報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「那須の遊園地で」

2023-07-08 20:15:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月31日10時35分 天候:晴 栃木県那須郡那須町高久乙 那須ハイランドパーク]

 始発駅の那須塩原駅西口から路線バスに乗り込んだ私達。
 バス車内は暖房が効いて暖かかった。
 冬休みの期間中は家族連れで賑わうであろう遊園地だが、さすがに路線バスでアクセスする客は少ないようだった。
 因みに途中で、宿泊先のホテル天長園の前を通過する。
 田舎道を行くから渋滞の心配は無かったが、やっぱり雪の心配はあった。
 今日は1日晴れる天気とのことだが、駅から離れ、山の方へ向かう度に雪が多くなっていった。
 さすがにバスが通る道は、しっかり除雪がされていたが。
 まるでディズニーリゾートの駐車場のような、高速道路の料金所のようなブースがいくつか並んだ入口をバスは通過する。
 もちろん、団体の貸切バスの駐車場もあるので、大型バスも難無く通過できるようになっている。
 が、そこを一般の路線バスが通過するのは何だかシュールに思えた。
 終点のバス停は、遊園地の敷地内にある。

 愛原「やっと着いた……。腰が痛ェ……」
 リサ「トイレ行きたい」

 バスを降りる時、車内で購入したフリーパスを運転手に見せた。
 これはこの路線を2日間乗り放題の乗車券である。
 今日はもちろん、明日も同じ路線バスに乗る事を考えれば、お得だと思われた。

 運転手「ありがとうございます」

 特典でロープウェイも安く乗れるらしいが、前回みたいにリサ目当てのタイラントが襲って来るとマズいので、今回は予定に入れていない。

 愛原「このフリーパスは、帰りのバスや明日のバスに乗る時も使うから、無くすなよ」
 リサ「はーい」
 絵恋「分かりました」

 高橋達はもう来ているという。
 バイク駐輪場にバイクを止めて、どこかで一服しているのだろう。
 私は高橋にLINEを送った。

 高橋「あ、はい!ここです、ここ!」

 高橋がブンブン手を振って走って来る。

 愛原「ここにいたのか。バイクの料金、払ったか?」
 高橋「いや、ここ、バイクは無料なんスよ」
 愛原「マジか!そりゃいいな」
 高橋「そうなんです」
 愛原「じゃあ、券買って来るぞ」
 高橋「えっ、ケンカ買うんスか!?お供します!」
 愛原「誰とケンカするんだよ!?アホか!券!チケット買うんだよ!お前はパールの分でも買ってやれ」
 高橋「サーセン」
 絵恋「面白いお兄さんね……」
 リサ「うん。家じゃいつもこんな感じ」
 絵恋「毎日が賑やかでいいわね」
 愛原「うるさいだけだよ」

 私達は窓口に行って、チケットを購入した。

 愛原「はい。1日乗り放題パス付き。これで元取ってくれよ?」
 絵恋「ありがとうございます!」
 リサ「おー!」
 愛原「お前達はデートでもしてこいよ」
 高橋「いや、俺は……」

 ガシッ!(高橋、パールに羽交い絞めされる)

 パール「それではお昼だけ、御一緒させていただきまーす!」
 高橋「は、放せ!俺は先生と……」
 愛原「うんうん。行ってらっしゃーい」
 絵恋「行ってらっしゃい」
 リサ「行ってらっさー」
 絵恋「それで、どこから行きます?」
 愛原「高橋達、左に行ったな。俺達は右に行くか」
 リサ「オッケー」

[同日12時00分 天候:晴 同パーク内 ロックンロール・ダイナー]

 午前の部が終わり、一先ず昼食。
 ここで高橋とパールが合流してくる。

 愛原「だからリサ、お前ね……」

 リサがこの店を選んだのは、偏にハンバーガー狙い。
 総重量は270gというアメリカンサイズである。

 愛原「映画のタンクローリーの運転手みたいなハンバーガー食いやがって」
 リサ「先生の失敗よりはマシだよ」
 高橋「何かあったんスか?」
 絵恋「シューティングが楽しめるアトラクションに乗ったんだけどね、先生、本物のショットガンを撃とうとしたのよ」
 愛原「いや、まさか、ああいうアトラクションがあるとは……」
 高橋「先生。マジ、リスペクト」
 愛原「ありがとう」
 絵恋「危うくスタッフさんに降ろされるところだったのよ」
 愛原「お恥ずかしい限りで……」
 高橋「先生なら、乗り物に乗りながらゾンビを撃ち殺すことくらい、朝飯前っスよね?」
 愛原「何でこんな腕前が身に着いたんだか……」

 私は嘆きながら、ホットドッグを頬張った。
 と、そこへ、スマホに着信がある。
 画面を見ると、善場主任だった。
 年末年始休みのはずだが、返上中なのだろうか。

 愛原「ちょっと失礼」

 私はスマホを手に、店外に出た。

 愛原「はい、もしもし。愛原です」
 善場「愛原所長。お休みのところ、申し訳ございません」
 愛原「いえいえ。善場主任こそ、お疲れさまです。何かありましたか?」
 善場「あ、はい。リサが遭遇した『鬼』の男の話ですが……」
 愛原「何か、進展がありましたか?」
 善場「所長、これからホテル天長園に宿泊されますよね?」
 愛原「はい。その予定です」
 善場「可能であればで結構なのですが、そこの女将だった方にお話しを伺って頂きたいのです」
 愛原「上野利恵に?何でしょう?」
 善場「彼女が鬼になった経緯と、その方法です」
 愛原「確か、私、1度聞いてますよ。リサが姉だと思っていた利恵は、行方不明の姉を捜す為、アンブレラの研究施設に乗り込みました。しかし、そこで白井達に捕まり、『鬼』にされたと」
 善場「所長、おかしいとは思いませんか?結局、リサは実姉ではなく、縁戚の従姉程度の間柄だったのです。今は鬼化したことでその記憶が曖昧になっているようですが、人間だった頃はちゃんとした記憶を持っていたわけです」
 愛原「そう、ですよね」
 善場「実際には親戚筋程度であったのに、リサを実の姉だと思っていたということが不思議なのです」
 愛原「今は記憶が曖昧になっているから、そのせいだと思いますよ」
 善場「今は、ですね。しかし、当時からしてみればおかしいわけですよ。鬼化した理由は他にもあるんじゃないかと思うのです。例えば、宗教法人天長会絡みとか……」
 愛原「はあ……」
 善場「天長会の教義はバラバラです。経典を読むと、鬼ですら持ち上げる描写があります。どこの宗教でも鬼、つまりデーモンは悪役扱いで、持ち上げる宗派は殆どありません。悪魔崇拝であれば、その一環で……ということもありますが」
 愛原「もしかして、上野利恵は教義に基づいて、鬼化したと?」
 善場「そして、それを簡単に行える手段があるということですよ。もし仮にそれがあるとするならば、BSAAの捜査対象になるかもしれません」
 愛原「……し、リサの前に現れた鬼の男も、その方法で鬼化したかもしれないということですね?」
 善場「……!それは思いつきませんでした。さすがは、愛原所長です。それについても、調べて来てください」
 愛原「分かりました」

 ややもすると、リサよりも凶暴な鬼になりかねない方法だ。
 デイライトが警戒し始めたのは、必然であろう。
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“私立探偵 愛原学” 「大晦日の栃木旅行」

2023-07-08 15:49:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月31日08時02分 天候:晴 栃木県宇都宮市 JR宇都宮線637M列車・最後尾車内]

 発車の時間になり、発車メロディが流れて来る。
 但し、これは駅のスピーカーではなく、電車の車外スピーカーから流しているもの。
 この電車はワンマン列車の為、発車メロディは流れない。
 本線を走る6両編成の電車でも、ついにワンマン運転が行われるようになったか。
 そして、電車はドアを閉めて発車した。
 ワンマンなので最後部の乗務員室には、誰も乗っていない。
 無人ではあるが、照明は点灯している。
 どこの鉄道会社、路線でも同じことをしているのを見ると、例え無人でも乗務員室の照明を点灯させておく決まりになっているのだろうか。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、宇都宮線、黒磯行き、ワンマンカーです。この先、岡本、宝積寺、氏家、蒲須坂、片岡、矢板、野崎、西那須野、那須塩原、終点黒磯の順に停車致します。【中略】次は、岡本です〕

 電車は定刻通りに発車した。
 この時、私はまた高橋にLINEを送った。
 東北自動車道の上河内サービスエリアで休んでいた高橋とパールだが、私のLINEで出発するというわけだ。
 もっとも、同じ宇都宮市内とはいえ、サービスエリアの方が北部にある。
 おまけにこっちは各駅停車の鈍行で、更に普通の路線バス乗り換えとあらば、バイクの高橋達より遅いのは当たり前だ。
 さて、どうしたものか……。

 愛原「かなりゆっくり走った方がいいぞ。多分、俺達の方が遅いから」

 と、LINEすると……。

 高橋「先生達のバスが遊園地の着くのは、何時ですか?」

 という質問が帰って来た。
 そこで私は、

 愛原「10時35分だ」

 と、返した。

 高橋「了解っス。その時間に着くように調整します」

 とのことだった。

 愛原「雪道に気を付けろよ」

 という返信で、取りあえずLINEのやり取りは終わった。
 もっとも、平地を走る宇都宮線上に雪は全く無かったが。

[同日08時53分 天候:晴 栃木県那須塩原市大原間 JR那須塩原駅]

 暖房の効いた車内で、私はウトウトしていた。
 それは、リサ達も同じだったようだ。
 下車駅たる那須塩原駅は、終点ではない。

〔まもなく那須塩原、那須塩原。お出口は、右側です。新幹線は、お乗り換えです。電車のドアは自動では開きませんので、ドア横の『あける』のボタンを押して、お降りください〕

 愛原「……はっ!」

 車内放送くらいでは起きなかったとは思うが、ちょうどLINEの着信があり、そのバイブで目を覚ますことができた。
 目が覚めた私は、ドア上のモニターを見る。

 愛原「あっ!おい、2人とも、起きろ。降りるぞ」
 リサ「おー……」

 私は2人の女子高生を揺り起こした。
 と、同時に、電車が下り本線ホームに入線する。
 いつの間にか6両編成の電車は、殆ど満席状態になっていた。
 だが、その殆どの乗客達が那須塩原駅で降りるようだ。
 皆一様に、大きな荷物を持っている。
 どうやら、大半の乗客が新幹線への乗り換え客であるようだ。
 大晦日とは言っても、まだ帰省ラッシュが終わったわけではない。
 帰省ラッシュもUターンラッシュも無いのは、1月1日の元旦のみ。

〔なすしおばら~、那須塩原~。ご乗車、ありがとうございます〕

 電車がホームに到着して、ドア横に立っていた乗客がボタンを押すと、ドアが開いた。
 昔は半自動ドアというと、ドアに付いていた取っ手を持って手で開ける方式だったのだが、今はさすがにそんな車両は無いだろう。
 かつてはそんな方式の車両も、晩年にはボタン式に改良されたりした所もあった。
 もちろん新型車両のこの電車は、最初からボタン式である。

 愛原「あー、ちょっと宇都宮より寒いかな?」

 電車を降りると、寒風が私達を出迎えた。
 他の乗客の大半は、新幹線乗り場へと向かって行く。
 もちろん、那須塩原市の中心駅である為、地元民が降りて行くことも多々ある。
 終点の黒磯駅まで乗り通すのは、僅かである。
 中には、“18きっぱー”と思しき乗客もいた。
 宇都宮線の北部区間も、JR東海の静岡区間と同様、ロングシートのみのハズレ路線になってしまった。
 その為、作者は青春18きっぷに見切りにつけて、高速バスにシフトした。

 絵恋「そうですね」
 リサ「うんうん」
 愛原「この駅でも少し休憩を取るから、トイレとか行っておいた方がいい。もう分かってると思うけど、路線バスは1時間以上乗ることになるから」

 

 リサ「確かに。バスには、随分長いこと乗った記憶がある」
 愛原「そういうことだ」

 取りあえず、私達はホームからコンコースに移動することにした。
 改札階には、トイレがある。
 取りあえず、先にトイレに行っておくことにした。
 私は個室に入ったのだが、そういえば、LINEが来ていたことを思い出した。
 確認してみると、それは蓮華からだった。
 本家率いる『鬼殺隊』が、車で日光市に向けて出発したらしい。
 そこは私達と違い、鉄道利用ではないようだ。
 まあ、日本刀を持った大勢の剣士達が新幹線や電車に乗ろうものなら、リアル無限列車の始まりである。
 蓮華達が行くのは日光市であり、私達の今日の目的地は那須塩原市なので、鉢合わせになることはないか?

 トイレから出ると、まだ時間があったので、暖を取る為に待合室に向かった。
 改札の外に、それはある。
 時間帯がもう少し遅ければコーヒーショップも利用できたのだが、今はまだ開店時間ではない為、自販機で温かい飲み物を購入し、それを室内に持ち込むことくらいしかできない。
 まあ、その方がいいかもしれない。
 リサが目ざとく見つけて、食事を貪るかもしれないからだ。
 私はホットの缶コーヒー。
 リサと絵恋は、ホットレモンを購入した。

 愛原「リサは自販機だけは、何の迷いも無く使えてたよな?再会してからの話だが……」
 リサ「アンブレラの研究所では、自販機だけは使わせてくれたからね」
 絵恋「お金あったんだ」
 リサ「そう。エロい実験に付き合えば、その分多くもらえた」
 絵恋「何それ!?ヒド過ぎるわ!」
 愛原「アンブレラにとって、研究所内にいる者は、全てが実験動物だったんだよ。何しろ、アメリカの本家本元では、ちゃんとした人間の職員でさえ、捨て駒且つ実験対象となっていたくらいだ」
 絵恋「うう……」
 愛原「そして、もう1つ懸念すべき材料がある」
 リサ「なに?」
 愛原「栗原家の鬼殺隊が、日光に向けて出発したという情報が入った」
 リサ「鬼斬りセンパイの……」
 愛原「そう。リサとニアミスした鬼の捜索だと思うけどな。蓮華は分かってるからいいだろうが、他の鬼殺隊員はリサのこと知らないだろうから、あまり鉢合わせにならない方がいいだろう」
 リサ「う、うん。そうだね」
 絵恋「電車で来るんですか?」
 愛原「いや、車だそうだよ。だから、電車やバス移動の俺達と鉢合わせになることは無いと思うんだ」
コメント (2)
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