ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ウクレレは燃えている

2007-08-31 00:52:15 | 太平洋地域


 ”Ukulele Paradise!”by 平川洌

 サンズイに”列”で”キヨシ”と読むとは知らなんだなあ。ともあれ、私が恐れ入りつつ”スロウハンド”と密かに渾名しているウクレレの名手、平川氏の好アルバムであります。

 スロウハンドとはもちろんクラプトンの昔のアダ名を念頭に置いているのであって。平川氏はエディ・カマエ~ハーブ・オオタの流れに連なる、ウクレレの風雲児系列のプレイヤーであります。つまり、旧来の、のどかに和音を奏でるリズム楽器の立場に甘んじることなくバンドの中央に位置し、ソロで華麗にメロディを弾きまくるタイプのミュージシャン。

 とは言え、日本ハワイアンの歴史などにはまるで詳しくない私、平川氏がその世界でどのような立場にあるのやら、詳しくは存じません。が、その演奏を聴く限りでは、かなりの革命児なのではあるまいかと想像する次第で。

 平川氏がアルバムで取り上げる曲目の多くは、いわゆるハワイアンからは大幅に逸脱するケースも多い。プラターズやらナットキング・コールやらプレスリーなどのレパートリー、映画音楽やポルカやら。ともかく、ロックの、といいますかビートルズの時代の到来寸前までのポピュラー音楽総まくり、みたいなセレクトであり、まあ平川氏、その頃に青春を送られたかと思うんですが、興味深い。

 また、バンドの編成もハワイアンへの固執はまるでみられず、私の集めた近作においてはスチールギター等の、いわゆるハワイアンぽい楽器は使うことなく、むしろ軽くジャズっぽいプレイをするピアノ弾きを相棒としてスインギーに決める演奏を好まれるようです。

 それにしても、情け容赦のないプレイをする人だなあと、今、CDを聴き返して思わず笑ってしまったんだけれど。アップテンポの曲では素早い各種フレーズを駆使し、演奏時間いっぱいを存分に駆け回る。スローな曲では凝った装飾フレーズ全開で、切ない情感を歌い上げる。

 他の楽器がソロを取っている時でも、あるいはパワフルなコードストロークを、あるいはアルペジオを、あるいは凝ったオブリガートで主旋律に絡みまくりと、自己主張をやめない。この人、あとちょっと生まれるのが遅くてロック・ミュージシャンをやっていたら、ブッとい音でレス・ポールとか弾きまくっていたんだろうなあ、などと空想し、ふと笑えてしまったりしたのだけれど。

 そういえば。私は観光地の繁華街で育った者であり、その地の利を生かして(?)キャバレー等に出ている、人生ハスに構えたイナセなバンドマン諸氏に楽器の演奏法や音楽理論を学び、育って来たのだけれど、よく言われた言葉がある。「バンドをやるなら、音楽のジャンルにこだわるなよ。手前の楽器にこだわれ」と。
 この言葉の実践なのだろうなあ、平川氏の演奏姿勢なども。

 ともかくこのアルバム、この夏、私がもっとも頻繁に聴いたアイテムなのであって、夏の締めくくりとして、ここに紹介する次第。平川氏の作品にしては、取り上げられた曲は素直にハワイアン中心である(笑)特にラストの「ホノルルの月」の切なさは、何度聞いてもよろしいですなあ。


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