報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「最終電車」 序章

2017-07-15 19:58:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月3日11:02.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 某邸宅]

 私の名前は私立探偵、愛原学。
 東京都内で小さな事務所を経営している。
 今日はクライアントから事件解決の依頼があり、仙台市郊外のとある屋敷へと赴いた。
 事件の舞台となった屋敷は典型的な武家屋敷のような佇まいであり、奥州伊達藩直轄奉行の与力の同心の更に岡っ引きの子孫が主人だというが、恐らくそこには突っ込まぬ方が良いのだろう。
 そこで起きた凄惨な連続殺人事件を、私は解決した。

 愛原:「真犯人が分かりました」
 一同:「!!!」

 私は何気ない容疑者達の行動から、真犯人しか行い得ない、そして真犯人だからこそできないことを見出した。

 横山:「く、クフフフフフ……。私はその前にちょっとトイレ……。先ほど姪っ子の脱ぎたてパンティを……嗚呼、何でもありません……」
 伊藤:「ああッ!?探偵よー!オメーはよー!さっきまで『お手上げ』だっつってたんじゃんかよっ、ああっ!?」
 浅田:「いいですかー?真犯人は別にいるのですね。警察が来るまで、ここはおとなしくしているべきと思われまするが、皆さんどうでしょう?」
 高橋正義:「うるさい!静かにしろ!先生が真犯人が誰だか発表してくださるぞ!心して聞け!!」
 八島:「それでは、探偵の愛原さんが事件の真相を発表致します。愛原さん、お願いします!」

 1人、高橋だけが私に伏せ拝して拍手をする。

 浅田:「こりゃっ、キミ!伏せ拝して拍手するは、唯一無二の師匠にして日目上人の再誕であらせれる所の会長先生しかおらなんじゃぞ?」
 高橋:「俺にとって、正に愛原先生が唯一無二の師匠だ!」
 伊藤:「知らねーよ、高橋ッ!つかよ、探偵よー、早いとこよー、その真犯人が誰だか言いやがれっ、ああっ!?」

 私は咳払いをした。

 愛原:「えー、それではまず事件の背景ですが、そもそもこの事件は【中略】。……となりますと、動機が限られてくるわけです。【中略】第一の事件、田原さんが殺されたことについてですが、これについては真犯人の思惑通りに私達が動いてしまった。この時に【中略】。第2の事件もそうです。まんまと踊らされてしまった。我々は少なからず、図らずも共犯者にさせられてしまったのです。そして第3の事件、私よりも先に真相に気づいてしまった坪井さんが真犯人を問い詰めてしまったことで起きた事件です。これは犯人にとっては予想外だったことでしょう。だから第3の事件にあっては急ごしらえのトリックをするしか手立てが無く、これだけが他の事件と全く様相が違ってしまったわけです。高橋君、例のものを」
 高橋:「はい。これが坪井のオッサンが掛けていた眼鏡だ」
 愛原:「見てください。他の犠牲者の人達も全員眼鏡を掛けていますが、彼らの眼鏡は全く壊れていません。しかしこれだけが、見事にレンズは粉々、フレームも曲がりまくっています。これは犯人が慌てて坪井さんを殺害したということに他なりません」
 横山:「クフフフフフ……。それで犯人は?犯人は一体、誰なのですか?」
 伊藤:「幼女の下着ドロなら横山が犯人だろ?それを見られたんで、殺したってオチじゃねーのか?横山よー?」
 横山:「ちちち、違いますよ。確かについ出来心で脱衣所から姪っ子のジュニアブラとパンティを手にしてしまいましたが、私は誰も殺していません」
 高橋:「静かに聞け!先生の話は終わってないぞ!」
 八島:「それでは、愛原さんが真犯人の発表を致します」
 愛原:「それまでの事件の中、1番現場から離れていることで疑いを悉くかわして来たトリック。それが可能なのは……浅田さん、あなたですね?」
 浅田:「な、何じゃと!?」
 伊藤:「探偵よー、こんなジジィが何でトリックが使えるんだよっ、ああっ!?」
 横山:「クフフフフフ……。確かに浅田さんは、御高齢で杖をついていらっしゃる。そんな方に各事件現場を簡単に行き来できるわけが……」
 愛原:「それができるんですよ。浅田さん、あなた一時期、杖を無くしたと仰ってましたね?」
 浅田:「横山じゃ!横山が下着ドロをする時にワシの杖を勝手に使ったんじゃ!」
 愛原:「横山さん、それは本当ですか?」
 横山:「クフフフフフフ……。確かに浅田老の杖を無断拝借しようとはしましたが、ちょうど良く高枝切り鋏を応用した方が物干しから取れることに気がついたので、一切触っていませんよ?」
 浅田:「な、何じゃと!?」
 伊藤:「ああっ!?でも杖が無くなっていたのは事実だろっ?そりゃ一体どういうことなんだよっ、ああっ!?」
 愛原:「実はその杖……坪井さんが【物凄くスプラッターな表現なのでカット致します】」
 浅田:「な、何と……」
 伊藤:「と、とんでもねぇジジィだぜっ、ああっ?い、いくら、俺でもそこまではしないぜ……」
 横山:「…………」(猟奇オナニー、略称リョナを思い浮かべて鼻血を出している)
 八島:「それでは、浅田氏が正直に白状致します」
 浅田:「フ……フフ……そこまでバレてしまっては、仕方が無いの」
 伊藤:「じ、爺さん、マジかよ、ああっ?これが仏様の慈悲だっていうのかよ、ああ?」
 浅田:「じゃが、まだまだ終わらんよ」

 浅田老人、サッと上着のポケットからハンドガンを取り出す。

 高橋:「先生!危ないっ!」

 浅田老人が私に向かってハンドガンを発砲した。
 だがそこへ高橋君が割って入る。

 愛原:「高橋君!」
 高橋:「ぐっ……!」

 高橋の左手から出血する。

 浅田:「いいですか?私の弘教はまだまだ終わらないんですね。見て御覧なさい。夜空に瞬く星々を」

 あのー、真っ昼間なんですけど。
 てか、早く治療しないと高橋君が危ない。

 浅田:「特にあの中央に輝く星は五芒星と言いまして、大聖人様を首の座から救った彗星の正体なんですね」(文証なし)

 浅田老人、再びハンドガンを私に向ける。

 浅田:「さあ!探偵さん!大聖人様に背く愛原さんは、必ずその身を亡ぼす。あなたは堕獄必定ですが、猛省を持って償いの心を持てば、無間地獄に堕ちても救われるのです」

 ダメだ、このジジィ!イカレてやがる!

 高橋:「こ、この……イカレポンチが……!」
 浅田:「何があっても大丈夫!師弟仲良く無間地獄に行くのです!」

 浅田老人は私達に対して拳銃の引き金を引いた。

 浅田:「ぐわっ!?」

 ところがその拳銃、いきなり暴発して老人の頭を……!

 八島:「銃が爆発して、老人の頭を粉々にした所で事件解決です!ご苦労さまでした!」

 結局、この屋敷自体が狂った教祖、略して狂祖の家だったということか。

 尚、高橋君のケガはかすり傷程度で済んで入院の必要は無かったが、その後で警察の事情聴取や現場検証の立ち会い、そして事件解決の祝杯のせいで、帰りの新幹線は最終便になってしまった。
 けして祝杯のせいではない。
 ただちょっとクライアントからもらった報酬と警察からの捜査報奨費でもって、牛タンと寿司をつまみ、アルコール飲み放題をやっただけだ。
コメント (5)
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