[7月2日11:55.天候:晴 静岡県富士宮市 休暇村富士]
〔「ご乗車ありがとうございました。終点、休暇村富士です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕
バスが停留所の前に停車した。
稲生:「大人3人で」
運転手:「はい」
運賃は稲生がまとめてSuicaで支払った。
イリーナ:「ユウタ君、残額は大丈夫?」
稲生:「あ、はい。何とかなりそうです」
イリーナ:「後で追加しておくからね」
稲生:「あっ、ありがとうございます」
マリア:「観光客がいっぱいだ」
稲生:「そういう所ですから。温泉もありますよ。ただ、日帰り入浴は昼間しか入れないので、今のうちかもしれません」
イリーナ:「それなら、ランチの前に入っちゃおうかしら。その後でランチにするのもいいかもね」
稲生:「じゃあ、そうしましょう」
本館の建物に向かう。
本来は車で来るのがベストな立地条件のせいか、駐車場の方を見ると観光客の車で一杯である。
その中には黒塗りのゼロクラウンやアルファード、エルグランドが3台並んで停車していた。
稲生:(何だか怖そうな人達が乗っていそうな車だなぁ……。今では暴力団お断わりの時代のはずなんだけど……)
本館建物の中に入る。
稲生:「それじゃ、先に温泉から入りましょう」
イリーナ:「ういっす」
マリア:「……何だろう?何だか嫌な予感がする……」
イリーナ:「なぁに?まさか、ここにまでケンショーレンジャーが来てるとでも言いたいの?」
マリア:「うーん……どうでしょう……」
稲生:「何でしたら藤谷班長に電話して、正証寺の武闘派さん達を呼びますよ」
マリア:「いらんいらんいらん!」
イリーナ:「いつの間にか藤谷班は武闘派に昇格したのね」
男湯と女湯の入口前で別れる。
イリーナ:「あー、何だか私も少し想定できてきたわ」
マリア:「でしょ?でしょ?」
イリーナ:「多分その答え、ここにあるわ」
脱衣場に入ると、そこに答えはあった。
アナスタシア:「あ……!」
アンナ:「あ……!」
マリア:「やっぱり……」
イリーナ:「ヤホー♪」
脱衣場にはアナスタシア組の魔女達が着替えていた。
黒い服が制服のアナスタシア組だが、下着まで黒いのは組長のアナスタシアくらいのものらしい。
アナスタシア:「何でアンタがここに!?」
イリーナ:「そういうナスターシャ(※)こそ」
※アナスタシアのロシア語での愛称。日本語的感覚だとアーニャとでも呼びたくなるが、それはアンナの愛称である。
アナスタシア:「私らは慰安旅行だよ。皆、頑張ってくれてるし……」
イリーナ:「偶然ね。私達もよ」
アナスタシア:「ウソだ。絶対何か企んで来たでしょ?」
イリーナ:「いやいやいや。本当にただの偶然だよ。ね?マリア」
マリア:「そうですね。師匠が観光したいって言うんで、ユウタがここに連れて来てくれたんです」
アンナ:「それはつまり!……運命の赤い糸で結ばれているのは、アンタより私ってことよ!」
マリア:「黙れ、ヤンデレ!」
イリーナ:「東京中央学園の時は随分と大ケガしちゃったけど、もう治ったみたいね」
アンナ:「まあ……。こう見えても不死身ですから」
アナスタシア:「私も回復魔法掛けてあげたしね」
イリーナ:「うんうん。弟子の面倒見がいいねぇ……」
アナスタシア:「それ、嫌味?」
イリーナ:「お察しくださいw」
アナスタシア:「ヤロー……!」
脱衣場内にロシア語が飛び交うが、マリアだけ英語という不思議。
アンナ:「早くアンタも日本語覚えないと。私なんかもう日本語能力検定3級(N3)よ?ユウタ君と自然な会話をしたいんだったら、日本語でも会話できないとね」
マリア:「うっ……!に、日本語自体は喋れる」
アンナ:「でも文章にすると、カタカナ表記扱いでしょ?それじゃダメよ」
マリア:「努力はしてるさ!いずれはエレーナ並みに喋れるようになるさ」
アンナ:「エレーナね……。あれさ、どうやってN1取ったか知ってる?」
マリア:「知らないよ。ってか、本当にあいつN1なの!?」
アンナ:「N1取れるだけでも凄いんだけど、本当にウクライナでストリートチルドレンだったのかな?」
マリア:「私も実はウクライナの工作員のような気がしてきた……」
その頃、エレーナは拠点となっているホテルでくしゃみを3回ほどしていたという。
アナスタシア組とは入れ替わるようにして入浴するイリーナ組。
イリーナ:「いやー、まさかナスターシャ達と会うとはねぇ……」
マリア:「アンナはやっぱり生きてましたか……。ユウタに気をつけるよう言っておかないと」
イリーナ:「大丈夫だよ。今さらもうアーニャはユウタ君を襲ったりはしないさ」
マリア:「いや、別の意味で襲い掛かる恐れがありますので」
イリーナ:「まあ、好きにしてちょうだい。それにしても、今日は天気がいいから富士山がよく見えるねぇ……」
マリア:「ええ」
イリーナ:「魔界富士に通じる穴が、あれなら今は簡単に通れそうだわ」
マリア:「通った先がマグマの噴出口という、バッドエンド直行のトラップもいくつかあるということですね」
イリーナ:「まあね。それにしても、あなたといい、アーニャといい、リリィといい、ユウタ君にもモテ期が来たわねぇ……。先生、嬉しいわ」
マリア:「私は困ります」
イリーナ:「取られないように頑張るのよ。あ、そうそう。だからと言って、『流血の惨を見る事、必至であります』は勘弁だからね」
マリア:「分かってますよ。それに、門内にはまだまだアンチテーゼがいますから」
[同日12:45.天候:晴 同休暇村内]
稲生:「ええっ!?アナスタシア先生達がいたんですか!?」
マリア:「そうなんだ。アンナもいるから気をつけてくれ」
稲生:「わ、分かりました。やっぱり、あの駐車場に止まっていた黒い車は、アナスタシア組専用車だったのか……」
イリーナ:「アナスタシア組は泊まり掛けでここに来てたみたいだね」
稲生:「日本を超エンジョイしてるじゃないですか!」
イリーナ:「ま、私達も似たようなものさね。それより、早くランチにしよう」
稲生:「はい」
イリーナ組はレストランに向かった。
稲生:「僕の杖のこと、アナスタシア組の皆さんは知っているのでしょうか?」
イリーナ:「どうだろうね。どれだけ関心があるかにもよるよ」
稲生:「そうですか」
マリア:「どうせ、そろそろ帰るだろう」
稲生:「どうして分かるんですか?」
マリア:「さっき駐車場の方を見たら、荷物を積み込んでいた」
稲生:「そうでしたか。だとしたら、次は富士急ハイランドに行くかもですね」
マリア:「どうして?」
稲生:「今思い出したんですけど、男湯にも魔道師さんらしき人が2〜3人ほどいて、『富士急ハイランド』の話をしていましたから」
イリーナ:「増えたわねぇ……。日本に来る魔道師達……」
イリーナはしみじみと語った。
〔「ご乗車ありがとうございました。終点、休暇村富士です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕
バスが停留所の前に停車した。
稲生:「大人3人で」
運転手:「はい」
運賃は稲生がまとめてSuicaで支払った。
イリーナ:「ユウタ君、残額は大丈夫?」
稲生:「あ、はい。何とかなりそうです」
イリーナ:「後で追加しておくからね」
稲生:「あっ、ありがとうございます」
マリア:「観光客がいっぱいだ」
稲生:「そういう所ですから。温泉もありますよ。ただ、日帰り入浴は昼間しか入れないので、今のうちかもしれません」
イリーナ:「それなら、ランチの前に入っちゃおうかしら。その後でランチにするのもいいかもね」
稲生:「じゃあ、そうしましょう」
本館の建物に向かう。
本来は車で来るのがベストな立地条件のせいか、駐車場の方を見ると観光客の車で一杯である。
その中には黒塗りのゼロクラウンやアルファード、エルグランドが3台並んで停車していた。
稲生:(何だか怖そうな人達が乗っていそうな車だなぁ……。今では暴力団お断わりの時代のはずなんだけど……)
本館建物の中に入る。
稲生:「それじゃ、先に温泉から入りましょう」
イリーナ:「ういっす」
マリア:「……何だろう?何だか嫌な予感がする……」
イリーナ:「なぁに?まさか、ここにまでケンショーレンジャーが来てるとでも言いたいの?」
マリア:「うーん……どうでしょう……」
稲生:「何でしたら藤谷班長に電話して、正証寺の武闘派さん達を呼びますよ」
マリア:「いらんいらんいらん!」
イリーナ:「いつの間にか藤谷班は武闘派に昇格したのね」
男湯と女湯の入口前で別れる。
イリーナ:「あー、何だか私も少し想定できてきたわ」
マリア:「でしょ?でしょ?」
イリーナ:「多分その答え、ここにあるわ」
脱衣場に入ると、そこに答えはあった。
アナスタシア:「あ……!」
アンナ:「あ……!」
マリア:「やっぱり……」
イリーナ:「ヤホー♪」
脱衣場にはアナスタシア組の魔女達が着替えていた。
黒い服が制服のアナスタシア組だが、下着まで黒いのは組長のアナスタシアくらいのものらしい。
アナスタシア:「何でアンタがここに!?」
イリーナ:「そういうナスターシャ(※)こそ」
※アナスタシアのロシア語での愛称。日本語的感覚だとアーニャとでも呼びたくなるが、それはアンナの愛称である。
アナスタシア:「私らは慰安旅行だよ。皆、頑張ってくれてるし……」
イリーナ:「偶然ね。私達もよ」
アナスタシア:「ウソだ。絶対何か企んで来たでしょ?」
イリーナ:「いやいやいや。本当にただの偶然だよ。ね?マリア」
マリア:「そうですね。師匠が観光したいって言うんで、ユウタがここに連れて来てくれたんです」
アンナ:「それはつまり!……運命の赤い糸で結ばれているのは、アンタより私ってことよ!」
マリア:「黙れ、ヤンデレ!」
イリーナ:「東京中央学園の時は随分と大ケガしちゃったけど、もう治ったみたいね」
アンナ:「まあ……。こう見えても不死身ですから」
アナスタシア:「私も回復魔法掛けてあげたしね」
イリーナ:「うんうん。弟子の面倒見がいいねぇ……」
アナスタシア:「それ、嫌味?」
イリーナ:「お察しくださいw」
アナスタシア:「ヤロー……!」
脱衣場内にロシア語が飛び交うが、マリアだけ英語という不思議。
アンナ:「早くアンタも日本語覚えないと。私なんかもう日本語能力検定3級(N3)よ?ユウタ君と自然な会話をしたいんだったら、日本語でも会話できないとね」
マリア:「うっ……!に、日本語自体は喋れる」
アンナ:「でも文章にすると、カタカナ表記扱いでしょ?それじゃダメよ」
マリア:「努力はしてるさ!いずれはエレーナ並みに喋れるようになるさ」
アンナ:「エレーナね……。あれさ、どうやってN1取ったか知ってる?」
マリア:「知らないよ。ってか、本当にあいつN1なの!?」
アンナ:「N1取れるだけでも凄いんだけど、本当にウクライナでストリートチルドレンだったのかな?」
マリア:「私も実はウクライナの工作員のような気がしてきた……」
その頃、エレーナは拠点となっているホテルでくしゃみを3回ほどしていたという。
アナスタシア組とは入れ替わるようにして入浴するイリーナ組。
イリーナ:「いやー、まさかナスターシャ達と会うとはねぇ……」
マリア:「アンナはやっぱり生きてましたか……。ユウタに気をつけるよう言っておかないと」
イリーナ:「大丈夫だよ。今さらもうアーニャはユウタ君を襲ったりはしないさ」
マリア:「いや、別の意味で襲い掛かる恐れがありますので」
イリーナ:「まあ、好きにしてちょうだい。それにしても、今日は天気がいいから富士山がよく見えるねぇ……」
マリア:「ええ」
イリーナ:「魔界富士に通じる穴が、あれなら今は簡単に通れそうだわ」
マリア:「通った先がマグマの噴出口という、バッドエンド直行のトラップもいくつかあるということですね」
イリーナ:「まあね。それにしても、あなたといい、アーニャといい、リリィといい、ユウタ君にもモテ期が来たわねぇ……。先生、嬉しいわ」
マリア:「私は困ります」
イリーナ:「取られないように頑張るのよ。あ、そうそう。だからと言って、『流血の惨を見る事、必至であります』は勘弁だからね」
マリア:「分かってますよ。それに、門内にはまだまだアンチテーゼがいますから」
[同日12:45.天候:晴 同休暇村内]
稲生:「ええっ!?アナスタシア先生達がいたんですか!?」
マリア:「そうなんだ。アンナもいるから気をつけてくれ」
稲生:「わ、分かりました。やっぱり、あの駐車場に止まっていた黒い車は、アナスタシア組専用車だったのか……」
イリーナ:「アナスタシア組は泊まり掛けでここに来てたみたいだね」
稲生:「日本を超エンジョイしてるじゃないですか!」
イリーナ:「ま、私達も似たようなものさね。それより、早くランチにしよう」
稲生:「はい」
イリーナ組はレストランに向かった。
稲生:「僕の杖のこと、アナスタシア組の皆さんは知っているのでしょうか?」
イリーナ:「どうだろうね。どれだけ関心があるかにもよるよ」
稲生:「そうですか」
マリア:「どうせ、そろそろ帰るだろう」
稲生:「どうして分かるんですか?」
マリア:「さっき駐車場の方を見たら、荷物を積み込んでいた」
稲生:「そうでしたか。だとしたら、次は富士急ハイランドに行くかもですね」
マリア:「どうして?」
稲生:「今思い出したんですけど、男湯にも魔道師さんらしき人が2〜3人ほどいて、『富士急ハイランド』の話をしていましたから」
イリーナ:「増えたわねぇ……。日本に来る魔道師達……」
イリーナはしみじみと語った。
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