報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「警戒の正月三が日」

2023-07-17 20:21:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日16時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 デイライトの入居しているビルの前に、1台の車が停車する。
 それは高橋の乗った車だった。
 私の事務所が業務用にリースしている車である。
 トールワゴン型のライトバン。
 たまにタクシーでも使われているタイプである。
 こういうライトバンは、どこにでもいる、つまりどこにいても違和感が無い為、隠密調査の時には重宝するのである。

 高橋「お迎えに参りましたー」
 愛原「ありがとう。それでは善場主任、私達はこれで失礼します」
 善場「お手数お掛けしました。私も出ますので」
 愛原「本当に正月休み返上ですか。大変ですね」
 善場「仕方がありません。それに……もっと大変なことになりそうですので」
 愛原「もっと大変なこと?」
 善場「失礼します」

 善場主任は事務所を閉めると、新橋駅の方に歩いて行った。

 愛原「とにかく、車に乗ってくれ」
 リサ「はーい」

 リサと絵恋は、リアシートに乗ってもらった。
 この車のリアシートから後ろの窓は、スモークになっている。
 私はというと、助手席に座った。

 愛原「それじゃ、事務所まで」」
 高橋「はいっ!」

 高橋は車を走らせた。

 愛原「パールは留守番か?」
 高橋「そうです。今、夕飯の支度をしてますよ」
 愛原「そうか」

 そして、私は後ろを振り向いた。

 愛原「リサ。明後日の絵恋さんの見送りまで、外出は控えるようにとのことだ」
 リサ「そう……」
 愛原「まあ、引っ越しの準備でもすればいいさ」
 絵恋「そうよ、リサさん。私も手伝うから」
 リサ「うん、分かった」
 高橋「それと先生、善場の姉ちゃんがブチギレる情報が入りましたよ」
 愛原「何だ?」
 高橋「“青いアンブレラ”です。アネゴが動き出しました。例の鬼の男退治に、BSAAが動かないもんだから、“青いアンブレラ”が動くから、日本政府に許可出せってゴネたらしいっスw」
 愛原「正月早々、岸田総理を動かす気か。海外は動きが早いな」
 高橋「そういうことです」

 さっき、善場主任が慌てて出て行ったのは、そういうことだったのか。
 車から流れて来るラジオも、正月特番である。
 高橋はどちらかというと、車の中ではラジオを聴く方である。

 愛原「鬼の男は警察を全滅させた後、また行方を眩ませたそうだ。だが、リサが上りの新幹線に乗っていたことがバレたのであれば、こっちに来る可能性が高い。リサ、見つかるなよ」
 リサ「分かった。あんな男、わたしは嫌い」
 絵恋「そうよ!リサさんには私がいるんだから!」
 リサ「いや、私の男は先生だけだから」
 愛原「そりゃどうも」

 それにしても白井のヤツ、永遠の命に興味を持っていたようだが、その答えが『鬼』というのはしっくりこないな。
 まあ、マッドサイエンティストの考えることだから、こちらは理解できないのだろうが……。

 高橋「先生。リサって、普通の人間をゾンビに変える力はまだ残ってるんですか?」
 愛原「リサ、どうなんだ?」

 Tウィルスが体内に残っていた時は、その力があった。
 しかし、今はそれはもう無い。
 あるのは、特異菌だ。
 Gウィルスは名前こそウィルスであるものの、感染力は物凄く弱く、Gウィルス自身が排出した胚に寄生されて、初めて感染する。
 つまり、保有者のリサに噛み付かれても、Gウィルスに感染することはまず無い。
 しかし、特異菌は……。

 リサ「多分、無いと思う。特異菌はカビの一種だけど、それをGウィルスが食べてる感じ」

 しかし、繁殖力の強いカビだから、Gウィルスが食べても食べ尽くされることはなく、また繁殖してしまう。
 そしてそれをまたGウィルスが食べて、また繁殖し……の無限ループである。
 リサの場合はそうであるが、上野利恵と鬼の男はもっと別の物がブレンドされているという。
 特異菌が使用されているのは間違いないが、利恵達の特徴を見ると、それ以外にもあるようだ。
 Tウィルスもそうだが、それ以外にもあるとのこと。

 愛原「リサは無いけど、利恵や鬼の男はどうかって感じか……」

 白井はTウィルスによるゾンビ化を忌み嫌っていたという。
 本来の使い方は、それではないと。
 アメリカのアンブレラ本体に在籍していたアッシュフォード博士は、筋ジストロフィーの治療薬に使おうと考えていたようである。

 高橋「先生、もしかして……」
 愛原「高橋は、『彼岸島』ってマンガは知ってるか?」
 高橋「ええ、知ってますよ!」
 愛原「俺は鬼の男が、雅の役をやらないか心配なんだ」
 高橋「その、鬼の男は吸血鬼なんですか?」
 愛原「いや、人食い鬼だろう。もちろん、人食いの一環で人の生き血を啜ることも好きだろうがな」
 リサ「うん、大好き!」
 愛原&高橋「コォラ!」
 リサ「せ、先生の血だけだよぉ~!」
 絵恋「私の血も吸っていいからね?」
 リサ「ありがとう。……あ、先生。そろそろ先生の血中老廃物を啜りたいなぁ……なんて」
 愛原「帰ったらな」
 リサ「やった!」
 絵恋「リサさん、私には!?ねぇ、私には!?」
 リサ「先生の後でやってやる」
 絵恋「も、萌えーっ!」

 リサは助手席に身を乗り出して言った。

 リサ「鬼の男は、人間を食う度に強くなるタイプだと思う」
 愛原「『彼岸島』じゃなくて、『鬼滅の刃』かよ」
 リサ「わたしは、せいぜい血を少し啜る程度だから、そんなに強くないかもしれない」
 愛原「大丈夫だよ。オマエのGウィルスも大概だぞ」
 リサ「だと、いいんだけどね」
 愛原「とにかく、今日は急いで帰るぞ。で、明日は外出禁止だ。分かったな?」
 リサ「はーい」
 愛原「成田空港への見送りはOKだ。善場主任は、むしろ成田空港の方が安全なんじゃないかって言ってた」
 高橋「確かに。鬼野郎からすれば、成田空港どっから出て来たって感じっスもんね」
 愛原「そういうことだな」
 高橋「すると危険なのは……」
 愛原「東北新幹線の沿線だな」
 高橋「上野に行くんスよね?大丈夫っスか?」
 愛原「京成上野駅はJR上野駅とは別の場所にあるし、上野御徒町駅から地下道を通って行けば大丈夫だろう」
 リサ「なるほど……」
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“私立探偵 愛原学” 「デイライトにて」

2023-07-17 14:54:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日14時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 私達を乗せた上野東京ラインはダイヤ通りに運転し、デイライトの事務所に無事到着することができた。
 元日ということもあり、事務所内はガランと寂しいものになっている。

 善場「愛原所長、お疲れさまです」
 愛原「善場主任、お疲れさまです。主任、確か京都の山奥に向かうという話でしたが……?」
 善場「急きょ延期になりました。栃木の方で事件が発生しましたので。約束通り、お弁当を用意しています。リサ達はあちらのリフレッシュルームで、食べててください」
 リサ「私のお弁当は!?」
 善場「肉増し牛肉弁当ですよ」
 リサ「おおー!」
 善場「所長は幕の内弁当がお好きでしたね?」
 愛原「ははは、お見通しのようで……」
 善場「我那覇さんも」
 絵恋「ありがとうございます」
 善場「飲み物はリフレッシュルームの自販機で、適当に買ってください」
 リサ「はーい」

 リサと絵恋は弁当を手に、リフレッシュルームに向かった。

 善場「それでは愛原所長、大変なところ申し訳ないですが、あちらで御報告を」
 愛原「あ、はい」

 私と善場主任は会議室に向かった。
 机を挟んで向かい合わせに座ると、私はホテル天長園での上野利恵との話の内容を報告した。

 善場「あの日光市の民泊施設が、かつて天長会の宗教施設だったと?」
 愛原「はい。どことなく、雰囲気が小牛田の……宮城県に住んでた伯父の愛原公一の家に似ているなとは思ったのですが……」

 宮城県・小牛田の公一伯父さんが住んでいた家は、かつては公民館だった建物だ。
 田舎の町の公民館だから、平屋建ての建物だった。
 それと比べて、日光の民泊施設は一軒家という触れ込みだったので、そういう先入観があったのだが、大広間があった所は、確かに集会所としての用途もあったのかもしれない。

 善場「新興宗教団体の場合、個人の家を集会所として利用することは、よくあることです。天長会もそうだったのでしょうね。恐らく信者か何かの家を集会所などに転用し、その後、民泊施設として売り払ったのでしょう。もちろん、かつては宗教施設だった名残はなるべく消した上で」

 上野利恵もそこで『鬼』となる儀式を受けたこと、そしてその前に、あの鬼の男もまたそこで儀式を受けて、鬼になった可能性があることも報告した。

 善場「ありがとうございます。やはり、天長会を家宅捜索する必要がありそうですね」
 愛原「白井はもうこの世からいなくなったはずなのに、まだまだその余波が残っているとは……」
 善場「特異菌自体は、既に半世紀以上も前から存在していました。アンブレラの創業者、オズウェル・スペンサーはウィルスより使い勝手が悪いと判断したようですが、そこに白井が目を付けたのでしょうね」
 愛原「白井が死んだ以上、結局あいつは何が目的だったのかが分からずじまいですね」
 善場「永遠の命とか、強さとか、そういうのに拘っていたようです。確かにGウィルスや特異菌には、その効果が期待できますから」
 愛原「なるほど……」
 善場「とにかく、『鬼』の製造に白井が関わっていることが分かれば、それでBSAAを動かせそうです。また、ただの宗教行事ならともかく、本当に『鬼』を製造してしまった天長会にも責任はありますからね。この辺の法的措置も合わせて、検討したいと思います」
 愛原「鬼の男はどうしますか?あいつは現在進行形で動いてますが……」
 善場「まずは地元の警察で対応してもらうしかありません。所長が報告して下さいましたから、この報告を取りまとめ、BSAAの地区本部に提出します」
 愛原「私達の今後の対応としましては、どのようにしたら良いですか?どうも鬼の男は、リサを狙っているようです」
 善場「鬼の男は、リサの居場所を知っているのですか?」
 愛原「知らないと思います。ただ、何かのきっかけでリサの気配を感じ取ることはできるようです。あいつが東北新幹線の線路で暴れたのも、それがきっかけではないかと」
 善場「……恐らく、リサが何か力を出したら、それで分かるのでしょうね。心当たりは?」
 愛原「電撃ですか」
 善場「こちらの作戦が決まるまで、リサには電撃を禁止しましょう。もちろん、期せずして鬼の男と遭遇してしまった場合は別ですが」
 愛原「はい」
 善場「因みに、我那覇さんはいつ東京を離れる予定ですか?」
 愛原「明後日の3日です。沖縄は冬休みが短く、1月は三が日までしか休みが無いそうです」
 善場「なるほど。しかし、夏休みはこちらよりも長く設定されていることが多いですね」
 愛原「はい」

 但し、台風直撃などで休校となった場合は、その穴埋めの為に夏休み期間が削られることもあるそうだ。

 善場「空港はどちらからですか?」
 愛原「成田です。LCCに乗るそうなので」
 善場「そうですか。電車で行かれると……」
 愛原「はい。京成上野駅から、“スカイライナー”で向かうつもりです」
 善場「お帰りもそれですか?」
 愛原「いや、帰りは普通の電車でゆっくり帰りますよ」
 善場「かしこまりました」
 愛原「鬼の男に見つかりませんかね?」
 善場「なんとも申し上げられませんね」

 と、そこへ善場主任のスマホの着信音が鳴った。

 善場「ちょっと失礼します。……もしもし?」

 電話に出た主任だったが、見る見るうちに顔が青ざめた。

 善場「ええっ!何ですって!?全滅!?」
 愛原「えっ!?」
 善場「……はい。……はい。……そうです。今、こちらの事務所にいる状態ですが……はい。……はい、分かりました。……はい。それでは、失礼します」

 主任は電話を切った。

 愛原「何かあったんですか?」
 善場「栃木の新幹線上で暴れていた鬼の男ですが、対応に当たっていた警察隊が全滅したそうです」
 愛原「ええっ!?」
 善場「どうして、今になってあんな化け物が野放しにされるようになったのでしょう?」
 愛原「えーと……」

 確かに、上野利恵も人食い鬼だ。
 満月の夜などは自重して、自ら地下室に閉じ籠るなどしているようだが、鬼の男は……。

 愛原「家族がいたはずですよ!多分、今までは家族が監視していたからなんじゃないですかね?それがどこへ行ったのやら……」
 善場「確か、埼玉の家を引っ越して以来、行方不明だそうですね?」
 愛原「そうです。全く手がかりはありません」
 善場「それこそ、京都の大江山かもしれませんよ。いや、実際の引っ越し先がそこである保証はありませんが、何らかの手掛かりはあるはずです」
 愛原「主任はどこまで掴んでおられるのですか?」
 善場「白井が生前、大江山を訪れたという情報を得ましたので、その確認です」
 愛原「そうだったのですか」
 善場「ですが、今は関東近辺に危険な鬼がいますので、そちらの対応が優先となりました。地元警察が全滅した今、一国の猶予もなりません。急いで所長の報告をまとめ、BSAAの出動を促します」
 愛原「分かりました」
 善場「なるべくリサは、外には出さないでください。本来なら、成田空港への見送りも控えて頂いた方がいいと思っております。……ああ、でも、逆に、成田空港は安全かもしれませんね」
 愛原「分かりました」
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“愛原リサの日常” 「暴れる鬼」 2

2023-07-17 11:21:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日13時00分 天候:曇 栃木県宇都宮市某所 東北新幹線線路内]

 高速走行中の東北新幹線に跳ねられた鬼の男の肉片を集める警察官達。
 ところが……。

 警察官「うん?」

 その肉片が動き出した。

 警察官「な、何だ何だ?」

 その肉片は他の肉片と合わさって行き、そして段々と人の形を成して行く。

 警察官「えっ、ええーっ!?」

 そして最後には、あの鬼の男の姿に戻った。

 警察官「ばっ、化け物だーっ!!」
 鬼の男「さっきはよくも轢いてくれたなァ……?歩行者優先だろうがぁぁぁぁぁっ!!」

[同日13時05分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR東北新幹線274B列車8号車内→JR大宮駅]

 都内はカラッと晴れている。
 だが、車内には不穏な情報が流れていた。
 それは東北新幹線の事故処理が大幅に遅れるというものであった。
 宇都宮~那須塩原間で起きた人身事故。
 リサを追い掛けて東北新幹線の軌道内に入り、そこで下り列車に跳ねられて肉塊となった鬼の男。
 当初の予定より、大幅に運転再開が遅れるということは……。

 愛原「もしかしたら、本当に復活したのかもしれないな」
 リサ「新幹線に轢かれても大丈夫なのか……」

 リサの心配は更に増した。

 リサ(本当に、わたしが相手で勝てるんだろうか……?)

[同日13時25分 天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅・新幹線乗り場]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、上野です。山手線、京浜東北線、常磐線、東京メトロ銀座線、東京メトロ日比谷線と京成線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。上野の次は、終点、東京です〕

 愛原は大宮駅まで運転できれば御の字だと言っていたが、その予想に反して、大宮駅はすんなり発車した。
 その代わり……。

〔「まもなく上野、上野です。お出口は、左側です。お客様にお知らせ致します。東北新幹線、宇都宮~那須塩原間で発生した人身事故につきましては現在、運転再開の見込みが立っておりません。また、この先、東京駅のホームに列車が全て停車している状態でございます。その為この電車、上野駅で運転を見合わせます。お急ぎのところ、大変ご迷惑をお掛け致します。申し訳ございません。新しい情報が入り次第、お伝え致します。まもなく、上野です」〕

 愛原「上野か……。まあ、ここまで運転できただけでも御の字だ」
 絵恋「ホームが埋まってるって?」
 愛原「らしいな。上越新幹線や北陸新幹線はダイヤ通りに運転しているんだろう。それらの列車には、なるべく影響を出したくない。となると、どうしても事故中の東北新幹線は干される形になるんだな。東京駅に先に到着した列車は、良くて大宮までしか運転できない。折り返しが効かない状態で、よくまあ、上野駅までは運転できたと思うよ」

 愛原がそんなことを話しているうちに、列車は地下ホームに滑り込んだ。
 上野駅の新幹線ホームは2面2線。
 下りホームには、同じく運転再開を待つ東北新幹線下り列車が停車していた。
 外側のホームには列車は停車していないが、これは上越・北陸新幹線用のホームである。
 こうやってホームを分けることにより、このように東北新幹線が運転を見合わせても、他の新幹線になるべく影響は出ないようにしているのだ。

 リサ「どうするの?」
 愛原「ここで降りるさ。腹減っただろ?ここで食べて行こう。さすがに上野駅なら、店も一杯あるだろ?」
 リサ「確かに!」

〔「ご乗車ありがとうございました。うえの~、上野です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 半数以上の乗客がここで降りた。
 いつ運転再開できるか分からない新幹線に、これ以上付き合えないということだろう。
 リサ達もそうである。
 それでも少数、列車内に残っている乗客がいるのは、気長に運転再開を待つのか、或いは東海道新幹線に乗り換えるなどする為、新幹線から降りるに降りれないかといったところだろう(通しの新幹線特急券を持ってしまっていると、新幹線改札口から外には出られない為)。

 愛原「……はい。今、上野駅です」

 移動しながら愛原は、善場に電話していた。

 愛原「……はい。新幹線が、また上野駅で運転見合わせになってしまって。いつ運転再開できるか分からないので、ここで降りることにしました。……そうですね。で、リサがお腹を空かせているので、お昼を食べてからお伺いしたいのですが……。は?はあ……」

 何かあったのだろうか?
 リサが不審そうな顔をしていると、愛原が電話を切った。
 そして、後ろを振り向く。

 愛原「リサ、腹が減ってるところ悪いが、善場主任が急いでデイライトの事務所に来て欲しいらしいんだ。だから、昼食はもう少し待ってくれないかな?」
 リサ「はあっ!?何それ!?」

 リサの目が赤く光り、右手の爪が鋭く長く伸びる。
 フードを被っているので見えないが、耳が尖り、マスクで隠れているが、牙も鋭くなっただろう。

 愛原「落ち着け落ち着け。その代わり、デイライトの事務所でお弁当を用意しているそうだ」
 リサ「お弁当!?」

 シュルッとリサ、人間の姿に戻る。

 愛原「それで何とか頼む!善場主任のことだから、リサの好みの弁当は知ってるだろうしな」
 リサ「う、うーん……分かったよ。先生の命令だしね」
 愛原「そうか、ありがとう」
 絵恋「それなら、なるべく早く新橋に行く電車に乗りませんと」
 愛原「そうだな。京浜東北線の快速は新橋には止まらないから、上野東京ラインで行こう」

[同日13時44分 天候:晴 JR上野駅・上野東京ラインホーム→上野東京ライン1174M列車1号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。9番線に、停車中の列車は、13時44分発、上野東京ライン、普通、品川行きです。次は、東京に停車します〕

 上野東京ラインのホームに行くと、常磐線からやってきた中距離電車が停車していた。
 正月でも中間車はそれなりの乗客が乗っていたが、先頭車まで行くと、そうでもなかった。
 先頭車にはボックスシートがあるが、そこが1ヶ所まるっと空いていたくらいである。
 普段の日なら、ここまで空いてはいないだろう。
 また、品川止まりだからというのもあるか。
 ホームには、次の東海道線直通電車を待つ乗客達が待っているくらいだ。

 リサ「旅の続きだね」
 愛原「まあな」

 ホームから発車メロディが聞こえて来る。
 さすがにこちらはダイヤ通りのようである。

〔9番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 電車のドアが閉まって、すぐに走り出した。

〔この電車は、上野東京ライン、普通電車、品川行きです。【中略】次は、東京です〕

 リサ「善場さん、どうして急いで来いって?」
 愛原「俺の報告が聞きたいんだってよ。俺の報告を持って、腰の重いBSAAを動かしたいらしい。BSAAは、今回の出来事がバイオテロの1つだと見なす要素が無かったら動かないから。『他の犯罪やテロだったら、地元の警察や軍隊が動けばいい』って考えだから」
 リサ「なるほど」

 この電車内でも、何度も運行情報のチャイムが鳴って、ドア上の表示板に東北新幹線運転見合わせについての情報が流れている。

 愛原「鬼狩り隊でも、太刀打ちできないようなら、やっぱり軍隊の出番かな」
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