報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「空港アクセス鉄道にて」

2023-07-26 20:16:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日12時45分 天候:晴 東京都荒川区西日暮里 京成電鉄本線12AE09列車1号車内]

 日暮里駅で殆どの席が埋まる。
 空席は数えるほどしかない。
 そのような状態で、列車は発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も京成スカイライナーをご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、成田スカイアクセス線経由、スカイライナー、成田空港行きです。成田空港では、ご利用になるターミナルによって降車する駅が異なります。成田第2・第3ターミナルへは空港第2ビル駅で、成田第1ターミナルへは終点の成田空港駅でお降りください。この電車は、全て指定席です。【中略】次は空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)、空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)に停車します〕

 私の隣の席に座った女性は、リサと似た格好をしている。
 リサよりは少し大人びているだろうか?
 リサと同様、パーカーの上にフードを被り、同じくマスクをしているので、顔は分からない。
 あと、何やら香水を付けているのか、独特の匂いがした。
 何やら、私の後ろに座っているリサ達が静かになってしまっている。
 一体、どうしてしまったのだろう?
 すると、私のスマホにLINEの着信があった。
 スマホを開いてみると、それはリサからだった。
 リサによると……。

 リサ「先生、気をつけて!先生の隣の女、鬼かもしれない!」

 と。
 な、なにいっ!?
 リサはそれで、先ほど驚いた反応をしていたのか。
 リサが動かなかったのは、ここで暴れたら、多くの乗客が巻き添えになってしまう。
 私の隣の鬼かもしれない女から攻撃を開始したら応戦せざるを得ないが、今のところは何もしてこない。
 何もしてこないのなら、むしろ電車が次の駅に到着するまでは静観した方が良いと判断したようだ。
 さすがにリサも高校2年生、まもなく3年生になろうとしている歳だから、そういう判断ができるようにまではなったか。
 私はスマホの画面が隣の女に見えないように窓側に傾けながら、リサとのLINEを続けた。

 愛原「『臭い』はするか?」
 リサ「する!香水でごまかしてるみたいだけど、わたしの鼻はごまかせないよ!」
 愛原「そうか」

 もしかしたら、京成上野駅で、パールに封筒を渡した女かもしれない。
 私はグループLINEを開いた。
 そして、そこでパールに呼び掛けた。

 愛原「俺の隣に座っている女性、もしかしたら、パールに封筒を渡した人じゃないか?」
 パール「うーん……ちょっとこの席からでは分かりません」

 パールは高橋と一緒に、絵恋の後ろの席に座っている。
 つまり、私の席の2つ後ろに座っている。
 その窓側に座っていて、2つ前の席の通路側の客の姿は見えにくいようである。

 愛原「パールに手紙を渡してきた女性の特徴を詳しく教えてくれないか?」
 パール「はい。身長は170cmほどありました。私と同じくらいですね。グレーのフード付きパーカーを羽織っていて、フードを深く被っていました。口にはマスクを着けていて、それは白いマスクです。下はジーンズです」

 私はチラッと隣の女性を見た。
 デッキに出る扉の上にはモニタがあり、それを見ながらチラッと見る感じだ。
 ……似てる。
 服装はパールと同じような服装だった。
 大人びているように見えたのは、リサよりも身長が高いからだろう。
 170cmくらいなら、栗原蓮華くらいか。
 因みに残念ながら、彼女はまだ意識を取り戻していない。
 栃木県の病院のICUに入ったままである。

 愛原「まずいな……。パールの特徴と全く同じだ。多分、本人だと思う」
 リサ「やっぱり、わたしが戦おうか?」
 愛原「い、いや、ダメだ。今のところ、何もしてこない。まだ、様子見で……」

 それに、この列車は全車指定席だ。
 私は前売りで全員分のライナー券を購入している。
 隣の女がどのようにしてライナー券を手に入れたのかは不明だが、本当に成田空港に用があるのなら、私の隣に座ったのも偶然かもしれない。
 成田空港?
 そういえば……。
 この列車の乗客の殆どは、この後、飛行機に乗る人達である。
 だから、それなりに大きな荷物を持っていた。
 絵恋も例外ではない。
 例外なのは、見送りに行くだけの私達。
 だから、荷物は少ない。
 そしてそれは、隣の女も同じだった。
 というか、ほとんど手ぶらである。
 一体、何しに行くのだろう?
 私達と違って、誰かの迎えに行くのだろうか?
 それとも……。

 リサ「いきなり襲って来るかもしれないよ?だったら、先手必勝!」
 愛原「だから、ダメだって!この電車が止まってしまう!……善場主任に通報するから、それで指示を仰ごうと思う」

 私はそう送信して、1度LINEを閉じた。
 そして、メールを開いて、善場主任に報告しようとした時だった。

 愛原「!?」

 女はポケットからスマホを取り出した。
 そして、何やら打ち込み始めている。
 一体、何だろう?
 そして、女はスッとそのスマホの画面を私に見せてきた。

 『確かに私は「鬼」です。ですが、この電車の中で暴れるつもりはありませんので、通報は不要ですよ』

 女は私達のことを知っている!?

 車掌「失礼します。スカイライナー券はお持ちではないでしょうか?」
 鬼の女?「無いです。空港第2ビルまで」
 車掌「はい」
 愛原「……!?」

 車掌が改札にやってきた。
 既にライナー券を持っている乗客にはスルーの車掌だが、無い乗客には声を掛ける。
 それはいいのだが……。

 車掌「ありがとうございます」
 鬼の女「どうも」

 普通に料金を払って、ライナー券を車掌から受け取る鬼の女と思しき者。
 ライナー券を持たずに乗って来たということは……偶然ではない!?
 つまり、この女は狙って私の隣に乗ってきたということか?
 車掌が立ち去ってから、私はスマホで質問した。
 今度は私が自分のスマホの画面を、女に見せた。

 愛原「キミは誰だ?私達に何の用だ?」

 すると、女はとんでもないことを私に伝えて来た。

 鬼の女?「がとてもお騒がせしてしまっているようです。兄を止めに来たのと、他にも色々と用事があって、成田に向かっているだけです。今のところは、皆さんと敵対する気は無いですよ。ですので、後ろの席の奥様にもよろしくお伝えください」

 い、いや、奥様って……。
 リサが一方的にそう言ってるだけで……。
 だから、何でそういう事情をこの女は知ってるんだ!?

 愛原「そうは行くか!少なくとも私には、通報する義務がある!」
 鬼の女?「やめといた方がいいと思いますよ」
 愛原「!?」

 すると、何だか車内が寒くなってきた。
 元々冬ではあるが、しかし車内は暖房がガンガン入っているはずだ。
 見ると、女はマスクをずらし、息を吹いていた。
 その口元からは、牙がチラッと見えている。
 やはり鬼だ!
 そこで気づいたのだが、女はかなりの色白で、むしろ青白く見えるほどだ。

 鬼の女「私は息を吹いているだけです。しかし、このままでは車内の温度がどんどん下がりますよ?それでも良いですか?」
 愛原「キミは……!?」

 これではまるで、鬼というよりは雪女だ。
 鬼の男がこの女の兄であり、それが火炎を吐くのならば、妹は吹雪を吹くというわけか。

 愛原「分かった!ここでは通報はしないから、もうやめてくれ!」
 鬼の女「分かりました」

 女は再びマスクをした。
 そして、ようやく再び車内の温度が上がったのだった。

 鬼の女「私がここにいる限り、兄には手出しをさせませんので、ご安心ください」

 とのことだった。
 どうやら、鬼の男よりは話が通じそうだが……。
 しかし、リサの見立てでは、この女も人を食べているそうだ。
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“私立探偵 愛原学” 「成田空港の旅」 2

2023-07-26 16:26:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日12時40分 天候:晴 東京都台東区上野 京成上野駅→京成線12AE09列車1号車内]

 改札口を通過して、ホームに向かう。
 私達が乗る京成スカイライナーは全席指定であり、乗車券の他にライナー券を購入しなければならない。
 尚、今時流行りのネットで購入するチケットレスサービスも、この列車では行われている。
 但し、チケットレスなのはライナー券だけ。
 乗車券は別途購入しなければならず、逆を言えば、その乗車券で改札口を通過するわけである。
 もちろん、ICカードでもOKなので、それで通過した。

 

 愛原「これが京成スカイライナーだ。新幹線的なスタイルだな。これで最高時速160キロだそうだ」
 高橋「ほお……160ですか……」
 パール「いい勝負ですね……」
 愛原「おい、暴走族、走り屋。電車と勝負しようとするなよ?」
 高橋「な、何言ってんスか、先生……」
 パール「きょ、今日は御嬢様のお見送りでございます」
 愛原「早く乗ろう」

 リサがいるので、予約は先頭車にした。

 

 愛原「リサと絵恋さんは、こっちの席。高橋とパールは、こっちの席な」

 私はスマホの画面を見ながら、座席番号を確認した。
 私の席は1番前にある。
 そこの窓側に1人で座ると、一人旅気分である。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。お待たせしています。この電車は、成田スカイアクセス線経由、スカイライナー、成田空港行きです。停車駅は日暮里、空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)、終点、成田空港(成田第1ターミナル)です。この電車は、全て指定席です。乗車券の他に、スカイライナー券が必要です。【中略】この先、揺れますので、ご注意ください〕
〔「本日は京成電鉄をご利用頂きまして、誠にありがとうございます。成田スカイアクセス線経由、スカイライナー43号、成田空港行きです。座席は全席指定です。次の日暮里駅からも、大勢のお客様がご乗車してございます。空いている座席の上には荷物など置かぬよう、お願い致します。お待たせ致しました。まもなく、発車致します」〕

 京成上野駅の時点では、まだ乗客は半分ほどしか乗っていない。
 正月休みは今日で終わりなので、各交通機関はUターン客で混雑すると思われる。
 ホームから発車メロディと発車ベルの音が聞こえて来た。
 先に短い発車メロディが鳴った後、ベルが鳴る感じ。
 そして、ドアが閉まる。
 それから、電車がスーッと走り出した。
 ポイントの通過がある為か、電車がガクンと揺れる。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。お待たせしました。この電車は、成田スカイアクセス線経由、スカイライナー、成田空港行きです。座席は、全て指定席です。また、デッキ、サービスコーナーを含めて全車両禁煙です。次は日暮里、日暮里に停車します〕

 日暮里駅までは、地下トンネルを走行する。
 地下鉄で上野御徒町駅まで移動し、一瞬地上に出るものの、また地下道に下り、そこから地下駅の京成上野駅を目指す。
 京成上野駅を出ても、次の日暮里駅までは地下なので、地上にいる鬼の男の目には留まらない。
 そういう思惑であった。
 だが、善場主任の話によると、どうやらそれは杞憂であったようだ。
 そいつ本人は、光が丘で人間の女達を『食べて』いたようだから。
 ややもすると、同じ都営大江戸線沿線だっただけに、私の計画が裏目に出るところであったかもしれない。
 そう思うと、やっと京成スカイライナーに乗れたことで、ホッとできた。
 できれば、日暮里駅も通過してもらいたいものだな。

 

 リサ「おっ。この電車、コンセントがある。ちょっと充電しよう」

 私の後ろに座るリサは、バッグの中からスマホの充電器を取り出した。
 それで、座席下のコンセントに差す。

 絵恋「リサさん、今日の下はショーパンなのね……」
 リサ「ヘタすると、鬼の男と戦うことになるかもしれないから、動きやすい服装にしてきた」
 絵恋「それ、スカートじゃダメだったの?」
 リサ「うん。やっぱりスカートじゃ動きにくい。何で?」
 絵恋「私がコンセントを差す時に、リサさんのパンツが見れないじゃないのよぉ~」
 リサ「オマエはオッサンかw」
 愛原「んー?俺も40過ぎのオッサンだが、何か用か?」
 リサ「あっ、先生はわたしのスカートの中、覗いていいからね?」
 愛原「つったってお前、ショーパンじゃねーかよ?」
 リサ「……ちょっと着替えてくる」
 愛原「いや、別にいいよ、わざわざ!そんな……」

 リサの行動にも困ることが今でもある。
 これも鬼型のBOWだからだろうか。

[同日12時45分 天候:晴 東京都荒川区西日暮里 京成日暮里駅]

 電車は地上に出ると、JR線の上を高架で横断する。
 そして、そのまま高架ホームへと進入した。
 誤乗を防ぐ為、下りホームはスカイライナー系列車専用ホームとその他一般電車専用ホームとで別れている。
 線路は同じなのだが、ホームが左右で違う。
 一般電車は左側のドアが開き、スカイライナー系は右側が開くようになっている。
 当然この電車は、右側のドアが開いた。

 愛原「おー、混んで来た」

 どうやら、この電車は満席らしい。
 乗り換えが便利な日暮里駅からの方が乗客が多いくらいだという。

 リサ「せ、先生!?」

 リサが何かに驚いて席を立とうした時だった。
 スマホを充電する為に、リサは座席のテーブルを出して、そこにスマホと充電器を置いていたのだが、リサが慌てて立った為に、体がそれに当たり、スマホと充電器を床に落としてしまった。

 愛原「どうした?」

 私が振り向こうとした時だった。

 女性「すいません」

 空いていた私の隣の席に、女性客が1人座って来た。
 どうやら、本当に満席らしい。

 愛原「あ、いや、失礼」

 私はすぐに体を退かした。
 一体、リサは何に驚いたのだろう?
 まさか、鬼の男が乗って来たとでも言うのだろうか?
 途中停車駅ということもあり、電車はすぐに発車した。
 あとはもう、地下線を走行することはない。
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