ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ケイトとアンのまかない飯

2012-02-08 04:01:55 | フリーフォーク女子部

 ”Odditties” by Kate and Anna McGarrigle

 へえ、Kate and Anna McGarrigle の、こんなアルバムが出ていたのか。2010年の発売。トボけたタイトルだが、様々な企画のもとに録音してきた”ふざけた曲”ばかりを集めた盤、ということのようだ。
 とはいえ、別に冗談音楽をやっている訳でもなし、英語やフランス語の歌詞の細かいニュアンスまで理解できるわけでもない身としては、コミカルな曲に吹き出す、という訳にも行かず。
 彼女らの活動の本流から外れていると二人が判断した曲たちを集めてこのアルバムに押し込んでみた、ということのようだ。

 実際、聴いてみると奇妙な曲も含まれてはいるが、それが逆に、成り行きでそのような歌も歌う羽目になった彼女らの営業模様(?)を偲ばせ、興味深いものとなっている。
 聴いていると二人がライブ会場の楽屋裏で、あるいはコンサート・ツアーの合間に交わした無駄話やら笑い声みたいなものが聞こえてくるような、いわば二人の音楽活動の”行間”に流れていた空気感などを生々しく伝えてくるようで、気が付けば何度も聞き返してしまっているのだ。

 ことに、旧態依然、という感のあるバラードものが何曲が収められているのだが、その臆面もない感傷丸出しの歌い方が、これはパロディでやっているのだろうが、今となってはむしろ心に残る。皆の愛した姉妹デュオの片割れが昨年、天に召されてしまって、もう幸せなデュエットは聴くことができない、という現実を見据えてしまった今となっては。
 そしていつか、そんな”不在の日々”の手触りにも慣れとしまって、それでも我々の生きている明日は続いて行く。