”LA GRANDE CANTATRICE MALIENNE VOL.3”by NAHAWA DOUMBIA
西アフリカはマリ共和国。かの国の南西部地方で盛んな大衆音楽である”ワスル”の大歌手であるNAHAWA DOUMBIAの若き日のレコーディングがCD化された。82年度作品。
このアメリカのレーベルは、過去にアフリカ・ローカルでカセット・オンリーでリリースされた音源を続々とCD化して行く計画なのだそうで、いやもう、そう聞いただけで血湧き肉踊る気分だ。どんな未知のサウンドが飛び出してくるのか。
そんな計画の、これは先陣を切って登場した一発であり、ジャケ写真のNAHAWA DOUMBIAの姿など、見ているこちらが照れくさくなるほど若い。学校の昼休みに撮ったのか、と言いたくなるような萌え~ぶりである。
収められた音楽自体も、取り立ての果実みたいにみずみずしい輝きに満ちている。かの国の音楽を代表するような民族楽器、カマレ・ンゴレが幻惑的なフレーズをクルリとかき鳴らし、エレキギターやドラムスが続き、悠揚迫らざるリズムの流れが織り成され、そいつに乗ってNAHAWA DOUMBIAの若々しいコブシ・ボーカルがキラキラと響きわたる。
まこと、ニジェール川の流れのごとき悠然たる音楽の本流であって、この新鮮さは眩しいほどだ。このあと、時代はワールドミュージックのブームなど起こり、ずっと騒がしいものになる。そんな時代の中でユッスーもサリフ・ケイタも、まあ芸術的ではあるんだろうけど、ずいぶんと音楽をややこしくしてしまったなあ、なんて想いも浮かんできたりする。
これでよかったんじゃないか、実は?苦労して凝り倒したサウンドなんか作り出すよりも。生命の輝き迸るままにただ生きた歌を歌っていれば。
え?それで済むなら苦労はない?変転する時代の中で生き残って行くとは。ああ、いや、それはわかっているつもりなんですがね。こんな音楽を聴くと、ついそんなことを考えてしまう次第で。
という訳で、さて、次はどんな音が発掘されるんだろう、未知のアフリカから。