災害や緊急救命にも利用できる情報、公共交通情報(時刻表など)」といっているが、
どれをとってもとてもユーザーがお金を払うとは思えないものばかりではないか?

氏が言っているように、プローブが大きな可能性を秘めていることはそのとおりだと思う。
しかし、携帯通信料金の今後にもよるが、現状ではクルマがすべて通信機器を積み、
ユーザーがその通信料を負担するビジネスモデルの普及は考えられないだろう。

私は、ITSは官主導以外にはあり得ないと思っている。
そして、それだからこそ、本来の事故防止、渋滞防止にターゲットを厳選して税金を投入してほしい。
さらに言えば、通信ありきではないのだ、ということをもっと意識してほしい。
通信を使うことがもっともコスト・効率メリットがあるなら、使えばいい。レガシーな手段が有効なら、それを使えばいい。

ITSという言葉が皆を惑わすのだ。

トヨタのミュージックプレーヤーとは

2006年01月02日 | ITS
トヨタのミュージックプレーヤーとは、新型bBのことだった。

先週、オートサロンでホンダがクルマに特別な思い入れを持たない最近の若者に対応するコンセプトカーを展示すると書いたが、まさに同じようなアプローチだ。
もはや、動力性能など、クルマ本来の性能は(普通の)若者にとって何の価値もないのだ。

トヨタは、若者向けモデルであるbBのコンセプトとして、「クルマ型ミュージックプレーヤー」という、車自体が音楽を聴くためにあるのだ、としている。
Webサイトも 「ヘイヨー!チェキラ!」だぜ。

昔はこうしたスーパーオーディオはマニアが自分で改造するもので、メーカー仕様なんて見向きもされなかったのだが、今は大体がクルマに思い入れない世代だから、カーショップで自分でオーディオをいじるというようなこともない。

三菱のアウトランダーもアメリカのやんちゃなオーディオブランドであるRockfordでウーファーをズンズン鳴らす仕様があるが、このクルマが想定外の売れ行きとなっていることから見ても、こうしたメーカー仕様のスーパーカーオーディオってのはこの先ありなのかもしれない。

しかしこの新bB、エクステリアデザインはかなりすごい。モビルスーツのようだ。すくなくともおしゃれではない。
これはANIMEにあこがれる北米オタクを意識したサイオン向けってこともあるんだろうが、国内の若者はちょっと引くんじゃないの?

2006年のITSを予測する

2006年01月02日 | ITS
年頭でもあるので、今年ITSがどのようになるのかを予測してみよう。

■好調
1.ETC
現在の増加ペースを維持するだろう。今年新車に買い換える消費者(現在未装着)の6-7割は新車と同時にETCをオプションで注文するだろう。

2.ASV(先進安全自動車・国交省HP
大手3社を中心にその技術開発は更にすすみ、特にカメラやレーダーをセンサーにしたスタンドアロンの車線逸脱防止と車間距離維持・衝突防止システムは更に進化していくだろう。
他社を凌駕する装備の開発は車両の販売に直接影響するため、健全な競争原理が働き、各社の研究開発はとどまることがないだろう。

■不調
1.テレマティクス
G-BOOKCARWINGSともに「やめるわけにいかない」というだけの理由で最後の勝負をしてくるだろうが、何をやっても市場の活性化はないだろう。
本業の好調をバックに利用料完全無料化をも視野にいれてくるかもしれない。

2.ETC(DSRC)サービス利用
2007年本格サービス開始、と謳っているが、2006年にその基盤整備は一部の公共駐車場以外ではまったく進展しないだろう。対応車載器が発売されるだろうが、まったく売れないだろう。

3.スマートプレート 注)
プライバシー問題などデリケートな課題があり、推進に向けての大胆な動きはないだろう。行政事務の合理化というお題目はあまりに説得力がない。正々堂々とセキュリティの観点から世論を納得させるのが唯一残された方法だろうが、わが国ではうまくいかないだろう。

注)タイトルのリンクは国交省の資料(PDF)。このファイルの名前が「Slender Plate」となっているのは、何かの冗談なのだろうか?
(Slender:やせている=日本語英語の「スマート」。賢いという意味はない。むしろ頼りないという感じのネガティヴワード)

元旦の日経を読んで感じたITSの現状

2006年01月01日 | ITS
新年あけましておめでとうございます。

さて、元日付けの日経には、かならずハイテク系の特集版がつく。
一年前は、ユビキタス特集ということで、ITS関連もIBAの紹介などが掲載されていたが、今年のハイテク特集には残念ながらITSという文字はなかった。

「ITS関連市場は10兆円」などという全く馬鹿げた夢物語を批判することを目的このブログを始めたが、やっとここにきてメディアも事実が何であるか、わかってきているようだ。

ブログの目的はある意味、達成されてしまったのかもしれない。
しかし、なぜかさびしさを感じてしまう。

2006年は、いままでの車載通信に対する過度な期待や幻想を一度リセットし、ITSを本当に消費者にとって、もっといえば交通安全にとって有効なものにする、仕切りなおしの元年としてほしいものだ。