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”I Wish I Was In New Orleans”by Tom Waits
かねてから入院加療中だった義母(妹が嫁に行った先のお母さん)がいよいよ危ない、この数日だろう、なんて知らせが入ってきたので、冠婚葬祭の苦手な私は×××。そうでなくともこの夏の酷暑に打ちのめされ、かつ、仕事上もあれこれ問題発生で弱っているところだものなあ。そんなこと言うなよ。とは言うものの。
また、義母のご主人は政界の人だったので、それは亡くなってかなりの歳月が流れているとは言うものの、そのルートがまだ有効だったら普通の葬儀では済まないんではないか。なんていってみても私んちの葬儀でもなし、どうにもならないのだが。
それにしても結構な暴君だったらしいご主人に尽くして何度も政界に送り届け、家では三人の息子をそれぞれにエリートとして育て上げた義母の目には、私のような人間はどう映っていたのか。ヒッピー崩れの遊行者だものなあ。ほとんど人間の屑と思われていたのではないか。実際、一度も敬意というものをもって見られた記憶がないものなあ。ま、しょうがないんだけどね、それが正当な評価というものだ。
などと言いつつ。来て欲しいわけでもないその瞬間をただ待つしかないのが残された者の出来ることだったりする。
しょうがないから夜のウォーキングに出る。しかし今年の夏はなんだ。例年なら日が落ちればそれなりに気温も下がり、快調に歩き出す気分にもなるのだが、今年は深夜にいたってもモワッとした熱気が街を包んで動かない。ウォーキングは今夜も中途半端に終わり、汗を拭き吹き途中にあったコンビニに入り、本の立ち読みにかかる。
いつも思うのだが、気持ちが落ち込んでいるときにコンビニの片隅のエロ本コーナーにしけこむ際の、物悲しいようななんだか懐かしいような、この暖かく湿った感覚は何だろう。ルーザース・パラダイス”なんてタイトルの曲があってもいいような気がするが。
トム・ウェイツの”I WISH I WAS IN NEW ORLEANS ”などは、そんなひとときのテーマソングにちょうど良いかも知れない。
南からのあまやかに匂う夜風が通う、時代から取り残された音楽の都で、昔ながらの酒に酔っていたい。すべてのものの輪郭が夜闇のうちに曖昧になる、そのことの優しさ。懐かしい友、会った事もない友、何百年も昔に死んでしまったはずの友と手を組み、ジャズの音流れる古い通りを大笑いしながら酒瓶片手に闊歩していたい。
そんな時間の内に、世界などは崩れ去ってしまえばいい。もう辛い浮世などを振り返る必要がないように。この世のすべてが終わりのない祭りで、酷薄な運命を運んでくる夜明けなど、永遠に訪れることなどないように。
そして来るべき朝。酔いどれて道に横たわる罪人にはそれ相応の報いが必ず用意されており、であるからこそ、罪人はますます深く酔わねばならないのである。