報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「作戦決行当日」 2

2023-07-23 20:34:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日10時45分 天候:晴 東京都墨田区森下 愛原のマンション→都営地下鉄菊川駅→都営新宿線1005T電車5号車内]

 作戦決行の時間が近づいてきた。
 新大橋通りは避難区域は全面通行止めになり、一般車はもちろん、都営バスですら見かけることはない。
 その規制線をパトカーと黒塗りのハイエースが入って来た。
 もちろん、ハイエースにリサ達が乗っている。

 愛原「何だか物々しいな……」
 リサ「ねぇ、こんな状態で、のこのこ鬼の男がやってくるかなぁ?」

 リサは首を傾げた。
 普通なら、罠が仕掛けられると思うだろう。

 善場「人間のテロリストなら、絶対に警戒してこんな罠に引っ掛からないでしょうね。しかし、相手はBOWです。リサでも、暴走状態なら引っ掛かるでしょう」
 リサ「何それ……」
 善場「愛原所長が結婚指輪を掲げて、『結婚しよう!』と叫んでいたとします。しかし、背後にはBSAAが控えています。それでもリサはどうしますか?」
 リサ「あー……飛び込んでいく……かも」
 愛原「何だそりゃw」

 車がマンション裏手の駐車場に到着する。

 善場「それでは、屋上に向かいましょう。リサは私と来てください」
 リサ「うん」

 リサと善場は、無人となったマンションの中に入った。
 そして、エレベーターに乗り込み、屋上を目指す。
 5階建てのマンションであるが、屋上には避雷針が付いている。

 善場「思いっきりここで放電して、何ならそこの避雷針に電撃しても結構です」
 リサ「分かった」

 リサは思いっきり放電した。
 もちろん、善場は離れた所にいる。
 そして、右手を避雷針の前に突き出し、そこに強い電撃を与える。
 その為、まるで雷光のように屋上が光に包まれた。

 善場「こんなところでしょう。今すぐに離脱してください!」
 リサ「分かった」

 2人は再びエレベーターに乗り込んだ。

 リサ「久しぶりに電撃を放ったらスッキリした」
 善場「そうですか。とにかく、他人に電撃してはいけませんよ?」
 リサ「はーい」

 エレベーターが1階に到着し、急いでマンションを出る。
 そして、また車に乗り込んだ。
 菊川駅はすぐ近くだが、少しでも鬼の男の目からリサを隠したいということだ。

 善場「急いで駅の中へ!どうか、気を付けて!」
 愛原「ありがとうございました!」

 リサ達は菊川駅の階段を駆け下りた。
 駅構内に人は疎らだった。
 一応、ここも避難場所になっているはずだが、こんな地下鉄駅の中に留まるよりは、地上の他の避難場所や、電車は走っているのだから、それで避難区域外に行くという選択肢を取る人が多かったのだろう。
 リサ達は手持ちのICカードで、改札口を通過した。
 コンコースに入ると、もうすぐ電車が来るのか、強い風が拭き上がって来ている。

 愛原「急げ!」

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 リサ達は急いで、電車に乗り込んだ。
 尚、リサがいる場合は基本的に先頭車か最後尾に乗らないといけない決まりになっているのだが、次の森下駅で乗り換えるので、特例が認められている。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 電車のドアと、ホームドアが閉まる。
 避難命令が出ている地区では、殆ど乗り降りは無かったようで、すんなりドアが閉まった。

 高橋「ギリ間に合いましたね」
 愛原「だが、まだ油断はできない。次の森下も避難区域内だから。そこから大江戸線に乗り換えるにしても、わざと大回りする必要がある」
 高橋「だから、こんなにタイミングが早いんスね」
 愛原「そういうことだ」

 鬼の男がどのタイミングで現れるか分からない。
 リサはいつも愛原にお仕置きをする程度の弱い電撃ではなく、それこそ並の人間なら感電死してしまうようなほどの高圧電流を放ったつもりである。
 愛原へのお仕置き程度の弱い電流で鬼の男が気づくくらいだから、リサにとっての最大電圧で気づかないとは思わなかった。

[同日10時56分 天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅]

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。もりした~、森下~〕

 森下駅にはすぐに到着する。
 ここで3人は電車を降り、都営大江戸線ホームへ。
 この駅も避難区域内にある為か、駅構内は人は疎らだった。
 リサ達みたいに、乗り換え客がいるくらいである。

 愛原「まだ、安心はできない。少なくとも、大江戸線に乗り換えて、避難区域外に出る必要がある」
 リサ「あいつ、今頃向かってるかな?」
 愛原「多分な」

 大江戸線なら1度たりとも地上に出ることはない為、地上からは発見されることはないはずである。
 改札階コンコースにて、取りあえず休憩。
 自販機コーナーがある。

 愛原「電車が行ったばかりなんよ」
 高橋「あー、そういうことですか。俺は一服したいくらいっス」
 愛原「タバコはムリだな」
 高橋「……サーセン」
 愛原「取りあえず、ジュース飲んだらホームへ行こう」
 高橋「はい」

 地下駅だから、地上の様子はよく分からない。
 予定通りであれば、鬼の男がマンションにやってきて、待ち伏せているBSAAが総攻撃を仕掛けるはずである。

 高橋「静かなもんすね」
 愛原「まあ、戦争でドンパチするわけじゃないからな。いくらBSAAがとんでもない兵器を持ち出すとはいえ、核兵器とか持ってるわけじゃないから。せいぜい対戦車砲とか、攻撃ヘリとか、そんなもんだろう」
 高橋「タイラントも倒せる対戦車砲なら、鬼の男もイチコロっスね」
 愛原「……だといいんだがな」
 リサ「うーん……」

 実はリサも懐疑的であった。
 今までバイオハザードの渦中にいた上級BOWも、結局はBSAAやその他特殊組織のエージェントなどに倒されているところを見ると、今回も大丈夫だとは思うのだが……。

 リサ「少し体が温まった。ごちそうさま」

 リサはホットレモンを飲み干した。

 愛原「それは良かった。それじゃ、行こうか」

 私達は大江戸線のホームに向かった。
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“愛原リサの日常” 「作戦決行当日」

2023-07-23 15:26:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日07時00分 天候:不明 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所・地下2階仮眠室]

 スマホのアラームで目が覚めた私。
 今はカプセルホテルのようなベッドの中にいる。
 枕元の明かりを点けると、私は上半身を起こした。
 天井が低いので、いきなり大きく飛び起きると頭をぶつける恐れがある。
 警備員時代、こういう設備を持った仮眠室で寝ていた時も似たような……。

 愛原「ん?」

 すると、隣のベッドで何か鈍い音がした。
 私がベッドのブラインドを開けると、隣のカプセルベッドから……。

 リサ「いだっ!」

 という声が聞こえた。
 どうやら、リサが頭をぶつけたらしい。

 愛原「おい、大丈夫か?」

 私がブラインドを開けると、体操服にブルマ姿のリサが頭を押さえていた。
 ただの2段ベッドではなく、こういうカプセルベッドにも消防法は適用されるもので、カプセル内にも煙感知器やスプリンクラーヘッドがある。
 それが余計に天井を低くさせているのだ。
 で、それらに強くぶつかると、感知器が誤作動を起こしたり、スプリンクラーが誤作動を起こしたりする。
 リサがどちらに頭をぶつけたのか分からないが、幸い何も起きなかったようだ。

 リサ「ツノが痛ーい!」
 愛原「何で鬼の姿で寝てるんだよ?」
 リサ「目が覚めたら、こんな感じだったの!」

 どうやらリサ、頭を直接ぶつけたわけではなく、頭から生えている2本の角のうち、1つをぶつけたようだ。
 鬼の石頭でも、角は弁慶の泣き所らしく、当たるととても痛いらしい。

 愛原「と、とにかく、人間の姿になるんだ。少しでも鬼の気配を隠さないと……」
 リサ「分かってるよ」

 もちろん、鬼の男は人間の姿のリサでも気づく恐れはある。
 あくまでも角が生えたり、耳が尖ったり、目つきが変わるだけで、顔自体が変わるわけではないからだ。

 高橋「……何かあったんスか?」
 愛原「いいから、さっさと起きるぞ」

 もしかしたら夜中に緊急招集が掛かるかもと善場主任は言っていたが、そんなことは無かったようだ。
 私達は洗面道具を持って、トイレに向かった。
 顔を洗ったりは、トイレの洗面所を使う。
 リサは体操服のまま、トイレに向かった。

 高橋「何も無かったみたいっスね」
 愛原「俺達の出番が無かったというだけで、けして平和というわけではないだろうな」

 顔を洗ったり、着替えたりしていると、仮眠室内の内線電話が鳴った。

 愛原「もしもし?」
 善場「おはようございます、愛原所長」
 愛原「おはようございます」
 善場「朝食の用意ができたので、上に来れますか?」
 愛原「あ、はい。今行きます」

 私は電話を切った。

 愛原「朝飯の準備ができたそうだ。リサが戻ってきたら行くぞ」
 高橋「うぃーっす!」

 リサは急いで戻ってきた。

 リサ「朝ごはんだね!」
 愛原「聞いてたのか」
 高橋「地獄耳だな……」

 リサはグレーのフード付きパーカーと、デニムのショートパンツに着替えていた。
 特にその下にレギンスを穿くことはなく、生足である(もちろん、靴下は履いている)。

 リサ「早く行こう!」
 愛原「慌てなくていいから」

 リサはそれまで着ていた体操服とブルマを、自分の荷物の中に突っ込んだ。
 ショートパンツを穿く時は、下にオーバーパンツを穿くことはない。
 鬼(BOW)の体温は高いので、特に寒さを感じることはないらしい。
 仮眠室を出ると、廊下の奥にあるエレベーターに乗り込んだ。
 この地下2階もデイライトが借りているフロアのようで、デイライトのカードキーが無いとこのフロアに行けないようになっている。
 私達はそのエレベーターに乗って、1階に向かった。

 善場「おはようございます、愛原所長」
 愛原「おはようございます。すいませんね、私達だけグースカ寝て……」 
 善場「いえいえ、どうぞお気になさらず。それより、向こうの部屋にお弁当を置いてありますから。飲み物は適当に自販機で購入してください」
 愛原「ありがとうございます」

 案内された会議室に行くと、コンビニ弁当が置かれていた。
 善場主任あるいは別の職員が、近くのコンビニで購入したものだろう。

 リサ「コンビニ弁当……」
 愛原「唐揚げが何個も入ってる、唐揚げ弁当なんだからいいだろう」

 で、私のは幕の内弁当。

 高橋「すげーっ!朝からカツ丼っスよ!」

 リサは室内に置かれていた電気スタンドを高橋の前に置き、そして、高橋の方に向けて点灯した。

 リサ「美味いか?食ったら、仲間の居場所について吐こうな?」
 高橋「くぉらーっ!!」
 愛原「刑事ドラマごっこすなっ!」
 高橋「俺は意地でも黙秘するぜ!弁護士を呼んでくれーっ!」
 愛原「いや、お前ね……」
 善場「あなたの場合、国選弁護人しか弁護を引き受ける人はいないと思いますが」
 愛原「あっ、善場主任」
 善場「食べながらでいいので、聞いてください。まずは現況について説明します」
 愛原「お願いします」
 善場「菊川地区とその周辺地区の住民の避難は、現在進行形です」
 高橋「まだ、避難終わってねーのかよ……」
 愛原「菊川の他に森下とか住吉とかも入ってるんだろ?そりゃ時間掛かるよ。お年寄りもいることだし」
 善場「そうですね」
 愛原「ですが、結構大がかりな避難になっているようです。地下鉄は動いているんですか?」
 善場「はい。東京都交通局には、運転を続けるように伝えてあります。駅も避難場所の1つですから」
 高橋「防空壕代わりってか」
 善場「そんなところです」
 愛原「それで、鬼の男はどこに?」
 善場「今のところ、消息を眩ませています。ただ、都内にいるのは間違いないようです。少なくとも菊川地区やその周辺地区では無さそうですね」

 恐らくマスコミやSNSが大きく騒ぐだろう。
 鬼の男がそれを知ったら、どう動くのだろうか?

 善場「これは私の予想なのですが……」
 愛原「はい?」
 善場「女性しかいない家庭……例えば、シングルマザーで娘しかいない家庭とかですね。そこに入り浸って、血と肉を貪っているのではないかと……」
 愛原「ええーっ!」
 リサ「うう……有り得そう……」

 ホテル天長園の上野利恵も言っていた。
 もしも利恵が鬼ではなかったら、鬼の男は利恵を襲い、更に娘達の上野姉妹をも食的・性的に『食って』いただろうと。
 さすがの鬼の男も共食いはしないようで、利恵が同じ鬼だと分かると、憤慨して立ち去って行った(どうやら鬼の男は熟女はタイプではないもよう)。
 リサを狙っているのは、食料として食う為ではなく、性的に襲う為である。
 男の下半身はこういう時強いので、世の女性達は侮ってはならない。

 高橋「鬼舞辻無惨でさえ、年平均ペースでは1人から2人しか食わなかったっつーのに、贅沢な野郎だ」
 善場「それだけ若いのでしょうね。若いうちは、どんどん食べますから」
 リサ「……多分、年齢的には、わたしと同じくらいだと思う」
 高橋「それは人間の?それとも、鬼のか?」
 リサ「鬼の、だと思う」
 愛原「調査でも多分、人間換算年齢と実年齢はそんなに変わらないと思うぞ。それこそ、リサと同じく高校生くらいかもしれんよ」
 高橋「じゃあ、ガッツリ食いますね」
 リサ「うん、ガッツリ食う」
 善場「だから、このままガッツリ人間を食べさせるわけにはいかないのです」
 愛原「その通りですね。それで、作戦決行はいつになりますか?」
 善場「避難は予定通りに進んでいるので、それも予定通りに行えるかと」
 愛原「分かりました」

 鬼の男が善場主任の予想通りの行動をしているのなら、一刻も早く助けたいが……。
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“私立探偵 愛原学” 「作戦決行前日」

2023-07-21 20:27:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月2日20時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 マンション裏手の駐車場に、2トントラックが2台駐車する。
 昨年に手配した運送業者のトラックだ。
 本当は年末年始は休みだということだが、追加料金を払うということで、特別に引き受けてくれた。
 もちろん、追加料金分についてはデイライトが出してくれることになっている。
 大元はBSAAか?
 そして、運び出しのスタッフについては、高橋の知り合い達が来てくれた。

 愛原「キミ達、無理言ってすまないね」
 スタッフA「マサの先生の頼みなら、仕方無いっス」
 スタッフB「バイト代、ガッツリ出るって聞いたもんでェ」
 愛原「あ、ああ。もちろんだとも」

 高橋の知り合いだからか、見た目はガラの悪そうなヤンキーの兄ちゃん姉ちゃんばかりである。

 スタッフC「荷物はこんだけ?」
 パール「まだ奥にあるよ」

 尚、女性スタッフの1人はパールの知り合いだった。
 斉藤家のメイドではない。

 スタッフC「マジでメイドやってんの!?」
 パール「マジ」

 パールは大きく頷いた。
 尚、さすがに引っ越し作業とあってか、今のパールはメイド服は着ていない。
 マンションの部屋からトラックまでの運び出しをスタッフ達がやり、荷物の積み込みはトラックの運転手達。
 私達は部屋の掃除と、積み込みの立ち会いをしていた。

 トラック運転手「それじゃ、お荷物は一旦、うちの会社の倉庫でお預かりという形になりますので」
 愛原「ええ、お願いします。今回の分と追加料金と、倉庫の使用料は後ほど請求書を送って頂ければ……」

 で、その請求書はデイライトさんに転送すると。
 引っ越し作業は2時間ほど掛かった。
 なので、終わった時には夜の10時頃であった。

 愛原「あと、これは御祝儀……」
 トラック運転手「あ、こりゃどうも、すいません!」

 引っ越しの時、御祝儀を渡すことがある。
 私もそうした。

 高橋「おーい、オメェら!先生からのありがたいバイト代だ!」
 スタッフA「おおっ!」
 高橋「チーム会費1万円は天引きしておくぜ」
 スタッフA「ええーっ!?」
 高橋「いでっ!」

 私は高橋にゲンコツを食らわせた。

 愛原「ピンハネすなっ!……お前、リサにもそういうこと教えただろ!」
 リサ「むふー!『魔王軍』の会費は月……」
 愛原「だからダメだって、そういうことは!」

 私は高橋のピンハネを取り締まると、私自ら報酬を彼らに払ったのである。

 愛原「また後日、引っ越し先での作業、よろしく頼むよ」
 スタッフA「うぃーっス!!」
 スタッフC「また、バイト代もらえます?」
 愛原「当たり前だよ。もちろん、高橋にピンハネはさせないからね」
 スタッフC「ありがとうございまーす!」

 そして、スタッフ達はそれぞれ近隣の駐車場に止めていた改造車に乗り込み、去って行った。

 愛原「俺のバイト代、ほとんど車代に消えるんじゃねーのか?」
 高橋「かもしれないっスね」
 愛原「それより、タクシー予約しよう。このまま、ここに留まっているわけにはいかない」
 高橋「そうっスね」

 私はスマホを取り出すと、タクシーアプリでタクシーを2台予約した。
 1台はデイライト事務所行き、もう1台は新橋のビジネスホテル行きにする。

 リサ「思い出の部屋だったのになぁ……」

 リサは荷物が運び出され、ガランとなった部屋をしみじみと見つめていた。

 絵恋「新しい家に、私も招待してね!」
 リサ「それはもちろん」

 新居に引っ越す頃には、絵恋は沖縄に帰ってしまっている。
 しばらくしてタクシーが到着した。
 同じ会社であったが、セダン型のタクシーと、トールワゴン型のタクシーであった。
 私と高橋、リサはトールワゴン型に乗り込んだ。
 こちらの方が、リアシートの窓にスモークが貼られていたからである。
 少しでも、リサが鬼の男に見つからないようにしたい。

 愛原「それじゃ、また明日。京成上野駅で会おう」
 パール「どうか、御無事で」
 絵恋「リサさん、気をつけて」
 リサ「安心して」

 私達はタクシーに分譲した。
 私は運転手に行先を告げた。
 そして、タクシーが走り出す。
 それと同時に、私は善場主任に電話連絡を入れた。

 愛原「はい。今しがた、マンションを出ました。今夜はよろしくお願い致します」

 タクシーは新大橋通りの上り線を走行した。
 サイレンを鳴らしたパトカー数台とすれ違ったが、あれが第一弾なのだろうか?

[同日22:30.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場「お疲れ様です。皆さん」
 愛原「善場主任、今日はお世話になります。……主任もお泊りになるのですか?」
 善場「そうです。もっとも、私は連絡係として常駐する形になります」

 もしかして、私達と違って仮眠無しとかであろうか。
 さすがに事務室には、主任以外にも職員の姿はある。
 その職員達を差し置いて、私達がここの仮眠施設を使って良いということなのだろうか?
 私が改めてそれを確認すると……。

 善場「はい。今夜は寝ずの番のつもりで、職員が出勤しております。リフレッシュルームで小休憩できる余裕はあるかもしれませんが、さすがに何時間も仮眠できる余裕までは無い見込みです。使用しないわけですから、どうぞ皆さんで使ってください」
 愛原「真に恐れ入ります」
 善場「お休みの前に愛原所長、申し訳ありませんが、今回の引っ越し用の追加費用分の精算を……」
 愛原「あ、はい」
 リサ「善場さん、奥でジュース買っていい?」
 善場「いいですよ。あまり、夜更かししないように」
 リサ「分かってるよ……」

 私は善場主任と、空いている会議室に入った。

 愛原「運送会社からの追加料金と、倉庫の使用料については後日、請求書が来る見込みです」
 善場「承知です。それは、こちらに転送して頂ければ、こちらでお支払いさせて頂きます。費用はともかく、よく人員は確保できましたね?」
 愛原「そこは高橋が頼りになりましたよ。何しろ、力技が大好きな知り合いばかりですから、力仕事はすぐに頼めました」
 善場「なるほど。そういうことでしたか」
 愛原「それより主任、作戦決行は明日の午前中なわけですが、随分早くから動くものですね?」
 善場「いきなり避難命令を出しても、住民の混乱を招くだけです。まずは段階を踏む必要があります」
 愛原「パトカーのサイレンの音もそうですか?」
 善場「何台ものパトカーがサイレンを鳴らし、何度も往復すれば、周辺住民は何かが起きていると認知するでしょう?まずはそこからです」
 愛原「なるほど……」
 善場「とにかく、今夜はお疲れでしょう。お好きな部屋で、お休みください」
 愛原「ありがとうございます」

 さすがに和室は贅沢なので、カプセルホテルのような仮眠室を使わせてもらうかなと私は思った。
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“私立探偵 愛原学” 「作戦について」

2023-07-19 20:28:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月2日10時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場主任の緊急の呼び出しにつき、事務所に向かった私達。
 鬼の男の目から逃れる為、車で向かった。
 デイライトの事務所には駐車場が無い為、一旦事務所のビルの前で運転手の高橋以外全員が降り、高橋は車をコインパーキングに止めに向かった。
 車を降りると、すぐにビルの中に入る。
 リサはパーカーを羽織っており、そのフードを深く被り、マスクも着用している。

 善場「皆さん、御足労ありがとうございます」

 事務所の中に入ると、すぐに善場主任が出迎えてくれた。

 愛原「高橋は車を止めてから、改めて来ますので……」
 善場「分かりました。取りあえず皆さんは、こちらへ」

 善場主任は奥の会議室へ案内してくれた。
 会議室には窓があるが、全ての窓にブラインドが下ろされている。

 善場「ここまで来たら、もうフードは取っていいですよ」
 リサ「はい」
 善場「適当にお座りください」

 私達は言われた通り、手近な椅子に座った。
 善場主任が温かいペットボトルのお茶を配る。

 善場「本日は突然のことで、申し訳ございません。愛原所長方の調査により、ようやくBSAAが動く運びとなりました。彼らは作戦の立案が早いもので、既にその原案を提示して参りました。是非ともその内容を精査し、御承認頂ければと存じます」
 愛原「ちょっと待ってください。そんな重大な作戦をどうして私達が承認しないといけないのですか?」

 すると善場主任は、プロジェクターを動かした。
 そこから白い壁に、作戦内容が映し出される。

 愛原「あっ、うちのマンションだ!……えっ?ということは……?」
 善場「はい。今回の作戦は、愛原所長のマンションで行われます」
 リサ「ええーっ!?」
 絵恋「無茶苦茶な作戦ね……」
 善場「それがBSAAのやり方でして、結構、海外でもそれは行われているんですよ」

 途中で高橋がやってきた。
 高橋も作戦の場所がうちのマンションということでびっくりしていた。

 愛原「マンションはもちろん、周辺住民をも巻き込むことになるのでは?」
 善場「もちろん、事前に避難命令を出します」
 リサ「引っ越しは?」
 善場「先に荷物を運び出してからで結構です。確か愛原所長、既に業者に手配は済んでいるそうですね?」
 愛原「もちろんです」
 善場「何とか今日の夜にでも、荷物は運びだせないでしょうか?住民の避難は、本日夜間に行いたいと思いますので」
 愛原「はあ……。しかし、そうなりますと、今夜はどこで寝れば?」

 うちの事務所にも仮眠設備はあるが、私と高橋が寝る想定なので、ベッドは2つしか無い。

 善場「こちらで寝泊まり可能です」
 愛原「えっ?」
 善場「前にお話ししませんでしたっけ?この事務所には、いつでもバイオテロに対応できるように、仮眠室があるという話……」
 愛原「ええと……」

 どうだったかな……。

 善場「ご覧になりますか?」
 愛原「あ、はい。お願いします」
 善場「こちらです」

 それはこのビルの地下にあった。
 地下室に仮眠室があった。
 私はついパイプベッドとか、2段ベッドが置かれているものだと思っていた。
 そういう部屋もあるのだが、和室もあった。
 寝る場所があるということは、シャワー室もある。

 善場「この通り、地下なので、外からリサの存在が見つかる恐れはありません」
 リサ「何かそれ……研究所にいる時みたい」
 善場「今夜だけ我慢してください。もちろん、リサ1人で寝泊まりしてもらうわけではありませんので」
 愛原「監視者の私もだろうなぁ……」
 絵恋「わたしもわたしも!」
 善場「残念ですが、愛原所長の事務所関係者の方以外は御遠慮ください」
 絵恋「ええーっ!?」
 愛原「となると、パールと絵恋さんってことになるな」
 絵恋「私達はどうしたら……」
 善場「この近くにビジネスホテルを取ってございます。そちらで、お休みください」
 絵恋「なんだ……」
 愛原「ビジネスホテルなら、そんなに料金も高くないだろう」
 善場「そうですね。それでは、作戦の打ち合わせに戻りましょう」

 私達は再び上階の会議室に戻った。

 愛原「主任、質問があります」
 善場「何でしょうか?」
 愛原「住民の避難命令を今夜に出すということですね?」
 善場「そうです」
 愛原「引っ越しの荷物は、それまでに運び出せということですね?」
 善場「そういうことです」
 愛原「その後で、私達はここの事務所に泊まるということで宜しいですか?」
 善場「はい、結構です。作戦決行の際は、車で送迎しますので」
 愛原「分かりました」

 BSAAの作戦、大まかな流れはこうである。
 今夜は住民の避難を行う。
 表向きの理由は、鬼の男が犯行予告を行った為ということにするそうだ。
 ありがちな爆弾テロの予告とかだと、バレた時の言い訳が大変なのでしないそうだ。
 つまり、真実とウソを織り交ぜるということだな。
 住民の避難が終わったら、リサを使って鬼の男を誘き寄せる。
 具体的にはマンションの屋上にて、リサには放電してもらう。
 要は電撃の技だな。
 マンションの屋上には避雷針があるので、そこに強い電撃を与えるくらいが良いという。
 鬼の男が東北新幹線の線路内に向かったのと、リサが新幹線車内で私に電撃を行ったタイミングが一致したことが分かり、鬼の男は、これでリサの気配を察知するのだと予想された。
 電撃をした後は急いで退避する。
 地下鉄の駅に避難し、そこから電車で上野駅を目指し、そこから予定の京成スカイライナーに乗るというものだ。
 幸い京成上野駅も地下にある。
 あとは、BSAAが鬼の男に対して、容赦ない集中砲火をして倒すという作戦だ。
 だったら何も無い場所、例えば特撮のロケなどに使われる採石場とか広い空き地などでいいのでは?と思うかもしれないが、逆に隠れる場所が無い。
 交通の便が車しか無いと、逃げ切れない恐れがある。
 また、リサとは無関係の場所に誘き寄せても引っ掛からないかもしれないという懸念があった。

 善場「埼玉では数人の女子中高生が鬼の男に襲われました。強姦され、食い殺されたコもいたそうです」
 愛原「うわ……」
 リサ「男の肉よりは、女の肉の方が食べやすいのは分かるけどさ……」
 愛原「いや、そこじゃない!」
 善場「その中には東京中央学園のOGもいたようで、リサは色々な意味で、学園では有名人だそうですね?」
 絵恋「もちろん!」
 善場「リサが東京中央学園の在校生であるかもしれないと、被害者が話してしまったそうです」
 リサ「うわ……」
 愛原「そうなると、上京してくる可能性はあるな」
 リサ「だからこそ、引っ越してしまうマンションで行おうということになったのでしょうね。さすがに学校では、あからさま過ぎますから」
 愛原「そういうことか……」

 だったら、もう少し今のマンションから離れた場所に引っ越した方が良かったかな?
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“愛原リサの日常” 「鬼の男の影」

2023-07-19 15:26:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 時刻不明(真夜中) 天候:不明 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 リサはふと夜中に目が覚めた。
 それは、下半身を何者かに弄られていたからである。
 真冬ながら半袖の体操服にブルマを穿いて寝ていたリサだったが、そのブルマがショーツと一緒に脱がされ、下半身が裸になっていた。
 そして、その露わになった性器を弄る手。
 最初は絵恋が夜這いでもしているのかと思った。
 絵恋と、そういうエロ小説を読んだことがあるからである。
 隣で寝ていて、わざわざこっそり夜這いというのも変な話だが、すぐにリサは気づいた。

 リサ「いぃっ!?」

 弄り方が絵恋のものではない。
 いきなりクリトリスを摘ままれ、リサは悶絶した。
 そして、布団の中から臭って来る男の匂い。
 残念ながらそれは愛原の匂いではなかった。
 かといって、高橋のものとも違う。
 暗闇の中に怪しく光る赤い瞳が2つ。

 リサ「お前……!!」

 それは、あの鬼の男だった。

[1月2日02時12分 天候:曇 愛原のマンション]

 リサ「……は!」

 そこでリサは目が覚めた。

 絵恋「リサさん、大丈夫?」

 隣で寝ていた絵恋が、心配そうに声を掛けてくる。

 リサ「あ……ああ……」

 リサは自分の下半身を触ってみた。
 ちゃんとブルマを穿いていた。

 絵恋「悪い夢でも見たの?汗びっしょりよ?」
 リサ「そ、そうだ。そうだよ……」
 絵恋「ね、シャワー浴びましょう。このままだと、リサさん風邪を引くわよ?」
 リサ「……鬼は風邪なんか引かない。……けど、汗でベトベトするから、シャワーは行く」
 絵恋「お供します!」
 リサ「エレンは寝てていいよ。わたしのせいで、起こしたみたいだし」
 絵恋「全然、気にしなくていいのよ。着替え、用意してあげるからね」
 リサ「自分で用意するって」
 絵恋「いいからいいから」

 部屋の中には、段ボール箱が積まれていた。
 引っ越しが迫っている為、ある程度の準備は進めている。

 絵恋「これでいいかしら?」

 絵恋はオーソドックスな白い体操服と紺色のブルマを取り出した。
 因みに今穿いているのは、エンジ色のブルマである。

 リサ「先生が見て喜ぶヤツね」

 リサはそれにプラス換えの下着も用意すると、バスルームに向かった。

 絵恋「さすがに寒いねぇ……」

 絵恋はジャージを着ていた。
 脱衣所でそれを脱ぐと、さすがに下はリサと同じ体操服とエンジ色のブルマを穿いていた。

 リサ「寝てていいのに」
 絵恋「ダーメ。私がリサさんの体、洗ってあげるんだから」
 リサ「ああ、そう……」

 2人の少女は一糸纏わぬ姿になると、バスルームの中に入っていった。

[1月2日08時00分 天候:晴 愛原のマンション]

 正月2日目の朝食は、高橋とパールが餅を焼き、雑煮を作った。

 愛原「仙台の実家では、餅を雑煮に中に入れないんだよね」
 高橋「えっ?仙台じゃ、餅を入れないんですか?」
 愛原「うちだけかもな。その代わり、ずんだ餅とか作ってたけど」
 高橋「そうでしたか。明日、作りますね」
 愛原「それは楽しみだな」

 と、そこへ愛原のスマホが鳴りだした。

 愛原「ん?あれ?善場主任からだ。もしもし?」

 愛原は電話に出ると、自分の部屋に戻って行った。

 絵恋「愛原先生も、お正月休み返上かしら?」
 高橋「先生は信頼されてるから、お忙しいんだよ」

 高橋は、まるで自分の事のように自慢した。

 リサ「善場さんからってことは、鬼の男に関する話かな?」
 絵恋「そう、かもね……」

 絵恋はリサから、夢の話を聞いた。
 鬼の男から強制猥褻を受けていたという夢の内容に憤慨していたが。

 リサ(夢の中のわたしは、どうして抵抗しなかったんだろう?そりゃあ、いきなりクリ掴まれたけど……)

 しばらくして、愛原が戻って来た。

 高橋「何かありましたか?」
 愛原「今日、緊急の話があるらしい。10時頃、デイライトさんの事務所に着けるようにするぞ」
 高橋「車、用意した方がいいですよね?」
 愛原「ああ。頼む」
 高橋「分かりました」
 リサ「わたしも行くの?今日は外出禁止じゃ?」
 愛原「ちょっと事情が変わった。車でこっそり行くから、用意してくれ」
 リサ「分かった!」

 部屋に閉じこもっているよりは外に出たいリサは、逆に少し嬉しかった。
 だが、深刻な顔をしている愛原を見ると、表立って喜ぶことができなかった。

 絵恋「私は……」
 愛原「ここにいる皆に関わることだから、全員来てほしいとのことだ」
 パール「私もですか?」
 愛原「ああ、そうだ」
 高橋「一体、姉ちゃん達は何をしようってことなんですか?」
 愛原「それをこれから話すから、デイライトの事務所まで来てほしいということだ。どうやら、BSAAが動いてくれることになったらしい」
 高橋「おおっ!それに協力しろってことっスね!?」
 愛原「そういうことだ。だが、鬼の男の被害は深刻だ。最近も昨夜は、埼玉で被害が相次いだらしい」
 高橋「また食い殺されたんスか!?」
 愛原「せっかくの朝飯が不味くなるから詳しくは言えないが、結論はそうだ。警察も翻弄されているし、ようやく鬼の男がBOWの一種だと分かったことで、ついに軍隊が動く運びとなったわけだ」
 高橋「それで、俺達はどう協力しろと?一緒に戦えってことっスか?」
 愛原「いや、違う。ただ、作戦には協力して欲しいということだ。その作戦というのが、かなり大がかりなものになるらしい」
 高橋「無事に引っ越し、できるんスかね?」
 絵恋「作戦協力にかこつけて、もう少し私が滞在できるなんてことは……」
 愛原「あー、それは無い。絵恋さんには予定通り、沖縄行きの飛行機に乗ってもらう」
 絵恋「それは残念……」
 愛原「作戦決行のタイミングは、むしろ絵恋さんのフライトに合わせるようなものだから。期待通りに飛行機に乗ってくれよ?」
 絵恋「ええっ!?」

 果たして、BSAAの作戦とは一体……?
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