報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「最終電車」 10号車 その2

2017-07-26 21:34:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10号車]

 愛原:「何やってんだーっ!」

 私はショットガンを構え、死神のような姿をした者に発砲した。
 ショットガンとは散弾銃のことであり、日本語にした方が意味が分かりやすい。
 発砲された弾が広範囲に飛び散る銃である。
 死神の黒いローブに当たった弾はダメージを与えることができなかったが、大きな鎌に当たった弾はダメージを与えることができた……ように見えた。
 いや、何か昔のゲームで、死神のような姿をしたボスに弾を放つと、当たり判定が大鎌のみというキャラがいたような気がしたのだ。

 死神らしい姿をした者は大鎌を落としてしまった。
 やっぱり効いている!

 高橋:「先生、さすがです!」

 高橋もまたハンドガンを構えて発砲した。
 だが、そこから出て来たのは万国旗。

 高橋:「何だこりゃあ!?」
 敷島:「パーティー用グッズだったのか……」

 敷島氏が苦笑する。
 死神らしい姿をした者はクルッと振り向いた。
 そして、黒いローブを取る。
 それは死神などではなかった。

 敷島:「うわっ!?バージョン4.0だ!?何でこんな所に!?」
 愛原:「何ですか、それ!?」
 敷島:「KR団御用達のテロ用ロボットですよ!御存知ない!?」
 愛原:「知りませんよ!」
 山根:「やっぱり、違う世界の人なんだぁ……」
 敷島:「! あのモーションは!?……伏せて!マシンガン撃ってくる!!」

 私達が床に伏せると、ずんぐりむっくりのバージョン4.0と呼ばれたロボットが私達にマシンガンを撃って来た。
 右手がそれに変形させることができるらしいが、体の構造上、下に向かって撃つことができない。
 だから、床に伏せればやり過ごせるというわけだ。

 敷島:「シンディ!?シンディはいないか!?エミリーでもいい!あいつをブッ壊せ!!」
 高橋:「なに言ってんだ、オッサン!?」

 高橋はダッと運転室に走った。

 愛原:「おい、高橋!危ないぞ!」
 高橋:「大丈夫です!ロボットも所詮、後ろに目は付いてないっスから!」
 愛原:「なるほど、そうか!……って、ええっ!?」

 すると9号車から、また何かが現れた。

 ゾンビA:「アァア……!」
 ゾンビB:「ウゥウ……!」

 ゾンビの集団だった!
 やはり9号車の乗客達もまた、ゾンビウィルスに感染していたんだ!
 前方にはテロロボット!後方にはゾンビ!
 もはや、万事休すか!

 4.0:「キュルルルルルル!」

 だが、このテロロボットは、どうやら動く者に攻撃するように造られているらしい。
 10号車に入って来たゾンビ達を敵と認識したか、手持ちのマシンガンで次々と射殺していった。
 しかしその凄まじい攻撃ぶりに、私も幸太郎君も敷島さんも床から起き上がることができない。
 高橋はどうしてる!?

 高橋:「おい、コラ!テメェが元凶か!?」

 高橋は運転室との客室との間に磔になっている青年の所に辿り着いた。

 ???:「な、何のこと?僕はただ……」
 高橋:「うるせっ!とにかくオメェも何とかしろっ!」

 高橋は青年を拘束から解いてやった。

 青年:「魔法陣で僕の仲間を呼ぶから、あの化け物何とかしてくれよ!」
 高橋:「何とかって、オメェ……!」
 青年:「何だか知らないけど、9号車からやってきたんだよ!」
 敷島:「! 幸太郎君、もしかしてそれ、パソコンかい!?」
 山根:「う、うん……」

 敷島さんは幸太郎君の鞄の隙間から、ノートパソコンが覗いているのを見つけたようだ。

 山根:「通ってる塾で使ってるの。タブレットとかスマホとかを皆使ってるんだけど、たまたまお父さんがパソコンを買い換えたから、お下がりでこれ使ってるんだよ」
 敷島:「電源は入るか?」
 山根:「う、うん。多分……」
 敷島:「よし、電源を入れてくれ!」
 愛原:「敷島さん、何をするつもりですか?」

 敷島氏はスーツのポケットの中から、USBメモリのような媒体を出した。

 敷島:「この中に、あのロボットを奴隷扱いできる上位機種のデータが入っています。それをあいつに送信してやれば、いかにも上位機種から命令が飛んできたように思わせて停止させることができるという寸法です」
 愛原:「そんな簡単に行きますかね?」
 敷島:「行かなかったら、バッドエンドです。今、4.0はゾンビ退治に夢中になってますが、そいつらを全滅させたら、今度は私達を全滅させるでしょうから」
 愛原:「な、なるほど……!」
 山根:「社長さん!電源入ったよ!」
 敷島:「よし!ちょっと借りるぞ!」

 敷島氏は幸太郎君のパソコンに、媒体を差した。

 青年:「僕の名前は稲生勇太!この車両に乗っていたら、突然事故に遭って、それからもう何が何だか分からなくなって……」
 高橋:「事故だぁ!?……ま、ある意味で大事故だけどよ。それで、どうすんだ?」
 稲生:「あの魔法陣で僕の使い魔を召喚するから、あのロボットを止めてほしい!」
 高橋:「無茶言うな!テメェ、魔法使いだったら、魔法で何とかしろっ!」
 稲生:「僕はまだ修行中なの!」

 何だか高橋と青年がモメている。

 敷島:「よし!データを読み取ったぞ!あとは送信だ!」
 4.0:「キュルキュルキュルキュル!」

 ゾンビを全滅させたバージョン4.0は、クルッと振り向き、今度は高橋と稲生勇太君……とやらに銃口を向けた。

 高橋:「うっ!?」
 稲生:「死神の正体はロボットだったの!?何だかもうメチャクチャだ!」
 高橋:「一体、どうなってんだ、こりゃ!?」
 4.0:「ピ!?」

 4.0の動きが止まった。
 それどころか、ビックリした様子で後ろを振り向いた。
 敷島さんがパソコンのキーボードを叩いている。

 敷島:「エミリーから“ナイフ”もらっといて良かったぜ!そこの4.0!俺はエミリーのアンドロイドマスターだぞ!?その意味は言わなくても分かるな!?」

 すると4.0は頭を抱え、正にorzの体勢になった。
 土下座とも言うか?

 稲生:「今だ!」

 稲生と呼ばれた青年は、服装は普通の恰好だったが、その上に薄紫色のローブを羽織り、そして杖を持っていた。

 稲生:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!我は求め、訴えたり!我の召喚に応じ、その力を遺憾無く発揮したまえ!!」

 魔法陣の前で何か呪文を唱えている。

 愛原:「そうか!このメモはキミが書いたものだったのか!」
 稲生:「それは敵を撃退する為に、急いでメモしたものです。そうですか。拾ってくれたんですか」
 高橋:「ていうか、運転席はどうなってんだ!?」

 高橋は運転室のドアに向かった。
 ブラインドは全て下ろされ、中の様子を窺い知ることはできない。

 高橋:「おい、ここを開けろ!!」

 高橋は運転室のドアをこじ開けようとした。

 敷島:「おい、4.0!あのドアをこじ開けろ!」

 敷島さんがキーボードを叩く。
 どうやら、パソコンを使ってこのロボットに命令が出せるようになったらしい。
 が!

 敷島:「あれ!?」

 だが、パソコンの画面が消えてしまった。

 敷島:「ど、どうなってるんだ!?」
 山根:「あ、もしかしたら、バッテリー切れかも……」
 敷島:「何いっ!?」

 すると、4.0の両目がギラリと光った。

 稲生:「……集いて来たれ!速やかに!パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!稲生勇太の名の元に!」
 敷島:「き、キミ!その魔法陣で、うちのシンディかエミリーも召喚できないか!?」
 稲生:「な、何言ってるんですか?」

 魔法陣が光り出すのと、バージョン4.0が再び右手をマシンガンに変形させるのは同時だった。
 い、一体、これから何が起きる!?
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“私立探偵 愛原学” 「最終電車」 埼京線編 10号車

2017-07-26 19:23:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10号車]

 9号車の惨状を通り抜けた私は、10号車へ続くドアの取っ手を掴んだ。
 この車両の状況から察するに、10号車も危機的状況にあることは予想できた。

 愛原:「!!!」

 10号車は予想に反してきれいなものだったが、何かが起こる直前であったようだ。
 私の目に映ったのは、まず9号車から2番目の乗降ドア、左のドアと右のドアの間の広くなっている部分には魔法陣が描かれている。
 それを背にして(つまり私達を背にして)、黒い何かが運転室の方を向いている。
 運転室と客室との間の壁には、高橋君くらいの歳の青年が磔にされている。
 黒い何かは、磔になった青年に対してキラリと光る何かを振り上げた。
 あれは大きな鎌だ!
 するとあれは、黒いローブを羽織った死神か何かか!?
 地獄の鬼の次は死神か!!
 私は咄嗟に判断した。

 ①「高橋、あの黒いヤツに向かって撃て!」
 ➁私は手持ちのショットガンを黒いヤツに向かって撃った。
 ③「敷島さん、あのメモを読んでください!」
 ④「皆、後ろの車両に下がれ!」

(※え?バッドエンド?もちろんありますよー)
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“私立探偵 愛原学” 「最終電車」 埼京線編 8号車・9号車

2017-07-26 10:24:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8号車]

 私はメモ帳を読み上げた。

 愛原:「『パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!嗚呼、神の復讐よ!嗚呼、何ということだ!』」

 透明な牛頭(ごず)は驚いた顔をしてこちらを見ている。
 まさか、私が何か魔法でも使うとは思わなかっただろう。
 だがしかし、私は私立探偵だ。
 魔法使いなどではない。
 それでもこのメモ帳には、何か大きな力が秘められているような気がする。
 私は3枚あるメモのうちの1枚を読み上げた。

 愛原:「『パル・プ・ンテェ』!」

 一体何が起こるだろうか!?

 愛原:「…………」
 牛頭:「…………」
 敷島:「…………」
 高橋:「…………」
 山根:「…………」

 な、何も起こらない!?
 そ、そう言えば某有名RPGの似たような名前の呪文に、唱えても何も起こらないというオチがあったような……?

 牛頭:「ウガァァァァッ!!」

 バカにされたとでも思ったのか、牛頭は憤怒の雄たけびを上げ、一気にプロレスラーみたいな大男を踏み潰して殺した。
 血しぶきなどが車内にぶちまけられる。
 その中から、牛頭が私に金色の瞳を光らせて睨みつけた。
 その下にある口には鋭い牙、そして両手には牛の蹄……ではなく、かつて霧生市のバイオハザードで遭遇したクリムゾンヘッドのような長くて鋭い爪を持っていた。

 愛原:「!!!」

 もはや、これまでか……!

 ???:「見つけたぞ、牛頭!こんなとこでサボってやがったのか!!」

 車内に若い男の声が響いた。
 まるで、高橋みたいな感じの男だ。
 牛頭はビックリして動きを止めた。
 鋭い爪の切っ先が、正に私に触れようとした時だった。

 ???:「牛頭!……それと馬頭(めず)!クサい芝居するんじゃねぇッ!!」

 7号車のドアの向こうから、着物姿の男が現れた。
 黒い着物の下に、同じく黒い袴をはいて草履をはいている。
 右手にはどこかで血を吸ったのか、一部が赤く染まった刃が目に付く日本刀を手にしている。
 髪は着物と同じ長い黒髪で、それを後ろで束ねていた。
 肌は色黒で、額の所に一本角のようなものが生えている。
 踏み潰された大男のような長身ではあったが、この着物の男に関してはスラッとした体型であった。

 牛頭:「ほ、蓬莱山鬼之助様……!な、何故……!?」
 キノ:「閻魔庁から指名手配食らってんぜ、テメェら!」

 すると踏み潰されて肉塊と化したはずの大男も、その肉塊が元に戻って行く。
 そしてそれは踏み潰される前の大男の姿ではなく、馬の頭が特徴の馬頭鬼に変わっていった。
 そうだ。地獄界の獄卒と言えば、牛頭鬼の他に馬頭鬼もいたはずだ。

 馬頭:「魔界まで逃げてしまえば高飛びできると思ったのに……!」
 キノ:「とっとと来い!テメェらには仕事がたんまり残ってるからなぁ!」

 如何に長身の男とはいえど、それぞれがプロレスラーみたいな体格の牛頭と馬頭を恫喝して、蓬莱山鬼之助と呼ばれた……あれも地獄界の鬼の一種なのだろう。彼はその2人の獄卒を後ろの車両に連行していった。
 きっと私達を何か罠に嵌める為に、『クサい芝居』をしたのだろうな。

 山根:「待って!」

 幸太郎君があの鬼達の後を追うように7号車に向かったが……。

 山根:「あっ!」
 愛原:「どうした?」
 山根:「7号車が無くなってる!」
 敷島:「何だって!?」

 私達は再び7号車の方へ向かった。
 すると7号車へ通じる貫通ドアは堅く閉ざされていたのだが、窓越しに向こうを見ても、そこにあるのは真っ暗闇でしかなかった。
 その向こうの6号車もだ。
 電車は未だに走り続けているのが不気味だが……。

 敷島:「とにかくこれは、前に向かって進むしかないということでしょうな」
 愛原:「そ、そうですね」

 もはや文字通り、退くは地獄か。
 今まで後ろの車両に引き返そうかと思った選択肢があったが、あれは恐らく間違いだったのだろう。
 地獄の闇に呑まれるなどして、バッドエンドだったか。
 私達は前の車両に進むことにした。

 敷島:「愛原さん、さっきのパルプンテ。ちゃんと発動したみたいですよ」
 愛原:「どういうことです?」
 敷島:「あの魔法には、『とてつもなくおそろしいものをよびだしてしまった!』というものがあるそうです。あの牛頭と馬頭にとって、あの着物の男は『とてつもなくおそろしいもの』だったのでしょう。そして、敵全員が逃走して戦闘が強制終了とあいなったわけです」
 愛原:「なるほど。実際は逃走ではなく、連行でしょうがね」
 敷島:「私達にとっては結果オーライです」
 愛原:「確かに」
 高橋:「先生、魔法も使えるんですか!さすがです!やはりこれからの探偵は、魔法も使えないといけないということでしょうか!?」
 愛原:「何でそうなる」
 敷島:「高橋君、『愛原さんが魔法が使えること』よりも、『愛原さんが魔法を使おうとした』というその発想こそが探偵に必要なインスピレーションってヤツなんじゃないのかい?」
 高橋:「!?」
 愛原:「おおっ!さすが敷島さんですね!」
 高橋:「な、なるほど……」

 高橋が自分のノートに今の言葉をメモっていた。
 その間、敷島さんが先に9号車の中を覗く。
 こちらの貫通扉はさっきの牛頭・馬頭が壊したので、9号車にはすぐに入れる。

 敷島:「死体に慣れてないコは目を瞑って行ってくれ」

 敷島さんが不快そうな顔で言った。
 私にも分かっていた。
 5号車も酷い有り様だったが、9号車は更にそれ以上だった。
 9号車だけまるで事故に遭ったかのように車内はメチャメチャに壊れ、そこに乗っていたであろう乗客達の惨殺死体が転がっていた。

 愛原:「霧生市のバイオハザードでも、似たような光景は見たんだが……」
 高橋:「あそこは死体が歩いていたんで、逆にまだマシでしたね」

 とはいえ、5号車の件もある。
 頭が無事な死体もあり、これがいきなり起き上がって襲って来る恐れもある。
 幸太郎君には私が目を押さえてやって、10号車に進むことにした。

 愛原:「敷島さんは大丈夫なんですか?」
 敷島:「100%平気といったらウソになりますよ。ただ、こういう惨劇をリアルで目の当たりにした経験は過去に何回かあるので、ある程度の免疫はあるんです」
 愛原:「そうですか……」

 車内は蛍光灯が所々点いているだけで薄暗いものだった。
 それに関しては霧生電鉄の車内を思わせる。
 ただ、あれには死体は乗っていなかったが。

 高橋:「先生、これを!」
 愛原:「ん?」

 高橋が何か拾い上げた。
 それはハンドガン。

 高橋:「本物ですよ。弾も入ってます」
 愛原:「マジか!?」

 この車両には警察官でも乗っていたのだろうか。
 確かにこの拳銃、警察官が持っているものに似ているような……?
 さっきの牛頭・馬頭みたいな妖怪が現れて応戦しようとしたが、間に合わずに殺されたのだろうか。

 愛原:「一応、もらっていこう。他には無いのか?」
 敷島:「まあ、そう簡単に銃が転がってるわけが無いですからね」

 しかし、敷島さんは網棚の上に何かを見つけた。

 敷島:「猟銃あったし!」
 愛原:「何故に!?」

 ショットガンだった。
 まあ、確かに猟銃としてのものだろう。
 こんなもん電車に持ち込んでいたヤツがいたのか?
 で、やはりこれも使う間も無く殺されたわけか。

 愛原:「高橋君!お前はハンドガンの方が使いやすいって言ってたな?」
 高橋:「ハイ」
 愛原:「じゃあ、これはキミが持って。俺は猟銃を使うから」
 高橋:「分かりました」
 敷島:「あなた達、本当に探偵ですか?」
 愛原:「え、ええ、まあ……」
 高橋:「そういうアンタこそ、本当に芸能事務所の社長かよ!」
 愛原:「まあまあ。とにかく、先に進もう」

 私はついに最後の車両、先頭車である10号車への扉を開けた。
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