報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「成田空港の旅」

2023-07-24 20:42:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日12時9分 天候:晴 東京都台東区上野 都営地下鉄上野御徒町駅→京成上野駅]

 電車の中では、未だに何も起こらない。
 しかし、リサは鬼の気配を感じたままだという。
 その間、善場主任から来たメールは衝撃的だった。

 愛原「うっ……!」
 高橋「どうしました、先生?」
 愛原「鬼の男は、練馬区にいたらしい」
 高橋「練馬区……」
 愛原「さすがに練馬区じゃ、墨田区は遠くて気づかないか……」
 高橋「何でそこにいたんスか?てか、そこにいたってことは、姉ちゃん達が動いたと?」
 愛原「何でも、警察に匿名のタレコミがあったらしい。で、警察が乗り込んだ途端に、逃げ出したんだと。だから、また行方不明だ」
 リサ「鬼の男は、練馬区のどこにいたの?」
 愛原「マンションらしいな。……善場主任の、予想通りの展開になっていたようだ」

 私は歯ぎしりをした。

 高橋「シンママと娘2人しか住んでいない部屋に飛び込んで、あとはもう【官能小説の世界】っスか」
 愛原「そういうことだ」
 高橋「とんでもねぇ……。全身チ○○のヤーさんよりひでェ」
 愛原「それにしても、一体誰が通報したんだろうな?」
 高橋「近所の住人とか?」
 愛原「だったら、匿名である必要は無いんじゃないか?」
 高橋「あっ、そうか……」
 愛原「危ないところだったよ。練馬区は、この都営大江戸線も通る」
 高橋「あっ……」
 愛原「誰かが通報してくれなかったら、このトンネルを通して、リサの存在が鬼の男にバレるところだった」
 高橋「確かにそうっスね」

〔上野御徒町、上野御徒町。上野松坂屋前です〕

 電車は上野御徒町駅に到着した。

 愛原「着いたな……」

 結局、何も起こらなかった。
 電車を降りて、改札階へ向かう。

 愛原「リサ、鬼の気配は?」
 リサ「風が強くて、よく分かんない」
 愛原「そ、そうか」

 トンネルを電車が行き来していると、風が吹いて臭いが流れてしまうようだ。

 高橋「……何か先生、サツが多くないっスか?」
 愛原「鬼の男は鬼の男で、リサの気配を感じて都営大江戸線沿線に逃げているのかもしれないな。それで、各駅の警備を強化しているのかもしれない……」
 高橋「やっぱそうっスか。……えっ、トンネルの中に入ったんスか?」
 愛原「いや、お前、何言ってるんだ?」
 高橋「あ、いや……」
 愛原「トンネルの中に入ったら、電車が止まるだろ」
 高橋「それもそうっスね」

 改札口を出て、京成上野駅に向かう。
 上野御徒町駅と京成上野駅とは直接繋がってはいないが、なるべく近い所の出口を目指す。
 そしてそこから一旦地上に出て、また地下道に下りる。
 あとはその地下道を通って、京成上野駅に行けるはずである。

 愛原「久しぶりの地上だ。きっと風が冷たいぞ」
 高橋「やっぱ地上が最高っスね」
 リサ「ん」

 階段を駆け上って地上に出る。
 すると、冬の日差しが私達を包み込んだ。

 リサ「うーん……」

 リサは日差しの眩しさに目を細めた。

 リサ「あー、そうか……」
 愛原「何だ?」
 リサ「Gウィルスしか体に持ってないと、夜は活動できないんだって。だから、わたしの場合、こうやって太陽を浴びると熱く感じるんだ」
 愛原「大丈夫なのか?」
 リサ「今は特異菌も体の中にあるからね。きっと、リエや他の『鬼』達もそうだよ。特異菌が無くなると、夜しか活動できなくなるんだ」
 愛原「そういうもんなのか……。まあ、特異菌はカビの一種。カビも植物の1つである以上、夜よりは昼だよな。でも、Gウィルスは逆か」
 リサ「そういうこと」

 再び上野中央通り地下歩道という地下道に下りる。

 リサ「先生、お腹空いたけど、駅弁とかあるの?」
 愛原「い、いや、無いな……。ファミマはあるから、そこで色々食べ物は買えるけどね」
 リサ「コンビニ弁当か……」
 愛原「ま、まあね」

 京成上野駅は、多くの利用客で賑わっていた。
 正月三が日の最終日ということもあり、逆に東京に遊びに来ていた観光客が帰ろうとしているのかもしれない。
 或いは、成田空港から来た客で賑わっているのか。

 リサ「エレンにLINEを送る」
 愛原「ああ」

 リサがスマホを取り出してLINEを送ると、すぐに絵恋とパールはやってきた。
 駅構内にあるカフェで時間を潰していたようである。

 愛原「こっちは変わりは無かった?」
 パール「平和なものでした。ただ、ちょっと気になることはありましたけど……」
 愛原「気になること?」

 すると、パールは白い封筒を渡した。

 パール「これをリサ様の保護者の方に、と渡してきた人がいまして……」
 愛原「誰だ、その人は?」
 パール「名乗らずに立ち去って行きましたね。もしかしたら、デイライトの方かもしれませんね」
 愛原「デイライト?もしも連絡があるようなら、直接善場主任から来るようになってるぞ?」
 高橋「先生、開けてみましょうよ」

 封筒の中身は、どうやら普通の紙が入っているようだ。
 試しに開けてみると、確かに便箋が入っていた。

 愛原「ん?」

 しかし、そこにはQRコードが書かれていただけだった。
 裏を見ると……。

 愛原「『鬼の男の身内より』……な、なにいっ!?」

 私はすぐにスマホで、QRコードを読み取ろうとした。
 だが、読み取れない。
 どうやら、ネットに繋がるコードではないようだ。
 すると、これは一体……?

 愛原「これを渡してきたのは、どういう人?」
 パール「女性でしたよ。リサ様のような恰好をされていました」
 愛原「んっ!?」

 それはフード付きのパーカーということか。
 リサが鬼の姿を隠す為にフードを被り、マスクをしているのと同じ姿をしていたという。

 愛原「……なあ。もしかして、何か独特の体臭とかしなかったか?」
 パール「んー……そう言われると、何かしたかもしれません」

 大勢の人を食ったとされる鬼の男の体臭は、私達にも分かる。
 しかし、人を1人も食べていないリサは、そういった体臭は無い。
 だが、数人しか食べていない場合は、人間の嗅覚では分からないことがある。
 だから、夫1人しか食べていない上野利恵は、リサなどにしかその体臭は分からなかった。

 愛原「リサが感じ取った気配の主かもな」
 高橋「どうします?」
 愛原「取りあえず、善場主任に連絡しよう」

 私は善場主任に電話した。
 そして、パールが受け取ったという手紙のことを話した。

 善場「すぐに確認したいです。今、京成上野駅ですか?」
 愛原「そうです。ただ、12時40分発の電車なんですが……」
 善場「京成上野駅のすぐ近くに交番があります。そこへ連絡しておきますから、そこへ預けておいてください」
 愛原「分かりました」

 私は一旦、京成上野駅を出ると、近くの交番に向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「作戦失敗」

2023-07-24 15:31:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日11時37分 天候:不明 東京都新宿区西新宿2丁目 都営地下鉄都庁前駅→大江戸線1103B電車・先頭車内]

〔都庁前、都庁前。飯田橋、両国方面はお乗り換えです。4番線は、中野坂上、練馬方面、光が丘行きです〕

 

 森下駅から都営地下鉄大江戸線に乗った私達は、あえて反対方向へやってきた。
 これも、鬼の男を撒く為の作戦の1つである。
 しかしながら大江戸線の電車は、基本的に座席が硬いので、ずっと座っていると腰が痛くなってくる。
 正月休みで、都心を走ると地下鉄も空いているので。

 愛原「ここで、乗り換えだ」

 私達は電車を降りた。
 発車ベルと発車メロディが同時に鳴り、光が丘行きの電車は発車していった。
 エスカレーターに乗り込んで、コンコースに上がる。

 

 リサ「!」

 その時、リサが立ち止まった。

 愛原「どうした?」

 リサは眉を潜めた。

 リサ「……鬼の臭いがする……!」
 愛原「何だって!?どこからだ!?」
 リサ「分からない。風に漂って、臭って来ただけで……」

 ここは地下鉄の駅である。
 地上から吹き込んで来る風、トンネルから吹いてくる風が時折強風となって、コンコース内を吹き抜ける。

 高橋「先生、どういうことっスか?鬼の男は今頃、菊川でブッ殺されてるはずじゃ?」
 愛原「う、うん。そうだよな……」

 私は辺りを見回した。
 少なくともコンコースには、ホテル天長園にやってきた鬼の姿は無い。

 愛原「取り合えず、リサはトイレに行ってろ」
 リサ「うん」

 私はコンコース上にあるトイレにリサを行かせた。
 作戦終了までは、基本的に連絡はしない決まりになっている。
 連絡をすることで、何かの拍子にリサの居場所がバレると困るからだ。
 私は取りあえず、善場主任にメールを打ってみた。
 すると、案外早く返信が来た。
 私はリサの反応について送ってみた。
 すると、電話が掛かって来た。

 善場「そこはどこですか!?」
 愛原「都庁前駅です」
 善場「すぐ近くに鬼はいますか?」
 愛原「周囲を見回しましたが、特にこれといった姿は見られません」
 善場「リサが感じた気配というのは、鬼で間違いないですか?」
 愛原「そのようです。……あの、そちらはどうですか?」
 善場「結論から言いますと、作戦は失敗です」
 愛原「えっ?!」
 善場「鬼の男は現れませんでした。住民の避難命令は解除して、通常に戻すつもりです」
 愛原「リサの電撃に気づかなかったのかな……」
 善場「いえ、あれだけの強さであれば、気づいたでしょう。しかし、あえて現場には行かなかったと見るべきかと」
 愛原「やはり、さすがに罠だと気づきましたかね」
 善場「それもあるでしょうし、もしかしたら、リサに愛想を尽かしたのかもしれません」
 愛原「それならそれで、別にいいことですけどね」
 善場「リサとは別に鬼の女の子がいて、そちらに乗り換えたとか……」
 愛原「いるんですか!?そんなコが……」
 善場「いないとは思えません。覚えてませんか?直近ですと、聖クラリス女学院にいましたよね?」
 愛原「あっ……!」
 善場「更にその前は、日本版リサ・トレヴァーの亜種などが何人かいたじゃないですか」
 愛原「いましたね!」
 善場「BSAAが全員掃討したと思っていましたが、掃討漏れした個体がいるのかもしれません」
 愛原「なるほど……」
 善場「とにかく、リサの反応は高確率で当たりです。十分に気をつけてください」
 愛原「分かりました」

 電話を切った。
 それから、リサがトイレから出て来る。

 リサ「お待たせ」
 愛原「大丈夫か?また、鬼の臭いはするか?」
 リサ「それがするんだよ」
 愛原「マジか。一体、どこからだ?」
 リサ「ただ、それは……男の臭いじゃない」
 愛原「すると、鬼の男とは別か。他にもいるんだな」
 リサ「うん。鬼の男以外にも、既に人間を食ってるヤツ」
 愛原「そうか……。気を付けて行こう」

 私達はホームに降りた。

 

 当駅始発の電車は既にホームに停車していて、発車を待っている。

〔「本日も都営地下鉄大江戸線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は11時48分発、飯田橋、両国方面行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 私達は先頭車に乗り込むと、再び硬い座席に腰かけた。

 愛原「鬼の男は菊川には現れなかったそうだ。一体、どこにいるんだろうな?」
 高橋「良かったな、リサ。どうやらお前、フラれたようだぞ?」
 リサ「別にわたしが告白したわけじゃないし、ストーカーが1人消えて万々歳だよ」
 愛原「まあな……」

〔「お待たせ致しました。11時48分発、飯田橋、両国方面行き、発車致します」〕

 発車の時間になり、ホームに発車メロディが鳴り響いた。
 それとは別に、メロディも流れる。

〔2番線から、飯田橋、両国経由、光が丘行き、電車が発車します。閉まるドアに、ご注意ください〕

 電車のドアとホームドアが同時に閉まり、電車は定刻通りに発車した。

 

〔都営大江戸線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、飯田橋、両国経由、光が丘行きです。次は新宿西口、新宿西口。丸ノ内線、JR線、京王線、小田急線、西武新宿線はお乗り換えです。お出口は、右側です〕

 都営新宿線と違うのは、大江戸線では電車内でもWi-Fiが使えること。
 リサはそこに繋いで、スマホをやっていた。
 絵恋とLINEでもやっているのだろうが、あまり今いる場所は伝えてないでもらいたいものだ。
 だが、リサはスマホ手を止めて、また私の方を見た。

 リサ「ダメだ。やっぱり鬼の臭いがする。この電車に乗ってるのかも……」
 愛原「ええっ!?」

 私は辺りを見回した。
 少なくとも、この車両にそれらしき者は見当たらない。
 試しに隣の車両を覗いてみたが、やっぱり鬼の男は見当たらなかった。

 愛原「いないな……」
 高橋「リサみたいに、人間に化けれるんじゃないスかね?」
 愛原「あー、なるほど。そういうことか」

 しかし、それだとお手上げである。
 鬼の男はリサが顔を知っているから、例え人間に化けてもリサが気づくだろう(人間に化けても、顔が変わるわけではないので)。
 そうなると、知らない鬼がいるのか……。
 さすがのリサも、人間に化けられると、誰が鬼だか分からないようである。
 近くまで行って臭いを嗅げば分かるようだが、さすがに自ら怪しい行動はできないだろう。

 愛原「少なくとも、今のところは何もしてこないようだ。一応、俺は善場主任に報告しよう」

 私は揺れる電車の中、善場主任にメールを送信した。
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