報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「成田空港にて」

2023-07-28 14:53:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日13時21分 天候:不明 千葉県成田市古込 空港第2ビル駅→同市三里塚御料牧場 成田空港駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)、空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)です。出口は、右側です。……〕

 列車は成田空港第2ビル駅に接近した。
 既に地下トンネルを走行しているが、今のところはまだ何も起きない。
 だが、まだ油断はできない。
 テロリストの中には、列車を降り際に爆弾を爆発させたりすることもあるからだ。
 そして、列車はホームに停車した。
 鬼の男の妹を名乗る鬼の女は、席を立つと、デッキに向かった。

〔「ご乗車ありがとうございました。空港第2ビル、空港第2ビルです。……」〕

 ホームから発車ベルの音が聞こえて来る。
 ここで半分くらいの乗客を降ろすスカイライナー。
 そして、ドアが閉まって再び電車はトンネル内を走行した。

 リサ「先生、大丈夫!?」
 愛原「ああ……大丈夫だ」
 高橋「先生!さすがっス!鬼を前にして、全く動じないその態度!やっぱ先生は名探偵っスよ!」
 愛原「い、いや、あの場合……ああするしか無かっただろ」

 私はスマホを取り出した。

 愛原「電車を降りたら通報するぞ。あくまでも、電車内では通報しないという約束だったからな」
 高橋「な、なるほど」

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、成田空港(成田第1ターミナル)、成田空港(成田第1ターミナル)です。どなた様も、お忘れ物をなさいませんよう、お支度ください。本日も京成スカイライナーをご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 東京メトロの自動放送と同じ声優の自動放送が流れると、少しは安心する。
 電車は鬼の女を降ろした空港第2ビルから1kmほど走って、終点の成田空港駅に到着した。

 

〔「ご乗車ありがとうございました。成田空港、成田空港、終点です。車内にお忘れ物をなさいませんよう、お降りください。……」〕

 私達はホームに降りた。

 愛原「ちょっと待ってくれないか。善場主任に通報したい」
 リサ「分かった。……トイレ行ってきていい?」
 愛原「ああ。トイレはこの上だ。改札からは出るんじゃないぞ?」
 リサ「分かった」
 絵恋「私も行く」
 パール「それでは、私は護衛を……」
 高橋「さっさと行けー」

 私はホームのベンチに座った。

 

 私達が乗った列車は折り返し、京成上野行きになるようだ。
 一体、鬼の女は何の用で空港第2ビル駅に降りたのだろう。
 荷物からして、飛行機に乗るような感じではなかったが……。

 善場「善場です」
 愛原「愛原です。実はちょっと、大変なことになりまして……」
 善場「伺いましょう」

 私はこれまでの経緯を話した。

 善場「分かりました。それでは、係官を現地に向かわせましょう」
 愛原「現地で合流する必要はありますか?」
 善場「それには及びません。京成上野12時40分発のスカイライナーに、日暮里駅から乗り込み、愛原所長の隣の席に座って、空港第2ビル駅で降りたのですね」
 愛原「そうです!」
 善場「そして、特急券を車内で購入したと?」
 愛原「はい。改札に来た車掌から購入してました」
 善場「特に、自分の存在を隠す気は無いようですね」
 愛原「まさか、空港が閉鎖になるとかは……」
 善場「今後の展開では、その可能性もあります。我那覇絵恋さんの飛行機は、何時に離陸しますか?航空会社の便名が分かれば、それもお願いします」
 愛原「はい。ピーチ航空507便、15時55分の離陸です」
 善場「かしこまりました。その1時間前に、チェックインを済ませる予定ですね?」
 愛原「そんなところです」

 なので、私達の見送りは15時前に終わる予定だ。
 成田空港から都内への手段は、特に決めていないことも伝えた。

 善場「所長方が帰京される頃には、避難命令も解除されていると思われますので」
 愛原「そうですか」
 善場「ただ、道路は渋滞しているかもしれませんね」
 愛原「なるほど。鬼の男について、何か新しい情報はありますか?」
 善場「はい。それについて、情報を共有したいので……」
 高橋「うわっ、何だ!?」

 その時、高橋が突然大声を上げた。

 愛原「何だ!?」
 高橋「変な目玉が!」
 愛原「!?」

 最初はピンポン玉が浮いているように見えた。
 だが、良く見るとそれは2つの目玉だった。
 ギョロッと赤い瞳が私の方を見る。

 善場「何かありましたか!?」
 愛原「な、何か変な目玉が、私達の周りを……」
 善場「! 逃げてください!直ちに、そこから!急いで!!」
 愛原「!! 高橋!逃げるぞ!」
 高橋「ええっ!?」

 私は高橋の服の袖を掴んで、一気に階段まで走った。
 爆発でもするのかと思ったが、そんなことはない。
 だが、目玉が私達を追って来た。

 高橋「やる気か、この野郎!」

 高橋は持っていたマグナムを取り出した。

 愛原「当たるわけないだろ、そんな小さいの!」

 大型拳銃で、ピンポン玉みたいな大きさの、それもふわふわ浮いている物に当てられるとは思えない。
 それなら、まだ私のショットガンの方がマシだ。
 だが、今は細かく分解している状態。
 あの目玉が何をしてくるか分からない以上、組み立てているヒマなど無かったし、仮にあったとしても、こんな大勢の旅客がいる前で撃つわけにはいかなかった。
 私達は階段を駆け上り、改札階に出た。
 そして、コンコース内にあるトイレに向かった。

 パール「どうしたの?」

 パールはトイレに入っておらず、その入口付近で少女達を待っていた。

 愛原「パール!すんごいマズいことになった!どうやら、敵に捕捉されたらしい!すぐにここから離れるぞ!」
 パール「待ってください!まだ、御嬢様方が中に……」
 高橋「早く呼んで来い!」
 パール「敵ってどこにいるんですか!?」
 愛原「これだ!」

 私はふわふわ浮かんで付いてくる目玉を指さした。
 これだけだと、何かの玩具の一種だと周囲には思われているようで、特に騒ぎにはなっていない。

 パール「これが敵ですか……。それでは!」

 ザシュッ!スパッ!

 愛原「え……?」

 何と、パールは手持ちのミリタリーナイフを取り出すと、それで目玉2つを倒してしまった。
 1つは切っ先で突き刺し、もう1つはスパッと真っ二つにしてしまった。
 目玉は煙を上げて、消えて行った。

 パール「これで宜しいですね?」
 高橋「オメーなぁ……」
 善場「ちょっと、善場主任に確認してみるわ」

 私は一旦切った電話を、もう1度掛け直すことにした。
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“私立探偵 愛原学” 「空港アクセス鉄道にて」

2023-07-26 20:16:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日12時45分 天候:晴 東京都荒川区西日暮里 京成電鉄本線12AE09列車1号車内]

 日暮里駅で殆どの席が埋まる。
 空席は数えるほどしかない。
 そのような状態で、列車は発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も京成スカイライナーをご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、成田スカイアクセス線経由、スカイライナー、成田空港行きです。成田空港では、ご利用になるターミナルによって降車する駅が異なります。成田第2・第3ターミナルへは空港第2ビル駅で、成田第1ターミナルへは終点の成田空港駅でお降りください。この電車は、全て指定席です。【中略】次は空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)、空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)に停車します〕

 私の隣の席に座った女性は、リサと似た格好をしている。
 リサよりは少し大人びているだろうか?
 リサと同様、パーカーの上にフードを被り、同じくマスクをしているので、顔は分からない。
 あと、何やら香水を付けているのか、独特の匂いがした。
 何やら、私の後ろに座っているリサ達が静かになってしまっている。
 一体、どうしてしまったのだろう?
 すると、私のスマホにLINEの着信があった。
 スマホを開いてみると、それはリサからだった。
 リサによると……。

 リサ「先生、気をつけて!先生の隣の女、鬼かもしれない!」

 と。
 な、なにいっ!?
 リサはそれで、先ほど驚いた反応をしていたのか。
 リサが動かなかったのは、ここで暴れたら、多くの乗客が巻き添えになってしまう。
 私の隣の鬼かもしれない女から攻撃を開始したら応戦せざるを得ないが、今のところは何もしてこない。
 何もしてこないのなら、むしろ電車が次の駅に到着するまでは静観した方が良いと判断したようだ。
 さすがにリサも高校2年生、まもなく3年生になろうとしている歳だから、そういう判断ができるようにまではなったか。
 私はスマホの画面が隣の女に見えないように窓側に傾けながら、リサとのLINEを続けた。

 愛原「『臭い』はするか?」
 リサ「する!香水でごまかしてるみたいだけど、わたしの鼻はごまかせないよ!」
 愛原「そうか」

 もしかしたら、京成上野駅で、パールに封筒を渡した女かもしれない。
 私はグループLINEを開いた。
 そして、そこでパールに呼び掛けた。

 愛原「俺の隣に座っている女性、もしかしたら、パールに封筒を渡した人じゃないか?」
 パール「うーん……ちょっとこの席からでは分かりません」

 パールは高橋と一緒に、絵恋の後ろの席に座っている。
 つまり、私の席の2つ後ろに座っている。
 その窓側に座っていて、2つ前の席の通路側の客の姿は見えにくいようである。

 愛原「パールに手紙を渡してきた女性の特徴を詳しく教えてくれないか?」
 パール「はい。身長は170cmほどありました。私と同じくらいですね。グレーのフード付きパーカーを羽織っていて、フードを深く被っていました。口にはマスクを着けていて、それは白いマスクです。下はジーンズです」

 私はチラッと隣の女性を見た。
 デッキに出る扉の上にはモニタがあり、それを見ながらチラッと見る感じだ。
 ……似てる。
 服装はパールと同じような服装だった。
 大人びているように見えたのは、リサよりも身長が高いからだろう。
 170cmくらいなら、栗原蓮華くらいか。
 因みに残念ながら、彼女はまだ意識を取り戻していない。
 栃木県の病院のICUに入ったままである。

 愛原「まずいな……。パールの特徴と全く同じだ。多分、本人だと思う」
 リサ「やっぱり、わたしが戦おうか?」
 愛原「い、いや、ダメだ。今のところ、何もしてこない。まだ、様子見で……」

 それに、この列車は全車指定席だ。
 私は前売りで全員分のライナー券を購入している。
 隣の女がどのようにしてライナー券を手に入れたのかは不明だが、本当に成田空港に用があるのなら、私の隣に座ったのも偶然かもしれない。
 成田空港?
 そういえば……。
 この列車の乗客の殆どは、この後、飛行機に乗る人達である。
 だから、それなりに大きな荷物を持っていた。
 絵恋も例外ではない。
 例外なのは、見送りに行くだけの私達。
 だから、荷物は少ない。
 そしてそれは、隣の女も同じだった。
 というか、ほとんど手ぶらである。
 一体、何しに行くのだろう?
 私達と違って、誰かの迎えに行くのだろうか?
 それとも……。

 リサ「いきなり襲って来るかもしれないよ?だったら、先手必勝!」
 愛原「だから、ダメだって!この電車が止まってしまう!……善場主任に通報するから、それで指示を仰ごうと思う」

 私はそう送信して、1度LINEを閉じた。
 そして、メールを開いて、善場主任に報告しようとした時だった。

 愛原「!?」

 女はポケットからスマホを取り出した。
 そして、何やら打ち込み始めている。
 一体、何だろう?
 そして、女はスッとそのスマホの画面を私に見せてきた。

 『確かに私は「鬼」です。ですが、この電車の中で暴れるつもりはありませんので、通報は不要ですよ』

 女は私達のことを知っている!?

 車掌「失礼します。スカイライナー券はお持ちではないでしょうか?」
 鬼の女?「無いです。空港第2ビルまで」
 車掌「はい」
 愛原「……!?」

 車掌が改札にやってきた。
 既にライナー券を持っている乗客にはスルーの車掌だが、無い乗客には声を掛ける。
 それはいいのだが……。

 車掌「ありがとうございます」
 鬼の女「どうも」

 普通に料金を払って、ライナー券を車掌から受け取る鬼の女と思しき者。
 ライナー券を持たずに乗って来たということは……偶然ではない!?
 つまり、この女は狙って私の隣に乗ってきたということか?
 車掌が立ち去ってから、私はスマホで質問した。
 今度は私が自分のスマホの画面を、女に見せた。

 愛原「キミは誰だ?私達に何の用だ?」

 すると、女はとんでもないことを私に伝えて来た。

 鬼の女?「がとてもお騒がせしてしまっているようです。兄を止めに来たのと、他にも色々と用事があって、成田に向かっているだけです。今のところは、皆さんと敵対する気は無いですよ。ですので、後ろの席の奥様にもよろしくお伝えください」

 い、いや、奥様って……。
 リサが一方的にそう言ってるだけで……。
 だから、何でそういう事情をこの女は知ってるんだ!?

 愛原「そうは行くか!少なくとも私には、通報する義務がある!」
 鬼の女?「やめといた方がいいと思いますよ」
 愛原「!?」

 すると、何だか車内が寒くなってきた。
 元々冬ではあるが、しかし車内は暖房がガンガン入っているはずだ。
 見ると、女はマスクをずらし、息を吹いていた。
 その口元からは、牙がチラッと見えている。
 やはり鬼だ!
 そこで気づいたのだが、女はかなりの色白で、むしろ青白く見えるほどだ。

 鬼の女「私は息を吹いているだけです。しかし、このままでは車内の温度がどんどん下がりますよ?それでも良いですか?」
 愛原「キミは……!?」

 これではまるで、鬼というよりは雪女だ。
 鬼の男がこの女の兄であり、それが火炎を吐くのならば、妹は吹雪を吹くというわけか。

 愛原「分かった!ここでは通報はしないから、もうやめてくれ!」
 鬼の女「分かりました」

 女は再びマスクをした。
 そして、ようやく再び車内の温度が上がったのだった。

 鬼の女「私がここにいる限り、兄には手出しをさせませんので、ご安心ください」

 とのことだった。
 どうやら、鬼の男よりは話が通じそうだが……。
 しかし、リサの見立てでは、この女も人を食べているそうだ。
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“私立探偵 愛原学” 「成田空港の旅」 2

2023-07-26 16:26:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日12時40分 天候:晴 東京都台東区上野 京成上野駅→京成線12AE09列車1号車内]

 改札口を通過して、ホームに向かう。
 私達が乗る京成スカイライナーは全席指定であり、乗車券の他にライナー券を購入しなければならない。
 尚、今時流行りのネットで購入するチケットレスサービスも、この列車では行われている。
 但し、チケットレスなのはライナー券だけ。
 乗車券は別途購入しなければならず、逆を言えば、その乗車券で改札口を通過するわけである。
 もちろん、ICカードでもOKなので、それで通過した。

 

 愛原「これが京成スカイライナーだ。新幹線的なスタイルだな。これで最高時速160キロだそうだ」
 高橋「ほお……160ですか……」
 パール「いい勝負ですね……」
 愛原「おい、暴走族、走り屋。電車と勝負しようとするなよ?」
 高橋「な、何言ってんスか、先生……」
 パール「きょ、今日は御嬢様のお見送りでございます」
 愛原「早く乗ろう」

 リサがいるので、予約は先頭車にした。

 

 愛原「リサと絵恋さんは、こっちの席。高橋とパールは、こっちの席な」

 私はスマホの画面を見ながら、座席番号を確認した。
 私の席は1番前にある。
 そこの窓側に1人で座ると、一人旅気分である。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。お待たせしています。この電車は、成田スカイアクセス線経由、スカイライナー、成田空港行きです。停車駅は日暮里、空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)、終点、成田空港(成田第1ターミナル)です。この電車は、全て指定席です。乗車券の他に、スカイライナー券が必要です。【中略】この先、揺れますので、ご注意ください〕
〔「本日は京成電鉄をご利用頂きまして、誠にありがとうございます。成田スカイアクセス線経由、スカイライナー43号、成田空港行きです。座席は全席指定です。次の日暮里駅からも、大勢のお客様がご乗車してございます。空いている座席の上には荷物など置かぬよう、お願い致します。お待たせ致しました。まもなく、発車致します」〕

 京成上野駅の時点では、まだ乗客は半分ほどしか乗っていない。
 正月休みは今日で終わりなので、各交通機関はUターン客で混雑すると思われる。
 ホームから発車メロディと発車ベルの音が聞こえて来た。
 先に短い発車メロディが鳴った後、ベルが鳴る感じ。
 そして、ドアが閉まる。
 それから、電車がスーッと走り出した。
 ポイントの通過がある為か、電車がガクンと揺れる。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。お待たせしました。この電車は、成田スカイアクセス線経由、スカイライナー、成田空港行きです。座席は、全て指定席です。また、デッキ、サービスコーナーを含めて全車両禁煙です。次は日暮里、日暮里に停車します〕

 日暮里駅までは、地下トンネルを走行する。
 地下鉄で上野御徒町駅まで移動し、一瞬地上に出るものの、また地下道に下り、そこから地下駅の京成上野駅を目指す。
 京成上野駅を出ても、次の日暮里駅までは地下なので、地上にいる鬼の男の目には留まらない。
 そういう思惑であった。
 だが、善場主任の話によると、どうやらそれは杞憂であったようだ。
 そいつ本人は、光が丘で人間の女達を『食べて』いたようだから。
 ややもすると、同じ都営大江戸線沿線だっただけに、私の計画が裏目に出るところであったかもしれない。
 そう思うと、やっと京成スカイライナーに乗れたことで、ホッとできた。
 できれば、日暮里駅も通過してもらいたいものだな。

 

 リサ「おっ。この電車、コンセントがある。ちょっと充電しよう」

 私の後ろに座るリサは、バッグの中からスマホの充電器を取り出した。
 それで、座席下のコンセントに差す。

 絵恋「リサさん、今日の下はショーパンなのね……」
 リサ「ヘタすると、鬼の男と戦うことになるかもしれないから、動きやすい服装にしてきた」
 絵恋「それ、スカートじゃダメだったの?」
 リサ「うん。やっぱりスカートじゃ動きにくい。何で?」
 絵恋「私がコンセントを差す時に、リサさんのパンツが見れないじゃないのよぉ~」
 リサ「オマエはオッサンかw」
 愛原「んー?俺も40過ぎのオッサンだが、何か用か?」
 リサ「あっ、先生はわたしのスカートの中、覗いていいからね?」
 愛原「つったってお前、ショーパンじゃねーかよ?」
 リサ「……ちょっと着替えてくる」
 愛原「いや、別にいいよ、わざわざ!そんな……」

 リサの行動にも困ることが今でもある。
 これも鬼型のBOWだからだろうか。

[同日12時45分 天候:晴 東京都荒川区西日暮里 京成日暮里駅]

 電車は地上に出ると、JR線の上を高架で横断する。
 そして、そのまま高架ホームへと進入した。
 誤乗を防ぐ為、下りホームはスカイライナー系列車専用ホームとその他一般電車専用ホームとで別れている。
 線路は同じなのだが、ホームが左右で違う。
 一般電車は左側のドアが開き、スカイライナー系は右側が開くようになっている。
 当然この電車は、右側のドアが開いた。

 愛原「おー、混んで来た」

 どうやら、この電車は満席らしい。
 乗り換えが便利な日暮里駅からの方が乗客が多いくらいだという。

 リサ「せ、先生!?」

 リサが何かに驚いて席を立とうした時だった。
 スマホを充電する為に、リサは座席のテーブルを出して、そこにスマホと充電器を置いていたのだが、リサが慌てて立った為に、体がそれに当たり、スマホと充電器を床に落としてしまった。

 愛原「どうした?」

 私が振り向こうとした時だった。

 女性「すいません」

 空いていた私の隣の席に、女性客が1人座って来た。
 どうやら、本当に満席らしい。

 愛原「あ、いや、失礼」

 私はすぐに体を退かした。
 一体、リサは何に驚いたのだろう?
 まさか、鬼の男が乗って来たとでも言うのだろうか?
 途中停車駅ということもあり、電車はすぐに発車した。
 あとはもう、地下線を走行することはない。
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“私立探偵 愛原学” 「成田空港の旅」

2023-07-24 20:42:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日12時9分 天候:晴 東京都台東区上野 都営地下鉄上野御徒町駅→京成上野駅]

 電車の中では、未だに何も起こらない。
 しかし、リサは鬼の気配を感じたままだという。
 その間、善場主任から来たメールは衝撃的だった。

 愛原「うっ……!」
 高橋「どうしました、先生?」
 愛原「鬼の男は、練馬区にいたらしい」
 高橋「練馬区……」
 愛原「さすがに練馬区じゃ、墨田区は遠くて気づかないか……」
 高橋「何でそこにいたんスか?てか、そこにいたってことは、姉ちゃん達が動いたと?」
 愛原「何でも、警察に匿名のタレコミがあったらしい。で、警察が乗り込んだ途端に、逃げ出したんだと。だから、また行方不明だ」
 リサ「鬼の男は、練馬区のどこにいたの?」
 愛原「マンションらしいな。……善場主任の、予想通りの展開になっていたようだ」

 私は歯ぎしりをした。

 高橋「シンママと娘2人しか住んでいない部屋に飛び込んで、あとはもう【官能小説の世界】っスか」
 愛原「そういうことだ」
 高橋「とんでもねぇ……。全身チ○○のヤーさんよりひでェ」
 愛原「それにしても、一体誰が通報したんだろうな?」
 高橋「近所の住人とか?」
 愛原「だったら、匿名である必要は無いんじゃないか?」
 高橋「あっ、そうか……」
 愛原「危ないところだったよ。練馬区は、この都営大江戸線も通る」
 高橋「あっ……」
 愛原「誰かが通報してくれなかったら、このトンネルを通して、リサの存在が鬼の男にバレるところだった」
 高橋「確かにそうっスね」

〔上野御徒町、上野御徒町。上野松坂屋前です〕

 電車は上野御徒町駅に到着した。

 愛原「着いたな……」

 結局、何も起こらなかった。
 電車を降りて、改札階へ向かう。

 愛原「リサ、鬼の気配は?」
 リサ「風が強くて、よく分かんない」
 愛原「そ、そうか」

 トンネルを電車が行き来していると、風が吹いて臭いが流れてしまうようだ。

 高橋「……何か先生、サツが多くないっスか?」
 愛原「鬼の男は鬼の男で、リサの気配を感じて都営大江戸線沿線に逃げているのかもしれないな。それで、各駅の警備を強化しているのかもしれない……」
 高橋「やっぱそうっスか。……えっ、トンネルの中に入ったんスか?」
 愛原「いや、お前、何言ってるんだ?」
 高橋「あ、いや……」
 愛原「トンネルの中に入ったら、電車が止まるだろ」
 高橋「それもそうっスね」

 改札口を出て、京成上野駅に向かう。
 上野御徒町駅と京成上野駅とは直接繋がってはいないが、なるべく近い所の出口を目指す。
 そしてそこから一旦地上に出て、また地下道に下りる。
 あとはその地下道を通って、京成上野駅に行けるはずである。

 愛原「久しぶりの地上だ。きっと風が冷たいぞ」
 高橋「やっぱ地上が最高っスね」
 リサ「ん」

 階段を駆け上って地上に出る。
 すると、冬の日差しが私達を包み込んだ。

 リサ「うーん……」

 リサは日差しの眩しさに目を細めた。

 リサ「あー、そうか……」
 愛原「何だ?」
 リサ「Gウィルスしか体に持ってないと、夜は活動できないんだって。だから、わたしの場合、こうやって太陽を浴びると熱く感じるんだ」
 愛原「大丈夫なのか?」
 リサ「今は特異菌も体の中にあるからね。きっと、リエや他の『鬼』達もそうだよ。特異菌が無くなると、夜しか活動できなくなるんだ」
 愛原「そういうもんなのか……。まあ、特異菌はカビの一種。カビも植物の1つである以上、夜よりは昼だよな。でも、Gウィルスは逆か」
 リサ「そういうこと」

 再び上野中央通り地下歩道という地下道に下りる。

 リサ「先生、お腹空いたけど、駅弁とかあるの?」
 愛原「い、いや、無いな……。ファミマはあるから、そこで色々食べ物は買えるけどね」
 リサ「コンビニ弁当か……」
 愛原「ま、まあね」

 京成上野駅は、多くの利用客で賑わっていた。
 正月三が日の最終日ということもあり、逆に東京に遊びに来ていた観光客が帰ろうとしているのかもしれない。
 或いは、成田空港から来た客で賑わっているのか。

 リサ「エレンにLINEを送る」
 愛原「ああ」

 リサがスマホを取り出してLINEを送ると、すぐに絵恋とパールはやってきた。
 駅構内にあるカフェで時間を潰していたようである。

 愛原「こっちは変わりは無かった?」
 パール「平和なものでした。ただ、ちょっと気になることはありましたけど……」
 愛原「気になること?」

 すると、パールは白い封筒を渡した。

 パール「これをリサ様の保護者の方に、と渡してきた人がいまして……」
 愛原「誰だ、その人は?」
 パール「名乗らずに立ち去って行きましたね。もしかしたら、デイライトの方かもしれませんね」
 愛原「デイライト?もしも連絡があるようなら、直接善場主任から来るようになってるぞ?」
 高橋「先生、開けてみましょうよ」

 封筒の中身は、どうやら普通の紙が入っているようだ。
 試しに開けてみると、確かに便箋が入っていた。

 愛原「ん?」

 しかし、そこにはQRコードが書かれていただけだった。
 裏を見ると……。

 愛原「『鬼の男の身内より』……な、なにいっ!?」

 私はすぐにスマホで、QRコードを読み取ろうとした。
 だが、読み取れない。
 どうやら、ネットに繋がるコードではないようだ。
 すると、これは一体……?

 愛原「これを渡してきたのは、どういう人?」
 パール「女性でしたよ。リサ様のような恰好をされていました」
 愛原「んっ!?」

 それはフード付きのパーカーということか。
 リサが鬼の姿を隠す為にフードを被り、マスクをしているのと同じ姿をしていたという。

 愛原「……なあ。もしかして、何か独特の体臭とかしなかったか?」
 パール「んー……そう言われると、何かしたかもしれません」

 大勢の人を食ったとされる鬼の男の体臭は、私達にも分かる。
 しかし、人を1人も食べていないリサは、そういった体臭は無い。
 だが、数人しか食べていない場合は、人間の嗅覚では分からないことがある。
 だから、夫1人しか食べていない上野利恵は、リサなどにしかその体臭は分からなかった。

 愛原「リサが感じ取った気配の主かもな」
 高橋「どうします?」
 愛原「取りあえず、善場主任に連絡しよう」

 私は善場主任に電話した。
 そして、パールが受け取ったという手紙のことを話した。

 善場「すぐに確認したいです。今、京成上野駅ですか?」
 愛原「そうです。ただ、12時40分発の電車なんですが……」
 善場「京成上野駅のすぐ近くに交番があります。そこへ連絡しておきますから、そこへ預けておいてください」
 愛原「分かりました」

 私は一旦、京成上野駅を出ると、近くの交番に向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「作戦失敗」

2023-07-24 15:31:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日11時37分 天候:不明 東京都新宿区西新宿2丁目 都営地下鉄都庁前駅→大江戸線1103B電車・先頭車内]

〔都庁前、都庁前。飯田橋、両国方面はお乗り換えです。4番線は、中野坂上、練馬方面、光が丘行きです〕

 

 森下駅から都営地下鉄大江戸線に乗った私達は、あえて反対方向へやってきた。
 これも、鬼の男を撒く為の作戦の1つである。
 しかしながら大江戸線の電車は、基本的に座席が硬いので、ずっと座っていると腰が痛くなってくる。
 正月休みで、都心を走ると地下鉄も空いているので。

 愛原「ここで、乗り換えだ」

 私達は電車を降りた。
 発車ベルと発車メロディが同時に鳴り、光が丘行きの電車は発車していった。
 エスカレーターに乗り込んで、コンコースに上がる。

 

 リサ「!」

 その時、リサが立ち止まった。

 愛原「どうした?」

 リサは眉を潜めた。

 リサ「……鬼の臭いがする……!」
 愛原「何だって!?どこからだ!?」
 リサ「分からない。風に漂って、臭って来ただけで……」

 ここは地下鉄の駅である。
 地上から吹き込んで来る風、トンネルから吹いてくる風が時折強風となって、コンコース内を吹き抜ける。

 高橋「先生、どういうことっスか?鬼の男は今頃、菊川でブッ殺されてるはずじゃ?」
 愛原「う、うん。そうだよな……」

 私は辺りを見回した。
 少なくともコンコースには、ホテル天長園にやってきた鬼の姿は無い。

 愛原「取り合えず、リサはトイレに行ってろ」
 リサ「うん」

 私はコンコース上にあるトイレにリサを行かせた。
 作戦終了までは、基本的に連絡はしない決まりになっている。
 連絡をすることで、何かの拍子にリサの居場所がバレると困るからだ。
 私は取りあえず、善場主任にメールを打ってみた。
 すると、案外早く返信が来た。
 私はリサの反応について送ってみた。
 すると、電話が掛かって来た。

 善場「そこはどこですか!?」
 愛原「都庁前駅です」
 善場「すぐ近くに鬼はいますか?」
 愛原「周囲を見回しましたが、特にこれといった姿は見られません」
 善場「リサが感じた気配というのは、鬼で間違いないですか?」
 愛原「そのようです。……あの、そちらはどうですか?」
 善場「結論から言いますと、作戦は失敗です」
 愛原「えっ?!」
 善場「鬼の男は現れませんでした。住民の避難命令は解除して、通常に戻すつもりです」
 愛原「リサの電撃に気づかなかったのかな……」
 善場「いえ、あれだけの強さであれば、気づいたでしょう。しかし、あえて現場には行かなかったと見るべきかと」
 愛原「やはり、さすがに罠だと気づきましたかね」
 善場「それもあるでしょうし、もしかしたら、リサに愛想を尽かしたのかもしれません」
 愛原「それならそれで、別にいいことですけどね」
 善場「リサとは別に鬼の女の子がいて、そちらに乗り換えたとか……」
 愛原「いるんですか!?そんなコが……」
 善場「いないとは思えません。覚えてませんか?直近ですと、聖クラリス女学院にいましたよね?」
 愛原「あっ……!」
 善場「更にその前は、日本版リサ・トレヴァーの亜種などが何人かいたじゃないですか」
 愛原「いましたね!」
 善場「BSAAが全員掃討したと思っていましたが、掃討漏れした個体がいるのかもしれません」
 愛原「なるほど……」
 善場「とにかく、リサの反応は高確率で当たりです。十分に気をつけてください」
 愛原「分かりました」

 電話を切った。
 それから、リサがトイレから出て来る。

 リサ「お待たせ」
 愛原「大丈夫か?また、鬼の臭いはするか?」
 リサ「それがするんだよ」
 愛原「マジか。一体、どこからだ?」
 リサ「ただ、それは……男の臭いじゃない」
 愛原「すると、鬼の男とは別か。他にもいるんだな」
 リサ「うん。鬼の男以外にも、既に人間を食ってるヤツ」
 愛原「そうか……。気を付けて行こう」

 私達はホームに降りた。

 

 当駅始発の電車は既にホームに停車していて、発車を待っている。

〔「本日も都営地下鉄大江戸線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は11時48分発、飯田橋、両国方面行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 私達は先頭車に乗り込むと、再び硬い座席に腰かけた。

 愛原「鬼の男は菊川には現れなかったそうだ。一体、どこにいるんだろうな?」
 高橋「良かったな、リサ。どうやらお前、フラれたようだぞ?」
 リサ「別にわたしが告白したわけじゃないし、ストーカーが1人消えて万々歳だよ」
 愛原「まあな……」

〔「お待たせ致しました。11時48分発、飯田橋、両国方面行き、発車致します」〕

 発車の時間になり、ホームに発車メロディが鳴り響いた。
 それとは別に、メロディも流れる。

〔2番線から、飯田橋、両国経由、光が丘行き、電車が発車します。閉まるドアに、ご注意ください〕

 電車のドアとホームドアが同時に閉まり、電車は定刻通りに発車した。

 

〔都営大江戸線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、飯田橋、両国経由、光が丘行きです。次は新宿西口、新宿西口。丸ノ内線、JR線、京王線、小田急線、西武新宿線はお乗り換えです。お出口は、右側です〕

 都営新宿線と違うのは、大江戸線では電車内でもWi-Fiが使えること。
 リサはそこに繋いで、スマホをやっていた。
 絵恋とLINEでもやっているのだろうが、あまり今いる場所は伝えてないでもらいたいものだ。
 だが、リサはスマホ手を止めて、また私の方を見た。

 リサ「ダメだ。やっぱり鬼の臭いがする。この電車に乗ってるのかも……」
 愛原「ええっ!?」

 私は辺りを見回した。
 少なくとも、この車両にそれらしき者は見当たらない。
 試しに隣の車両を覗いてみたが、やっぱり鬼の男は見当たらなかった。

 愛原「いないな……」
 高橋「リサみたいに、人間に化けれるんじゃないスかね?」
 愛原「あー、なるほど。そういうことか」

 しかし、それだとお手上げである。
 鬼の男はリサが顔を知っているから、例え人間に化けてもリサが気づくだろう(人間に化けても、顔が変わるわけではないので)。
 そうなると、知らない鬼がいるのか……。
 さすがのリサも、人間に化けられると、誰が鬼だか分からないようである。
 近くまで行って臭いを嗅げば分かるようだが、さすがに自ら怪しい行動はできないだろう。

 愛原「少なくとも、今のところは何もしてこないようだ。一応、俺は善場主任に報告しよう」

 私は揺れる電車の中、善場主任にメールを送信した。
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