報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「日光の民泊」

2023-07-01 21:00:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月30日14時00分 天候:晴 栃木県日光市某所 某民泊]

 昭和40年代または50年代に建てられたと思しき古民家。
 私はそこの調査に入った。
 またもや、リサの鼻に頼ることになる。
 近所のスーパーに夕食の買い出しに行った高橋とパールを見送ると、私達は調査を開始した。
 リサは第1形態、つまり鬼の姿に戻っている。
 まずは埼玉の家の時のように、水回りから調べることにした。
 埼玉の家の時は、マンホールからまず臭ったのだった。
 なので、そこから調査することにした。
 家の周りにあるマンホールを探す。
 だが、探すのは容易ではなかった。
 雪が積もっていたからである。
 除雪はされていたが、家の玄関前はしっかり除雪されていたものの、庭先や裏庭などは全くといって良いほど除雪はされていなかった。
 積雪は凡そ5cmほど。
 多分、日光市の標高としては、まだ本格的な冬に入る前の積雪なのだろう。
 奥日光の方に行けば、もっと積もっているかもしれないが。
 それでも宇都宮市は全く積もっていなかったところを見ると、たったの電車で50分弱の距離でこうも変わるのかと驚いてしまう。

 愛原「これじゃ分からんな。ちょっと、スコップ持ってくる」

 私は少女達を庭先に待たせ、私だけが家の中に戻った。
 一応、家の中にどんな備品があるのかのリストは、既に案内状に書かれている。
 冬場ということもあってか、除雪用のスコップなどが物置部屋に置かれているという。

 愛原「んん?」

 この時、私は初めてこの家の違和感に気づいた。
 この家、物置部屋が玄関から入って左側にある。
 だが、廊下の突き当りに出入口があるのだ。
 つまり、外から物置部屋に行くには、玄関から入って靴を脱ぎ、廊下を左に曲がって突き当りを左に曲がった所にある。
 何で、こんな面倒臭い導線になっているのだろう?
 玄関入って、すぐ左側にドアが付いていれば、靴を脱がずに入れるのに……。
 この物置部屋、天井が他の部屋よりも高くなっていて、高窓がある。
 採光だけでなく、通気性も考えているのか、引き戸式の開閉式窓になっている。
 もちろん、今は窓は開いていない。

 愛原「えーと……あっ、あったあった!」

 この時、私は外の調査のことで頭がいっぱいで、この物置部屋の違和感について、もっとよく調べようとはしなかった。

 愛原「何だよ、スチール製かよ。重いな」

 私はスコップを手に、もう1度外に戻った。

 愛原「お待たせ」
 リサ「先生、早く早く」
 愛原「どうした?何か見つけたのか?」
 リサ「少し曇って来た。天気が悪くなる前に、早く外を調査しよう」
 愛原「え、そうか?」

 私は空を見上げた。
 確かに、日光駅に着いた時よりも、心なしか雲が多くなったような気がする。
 まあ、まだ陽が出ていることから、気象庁的には晴マークを出すであろうが。
 そういえば、夕方以降の天気予報をまだ見ていなかったな。
 後で確認しておこう。

 愛原「どこら辺にあるかな?」
 リサ「こういう古い家とかだと、台所の裏とかじゃない?」
 愛原「! そうだな。さすがはリサ!」
 リサ「エヘヘ……」(∀`*ゞ)
 愛原「お前、もしかして人間だった頃の記憶、一瞬戻ったか?」
 リサ「いや、そんなことはないけど……」

 積雪凡そ5cmとはいえ、結構ズボズボと足を取られる深さだ。
 注意深く進んだ。
 台所の裏手の方に行き、その辺りをスコップで雪かきしてみる。
 すると、金属音がして、注意深く雪を退かすと、果たしてマンホールがあった。
 焦げ茶色にさび付いたマンホールだ。
 中央部分に、微かに『汚水』と書いてあるのが辛うじて見える。

 愛原「これだ」
 リサ「わたしが開けてみる」
 愛原「大丈夫か?注意しろよ」
 リサ「こういう重い物は、鬼のわたしの仕事」
 愛原「それは頼もしいな。じゃあ、頼むぞ」

 リサはマンホールの蓋を開けた。

 絵恋「きゃっ!」

 古い家の汚水マンホールだ。
 それを不用意に開けたらどうなるか?
 下水道の中は暖かいのだろう。
 冬場の積雪があるはずの地上に、ゴキブリやらネズミやらが飛び出して来たのである。

 絵恋「いやっ!いやっ!いやああああっ!!」

 ゴキブリが近くにいる絵恋に飛んできたものだから、もう絵恋は大パニック。

 愛原「リサ、マンホールを閉めろ!」
 リサ「承知」

 リサの方は全く動じておらず、私の指示に従ってマンホールの蓋を閉めた。
 ついでに、リサは足元にいたネズミを足で踏み潰して殺した。

 リサ「不味そうな肉」
 愛原「いや、食うなよ!?」

 悪食の鬼だから、多分食べても腹を壊すようなことはないと思うのだが、それでも見ているこっちは気持ち悪いことこの上ない。

 愛原「絵恋さん、大丈夫か!?」
 絵恋「うぅう……!」

 絵恋は恐怖で顔を強張らせ、鼻水や涙を流していた。

 愛原「い、一旦、家の中に戻ろう」
 リサ「下水の臭いしかしなかったよ?」
 愛原「血の臭いとかはしなかったか?」
 リサ「うーん……よく分かんない。色んな臭いが混じってたから」
 愛原「そうか……」

 埼玉の家は築浅だったから、まだそんなに下水管も使用されていなかっただろうが、古民家たるこの家はその逆だったか。
 絵恋はリサに支えられながら、ようやく家の中に入った。

 リサ「絵恋、早く入って着替えよう。人間はこのままだと風邪引くだろう?」
 愛原「えっ?……あっ!」

 この時、私は絵恋が失禁までしていたことに気づいた。
 ゴキブリ数匹が自分目掛けて飛んできて纏わりつかれたり、ネズミが数匹、やっぱりすり寄って来たりしたからか。

 リサ「先生、あの洗濯機って使っていいんでしょう?」
 愛原「そ、そうだな」

 この民泊に長期滞在する客もいるのだろうか?
 私は高橋に、小分けパックになっているタイプの洗剤もついでに買って来るようにLINEしておいた。

 リサ「取りあえず、もうジャージに着替えてさ」
 絵恋「うう……恥ずかしい……」
 リサ「何だったら、お風呂入っちゃって……」
 愛原「その方がいいな。もうお湯を入れちゃってもいいよ?」
 リサ「了解」

 ホテルのバスタブのように、お湯を直接湯船に入れるタイプである。
 3~4人は入れる大きさだから、溜まるのに少し時間が掛かるかもしれない。
 私はスコップを戻そうとして躊躇した。
 いやいや、雪かきしたばかりで濡れているスコップを家の中に持ち込むわけにはいかない。
 だったら、やはり玄関のすぐ横にドアを付けてくれればそのまま入れられたのに、一体どうしてそうしなかったのだろう?
 改築したのだから、それくらいできたと思うのだが……。
 途中で予算が無くなってしまったのだろうか?
 仕方が無いので、スコップは玄関の中に立てかけておくことにした。
 あとは家の中を調べたいところだ。

 愛原「リサ、ついでに風呂の中も調べよう。ほら、埼玉の家だと、風呂の中からも血の臭いがしただろ?」
 リサ「そうだね」

 リサは風呂の排水口などを調べてみたが、埼玉の家と違い、特に血の臭いはしないと答えたのであった。
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“私立探偵 愛原学” 「日光に到着」

2023-07-01 15:18:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月30日12時05分 天候:晴 栃木県日光市相生町 JR日光駅]

〔まもなく終点、日光、日光。お出口は、左側です。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 私達を乗せた3両編成の電車が、日光駅に到着しようとしている。
 車窓には宇都宮市内には無かった雪がチラホラ見られるようになった。
 どっかり積もっている感じではなく、少しだけ積もっている感じ。
 当然ながら、国道119号線(日光街道)の雪は路肩に寄せられている。
 そして、電車はゆっくりと日光駅の1番線ホームに入線した。
 そこは駅舎に最も近いホームである。

〔「ご乗車ありがとうございました。日光、日光、終点です。お忘れ物の無いよう、お降りください。1番線に到着の電車は、折り返し、12時19分発、普通列車の宇都宮行きとなります」〕

 

 電車は押しボタン式の半自動ドアが実施されているが、宇都宮駅と日光駅では、到着後、一旦全部のドアが開くらしい。
 だから降りる時、ドアボタンを押すことなく、電車を降りられた。
 改札口はSuica対応の自動改札機となっている。

 

 リサ「先生。わたし、そろそろPasmoの残額が……」
 愛原「しょうがないな。明日、チャージしといてやるよ」
 リサ「おー!ありがとう!」
 高橋「先生!」

 改札口には高橋が待っていた。

 愛原「おー、高橋。お前も無事着いたか」
 高橋「おかげさまで!」
 愛原「パールはどうした?」
 高橋「あいつは近くのファミレスにいます。この辺り、駐禁多くて……」
 愛原「だろうな。それじゃ、おちおちしていられないだろうから、さっさと移動するか」
 リサ「先生、お腹空いた」
 愛原「……だろうな。高橋、ファミレスにいるって言ってたな?」
 高橋「はい、ガストです」
 愛原「じゃあ、昼飯はそこで食べよう」
 絵恋「夕食はどうされるんですか?」
 愛原「確か、宿泊先は民泊で、飯は外食か自炊だったな……。2人とも、夕食頼めるか?」
 高橋「任せてください!」
 愛原「よし。じゃあ、まずはガストに向かおう」

 私達はパールの待つガストへ向かった。

[同日13時30分 天候:晴 同市内某所 民泊施設]

 ガストで昼食を取った後、私達は民泊施設に向かった。
 さすがにバイクには私達は乗れないので、高橋とパールはバイクを押している。

 高橋「先生、この道、覚えてますか?」
 愛原「ん?」
 高橋「だいぶ前、日光の合宿所みたいな所に行ったことがありましたよね?」
 愛原「! ああ!これはその道だ!」

 東京中央学園栃木合宿所。
 今は廃止されてしまったが、かつては学校法人東京中央学園が所有していた合宿所であった。
 地元の廃校舎を買い取って改築したものだが、その佇まいは本校の旧校舎を彷彿させるものであり、そこの管理人を自称していた男は、実は白井伝三郎が扮していたものであった。
 その合宿所は日光駅から車で10分ほどの道にあったが、私達がこれから向かう民泊施設も、その道すがらにあるのだ。

 愛原「あの時は、この沿道に『鬼の棲む家』があるとは思わなかったな」
 高橋「作者の都合でしょう」
 愛原「またそんなメタ発言を……」

 合宿所は車で10分。
 民泊は駅から徒歩10分とあったが、ガストから歩いたので、実際はもう少し掛かった。

 パール「向こうにリオン・ドールがある」
 愛原「それじゃ、夕食の買い出しはあそこでできるな」

 チェーン・スーパーなら、年末年始も営業してくれるので助かる。

 高橋「飯は何にしましょうね?」
 愛原「そもそも民泊に、どれだけの自炊設備があるかどうかだな。最悪、やっぱり外食ってことにもなりかねない」
 高橋「はい」

 グーグルマップのルート案内を頼りに進むと……。

 愛原「ん?ここか?」

 国道からは外れているものの、そんなにうら寂しいというわけでもない閑静な場所に、その民泊施設はあった。

 愛原「この道を更に進めば、あの合宿所だ。こんなん、普通の家だな。何も無かったら、全く気にも留めないや」
 高橋「確かに」

 古民家とは言いつつも、昭和時代に建てられた、築50年くらいといったところか。
 いや、もう少し古いかな。
 それでも、私が子供の頃、建て直す前の実家とか、祖父母の家って、こんな感じだったなぁといった感じの家だった。
 『三丁目の夕日』に出て来るような、一戸建て都営住宅よりは明らかに新しい佇まいだし、まあ、昭和40年代から50年代に掛けて建てられたって感じだろう。
 それでも令和の今から見れば、十分古民家か。
 平屋建てであった。

 愛原「バイクは、そこの駐車場に止められるだろう」
 高橋「はい。それで先生、家の鍵は?」
 愛原「ちょって待て」

 私はスマホのメールを見た。
 この民泊を管理している栗原不動産の関係者から、メールが届いていたのだ。

 愛原「このポストの中だそうだ」

 それは門柱に掛けられた郵便受け。
 これもまた古かったりしたら、もっと雰囲気が出るのだろうが、鍵の受け渡しにも使う物だから、かなり新しい物となっていた。
 新築のアパートやマンションなどにある集合ポストを、1個だけ付けたといった感じ。
 つまり、開け閉めにダイヤル式の暗証番号を回して開けるタイプであった。

 愛原「右に2回、『9』を合わせる」
 パール「はい」
 愛原「今度は左に1回、『A』に……」
 パール「はいはい」
 愛原「ってかパール、オマエがやると、何で“キャッツアイ”の金庫開けみたいになるんだ?」

 ライダースーツを着ているだけに、尚更そんな風に見えてしまう。

 パール「金庫破りなら、私にお任せください」
 愛原「あのなぁ……」

 カチッ!

 パール「はい、開きました。鍵と、パンフレットが入ってますね」
 愛原「パンフレットというか、この民泊の使い方の注意事項だろう。早く入るぞ」

 私はパールから鍵を受け取ると、それでドアの鍵を開けた。
 尚、ドアはさすがに引き戸式ではなく、外側に開く方式であった。

 愛原「おー、何か昔の家って感じだなぁ……」

 玄関には家の間取り図が掲げられている。
 平屋建てなので、2階は無い。
 玄関入って、すぐ左手には物置部屋。
 その向かいは洋室。
 ベッドで寝たい人の為に、シングルベッドが置かれているのだという。
 その隣はトイレ。
 これくらい古い家だと、和式である可能性が高い。
 私がそう言うと、リサは真っ先にトイレを確認しに行った。
 これで和式ならキレ散らかすリサであるが、さすがに水回りは改築されているようだ。
 ちゃんと洋式の、それもウォシュレットになっていた。
 リサは、ホッと胸を撫で下ろした。
 ただ、元は和式だったのだろう。
 それも、かなり古いタイプの和式だ。
 もしかしたら、汲み取り式だったのかと思うくらい。
 そう思ったのは、洋式便器の両脇に段差ができているからである。
 これは和式便器を設置していた家庭あるある話で、便器を一段高い位置に設置することで、男性が立ちながら小用を足しやすいようにした為である。
 もしも大きい方や女性が使用する場合は、便器の両脇にある段に乗って便器の上にしゃがむ形になる。

 リサ「良かった……。洋式に変わってる……」
 愛原「良かったな」
 
 個室トイレは2つあり、その洋式トイレの隣は男子用小便器になっていた。
 洋式トイレと違い、こちらは曇りガラスの窓が付いている。
 昔ながらの朝顔タイプであったが、ちゃんと水洗であり、押しボタン式になっていた。
 それらトイレの隣は浴室の脱衣所。
 洗面台もあり、洗濯機も置かれていた。
 そして、その隣は浴室。

 リサ「おー、うちのお風呂より広い!」
 絵恋「埼玉の実家より狭い……」

 比較的大人数が泊まることを想定しているのか、浴室は広かった。
 恐らく、1度に3人くらいは余裕で入れるだろう。
 頑張れば、あと1人くらい入れるかも。
 トイレの向かい側は、大広間になっている。
 これは8畳間が二つ続きになっており、間が襖で仕切られている。
 つまり、その襖を解放すれば16畳間となる。
 座卓が2つ置かれていた。
 そして、押し入れには布団とリネンが入っており、食事と就寝はこの大広間でということらしい。
 それが嫌な場合は、先ほどの洋室で寝るのだろう。
 この大広間に更に続く形で、台所がある。
 もちろんそれは、浴室側に通じる廊下からもアクセス可能。
 台所には外に通じるドア、つまり勝手口があった。
 高橋とパールは台所にある備品を確認した。

 高橋「土鍋と携帯コンロがあります。これで、鍋物とかできそうですよ」
 愛原「本当か。じゃあ、これでまたすき焼きでも作ってくれ。皆もそれでいいかな?」
 リサ「おー!すき焼き!」
 高橋「じゃあ俺達、食材買ってきますよ」
 愛原「ああ、頼むよ。領収証、もらってきてくれよ」
 高橋「もちろんです」

 高橋とパールが買い物に出ている間、私達は家の調査を行うことにした。
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