報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「富士山の麓で」

2017-07-05 19:33:20 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月2日11:55.天候:晴 静岡県富士宮市 休暇村富士]

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、休暇村富士です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 バスが停留所の前に停車した。

 稲生:「大人3人で」
 運転手:「はい」

 運賃は稲生がまとめてSuicaで支払った。


 イリーナ:「ユウタ君、残額は大丈夫?」
 稲生:「あ、はい。何とかなりそうです」
 イリーナ:「後で追加しておくからね」
 稲生:「あっ、ありがとうございます」
 マリア:「観光客がいっぱいだ」
 稲生:「そういう所ですから。温泉もありますよ。ただ、日帰り入浴は昼間しか入れないので、今のうちかもしれません」
 イリーナ:「それなら、ランチの前に入っちゃおうかしら。その後でランチにするのもいいかもね」
 稲生:「じゃあ、そうしましょう」

 本館の建物に向かう。
 本来は車で来るのがベストな立地条件のせいか、駐車場の方を見ると観光客の車で一杯である。
 その中には黒塗りのゼロクラウンやアルファード、エルグランドが3台並んで停車していた。

 稲生:(何だか怖そうな人達が乗っていそうな車だなぁ……。今では暴力団お断わりの時代のはずなんだけど……)

 本館建物の中に入る。

 稲生:「それじゃ、先に温泉から入りましょう」
 イリーナ:「ういっす」
 マリア:「……何だろう?何だか嫌な予感がする……」
 イリーナ:「なぁに?まさか、ここにまでケンショーレンジャーが来てるとでも言いたいの?」
 マリア:「うーん……どうでしょう……」
 稲生:「何でしたら藤谷班長に電話して、正証寺の武闘派さん達を呼びますよ」
 マリア:「いらんいらんいらん!」
 イリーナ:「いつの間にか藤谷班は武闘派に昇格したのね」

 男湯と女湯の入口前で別れる。

 イリーナ:「あー、何だか私も少し想定できてきたわ」
 マリア:「でしょ?でしょ?」
 イリーナ:「多分その答え、ここにあるわ」

 脱衣場に入ると、そこに答えはあった。

 アナスタシア:「あ……!」
 アンナ:「あ……!」
 マリア:「やっぱり……」
 イリーナ:「ヤホー♪」

 脱衣場にはアナスタシア組の魔女達が着替えていた。
 黒い服が制服のアナスタシア組だが、下着まで黒いのは組長のアナスタシアくらいのものらしい。

 アナスタシア:「何でアンタがここに!?」
 イリーナ:「そういうナスターシャ(※)こそ」

 ※アナスタシアのロシア語での愛称。日本語的感覚だとアーニャとでも呼びたくなるが、それはアンナの愛称である。

 アナスタシア:「私らは慰安旅行だよ。皆、頑張ってくれてるし……」
 イリーナ:「偶然ね。私達もよ」
 アナスタシア:「ウソだ。絶対何か企んで来たでしょ?」
 イリーナ:「いやいやいや。本当にただの偶然だよ。ね?マリア」
 マリア:「そうですね。師匠が観光したいって言うんで、ユウタがここに連れて来てくれたんです」
 アンナ:「それはつまり!……運命の赤い糸で結ばれているのは、アンタより私ってことよ!」
 マリア:「黙れ、ヤンデレ!」
 イリーナ:「東京中央学園の時は随分と大ケガしちゃったけど、もう治ったみたいね」
 アンナ:「まあ……。こう見えても不死身ですから」
 アナスタシア:「私も回復魔法掛けてあげたしね」
 イリーナ:「うんうん。弟子の面倒見がいいねぇ……」
 アナスタシア:「それ、嫌味?」
 イリーナ:「お察しくださいw」
 アナスタシア:「ヤロー……!」

 脱衣場内にロシア語が飛び交うが、マリアだけ英語という不思議。

 アンナ:「早くアンタも日本語覚えないと。私なんかもう日本語能力検定3級(N3)よ?ユウタ君と自然な会話をしたいんだったら、日本語でも会話できないとね」
 マリア:「うっ……!に、日本語自体は喋れる」
 アンナ:「でも文章にすると、カタカナ表記扱いでしょ?それじゃダメよ」
 マリア:「努力はしてるさ!いずれはエレーナ並みに喋れるようになるさ」
 アンナ:「エレーナね……。あれさ、どうやってN1取ったか知ってる?」
 マリア:「知らないよ。ってか、本当にあいつN1なの!?」
 アンナ:「N1取れるだけでも凄いんだけど、本当にウクライナでストリートチルドレンだったのかな?」
 マリア:「私も実はウクライナの工作員のような気がしてきた……」

 その頃、エレーナは拠点となっているホテルでくしゃみを3回ほどしていたという。

 アナスタシア組とは入れ替わるようにして入浴するイリーナ組。

 イリーナ:「いやー、まさかナスターシャ達と会うとはねぇ……」
 マリア:「アンナはやっぱり生きてましたか……。ユウタに気をつけるよう言っておかないと」
 イリーナ:「大丈夫だよ。今さらもうアーニャはユウタ君を襲ったりはしないさ」
 マリア:「いや、別の意味で襲い掛かる恐れがありますので」
 イリーナ:「まあ、好きにしてちょうだい。それにしても、今日は天気がいいから富士山がよく見えるねぇ……」
 マリア:「ええ」
 イリーナ:「魔界富士に通じる穴が、あれなら今は簡単に通れそうだわ」
 マリア:「通った先がマグマの噴出口という、バッドエンド直行のトラップもいくつかあるということですね」
 イリーナ:「まあね。それにしても、あなたといい、アーニャといい、リリィといい、ユウタ君にもモテ期が来たわねぇ……。先生、嬉しいわ」
 マリア:「私は困ります」
 イリーナ:「取られないように頑張るのよ。あ、そうそう。だからと言って、『流血の惨を見る事、必至であります』は勘弁だからね」
 マリア:「分かってますよ。それに、門内にはまだまだアンチテーゼがいますから」

[同日12:45.天候:晴 同休暇村内]

 稲生:「ええっ!?アナスタシア先生達がいたんですか!?」
 マリア:「そうなんだ。アンナもいるから気をつけてくれ」
 稲生:「わ、分かりました。やっぱり、あの駐車場に止まっていた黒い車は、アナスタシア組専用車だったのか……」
 イリーナ:「アナスタシア組は泊まり掛けでここに来てたみたいだね」
 稲生:「日本を超エンジョイしてるじゃないですか!」
 イリーナ:「ま、私達も似たようなものさね。それより、早くランチにしよう」
 稲生:「はい」

 イリーナ組はレストランに向かった。

 稲生:「僕の杖のこと、アナスタシア組の皆さんは知っているのでしょうか?」
 イリーナ:「どうだろうね。どれだけ関心があるかにもよるよ」
 稲生:「そうですか」
 マリア:「どうせ、そろそろ帰るだろう」
 稲生:「どうして分かるんですか?」
 マリア:「さっき駐車場の方を見たら、荷物を積み込んでいた」
 稲生:「そうでしたか。だとしたら、次は富士急ハイランドに行くかもですね」
 マリア:「どうして?」
 稲生:「今思い出したんですけど、男湯にも魔道師さんらしき人が2〜3人ほどいて、『富士急ハイランド』の話をしていましたから」
 イリーナ:「増えたわねぇ……。日本に来る魔道師達……」

 イリーナはしみじみと語った。
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“大魔道師の弟子” 「未知の花、バスの旅」

2017-07-05 10:26:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月2日11:10.天候:晴 JR富士宮駅前→富士急静岡バス車内]

 駅前のバスプールに1台の路線バスがやってくる。
 大石寺行き登山バスにも使用される、座席の多いタイプ(ワンロマ)が来た。

〔「休暇村富士行きです」〕

 バスに乗り込む。
 日曜日ということもあって、観光客がぞろぞろと乗り込んだ。
 1番後ろの席に座る。

 稲生:「方向的にはエルダー・ツリーの所なんですね」
 イリーナ:「朝霧高原の近くだって言ったでしょ?もっとも、こういうバスで行けるような所じゃないけどね」
 稲生:「そうでしょうとも」

 明らかに青木ヶ原樹海とは負けず劣らずの森の中だ。
 魔法で直接ピンポイントで行かないと、高い確率で遭難してしまうことだろう。
 乗客が全員乗り込むと、バスが発車した。

〔……次は富士宮駅入口、富士宮駅入口でございます〕

 稲生:「マリアさん、大丈夫ですか?」
 マリア:「足が……」
 イリーナ:「日本では、お説教は正座で行うことになってるみたいだからね。日本スタイルでやってみたよ」
 稲生:「いや、今現在は必ずしもそうするとは限らないです」

 ヘタすりゃ体罰と認定され、説教する側が見事にされる側に転換だ。おめでとう!

 イリーナ:「どこまで行くの?」
 稲生:「終点です。やはりここまで来て、富士山の近くまで行かない観光は無いので」
 イリーナ:「うんうん、そうだね」
 マリア:「魔界にも似たようなのあるじゃないですか」
 イリーナ:「こっちと違って、向こうは活火山だし」

 因みに今、休火山という区分は無いらしい。
 死火山か活火山かの二者択一であるからして、富士山もそうなると活火山扱いとなるわけである。おめでとう!

 稲生:「魔界のスーパーグレート火山ですか」

 通称、『魔界富士』。
 規模は富士山より大きいが、形が富士山に似ている為、魔界に流れ付いた日本人住民が名付けた。
 地熱発電や豊富な地下水脈を使用した水力発電により、アルカディアシティの電力を賄っている。

 イリーナ:「そう」
 稲生:「あれ、噴火したらどうなるんでしょうかね?」
 イリーナ:「どうなるんだろねぇ……」

 と、イリーナは他人事だ。
 魔界のアルカディアシティは、魔道師達にとっても重要な拠点の1つなのだが……。

 稲生:(しばらく噴火することは無いということかな。先生の予知で)
 マリア:「くそ……」
 稲生:「まだ足、痺れてます?」
 マリア:「痺れよりも、まだ違和感がある」
 イリーナ:「ユウタ君を見習いなさい。彼は平気だよ」
 稲生:「昔は1時間唱題とかしてましたからねぇ……」

[富士宮駅→富士宮駅入口→神田通り→浅間大社]

 稲生:「ここで降りる人もいるんですね。巫女さん狙いかな?」
 イリーナ:「山門入り口さんみたいなこと言わないw」

[浅間大社→十字街]

 稲生:「函館市電にも同じ名前の電停があります」
 イリーナ:「函館ねぇ……。あそこは行ったことないなぁ……。今度、魚市場でカニでも食べに行くか」
 マリア:「生魚はちょっと……」

[十字街→市民文化会館入口→宝町中屋前→横溝橋→立宿→北高前→鉄鋼団地入口→西高入口→富士見平→ふじのみやスポーツ公園入口→外神]

〔次は外神、外神。創価学会富士宮池田文化会館入口でございます〕

 稲生:「まあ、大石寺の近くだから創価学会の会館くらいあるだろうとは思ってましたが……。この辺だとは……」

 ピンポーン♪
〔次、止まります〕

 稲生:「ん?」

〔「ご乗車ありがとうございました。外神です」〕

 プシュー、ガタッ……。(出口の前扉が開く音)

 稲生:「んっ!?」

 ぞろぞろと7〜8人くらいの男女が降りて行く。

 稲生:「え……?」

 ガタッ……バン。(前扉が閉まった)

〔「発車します。ご注意ください」〕

 稲生:「んんっ?」

 バスが走り出し、流れ行く車窓に目を凝らすと、何だかデモ隊のようなものが見えたような気がした。
 その幟には、『阿部日顕に謝罪と賠償を求める!ニダ』と書かれていたような気がしたが……。

 稲生:「み、見なかったことにしよう。また、変なことに巻き込まれるのはゴメンだ……」
 イリーナ:「うんうん、そうだねぇ……。こちとら、“魔の者”だけでお腹一杯だもんね」
 マリア:「ケンショーレンジャーみたいな連中なのか?だったらコロス」
 稲生:「と、とにかく、今のはほんの風景ということにしておきましょう」
 イリーナ:「ユウタ君がそう言うなら、そうしましょう」

〔次は外神上、外神上でございます〕

[外神上→奉天府→貫間→本門寺入口]

 稲生:「あ、ここで合流するのか」
 マリア:「何が?」
 稲生:「“やきそばエクスプレス”の毎日運行便で、大石寺に止まるバスは、白糸の滝が起終点なんですよ。で、大石寺と白糸の滝のバス停の間に、『本門寺入口』というバス停があるんです」
 マリア:「大石寺のファミリーか」
 稲生:「……ファミリーだと良かったんですけどね」
 マリア:「ん?」

 2017年度中、北山本門寺は日蓮宗の寺院である。
 1941年、それまでに所属していた宗派と一致派の(旧)日蓮宗、勝劣派の顕本法華宗と共に三派合同を行い、(新)日蓮宗を結成した。
 以来、北山本門寺とその末寺は日蓮宗の寺院として存在している。

 稲生:(“となりの沖田くん”達が突撃して行ったということは、実際、妙観講員達が突撃していったということなんだろうけども……)

 漫画や“慧妙”では善戦したような書き方になってるが、一信徒達が突撃したくらいでは何がどうなるというわけでもないと思うが。
 バス停に差し掛かる国道463号線の交差点。
 バスの進行方向に向かって、その国道を右折すれば北山本門寺、左折すれば大石寺である。
 尚、頭に北山を付けるのは、本門寺という名前のお寺が他にもあって、それと区別する為である(例:同じ富士宮市内に単立寺院として存在する西山本門寺。こちらは一時期、日蓮正宗に所属していた時期あり)。
 これと同様、大石寺もまた宗派は違えど同じ名前の寺院があることから、頭に上条や富士や冨士(顕正会のみ)を付けて区別することがある。

[本門寺入口→中村入口→北山出張所→北山小入口→高田→和平→辻坂→中井出→猪狩下馬桜入口→新田(上井出)→上井出出張所→白糸の滝入口→白糸の滝観光案内所前→白糸の滝]

 イリーナ:「ここも観光地なんだね」
 稲生:「そうです」

 何語か分からない母国語を話すアジア人観光客が降りて行った。
 稲生の魔法力では、『自動通訳魔法』は英語とロシア語に特化している為だ。

[白糸の滝→フジヤマ病院入口]

 稲生:「細井日達上人が御遷化された病院です」
 イリーナ:「ふむふむ」

 因みに『バケツ三杯の血を吐いた』だとか書こうものなら、武闘派達からコメント欄に放火されるので注意だ。
 但し、顕正会側においては、平成19年度の時点でそんなことを書いた資料は無い。
 当時の『折伏理論書』や『諌暁書』が手元にあるが、「バケツ三杯の血を吐いた」とかいう文言は見当たらなかった。
 せいぜい、「急な発作に見舞われて……」程度である。

[フジヤマ病院入口→白糸自然公園入口→白糸原→立石→白糸出張所前→白糸保育園前→横手沢橋→内野→下内野→田貫湖下→田貫湖南→田貫湖キャンプ場]

〔次は休暇村富士、休暇村富士。終点でございます。……〕

 稲生:「おっ、もうそろそろですよ」
 マリア:「腰が痛い。そろそろ師匠を起こさないと……」
 イリーナ:「あいよ、アタシゃ起きてるよ」
 マリア:「おおっ!」
 イリーナ:「さすがに、いつまでも寝てらんないしねぇ……」
 マリア:「普段からそうしてくれると助かるんですが」
 稲生:「まあまあ」

 
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