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”BEND SKIN BEATS”by Tala Andre Marie
タラ・アンドレ・マリー。アフリカは赤道直下、我が国とは主にサッカー関係で時々変な縁が出来てしまう国、カメルーンのトップ・ミュージシャンである。盲目であるため、時に”カメルーンのスティービー・ワンダー”なる呼び方もされるようだが、アフリカには各国にそうあだ名される人がいるみたいなので、これはあんまり重要な情報ではないのかも知れない。
彼はともかく、あのジェイムス・ブラウンにデビューアルバムの中の曲をカバーされるという栄光の記録があり、でもなんかそればかり称揚されるとちょっと鼻白む気分もありで、かってLP時代にタラ・アンドレ・マリーの日本盤が出たにもかかわらず私は買っていなくて、その辺、何となくへそを曲げた結果かも知れない。
そんな次第で、このカメルーンの大スターの音楽を聴くのはこれがはじめてなのだが、確かにこれはいけてる人と言っていいのではないか。あのファンクの帝王JBがカバーしたというから、熱っぽいファンク・サウンドが炸裂しまくるのかと思いきや、むしろかなりクールな響きのある洗練されたファンク・ナンバーが整然と展開されたのである。
ボーカルもクールというより知的という表現を使いたい落ち着きようであるし、唄、作曲と共に”売り”であるらしいギターのプレイも、渋めのファンキーな展開を示し、これも捨てがたい魅力あり、である。
この、音の細部までに神経が行き届いた繊細さというのは、アンドレ・マリーの個性なのか、それともカメルーンという国の持ち味なのか、などとぼんやり考えつつ聴いていたのだが、驚きはまだその先に待っていたのだった。
このアルバムはアンドレ・マリーの初期総集編とも言うべきもので、70年代のデビュー当時のレコーディングから1998年の曲まで、20年以上にわたる彼の活動の軌跡が収められている。その中でも最初期に属する作品が面白いのだ。
なにしろフォークロック調なのであり、しかもその内にしっかりとアフリカらしさも滲み込ませている。この、赤道直下のクソ暑い国のポップスとも思えない爽やかさには、ちょっと魅せられてしまったのだ。キャリアの始めの頃は彼、こんなフォーク調の曲が好きだったんだなあ。
そういえば、この記事に添付しようとYou-tubeを漁っていたら、彼がエレキギター一本抱えてミニライブをやっている映像がいくつかあり、そこでの彼はバーズのジム・マッギンも相好を崩すであろう実にジングル・ジャングルなギター(分る人にしか分からない表現だが、すみません、先を急ぎます)をかき鳴らしてもいるのだ。
ギター・プレイをさらに観察してみると、アフリカン・ポップスを語る際に必ず出てくる”アフロ=キューバン調”ではなく、むしろロックギターがルーツにあるとあからさまに伝わるものがあり、何だかこのカメルーン男にますます親近感を抱いてしまったのだった。
もう彼はアフリカ調フォークロックはやらないのかなあ?やればいいのになあ。初出時はカメルーンの人々はどんな顔してこのサウンドを受け止めたのか、などと空想は広がる。いやいやまだまだ面白い音楽はあります。