報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「栃木を出ろ!」

2023-07-13 20:23:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日10時45分 天候:雪 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園1階]

 ホテルの部屋自体はチェックアウトした。
 しかし、愛原は何とか外部に連絡を取ろうとしていた。

 愛原「ダメだ!蓮華さんのスマホは出ない!」
 高橋「善場のねーちゃんもダメっスか?」
 愛原「正月休みだろうな、さすがに……」

 愛原は善場にもメールを送ったというが、返信がまだ無いという。
 デイライト東京事務所に電話しても、誰も出なかった。

 高橋「直接、BSAAに掛けてみるというのは?」
 愛原「いや、ダメだろう。ゾンビが現れたわけじゃあるまいし」

 ロビーで大人達が混乱している最中、リサと蓮華は天長会紹介コーナーにいた。

 リサ「ねぇ、リエ。これ、この金棒、本物?」

 それは鬼がよく持っている金棒だった。

 利恵「本物ですよ。もちろん重すぎるので、並の人間は持つことができません」
 リサ「並の人間は、ね……」

 リサは展示されている金棒を手に取った。
 そして、それを軽々と持ち上げ、片手でブンブン振り回した。

 絵恋「さすがはリサさん!」
 リサ「これは使えるかもしれない。これ、くれない?」
 利恵「そうですね……。本部に問い合わせてみます」
 絵恋「断らないんだ?」
 利恵「本物の鬼が使う用に製造されたものですから」
 絵恋「本物の鬼!?……がいると信じている宗教なの!?」
 利恵「……はい」
 リサ(もしかして、白井伝三郎は本物の鬼を創り出す為にアンブレラに入ったのか?)

 と、その時だった。

 愛原「ええーっ!?」

 ロビーの方から愛原の大声が聞こえて来た。
 何だろうと思ってロビーに戻るリサ。

 愛原「そ、それは本当ですか?……い、いえ、まだニュースは観ていませんが……。そ、それでは、那須塩原市の捜索は……中止!?……は、はい」

 リサは愛原がどこに掛けているのか分からなかったが、少なくとも鬼狩り隊はここには来ないということは理解できた。
 鬼狩りの為なら、むしろ血に飢えた修羅のように刀を振るう鬼狩り隊がどうして来ないのだろうか?
 雪のせい?
 いや、雪は降ってはいるものの、そんなに強く降っているわけではない。

 愛原「……承知しました。それでは、失礼します。……はい」

 愛原はスマホでの通話を終えた。

 高橋「先生、何かあったんですか?」

 愛原は高橋の質問には何も答えず、ロビーのテレビのチャンネルを回した。
 だが、どの番組も正月特番や箱根駅伝しかやっていなかった。

 愛原「くそっ、ニュースはやってないか!」
 高橋「何なんスか?」
 愛原「昨夜遅く、那須塩原市内の潰れたドライブインの駐車場で、暴走族のチームが丸ごと1つ潰された。メンバーは全員死体。そして、一部の死体は食い千切られた跡があったそうだ」
 高橋「その犯人が、鬼の男なんスよね?」
 愛原「どうやら、そこに蓮華さんが居合わせたらしい」
 高橋「は!?」
 リサ「んっ?すると、鬼の男はセンパイに首を刎ねられた?……あれ、でも……」
 愛原「逆だよ。負けたんだ。鬼の男に……」
 リサ「ええーっ!?」
 愛原「恐らく鬼の男の吐いた炎を食らってしまったんだろう。全身やけどで、意識不明の重体だ」
 リサ「あ、あいつ、そんなに……強いか」
 愛原「お前も炎をまともに食らったんだろ?そんなにまともに食らうものなのか?」
 リサ「わ、わたしは油断してた。まさか、火を吹く血鬼術を使うとは思わなかったから」

 蓮華も、鬼の男が火を吹く攻撃をするとは知らなかったのだろうか。

 リサ(あの鬼斬りセンパイが負けるなんて……もしかしたら、本当に強いのかも……)

 高橋「ど、どうします?」
 愛原「こりゃ急いで、東京に帰った方がいいだろう。またヤツが戻ってこないとも限らんし……」
 高橋「は、はい」
 愛原「利恵さん、次の那須塩原駅行きのバスは?」
 利恵「11時5分くらいです。この辺りはフリー乗降区間ですので、バス停に行かなくても、ホテルの前でバスには乗れます」
 愛原「それだ!それに乗ろう!皆、急いで準備してくれ!」
 リサ「承知!」
 絵恋「分かりました」

 私はスマホを取り出して、帰りの新幹線のキップを予約した。
 幸いまだ元日ではUターンの混雑は無く、簡単に3人分の指定席は取れた。

 リサ「ちょっとトイレ」
 絵恋「お供します」

 リサと絵恋は、ロビーのトイレに向かった。

 高橋「先生、俺達は先に行って露払いしましょうか?」
 愛原「あー、そうだな……。じゃあ、お願いしよう。帰りは新幹線だ。もしかしたら、俺達の方が先に東京に着くかもしれんな」
 高橋「そうっスね」
 愛原「こんなことなら、ケチらないで車にすれば良かったよ」
 高橋「まあ、しょうがないっス。先生達がバスに乗るまで、護衛させてもらいますよ」
 愛原「ああ、頼む。まあ、新幹線に乗ったら、こっちのものだろう」

[同日11時05分 天候:雪 関東自動車バス車内]

 ホテルの前のバス通りに出て、バスを待つ。
 渋滞など無いに等しい道路の為か、殆ど遅れて来ること無く、バスがやってきた。
 愛原が大きく手を挙げて、バスの運転手に合図した。
 バスは左ウィンカーを上げて、リサ達の前に止まった。
 乗り込むと、車内には数人の乗客が乗っていた。
 どこで鬼の男が見ているか不明なので、あえて上野母娘には見送りは控えてもらった。
 空いている1番後ろの席に座ると、バスはすぐに走り出した。
 そして、本来の最寄りのバス停で、また乗客を乗せる為に停車する。
 それを機に、高橋とパールのバイクが爆音を鳴らしてバスを追い抜いて行った。
 追い抜かれてふと思った。

 リサ「お兄ちゃん達、後ろを走っていてもらった方が良くない?」
 愛原「どうだろう?もしかしたら、鬼の男が待ち構えてるかもしれない。その場合は、むしろ高橋達に露払いしてもらった方がいいんだよな」

 因みに今のリサは人間形態に化けており、パーカーのフードを深く被って、黒いマスクをしている。
 利恵曰く、人を食った鬼の体臭さえしなければ、見つかることはないだろうと言う。
 今頃、善場主任からメール返信が来たと愛原が言った。

 愛原「今から京都に行くらしいぞ?」
 リサ「善場さん、旅行?」
 愛原「旅行というか……正月休み返上で調査に行くらしい」
 絵恋「何の調査ですか?」
 愛原「行き先は京都府福知山市。大江山だそうだ」
 リサ「オーエヤマ?」
 絵恋「確か、あの酒呑童子と茨木童子の伝説がある山ですよね」
 リサ「それも鬼?」
 愛原「有名な鬼だよ。源頼光は酒呑童子の首を刎ね、家来の渡辺綱は茨木童子を倒したらしい」
 リサ「何でそこに行くの?」
 愛原「さあ……。今回の鬼の男と、何か関係があるのかもな」

 その時、リサの脳裏にある記憶が蘇った。
 それは、栗原蓮華が言っていたことだ。
 蓮華自身、鬼……というか、鬼型BOWを何人か斬り伏せている。
 日本版リサ・トレヴァーの『3番』と『5番』は、西日本にいたという。
 西日本のどこかというと……。

 リサ「『京都の山奥まで行くの、大変だったんだからね』」
 愛原「えっ?」
 リサ「鬼斬りセンパイが、だいぶ前、わたしに言ってたこと。『3番』と『5番』を倒した時のこと……」
 愛原「確か、西日本まで足を伸ばしたって言ってたな。西日本って、京都のことだったのか?」
 リサ「うん、そう……」

 あまり興味が無かったリサは、話半分にしか聞いていなかったが、今から思うと……。

 リサ「白井伝三郎の計画って、わたし達が思っていたのと違ったたんじゃ……?」
 愛原「マジ……?」
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“私立探偵 愛原学” 「天長園の正月」

2023-07-13 12:47:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日08時00分 天候:雪 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園8階・展望レストラン]

 上野凛「おはようございます。明けまして、おめでとうございます」
 上野理子「明けまして、おめでとうございます」

 8階の展望レストランに着いた私達は、晴れ着姿の上野姉妹に出迎えられた。
 さすがに今は角やら尖った耳やらは隠しているが、彼女らも半分人間の血が混じった半鬼である。
 母親の利恵が鬼で、亡き父が人間であった為。

 愛原「はい、おめでとう」

 私は上野姉妹にお年玉を渡した。

 凛「えっ、いいんですか?!」
 愛原「晴れ着姿を見せてくれた御礼だよ」
 リサ「いくら渡したの!?」
 愛原「そんなの言えるかよ」
 リサ「着物だけでお年玉は高過ぎる!2人とも、今すぐ先生の為に体操服とブルマに着替えて!」
 上野姉妹「ええーっ!」
 リサ「リンは陸上部のユニフォーム、リコは学校の水着でもOK!」
 愛原「無茶苦茶言いやがる……」
 絵恋「魔王様の命令よ!大至急従って!」
 愛原「絵恋さんもえげつねぇ……」
 高橋「ひゃはは!」
 リサ「できないのなら『魔王軍』の会費として、全額徴収!」
 上野姉妹「ええーっ!」
 愛原「ヤクザのショバ代か!」
 リサ「……で、いいんだよね?お兄ちゃん」
 高橋「あっ、バカ!シッ!」
 愛原「オマエが教えたんかい!」

 私は高橋の頭にゲンコツ!

 高橋「い、いでっ!……ご、御指導あざっす……いえ、ありがとうございます」

 尚、最初に言い出したのは、実はパールであったという。

 愛原「せっかく着物着たんだから、そういうのは後ででいいからね?」
 凛「は、はい!」
 理子「ありがとうございます!」
 絵恋(後で……?)
 上野利恵「ほーら、ここで立ち話しないで、早いとこお客様をテーブルに案内して差し上げて」
 凛「は、はい」

 利恵は晴れ着ではなく、いつもの女将の制服としての着物だった。

 リサ「わたしも着物、着てみたい」
 絵恋「り、リサさんが着るなら私も!」
 利恵「もちろんでございますよ。この後、1階の貸会議室を臨時の写真スタジオにする予定です。そこで姉さん方には、是非とも晴れ着を試着して頂いて、それで写真を撮って頂こうと思っております」
 リサ「おー!さすがはリエ!気が利く!」
 利恵「ありがとうございます。これで、愛原先生の件は……」
 リサ「まだに決まってんだろ!」
 絵恋「り、リサさんが許さないのなら、私も許しません!」
 利恵「……ですよね。とにかく、まずは朝食としてお正月ならではのお料理をお楽しみください。お餅とお屠蘇もありますよ」
 愛原「おー、ありがたい!」

 しかしリサは、お屠蘇の匂いですぐに分かった。

 リサ「あーっ!この匂い、“鬼ころし”!わたしも飲む!」
 愛原「こら!未成年は飲むなって何度も言ってるだろ!」
 リサ「実年齢はリエより年上」
 愛原「都合のいい時だけ、魂の年齢にすんな!」
 利恵「“鬼ころし”は私共、鬼の間では、『鬼の力を封じる酒』という噂がございます。こういうおめでたい日には、せめていつもの鬼の力を封じ、1日だけでも人間として過ごすことを目的にしているのでございます」
 リサ「それなら、わたしも飲むー!」
 愛原「だからダメだって!」
 リサ「……わたし、今日も鬼のままだよ?」
 愛原「人を襲わなければ別にいいから、もう!」

 どうにかリサに、“鬼ころし”を飲ませることは阻止できた。
 尚、“鬼ころし”という名前の日本酒は、1つの酒造メーカーだけが造っているのではなく、北は北海道、南は四国を除く九州までの全国的に造られている酒である。
 本来の名前の由来も、『鬼の力を封じる酒』ではなく、『鬼のように頑強な男でも酔い潰れてしまう』ほどの酒という意味である。
 もっとも、後者は人間の解釈、前者が鬼の解釈なのだろう。

 利恵「お土産もございますので、どうかご期待ください」
 愛原「えっ?そ、そう?」

 一体、何だろう?

[同日10時00分 天候:雪 同ホテル1階・貸会議室]

 カメラマン「はーい、撮りますよー!」

 朝食が終わって、1階に移動する。
 リサと絵恋……そして、パールが着物に着替えた。

 愛原「おー、パール!似合うなー」
 パール「わ、私がこんな着物を着て、メイドの身には過ぎたる幸福……!」
 愛原「いや、いいんだよ。お正月なんだから、これくらいハメを外すつもりでな」
 高橋「そうだぜっ、パール!結婚してくれーっ!」
 パール「こんな所でプロポーズすなっ!!」
 高橋「ぐえっ!」

 パール、メリケンサックで高橋に一発食らわせた。

 カメラマン「はい、次の方、どうぞ」
 絵恋「パール!あなたの番よ!」
 パール「は、はい!ただいま!」

 撮影が終わったリサ。

 愛原「リサ、お疲れさん」
 リサ「綺麗に撮れたかな?」
 愛原「もう、バッチリだよ!……そうだ。俺も、撮っていいかな?」
 リサ「もち!」
 絵恋「あっ、私も撮りまーす!」

 私は自分のスマホを取り出した。
 そして、着物姿のリサの写真を何枚か撮ったのだが、そこでふと気が付いた。
 LINEの通知が無いことに。
 何のLINEかというと……。

 絵恋「リサさん!今度は金棒持って!金棒!」
 リサ「どこに金棒あるんだよ……」

 私はLINEを確認した。
 もうこの時間だというのに、まだ蓮華に送ったLINE、既読すら付いていない。
 夜通し鬼の捜索をしたので、今日は寝正月なのだろうか。
 私が首を傾げていると……。

 利恵「愛原様、姉さん方の写真は、こちらの住所に送っても宜しいですか?」
 愛原「あっ、ああ……そうだな……。写真って、いつできるのかな?」
 利恵「三が日明けには送れるかと」
 愛原「三が日明けか。それなら、別の住所に送ってもらおうかな」
 利恵「別の住所でございますか?」
 愛原「実は、引っ越しをするんだ。もっとも、同じ地区内だけどね」
 利恵「まあ、そうだったのですか」
 愛原「今までマンションと事務所は別々だったけど、俺と高橋、リサだけの3人じゃ、効率が悪くてね。だったらもう、集約しようと思った」
 利恵「さようでございましたか。それでしたら、お手数ですが、こちらに新しい住所を御記入願えますか?」
 愛原「ああ、分かった」

 私は引っ越し先の住所を記入した。

 愛原「宅急便で送る感じ?」
 利恵「そうですね。それと……1つ、お知らせがございまして……」
 愛原「何だ?」
 利恵「市内の……国道の方ですけど、昨夜遅く、地元の暴走族の死体が何名も発見されたそうです」
 愛原「えっ!?」
 利恵「その死体は、肉が食い千切られた跡があったとかで、もしかしたら、犯人はあの鬼の男かもしれません」
 愛原「本当に人を食うのか……」

 鬼狩り隊は日光市を中心に捜索していた。
 それを知ったのか、鬼の男は那須塩原市に移動したようだ。
 そして、同じ市内にあるリサと思しき匂いを辿ってここまで来た。
 実際それは利恵の匂いだったのだが。

 高橋「先生、どうします?しばらく隠れてますか?それとも、とっとと脱出しちゃいますか?」
 愛原「そうだな……」

 1番いいのは鬼狩り隊がやってきて、捜索範囲をこの那須塩原市内にしてくれた時に脱出することだ。
 鬼の男がリサを狙いに現れたら、もう袋のネズミである。
 だから、蓮華と連絡を取りたいのだが、全く既読すら付かないという状況。
 これは一体、どういうことなのか?
 私達が取るべき行動は?

 ①もう1度、栗原蓮華に連絡を取る。
 ②善場優菜に連絡を取る。
 ➂今日1日ここに留まる。
 ④早々に栃木脱出を図る。
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