飯野和好さんの作品といえば、「ねぎぼうずのあさたろう」が有名ですよね。
他にも「くろずみ小太郎旅日記」とか「おもしろ落語絵本ごくらくらくご」とか
【和】のイメージが強いのでは? と思いますが。私と飯野さんの作品の出会いは、
それとは正反対の【洋もの】『シチリアのむかしばなし ドン・ローロのつぼ』という本です。
こどものとも年少版通巻263号、1999年2月1日発行
1999年の2月といえば、うちの娘が2歳半頃のこと。まだ早いかなと
思いながらも、年少版のほうを買い始めた頃でした。折り込み付録の
絵本のたのしみの「作者のことば」によると、この話は、『カオス・シチリア物語』
というイタリア映画(パオラ&ヴィットリオ・タヴィアーニ兄弟監督作品。
4編のオムニバスからなる不思議な妖しい物語)の第3話『甕』を
絵本にしたとのことです。映画の中では、「かめ」ですが、それを「つぼ」
としたのは、飯野さんで、それは甕より壺のほうが口の所がすぼまっているから
だそうです。(そこが話の重要な所なのですが)
年少版こどものともは、全部で24ページです。ほとんど文字がない、本もあります。
それはそれで、とても楽しいし、「読んで聞かせる」というよりも、
「絵本で一緒に遊ぶ」ことができてよいのですが、たった24ページの中で、
きちんと物語が展開され、しかもちゃんと「おち」までついているこの本は、
とてもすぐれものだと、私は思うのです。
私自身が物語好きのせいかもしれませんが、たったこれだけのページ数で
よくこの話をまとめたものだと、読むたびに飯野さんに拍手を送ってました、心の中で‥。
肝心の中身は、どんなお話かというと。
ドン・ローロはお金持ち(農園主)で、お屋敷に住んでいます。イタリア人なので?
白いスーツに白い帽子もかぶっています。
お話は、今年とれたオリーブ油を入れるための、新しい特別注文の壷が、
馬車で運ばれてくるところから始まります。(下の写真の場面)
ドン・ローロは壷を叩き、その美しく響く音色にうっとり。けれど、その晩、
あやしい くろくもが おりてきて 壷がまっぷたつに割れてしまいます。
落ち込むドン・ローロ。
次の日、隣村から壷を治すことができるというディーマじいさんがやってきます。
ほんとに治せるかどうか半信半疑ながらも、そのじいさんに頼むより他に方法は
ありません。じいさんは、じまんの のりで ペタペタとわれたところを
ぬって、はりがねで ギュイ ギュイ ぬいつけると、みごとに つぼは
もとどおり。嬉しさのあまりドン・ローロは、よく状況も見極めず、じいさんに
御礼のお金を渡してしまいます。
でも、でも、信じられないことにその時、ディーマじいさんは壷の中に入っているんです!!
(自分が内側にいるまま、縫ってしまったんですね)
怒り狂うドン・ローロ。出られないのも気にせず、そのお金でみんなと宴会を
はじめるディーマじいさん。
ここまでで、もう19ページまで来ています。残り5ページ。お話は急展開し、最後は・・・。
3歳にもなっていなかった娘がどこまでこの話をわかっていたかは、わかりませんが。
私は、最後の文章を読んだあと、いつも勝手に「でへへ」と付け足していました。
それがじいさんの「せりふ」として、そこに書いてあるかのように。
笑いながら「でへへ」という私につられて、娘も「おじいちゃん、でへへっ
だって」と言ってました。
最後のページを載せて、その絵を見せたい衝動にかられましたが、これから
手にする方のために、やっぱりやめておきました。ただ、この本は未だ単行本化
されていないので、「おち」を知りたいかたにはこっそり教えます。