報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「栃木県北部の鉄旅」

2023-07-06 20:27:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月31日06時46分 天候:雪 JR日光線826M列車・先頭車内]

 発車の時間になり、運転士が乗務員室の窓から顔を出してホームの監視をする。
 そしてドアを閉め、運転席に座って、電車を発車させる。
 尚、外は小雪が舞っている為か、空はまだ薄暗い。
 今は6時半くらいにならないと明るくならないのだが、大雪ではないにせよ、分厚い雲が空を覆っている為、暗く感じる。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は日光線、宇都宮行き、ワンマンカーです。この先、今市、下野大沢、文挾、鹿沼、鶴田、終点宇都宮の順に停車致します。次は、今市です。……〕

 電車が走り出すと同時に、私は揺れる電車の中、高橋にLINEを送った。
 既に文章は打ち込んでいるので、あとは送信するだけである。
 高橋からすぐに既読が付いて、『了解しました!』という返信が来る。

 愛原「これでいいだろう。こっちはゆっくり行くだけだ」
 リサ「本当にのんびりした旅なんだね」
 愛原「そうだよ。これぞ、旅の醍醐味だ」

 私は周囲を見回した。

 

 愛原「これでクロスシートが付いてりゃな……」

 前の205系電車にはそういう車両もあったのに、とても残念だ。
 高橋のLINEによると、日光宇都宮道路を通って東北自動車道に向かい、上河内サービスエリアで時間調整をするらしい。

 高橋「宇都宮駅を出たら教えてください」

 とのこと。
 余裕ブッこきやがってw

[同日07時29分 天候:晴 栃木県宇都宮市川向町 JR宇都宮駅]

 JR日光線に乗ると、同じ栃木県かと思うほどの気候の違いに驚かされる。
 宇都宮市内に入ると、雪など微塵も無くなる。
 一気に標高を下げる為、まるで登山鉄道に乗っているかのようだ。

〔まもなく終点、宇都宮、宇都宮。お出口は、左側です。新幹線、宇都宮線、烏山線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 今頃、高橋とパールは上河内サービスエリアで休んでいる頃か。
 同じ、宇都宮市内だ。

 

〔うつのみや~、宇都宮~。本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 途中駅では半自動ドアで運用されてきた電車だが、終点の宇都宮駅では一旦、ホーム側のドアが一斉に開けられる。
 大勢の降車客に対応する為だろう。

 リサ「先生、もう次の電車に乗り換えできるみたいだよ」

 私達が今いるのは、日光線ホームの5番線。
 リサは宇都宮線ホームを指さした。

 愛原「急いで乗り換えるのもアレだから、次の電車にするよ。それでも十分、遊園地行きのバスには間に合うんだ」
 リサ「そうなの」
 愛原「それに、高橋達を急かすのもアレだしな」
 絵恋「先に遊園地に着いて、まったりしてるんじゃないですか?」
 愛原「どうだろうねぇ……」

 いくらこの町では雪が無いとはいえ、寒いものは寒い。
 特に車と違い、暖房の効かないバイクでの移動だ。
 暖を取るには、サービスエリアなどの屋内でないとダメだろう。
 それなら、彼らももう少し暖を取らせてあげるべきだと思うのだ。
 私達はどうするのかというと、まあ、駅構内もだいたい暖かいし、あと待合室もある。

 愛原「で、私達はここで暖を取る」
 リサ「ほおほお」

 NewDaysでホットコーヒーを買う私。
 それを手に、暖房の効いた待合室で時間調整しようと考えた。
 リサと絵恋も、当然のように何かしら買い込む。

 絵恋「り、リサさん……!また……ポッキーゲームやりましょ!?」
 リサ「うん」
 愛原「それはせめて、ホテルに着いてからにしなさい」
 絵恋「ええーっ!」
 リサ「うん。先生の命令は絶対」

 そんなやり取りをしているが、ここまで来れば、『鬼』は現れないのだろうか?
 埼玉の時の事を考えると、リサみたいに、昼間でも活動できるタイプのようだが……。
 栃木県の最大ターミナル駅で、さすがに騒ぎは起こせないということだろうか?

[同日07時50分 天候:晴 同駅→宇都宮線637M列車・最後尾車]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。9番線に停車中の列車は、8時2分発、普通、黒磯行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 列車が入線する頃を見計らって、私達は移動した。
 思った通り、ホームには日光線で乗車したものと同じ形式の電車が発車を待っていた。
 しかし、さすがにそこは本線を走行する電車だからか、3両編成を2編成繋いだ6両編成となっている。
 但し、それでもワンマン運転列車であるようだ。
 それまで、ワンマン列車といったら、せいぜい1~2両編成で運転される列車というイメージがあったのだが、6両編成でもワンマン化されてしまった。

 

 当然ながら、ロングシートしか無いので、横並びに着席する。
 車掌はいないので、1番後ろの乗務員室はがら空きである。

〔この電車は、宇都宮線、黒磯行き、ワンマンカーです〕

 リサ「ちょっとトイレ行って来る」
 愛原「何だぁ?駅のトイレ行けば良かったのに」
 リサ「うん。行くの忘れてた」
 愛原「何だそりゃ……」

 リサは同じ車両の連結器付近にあるトイレに向かった。
 新型車両ということもあり、少し広めの多目的トイレとなっている。
 当然、交通バリアフリー法の適用を受けている為、洋式となっているはずだ。
 リサのヤツ、それを狙ったのだろうか。

 絵恋「パール達には、この電車が出発したら連絡するんですか?」
 愛原「そのつもりだよ」
 絵恋「バイクだから速いですよね?」
 愛原「まあ、高速を降りてから、またどこかで時間調整してもらうしかないだろうな」
 絵恋「そうですか」

 その時、私のスマホにLINEの着信があった。
 栗原蓮華からだった。
 これから栃木の方に、『鬼殺隊』が向かうという。
 鬼の気配がした日光市を中心に捜索するというが、私達がまた鬼の気配を見つけたら教えてほしいとのことだった。
 それ自体は吝かではないのだが、上野姉妹や上野利恵のことについては黙ってておこう。
 いや、上野姉妹そのものは同じ学校だから蓮華も知っているだろうが、その母親のことな。
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“私立探偵 愛原学” 「早朝の出発」

2023-07-06 15:18:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月31日05時00分 天候:曇 栃木県日光市某所 某民泊施設]

 愛原「ん……?」

 昨夜、あんなことがあった後では、なかなか寝付けなかった。
 ……のだが、少しは寝落ちできたようだ。
 どこでもすぐに寝られるようになる、警備員からの探偵としての体質であろうか。
 隣の布団を見ると、既に高橋は起きており、隣の台所からはいい匂いがした。
 私はすぐに起きると、布団を片付けた。
 尚、使用済みのリネンは専用のクリーニング袋に入れて、玄関に置いておけば良いらしい。
 その後で、脇に寄せていた座卓を元の位置に戻す。

 愛原「寒っ!」

 廊下に出ると、暖房の効いていた大広間と違い、とても寒い。
 これでは、ヒートショックとかが怖いな。
 トイレはともかく、洗面所には電気ファンヒーターがあるので、これで室内は暖まる。
 鬼の襲撃は結局、無かったようだ。
 よほどリサを警戒しているのか、或いは他に理由があるのか、それは分からない。

 愛原「おはよう」
 リサ「おはよ……」

 洗面所で顔を洗っていると、リサが眠い目を擦りながら起きて来た。
 半袖の体操服に、緑色のブルマを穿いている。
 鬼型のBOW(生物兵器)ということもあり、さほど寒さは感じないらしい。

 絵恋「おはようございます」

 それに対して、普通の人間である絵恋さんは上下とも長袖のジャージを着ていた。

 愛原「おはよう。絵恋さんの方が、少しは寝覚めがいいか?」
 絵恋「早起きは合宿で慣れてるので」
 愛原「そうか」

 絵恋は学校では女子空手部、プライベートでも空手道場に通っていたということもあり、そういう体育会系の合宿には慣れているようである。

 愛原「あれ以来、何も無かったようだな?」
 リサ「うん……」
 絵恋「当然ですわ。リサさんの脅威に、鬼の1人や2人、慌てて逃げますよ」
 愛原「魔王様の威厳ってか。……だと、いいんだがな」
 絵恋「どういうことですか?」

 絵恋の質問には答えず、逆に私が質問を返した。

 愛原「あれ以来、変な夢は見ていないか?」
 絵恋「そうですねぇ……。特に、見てないですね」
 リサ「わたしは『体操服のJKに男子用小便器を使わせてみた!』っていうのを、先生に実体験させられた」
 絵恋「ええっ!?」
 愛原「ファッ!?」
 絵恋「せ、せせせ、先生!な、何てそんな、ヘンタイなことを……!」
 愛原「ご、誤解だ!そんな動画、観てない!」
 リサ「さすがに女の子が、あのトイレを使うのはムリだよ」
 愛原「当たり前だ!体の構造が違うんだから!」

 とはいうものの、かつては……というか今でも?海外に行けば、女子用小便器が存在するという。
 日本にも、大昔はあったそうだ。
 第1回目の東京オリンピックに合わせ、国立競技場に設置されたことがあるという(今は撤去されている)。
 構造としては、男子用小便器の受け皿部分を更に前に突き出したものとなっている。
 男性が直立して用を足すのに対し、女性はやや中腰で用を足す感じであったという。

 愛原「え、絵恋さん!リサが勝手に見た夢だから……」
 絵恋「ていうかリサさん、男子用を使おうとしたの?」
 リサ「試しに。でも、先生の言う通り、体の構造が違うから無理だった」
 愛原「そうだろうそうだろう。2度とやるんじゃないぞ」
 リサ「『1番』は先生に立ちションして、マーキングしたんでしょ?わたしはまだやってない。いずれはわたしもやって、上書きしてやるから」
 愛原「せんでいい」

 洗顔などが終わった後は朝食。
 昨日のすき焼きの食材の余りが有効活用されていた。
 卵の余りで目玉焼き。
 野菜の余りでサラダ。
 肉の余りで牛肉小鉢といった感じ。

 愛原「6時46分発の宇都宮行きの電車で宇都宮に行き、それから宇都宮線に乗り換えて那須塩原を目指す計画だ。で、那須塩原駅からはバスに乗り換えて、遊園地を目指す」
 絵恋「そこでリサさんと思い出が作れるのですね!?」
 愛原「そういうこと。……お前達はバイクだよな?」
 高橋「うっス」
 パール「もちろんです」
 愛原「宇都宮市は積雪は全く無いそうだが、この辺りはお察しだし、那須塩原市も山の方は雪が積もってるから気をつけろよ?」
 高橋「もちろんです」
 パール「直接、遊園地に現地集合でしょうか?」
 愛原「そうだな」
 パール「かしこまりました」
 愛原「高速で行くのか?」
 高橋「まあ、高速の方が除雪とかしっかりやってる感じっスからね」
 愛原「多分、お前達の方が早いぞ?」
 高橋「そこはゆっくり、時間調整しながら行きたいと思います。そうだろ、パール?」
 パール「そうね」
 愛原「分かった。まあ、気を付けて」

[同日06時39分 天候:雪 同市相生町 JR日光駅→日光線826M列車・先頭車内]

 あとの片づけや戸締りを高橋とパールに任せ、私達、電車組は先に民泊施設をあとにした。
 小雪が舞う中、新雪を踏みしめて、JR日光駅に向かう。

 

 さすがに駅構内は暖房が入っていて暖かい。

 

 改札口の目の前にある1番線に、3両編成の電車が入って来る。
 大晦日ということもあってか、電車はガラガラである。
 明日の元旦は初詣で大賑わいだと思われ、ホテルや旅館に前泊する観光客達も多く見受けられることとなるだろうが、さすがにこんな早朝から前乗りする観光客は少ないようである。
 パラパラと五月雨式に降りて来た乗客達も、この町で働いている人達が早朝出勤しに来たといった感じだ。

 

 3両編成ワンマン運転の電車内に乗り込む。
 座席は中央快速線でも見かけるような暖色系であり、座り心地もその電車と同じくらい。
 房総半島にも、これと同じ形式の電車が導入されており、向こうにはボックスシートもあるのだが、こちらにはそれが無い。
 ロングシートだけである。
 尚、宇都宮線にもこれが導入されているので、通勤電車での味気ない旅になりそうである。
 乗り換え先の路線バスに期待だろうか。

〔この電車は、日光線、宇都宮行き、ワンマンカーです〕

 寒冷地を走るからか、暖房は強めであるが、いかんせん4ドアの電車のホーム側のドアが全部開いている為、そこから寒風が吹き込んで来る。
 半自動ドアが導入されており、例えコロナ禍であったとしても、ワンマン列車に限っては、不正乗車防止の為に半自動ドアを継続運用しているとのことである。
 この電車もワンマン列車である以上、その対象であるわけだが、宇都宮駅と日光駅に限り、到着時は一斉にドアが開くようにしているのだという。
 で、運転士が再び折り返し電車の先頭車となる運転室に入ると……。

 愛原「寒いから閉めよう」

 ここで運転士は『半自動』にドアスイッチを切り換えるので、それで乗客側がドアを閉めることができる。
 合図はドアボタンのランプが点灯したら。

〔「おはようございます。本日もJR東日本、日光線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は6時46分発、宇都宮行きのワンマン運転列車です。終点の宇都宮まで、各駅に停車致します。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 リサ「お兄ちゃん達は、いつ出発するの?」
 愛原「俺のLINEの合図が来たら、らしい。この電車が発車したら、合図しよう」
 リサ「うん」
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