報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「鬼の兄妹」

2023-07-28 20:53:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日13時30分 天候:晴 千葉県成田市某所 成田国際空港付近]

 鬼の男「ぐわあっ!」

 鬼の男は突然、顔を押さえて苦しみ出した。
 その手の中にある顔、目があるはずの2つの穴には目玉は無い。
 目玉が入っているはずの2つの穴からは、ドバッと血が噴き出した。

 鬼の男「ぎゃあっ!……あ、あの人間の女……ブッ殺してやる……!よくも俺の目玉を……!」

 膝立ち状態になって悶え苦しむが、吹き出していた血は水道の蛇口を締めるかのように止まる。
 そして、窪みとなっている所にグググと新しい目玉が生えた。

 鬼の男「ふーっ!ふーっ!ふーっ!……くっ……!」

 目玉が新しく生えても、すぐには視力は回復しない。
 冬の日差しは人間にとっては弱く暖かいものであるが、鬼の男にとっては、夏の直射日光のようであった。
 暗い所から、いきなり夏の直射日光が目の中に飛び込んできた感じ。

 鬼の男「こ、こうなったら、あそこにいる人間共を全員ブッ殺して……」
 鬼の女「もうやめようよ、お兄ちゃん!」
 鬼の男「あぁ!?……あー、殺鬼(さつき)か。うるせーよ、邪魔すんじゃねぇ」
 鬼の女「あのね、お兄ちゃんが探してる女の子、私が乗った電車の中にいたよ」
 鬼の男「なにっ!?男じゃなかったのか!?」
 鬼の女「女の子だよ。女の子の匂いがしたからね、間違いない」

 鬼の女は、生理中の時に女が放つ匂いを感じ取っていた。
 それは人間の女も同じであろうが、鬼ならもっと強い。
 例えリサは人間を食べていないとはいえ、鬼型のBOWである以上、独特の強い匂いは誤魔化せなかった。

 鬼の男「そいつは今、どこにいる?」
 鬼の女「空港の中。何しに行ったのかは知らないよ。ただ、空港って飛行機に乗る所だからね」
 鬼の男「何でついてねぇんだよ!?」
 鬼の女「何でアタシがついてなきゃいけないの!お兄ちゃんが惚れた女の子でしょ!?」
 鬼の男「ちっ……」
 鬼の女「ボヤボヤしてると、飛行機に乗っちゃうよ?」
 鬼の男「待て。本当にあいつは、これから飛行機に乗るつもりなのか?」
 鬼の女「そんなの知らないよ」
 鬼の男「ちっ……。じゃあさ、あいつを探して、何しに行ったのか調べて来てくれよ」

 鬼の女は大きく溜め息をついた。
 目の前の地面がカチカチに凍ってしまう。

 鬼の女「私達、こんなところでボヤボヤしてるヒマは無いんだよ?お兄ちゃんが色々やってくれたせいで……」
 鬼の男「分かった分かった。あいつのことが何とかなったら、山に帰るからよ。な?頼むよ」
 鬼の女「……今回だけだからね。私が帰ってくるまで、勝手なことしちゃダメだよ?」
 鬼の男「分かってるって」

 鬼の女はもう1度溜め息をつくと、空港ターミナルの方に向かって行った。

[同日14時55分 天候:晴 千葉県成田市三里塚字御料牧場 成田国際空港第1ターミナル]

 絵恋の乗る飛行機の1時間前になった。
 国内線であるから、遅くでも30分前にチェックインすればいいのだが、いかんせんUターンラッシュで混雑している空港だ。
 見ると保安検査場も混雑しているし、早めに行った方が良いかもしれない。
 ということで、1時間前にはチェックインしてもらうことにした。
 絵恋にとっては、とても名残惜しいことであろうが。

 絵恋「うう……帰りたくないよぉ……」
 リサ「3年生になったら、修学旅行でそっちに行くから」
 絵恋「ほんと……?」
 リサ「うんうん」

 東京中央学園中等部における国内旅行は、関西方面である。
 が、コロナ禍で中止になってしまった。
 そこで代わりに、高等部1年生の時に代替修学旅行として、南会津にスキー旅行に行ったわけであるが……。
 この分だと、今年中にはコロナも終息しそうだし、高等部の修学旅行は予定通り行われるだろう。
 尚、東京中央学園高等部だと、海外旅行もあるのだが、リサにはパスポートは発行されない。
 その為、国内一択になってしまう。
 国内における飛行機旅行は、年替わりで北海道と沖縄となっており、リサ達の年は沖縄になっている。
 尚、2泊3日である。

 絵恋「高校の修学旅行ってことは、自由行動もあるもんね!私が案内してあげるからね!」
 愛原「案内してあげるって、修学旅行は平日だろう?絵恋さんは絵恋さんで学校じゃないのか?」
 絵恋「愛原先生。一般的な公立高校とは違うのですよ」
 愛原「えっ、そうなの?どこが?」
 絵恋「東京中央学園の修学旅行は、姉妹校との交流会も兼ねているのです。行先が北海道の場合は、札幌の北海道中央学園との交流会があるんですよ」
 愛原「今回は沖縄中央学園ってことか」
 絵恋「そうです。そして、私達は私達で、沖縄中央学園は東京中央学園との交流で修学旅行に行くんです」
 愛原「ふーん……」
 高橋「何か、いかにも後付け設定っスね」
 愛原「まあまあ。それより、急がないと。保安検査場の列、伸びて来たぞ?」
 絵恋「そうでした」

 絵恋は自動チェックイン機でチェックインをすると、保安検査場に向かった。
 見送りのリサ達はここでお別れとなる。

 リサ「それじゃ、私はこれで」
 絵恋「リサさん、ありがとう。先生方も、ありがとうございました」
 愛原「いい思い出になったら、幸いだよ」
 パール「御嬢様、どうかお気をつけて」
 高橋「飛行機墜ちねーといいな?w」
 愛原「こーら」

 愛原は悪い冗談を言う高橋を窘めた。
 絵恋が保安検査場に入り、手荷物検査を終えて、出発ロビーの向こう側にいなくなるまで、リサは見送った。
 国際線ではないので、出国手続きが無い分、そこは簡素なものか。

 愛原「それじゃ、引き上げるか」
 高橋「何で帰るんスか?」
 愛原「そうだな……。京成にするか、それともJRにするか……」

 考える愛原の後ろを歩きながら、リサが成田空港駅の方に足を進めた時だった。

 中年女性「きゃーっ!引ったくりよ!誰か止めてーっ!!」
 愛原「ええっ!?」

 その時、地面に座り込んだ中年女性と、バッグを抱えて走り去って行く、ジャンパーにニット帽の男の姿が映った。

 愛原「マジかよ、こんな空港で!?」

 Uターンラッシュで警備が強化されているはずだが、テロ対策はしっかりしていたとしても、引ったくりまでは盲点だったか。

 ひったくり犯「へっ、ババァ!こいつに札束入れてるのは確認済みでいっ!ありたがたく頂くぜ!」

 リサは目を丸くしながら愛原に言った。

 リサ「どうする?追う?」
 愛原「そ、そうだな。BOWってバレないようにできるか?」
 リサ「任せて!」

 リサは先頭を切ってダッシュした。

 高橋「速ェ!」
 愛原「俺達も追うぞ!」

 この時、愛原は鬼の中にはすばしっこい足を持つ者がいて、上野凛はそれを利用して陸上部で活躍していることを思い出したという。
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“私立探偵 愛原学” 「成田空港にて」

2023-07-28 14:53:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日13時21分 天候:不明 千葉県成田市古込 空港第2ビル駅→同市三里塚御料牧場 成田空港駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)、空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)です。出口は、右側です。……〕

 列車は成田空港第2ビル駅に接近した。
 既に地下トンネルを走行しているが、今のところはまだ何も起きない。
 だが、まだ油断はできない。
 テロリストの中には、列車を降り際に爆弾を爆発させたりすることもあるからだ。
 そして、列車はホームに停車した。
 鬼の男の妹を名乗る鬼の女は、席を立つと、デッキに向かった。

〔「ご乗車ありがとうございました。空港第2ビル、空港第2ビルです。……」〕

 ホームから発車ベルの音が聞こえて来る。
 ここで半分くらいの乗客を降ろすスカイライナー。
 そして、ドアが閉まって再び電車はトンネル内を走行した。

 リサ「先生、大丈夫!?」
 愛原「ああ……大丈夫だ」
 高橋「先生!さすがっス!鬼を前にして、全く動じないその態度!やっぱ先生は名探偵っスよ!」
 愛原「い、いや、あの場合……ああするしか無かっただろ」

 私はスマホを取り出した。

 愛原「電車を降りたら通報するぞ。あくまでも、電車内では通報しないという約束だったからな」
 高橋「な、なるほど」

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、成田空港(成田第1ターミナル)、成田空港(成田第1ターミナル)です。どなた様も、お忘れ物をなさいませんよう、お支度ください。本日も京成スカイライナーをご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 東京メトロの自動放送と同じ声優の自動放送が流れると、少しは安心する。
 電車は鬼の女を降ろした空港第2ビルから1kmほど走って、終点の成田空港駅に到着した。

 

〔「ご乗車ありがとうございました。成田空港、成田空港、終点です。車内にお忘れ物をなさいませんよう、お降りください。……」〕

 私達はホームに降りた。

 愛原「ちょっと待ってくれないか。善場主任に通報したい」
 リサ「分かった。……トイレ行ってきていい?」
 愛原「ああ。トイレはこの上だ。改札からは出るんじゃないぞ?」
 リサ「分かった」
 絵恋「私も行く」
 パール「それでは、私は護衛を……」
 高橋「さっさと行けー」

 私はホームのベンチに座った。

 

 私達が乗った列車は折り返し、京成上野行きになるようだ。
 一体、鬼の女は何の用で空港第2ビル駅に降りたのだろう。
 荷物からして、飛行機に乗るような感じではなかったが……。

 善場「善場です」
 愛原「愛原です。実はちょっと、大変なことになりまして……」
 善場「伺いましょう」

 私はこれまでの経緯を話した。

 善場「分かりました。それでは、係官を現地に向かわせましょう」
 愛原「現地で合流する必要はありますか?」
 善場「それには及びません。京成上野12時40分発のスカイライナーに、日暮里駅から乗り込み、愛原所長の隣の席に座って、空港第2ビル駅で降りたのですね」
 愛原「そうです!」
 善場「そして、特急券を車内で購入したと?」
 愛原「はい。改札に来た車掌から購入してました」
 善場「特に、自分の存在を隠す気は無いようですね」
 愛原「まさか、空港が閉鎖になるとかは……」
 善場「今後の展開では、その可能性もあります。我那覇絵恋さんの飛行機は、何時に離陸しますか?航空会社の便名が分かれば、それもお願いします」
 愛原「はい。ピーチ航空507便、15時55分の離陸です」
 善場「かしこまりました。その1時間前に、チェックインを済ませる予定ですね?」
 愛原「そんなところです」

 なので、私達の見送りは15時前に終わる予定だ。
 成田空港から都内への手段は、特に決めていないことも伝えた。

 善場「所長方が帰京される頃には、避難命令も解除されていると思われますので」
 愛原「そうですか」
 善場「ただ、道路は渋滞しているかもしれませんね」
 愛原「なるほど。鬼の男について、何か新しい情報はありますか?」
 善場「はい。それについて、情報を共有したいので……」
 高橋「うわっ、何だ!?」

 その時、高橋が突然大声を上げた。

 愛原「何だ!?」
 高橋「変な目玉が!」
 愛原「!?」

 最初はピンポン玉が浮いているように見えた。
 だが、良く見るとそれは2つの目玉だった。
 ギョロッと赤い瞳が私の方を見る。

 善場「何かありましたか!?」
 愛原「な、何か変な目玉が、私達の周りを……」
 善場「! 逃げてください!直ちに、そこから!急いで!!」
 愛原「!! 高橋!逃げるぞ!」
 高橋「ええっ!?」

 私は高橋の服の袖を掴んで、一気に階段まで走った。
 爆発でもするのかと思ったが、そんなことはない。
 だが、目玉が私達を追って来た。

 高橋「やる気か、この野郎!」

 高橋は持っていたマグナムを取り出した。

 愛原「当たるわけないだろ、そんな小さいの!」

 大型拳銃で、ピンポン玉みたいな大きさの、それもふわふわ浮いている物に当てられるとは思えない。
 それなら、まだ私のショットガンの方がマシだ。
 だが、今は細かく分解している状態。
 あの目玉が何をしてくるか分からない以上、組み立てているヒマなど無かったし、仮にあったとしても、こんな大勢の旅客がいる前で撃つわけにはいかなかった。
 私達は階段を駆け上り、改札階に出た。
 そして、コンコース内にあるトイレに向かった。

 パール「どうしたの?」

 パールはトイレに入っておらず、その入口付近で少女達を待っていた。

 愛原「パール!すんごいマズいことになった!どうやら、敵に捕捉されたらしい!すぐにここから離れるぞ!」
 パール「待ってください!まだ、御嬢様方が中に……」
 高橋「早く呼んで来い!」
 パール「敵ってどこにいるんですか!?」
 愛原「これだ!」

 私はふわふわ浮かんで付いてくる目玉を指さした。
 これだけだと、何かの玩具の一種だと周囲には思われているようで、特に騒ぎにはなっていない。

 パール「これが敵ですか……。それでは!」

 ザシュッ!スパッ!

 愛原「え……?」

 何と、パールは手持ちのミリタリーナイフを取り出すと、それで目玉2つを倒してしまった。
 1つは切っ先で突き刺し、もう1つはスパッと真っ二つにしてしまった。
 目玉は煙を上げて、消えて行った。

 パール「これで宜しいですね?」
 高橋「オメーなぁ……」
 善場「ちょっと、善場主任に確認してみるわ」

 私は一旦切った電話を、もう1度掛け直すことにした。
コメント (2)
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